なぜ職場の無駄な工程はなくならないのか。『闘将ダイモス』から見る無駄の正体
YouTubeをなんとなく眺めてたら、たまたまオススメに流れてきた、あるロボットアニメの動画に目が止まりました
『闘将ダイモス』です
1978年に放送された「ロボットアニメ」の名作のひとつです。
あまりにも昔すぎて当時見たかどうかも覚えてないんだが、
子供時代、おもちゃ屋さんで女の子なのに可愛いぬいぐるみより何故か「超合金」を欲しがったあたくしですから。。
ロボットアニメにはわりと馴染みがあるんで何気なく再生したんです
が
15:27から始まる主人公・竜崎一矢のロボット搭乗シーンのクセが強すぎてもう何度見返したかわかりません
※ぜひ15分過ぎから見てください↓
普通、ロボットに乗るときってハッチが開いてそのままコックピットに座る姿を想像するんですが、
ダイモスの搭乗プロセスはそんな想像の斜め上をいく複雑なステップを踏んでいくのです
ロボットアニメあるあるではあるのですが、
そのあまりの工程の多さに開いたマウスが塞がりません。
絵面の勢いに乗せられて
「この搭乗プロセスは絶対に必要なんだ!!」
と強制的に納得させらそうになるんですが・・
ひとつ素朴な疑問が湧いてきます
「最初からトランザーに乗っとけばええんちゃうの('A`)?」
※トランザー:ロボに変形する巨大トレーラー
わざわざ別の車両に乗り込んで遠回りして、トレーラーに合流しなおかつ内部で乗り換えの手間を発生させるメリットがどこにあるんでしょうか。
しかもトライパー(スーパーカーみたいなん)はトレーラーに乗り込んだら用済みです。ただのお荷物です。
無駄に敏感なわたしにはトライパーの存在意義がぜんぜん理解できません。
そしていつもどおりの既視感です。
「あれ……?なんか似た光景、職場で見た気がするなあ」
一見すると笑えてしまう「ダイモスの超・面倒な搭乗シーン」
実は、私たちが日々「これ意味あんの?」と思いながら黙ってやってる「職場のあの手続き」そのものだなあと思ったんです。
ダイモスの搭乗はなぜこんなに面倒なのか
職場のあの手続きの面倒さを説明するには、ダイモスの搭乗シーンの詳しい説明は避けて通れません。
とか言いながら誰かに言いたくてたまんないだけではあるんですが、そこは何卒ご容赦くさい('A`)
そんじゃ『闘将ダイモス』の搭乗シーンがいかに無駄…じゃなくて緻密なのか、順に追って丁寧に見てみましょう。
ステップ1:トライパーに搭乗
一矢が「トライパー」という赤いスポーツカーのような車両に乗り込みます。基地の地下通路をトライパーで疾走する一矢。ヒーローの出撃ですから、格好いい車は必須です。
ステップ2:トランザー、ゴー!
基地を出ると、一矢が車内で「トランザー、ゴー!」 と叫びます。今でいう音声指示ですね!時代を先取りしています。
すると別の場所にいるトランザーのエンジンに火が入り、巨大ロボに変形前の「トランザー」が発進します。ここで最初からトランザーに乗っておけばいいのにというツッコミは禁句です。
ステップ3:ジャスティーン!
トライパーが疾走する道の脇から爆走するトランザーが割り込み、前方を走る形になります。道路交通法は完全無視です。
このタイミングで一矢が「ジャスティーン!」と叫ぶと、前方を爆走する巨大トレーラーの後方の扉から車ごと突入します。
動いているトレーラーに後ろから車で飛び込む時点で、かなりのテクニックを要求されていますが、そこはジャスティーンの魔法でどうにかなってるんでしょう。
ステップ4:ダイモス、バトルターン!
トライパーがトランザーの内部に無事格納されると、スポーツカーのルーフ(天井)がガバッと開き、座席が前方へ勢いよく射出されます。
ええ〜〜〜('A`;)!?
トライパーはまさかのここで用済みです
射出された座席は、トランザーの内部を通ってコクピットへと運ばれます。コクピットにたどり着き身体を緊縛…ではなく固定された一矢が「ダイモス、バトルターン!」と叫ぶと、トレーラーがダイモスに変形していくのです。。
トライパーがコアファイター(某地球連邦軍の小型戦闘機)のような役割を果たして、そのままロボットの中核に変形合体するのかと思いきや、まさかの用済みです。
贅沢にガソリンを使って爆走してきた真っ赤なスポーツカーは、ただ座席を射出するためだけの「動く発射台」に過ぎなかったという‥
ハイテクな変形メカに内蔵された「座席を物理的に射出する」というローテクな原始的アプローチのギャップ。
昭和のびっくり箱スタイルとでも言ったらいいんでしょうか。自分の語彙のなさが残念でなりません。
そして、ダイモスが発進してから戦闘体勢になるまで2分43秒かかっています。
カップ麺が出来上がるにはちょっとはやいです。
空気を読んで、攻撃を自粛する敵も優しさに満ち溢れていますね。
▶一矢は玩具メーカーの優秀な営業マン!?
