年間ベストアルバムを思い出してみる(00年代編)
90年代に比べると買ったCDは少ないかなという印象です。かわりというか、コンサートにはかなり行きました。円高でしたし、レジェンド級の来日が相次いでましたね。そしてこの年代はなぜかグラミー受賞作が多いです。もちろんノミネート前から好きだったものばかりですが、こんな時代は他にはありませんでした。
2000 Sunny Day Real Estate - The Rising Tide
ColdplayやLinkin Parkがデビューした年、ロックの主役交代が見えてきましたね。
Sunny Day Real Estateが解散と再結成を繰り返した後の4thアルバムは、元祖エモのスタイルから大きく変わり、スケールの大きなヘヴィ・ロックとプログレが合体したようなサウンドに大変身しました。時折挟まれるポップな曲とのコントラストも好みです。このアルバムが好きだというと必ずMuseが好きだと思われますが、すみません違います。
次点は80年代で登場した’Til TuesdayのヴォーカリストAimee MannのBachelor No.2 Or, The Last Remains Of The Dodo。
2001 Shakira - Laundry Service
Alicia KeysとThe Strokesのデビューがこの年でした。新世紀の始まりです。
サマソニに出る出ないで話題のShakiraの初英語アルバム。90年代からのファンでしたが、英米チャートでの成功は本当に時代の変わり目を感じました。正直彼女のベストアルバムとは全然思えないですがそんなことはどうでも良い。コロンビアのスターが英語圏で通用するという、後のJ. BalvinやKarol Gを成功に導き、スーパーボウルのハーフタイムショー出演の際にはBad Bunnyもゲストで登場、今週〜来週の彼の無双状態はここから始まったといっても良いくらいです。
次点はToolのLatelarus。このアルバムで初来日が実現し、謎に包まれていた姿を皆が目撃することになりました。
2002 The Chicks - Home
ちょっと長いです。
今週のグラミー賞授賞式、いろいろ話題になりました。Bad BunnyやBillie Eilish、Olivia Deanのスピーチが胸を打ちましたが、今から20年以上前の出来事を覚えているでしょうか。
当時Dixie Chicksという名で活動していた彼女たちが、イラク空爆を主導した当時のブッシュ(子)大統領 を非難。すると保守層を中心に壮絶なバッシングが始まります。そしてブッシュ大統領の息のかかったラジオ曲は一斉にエアプレイを引き上げ、彼女たちの曲はチャートから姿を消しました。ちょうどチャートに入っていたのがこのTravelling Soldier(全米27位)ですが、反戦というより厭戦。ある慰問兵が後に戦死者リストに名前が載ってしまう経緯が、彼と出会った1人の少女の視点から描かれます。泣ける曲ですし戦争で一儲けしようとする人たちには都合が悪い曲ではあったのでしょう。
彼女たちにとってのこの(メジャーデビュー後の)3rdアルバムは、本来原点であるブルーグラスに回帰したものでした。ドラムを入れずメンバーのギター・フィドル・マンドリンを中心にした編成。カントリーのレジェンドたちに敬意を払う一方でポップ化した現代のカントリー・シーンに対する批判でもありました。もともと火種はあったのかもしれません。しかしエアプレイから干されただけでは攻撃は止まず、CDをこれみよがしにブルドーザーで破壊するとか、さらにはメンバーへの殺害予告まで飛び出します。
同じミュージシャン仲間のBruce SpringsteenやEddie Vedder (Pearl Jam)
らのサポートでツアーなどは順調に行うことができましたが、当時は彼女たちのアーティスト生命が絶たれるのではとかなり心配していたのを思い出します。ただ、当のブッシュ大統領は彼女たちの言動に対しては、言論は自由でありそれを許容するアメリカが素晴らしいなどとコメントしていました。白々しい感じもしますが、それでも今より数段ましでしたね。まあブッシュ氏は今の大統領には同じ共和党員としても反対の立場ですが。
その後の彼女たちの逆襲はよく知られるところです。次作Taking A Long Wayはグラミー主要部門を独占し、シングルNot Ready To Make Niceのメッセージは当時日本のお茶の間でも紹介されました。
アルバムHomeに話を戻すと、前作Flyに続き全米1位、次作も1位ですから3作連続1位。女性グループとしては唯一の記録で、TLCもDestiny's ChildもDanity KaneもBlackpinkも成し遂げていない(すべて2作連続1位)記録です。またFleetwood Macの今ではバイラルヒットで定番となったLandslideは、彼女たちのカバーが初のメジャー・ヒット(全米7位)です。ちなみにオリジナルは77年51位。あのアルバムは世界中の人たちが聴いているのでシングルの順位などどうでも良いのでしょうけど。
音楽業界が声を上げるというのは、当然リスクを伴います。しかし彼女たちの行動にグラミーも応えました。グラミー、というかNARASに関しては人権とか性差別とか内部の問題はあるものの、一定のスタンスはこの後20年以上経っても不変です。今年のBad Bunnyらの決意に至る道は、彼女たちが築いたと言っても良いでしょう。
次点はQueens Of The Stone AgeのSongs For The Deaf。来日公演ではついにMark Laneganを目撃できました。
2003 The White Stripes - Elephant
これはみんな選ぶでしょう。今でもあらゆる場面で使われるこの曲が収録。それにしても初(単独)来日の衝撃が忘れられません。すぐ近くで渋谷陽一さんが楽しんでらっしゃったのも覚えています。これこそ現代のツェッペリンだ、なんて思っていたかも。ギターってこんな弾き方あるんだ!という感じで、Megの淡々としたドラムとの対比が印象的でした。ちなみにJack Whiteのソロはバンド全員上手すぎるのがインパクトを下げているのか、いまいち楽しめていません。
次点はあっと驚くハード・ロックの異形リバイバルThe Darknessのデビュー作Permission To Land。これもライブ楽しかったですね。
2004 Katie Melua - Call Off The Search
KeaneやFranz FerdinandなどUKロックのさまざまなバリエーションが活躍した年でした。
Amy WinehouseやAdeleに先駆けて成功したブリット・スクール出身のジョージア出身Katie Meluaのデビューアルバム。ジャズとポップスの中間を狙った作風は大ヒットしました。この年来日しオーチャードホールの最前列で彼女を観たのは良い思い出です。The Cureのカバーを2曲も演奏したのがサプライズ。Just Like Heavenは割と誰でもカバーするし後に音源化されるのですが、The Lovecatsには驚きました。