ところで、なぜダイモス搭乗シーンはこんなに超・面倒な工程が多いのでしょうか?
もし一矢の目的が「1秒でも早く現場に駆けつけ、敵のロボットを倒すこと」だけなら、こんな面倒な変形ステップを踏むのはどう考えても非効率です。
最初からトランザーに乗っていれば済む話で('A`)
でも、「現場の一矢」から一歩引いて、「スポンサー(玩具メーカー)」に視点を変えてみると、見え方が180度ひっくり返ります。
スポンサーの絶対命題は「敵を倒すこと」ではなく
「子供たちに玩具を売ること」です。
その目的を達成するために、番組には「絶対に外せないノルマ」が課せられることになります(たぶん)。
格好いいスポーツカー(トライパー)を見せたい
超巨大なトレーラー(トランザー)を見せたい
車がトレーラーに飛び込むギミックも見せたい
座席が射出されてコクピットになる変形プロセスも見せたい
もちろん完成形のロボットも見せる
これらをすべて網羅しようとした結果、あの無駄の結晶とも言える(ごめんなさい)複雑な搭乗シーンが完成したのです(たぶん)。
あの約2:43秒の搭乗シーンは、スポンサーが売りたい商品の魅力をこれでもかと詰め込んだ、極めて濃密な「商品説明(プレゼンテーション)」だったのです(たぶん)。
一矢は命をかけて戦うダイモス搭乗員というだけでなく、出撃のたびにスポンサーの意向を完璧に汲み取り、商品のギミックを過不足なくアピールする、極めて優秀な「営業マン」でもあるのです。
一矢は、スポンサーという「受益者」のために、あの面倒な工程をきっちりとこなしていたのです。
ダイモスと同じ「職場のあの手続き」
「最初からトランザーに乗ればいいのに、なんでわざわざ別の車で遠回りするねん」
と笑っていた私ですが
職場にも「それ、最初からトランザーに乗ればよくない?」と似たようなシーンがあるんですよね
例えば・・・
▶輪廻する申請書
申請書類の作成だと、
PCで書類を作る
↓
わざわざ紙に印刷する
↓
上司のハンコ(押印)もらう
↓
押印した紙を複合機でスキャンする
↓
PDF化する
↓
メールに添付して送信
最終的なゴールは
「判ついた申請書類をメールで送ること」。
ハンコさえいらなければ、パソコン上で作成したデータをそのままPDFで書き出して、メールに添付すれば終わる話です。
でも「ハンコ」のためになぜか一度「紙」にして、
わざわざスキャンという工程を経て、PDF化(デジタル化)しているのです。
「デジタル ➔ アナログ(紙) ➔ デジタル」という輪廻
これって、焼いたハンバーグをバラバラにほぐして、もう一度こね直して焼くみたいな、氷を一回溶かして、もう一回凍らせるみたいな、穴掘って埋めてまた掘るみたいな、
そんな意味のないことをしている気分にはなりやしませんか('A`)
▶稟議書という名のスタンプラリー
金額や重要度が高くなればなるほど、ズラリと人が並ぶことになります。
稟議書完成
↓
印刷
↓
係長押印
↓
課長押印
↓
部長押印
↓
本部長押印
↓
常務押印
↓
社長押印(決裁)
各駅停車の電車並みに細かく刻んでくる、気の遠くなるようなスタンプラリーです。
金額や重要度が上がれば上がるほど「登場人物」が増えていきます。
まるで勢力とキャラが多すぎてパニックになる漫画『キングダム』です笑
秦の国だけでも膨大な数の将軍や兵がいるのに、敵国の武将も次から次へと登場して、そのうち名前と顔が一致しなくなるあれです
現場としては、
「もう間いらないから社長が最初から直接ハンコ押してくれ」
と言いたくもなりますが、組織の統制を守るためには、この全員の安心を1つずつ集めるスタンプラリーがどうしても必要になります('A`)
▶メールのCC全員集合
ほかにも「ダイモス案件」は社内に溢れています。
名付けて「CC全員集合」
取引先のAさんにメールで連絡を入れるだけなのに、
Aさんに連絡
↓
社内ルールなので課長をCCに入れる
↓
社内ルールなので部長もCCに入れる
↓
社内ルールなので案件メンバーもCCに入れる
↓
社内ルールなので関係部署の担当者もCCに入れる
↓
CCのメンバーが軽く10人を超えている
ただの連絡メールひとつが、組織のオールスター感謝祭のような大所帯になっていきます。
('A`)<これ全員読んでないっしょ?
って毎回思いながらCCにどんどん追加するんです
「この人と、この人と、この人と・・・関係ない人は入ってないよな、・・・(目視で確認中)うん大丈夫、たぶん大丈夫、送信・・(ポチ)」
従業員は日々、現場で敵(仕事)を倒したい(片付けたい)だけなんです。
なのに、無駄にしか思えない謎の面倒なフローが令和のオフィスにも残り続けてるんです('A`)
職場の無駄な工程は何故なくならないのか
なぜ、私たちは「無駄な工程」を繰り返してしまうのでしょうか。
現場の人間がみんな無能だからでしょうか。
効率化のセンスが欠如しているからでしょうか。
絶対に違います。
これにはもっと根深い、組織の構造的な理由があります。
結論から言えば、無駄に見える工程には、必ずそれを必要としている『受益者』がいるからです。
一見すると誰の得にもなっていないように思える面倒な手続きも、視点を変えて「誰のために存在しているのか」を考えてみると、すべての謎がクリアになります(たぶん)。
①わざわざ紙に印刷して行う「押印」
現場にとっては手間以外の何物でもありません。でも、これを経ることで「総務部門や決裁者」が安心します。
②何段階もの「承認ステップ」
意思決定が遅れる原因になります。でも、スタンプラリーのようにハンコが並ぶことで「管理職」が自分の責任範囲を確認し、安心する。
③人多杉「CCメール」
関係ないメールが飛んでくる側は迷惑です。しかし、全員を巻き込んでおくことで、「送信者」が『私はちゃんと共有しましたよ』という免罪符を得て、安心します。
④何重もの「監査ログやチェックシート」
書く方は毎回うんざりしてます。でも、これがあるおかげで万が一の時に「監査部門やコンプライアンス担当」が安心します。
▶受益者は誰か?「現場のスピード」と「組織の安心」のズレ
現場の担当者からすれば
「メール一本送るのに、なんでいちいち関係者全員の承認が必要なんだ」
「チャットで済む話を、なぜ会議にするんだ」
と不満がたまるのも当然です。
現場の目的(ミッション)は、目の前の仕事という敵を「1秒でも早く倒すこと」だからです。
でも、組織という巨大なシステムを維持する管理側から見れば、話は別です。
「もし担当者が独断で送ったメールに重大なコンプライアンス違反があったら?」
「もし後から『聞いていない』と梯子を外す役員が現れたら?」
そんなリスクを徹底的に潰すため、彼らはあえてスピードを犠牲にし、何重ものチェック機能を組み込みます。
現場が「無駄だ、非効率だ」と叫ぶ工程も、組織にとっては「安心を買うためのコスト」なのです。。
現場の目的 = 目の前の仕事を早く終わらせること
組織(上層部・管理部門)の目的 = 責任管理、統制、監査、リスク回避
どんなに非効率に見えるものであっても、その工程が生き残っているということは、そこから何らかの利益(=安心や統制)を受け取っている「受益者」が、組織の中に必ず存在しています。
これが職場の無駄の「正体」と言っていいでしょう。
立場の違いによる「目的のズレ」があるからこそ、どれだけテクノロジーが進化し、効率的なツールが登場しても、残念ながら職場から「無駄な工程」がゼロになることは、たぶん永久にないのです…
まとめる気のないまとめ
大人になってから改めてロボットアニメを見返すと結構おもしろいもんで、ツッコミ祭が止まりません。
昭和のロボットアニメを真剣に突っ込みだすと人生が終わってしまうのでほどほどにしたいところですが、
ダイモス第一話の例のシーンは何度も繰り返し再生してしまう「理屈抜きで引きずり込まれる中毒性」があります。
みなさんも是非見てみて、職場の無駄を思い出してみてください。
ダイモスのあの複雑な搭乗シーンは、決して無駄なものではなく、ある意味無駄の美学を結集したような、ある意味究極の無駄オブ無駄の完成形の一つといえるでしょう。ちょっと何言ってるかよくわかりません。
結局何が言いたいかっていうと、
無駄を無駄として愛する心を持つといいですよ。
あ うそです。
デジタル→紙→デジタルのナンセンス、
CCにあの人もこの人も入れる不毛さ、
やたらと時間のかかる長旅のようなスタンプラリー、
全部を飲み込んで受け流したとき・・・
立派な社畜が完成するのです
そんじゃ、バイナラ👋
こんなゆるい記事もよろしくどうぞ👇️
ちゃんと真面目な記事も書いております👇️
いいなと思ったら応援しよう!
チップをいただけると、積読がさらに増えます。
その本を読んで、また変な記事を書きます!!