こちらはブリット・アワードでのパフォーマンス。Jamie Cullumとのデュエットです。
次点は最後のお騒がせバンド?The Libertinesの2ndアルバム。
2005 Nickel Creek - Why Should The Fire Die?
Arctic Monkeysの鮮烈デビューの年ですね。彼らについては別記事で書いていますのでよろしければこちらを。
Nickel Creekは天才少年少女が組んだブルーグラス・バンド。カントリーやブルーグラスを聴く比率が増えたのもこの年代の特徴です。この3rdアルバムは前述のQOTSAと同じEric Valentineプロデュースで、これまでの超絶技巧プレイに加えインディ・ロック的なノリも感じさせます。視聴機に入っていましたがあえてお店で聴かず買って家で聴こう!と思って急いで帰った覚えがあります。メンバー全員ソロで活躍しているためかこの後のアルバムリリースは断続的ですが、毎回クオリティの高い作品を届けてくれています。
次点はレベル・ミュージックの新星M.I.A.のデビューアルバムArular。
2006 Amy Winehouse - Back To Black
Justin Timberlakeが無双していたのがこの年ですね。
こちらは視聴機で聴いてすぐ買ったもの。まだブレイク前でした。前作はあまり印象に残らなかったのですが、彼女同様ブレイクしたプロデューサーのMark Ronsonの力もあったのでしょう。もし生きていればどんなキャリアを積んでいたのでしょうね。
次点は先ほど書いたThe Chicksのグラミー主要部門独占作Taking The Long Way。
2007 Robert Plant & Alison Krauss - Raising Sand
Beyonce、Gwen、Fergie、Rihannaなどセレブ系シンガーが台頭してきたのがこの頃ですね。
Led Zeppelinの再結成に一番反対していたのがRobert Plantと言われていましたが、こんな素晴らしい活動しているなら当然でしょう。まさかのブルーグラスのスターAlison Kraussとの全曲デュエット・アルバムです。曲はオールディーズからPage & Plantのカバーまで、T Bone Burnettの硬質なサウンドが全体を引き締めます。そしてLed Zeppelinですらかすりもしなかった(新人賞にはノミネート)グラミーのROYとAOYという主要2部門を受賞しました。
次点はJenny Lewisを擁するRilo Kileyのラスト・アルバムUnder The Blacklight。昨年再結成しましたが活動は続けるのでしょうか。
2008 Kings Of Leon - Only By The Night
この年Lady Gagaがデビュー、先日の来日公演など今に至るまで第一線で活躍中です。
デビュー当時は田舎のThe Strokesといった感じでインディ・ロック〜ニュー・ウェイブ色が強かったのですが、アルバムごとにスケール感がアップ。すっかり骨太の王道ロックになりました。とにかく勢いがありましたね。リアルタイムで聴いていた人は、皆彼らの世界制覇(ロック・バンドとしては最後になってしまったかも)を信じていたのではないでしょうか。しかし来日しませんねえ。
次点はMy Morning JacketのEvil Urges。プログレとハートランド・ロックが合体したような変幻自在のサウンドはライブでもしっかり再現されてました。
2009 Wilco - Wilco (The Album)
Animal CollectiveやDirty Projectorsらブルックリン勢が台頭した年ですね。チャートもメディアの年間ランキングでも上位に入るなど一時代を築きました。
オルタナ・カントリーの雄Wilcoのサウンドといえば、前身Uncle Tuperoゆずりのカントリー・ロック、Jim O'Rourke時代の実験的サウンド、そして3rdのSummerteethあたりから覚醒したとびきりポップな楽曲です。このアルバムはポップに振った作風で大ヒット。この曲なんてほぼGeorge Harrisonですね。最近はあまりライブのセットに入らないのが残念です。
次点は先に挙げたNickel Creekの紅一点メンバーでJohn Paul JonesがプロデュースしたSara Watkinsのデビューアルバム。
次回は10年代編です。
