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82歳が働き、ホルムズが揺れる時代――日本を守る力はどこにあるのか


年金だけでは守れない、米軍だけでも守れない――82歳が働く国の現実

新聞一面に見えた、日本という国の試算表

新聞の一面を眺めていると、まったく別々の記事が、実は一つの大きな問いにつながっていることがあります。この日の産経紙面も、まさにそう見えました。片方には、**「定年なし82歳『仕事は面白い』」**という記事。もう片方には、米国とイラン、ホルムズ海峡をめぐる緊張の記事。さらに下には、昭和35年の安保闘争の写真。一見すると、高齢者雇用、中東危機、戦後政治史という別々の話に見えます。
 ところが、税理士の目で読むと、これらはどこかでつながっているように感じます。要するに、問いは一つです。日本を本当に守る力は、どこにあるのでしょうか。

「定年なし」は美談だけでは読めない

82歳で働き、「仕事は面白い」と語る人がいる。これは本当に素晴らしいことです。働くことは、単なる収入の手段ではありません。人とのつながりであり、自分の経験が役に立つ実感であり、社会に参加しているという誇りでもあります。しかし、ここで拍手だけして終わってよいのかというと、少し立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。なぜなら、高齢者が働いている理由には、大きく二つあるように思うからです。
 一つは、健康で、意欲があり、経験を活かしたいから働くという姿です。これは理想的な働き方だと思います。
 もう一つは、年金だけでは足りず、働かざるを得ないから働くという姿です。こちらは、社会全体で考えるべき課題ではないでしょうか。
 同じ「82歳で現役」でも、前者と後者では意味がかなり違ってくるように思います。税理士として中小企業を見ていると、シニア人材は非常に貴重です。経験があります。仕事の勘があります。若い人がまだ知らない現場の知恵を持っています。
 ところが、その待遇は必ずしも十分とはいえない場面もあります。「定年後だから安くてよい」、「年金があるから少しでよい」、**「短時間だから低待遇でよい」という発想が、まだ残っている会社もあるのではないでしょうか。しかし、本当に会社を支えている人であれば、年齢ではなく、貢献に応じた待遇を考える必要があるように思います。
 シニアを「安い労働力」として見る会社と、「知恵の資産」**として見る会社では、将来の組織力に差が出てくるのではないでしょうか。ここに、これからの経営の分かれ目があるように感じます。

女性活躍という言葉も、待遇を見なければ空っぽになりかねません

同じことは、女性活躍にもいえるのではないでしょうか。新聞記事では、女性やシニアの活躍が**「強い社会」を支える要素として描かれています。方向性としては、とても大切だと思います。しかし、これも言葉だけでは足りないように感じます。
 女性活躍といいながら、実際には非正規、短時間、低賃金に偏っていないでしょうか。責任ある仕事を任せているのに、給与や昇進で正当に評価しているでしょうか。育児や介護を理由に、能力のある人を補助的な仕事へ押し込めていないでしょうか。
 会社の会計を見ると、その会社の本音が見えてくることがあります。理念には「人を大切に」と書いてある。しかし、損益計算書を見ると、人件費はただのコスト扱い。教育研修費は削られ、賞与は後回し。利益が出ても、現場に十分還元されていない。こうなると、人はなかなか定着しにくいのではないでしょうか。
 税理士として言えば、人件費は単なる費用ではなく、将来の売上を支える投資でもあります。もちろん、無制限に給料を上げればよいという話ではありません。会社には資金繰りがあります。粗利益があります。固定費の限界があります。だからこそ、毎月の数字を見ながら、いくらまでなら継続的に待遇改善できるのか、どの業務を省力化すれば賃上げ原資を作れるのか、価格転嫁できているのか、利益の出る仕事と出ない仕事を区別できているのかを考える必要があるのではないでしょうか。「人手不足だ」**と嘆くだけでは、なかなか前には進みません。人が残るだけの利益構造を作ることが、これからの経営に求められているのではないかと思います。

安易な外国人労働力頼みは、解決策ではなく先送りになり得るのではないでしょうか

人手不足になると、すぐに出てくるのが外国人労働者の受け入れです。もちろん、外国人材そのものを否定する必要はまったくありません。まじめに働き、日本社会に溶け込み、会社に貢献している人は多くいます。
 問題は、受け入れる側の姿勢ではないでしょうか。「日本人が集まらないから外国人で埋めればよい」、「安い労働力として使えばよい」、**「人手不足の穴を埋める便利な手段だ」という発想で外国人を導入すると、いずれひずみが出てくるように思います。
 欧州の移民問題が教えているのは、単に人を入れれば社会が回るわけではない、ということではないでしょうか。言語、教育、住宅、医療、治安、宗教、地域社会との関係、社会保障、次世代の雇用。これらを整えないまま人だけを受け入れると、労働問題が社会問題へ変わっていく可能性があります。
 会社でいえば、採用だけして教育しないのと同じです。「人を入れました。あとは現場で何とかしてください」**では、なかなかうまくいかないのではないでしょうか。
 国家も同じように思います。外国人材を受け入れるなら、待遇、教育、日本語、生活支援、地域との共生、社会保障への負担と給付の設計まで含めて考える必要がありそうです。そうでなければ、外国人本人にとっても、日本社会にとっても不幸な結果になりかねません。
 税理士の感覚でいえば、これは一時的な資金繰り改善のために、返済計画のない借入を増やすようなものにも見えます。目先は楽になります。しかし、設計がなければ、あとで重くのしかかるのではないでしょうか。
 人手不足対策としてまず必要なのは、国内の労働力を正当に活かすことではないかと思います。シニアを低待遇で使い捨てにしない。女性を補助労働に閉じ込めない。若者に成長できる賃金と教育を用意する。そのうえで、外国人材を対等な働き手として受け入れる。この順番が大切ではないでしょうか。

ホルムズ海峡の緊張は、遠い中東の話ではありません

紙面のもう一方には、米国とイラン、ホルムズ海峡をめぐる緊張が大きく出ています。これは国際政治の記事ですが、中小企業の経営者にとっては、かなり実務的なニュースでもあります。
 ホルムズが揺れれば、エネルギー価格が揺れます。エネルギー価格が揺れれば、ガソリン代、電気代、物流費、原材料費が揺れます。そして最後に、会社の損益計算書が揺れることになります。新聞では**「国際情勢」と書かれます。しかし、会社の帳簿では、水道光熱費の増加、運賃の増加、仕入単価の上昇、粗利益率の低下、資金繰りの悪化として現れてくるのではないでしょうか。ここが、税理士としての読み方になるように思います。世界の危機は、数か月遅れて試算表に出てくることがあります。
 だから、経営者はニュースを「へえ、大変だな」**で終わらせない方がよいのではないでしょうか。原油が上がったら、自社のどの費用が上がるのか。価格転嫁できる契約になっているのか。在庫を持ちすぎていないか。借入金の返済予定は大丈夫か。運転資金は月商何か月分あるのか。このように考えておく必要がありそうです。国際ニュースを読んで、自社の資金繰り表を見直す。これもまた、経営者の大切な読み方ではないでしょうか。

アメリカ依存の国防で、本当に良いのでしょうか

さらに、この紙面で重いのは、安保闘争の写真です。昭和35年、日本は安全保障をめぐって大きく揺れました。そして今も、同じ問いは残っているように思います。**日本の安全保障は、アメリカに依存したままでよいのでしょうか。もちろん、日米同盟は日本の安全保障にとって重要です。現実の国際政治を考えれば、これを軽視することはできません。
 しかし、「アメリカが守ってくれるから大丈夫」という発想だけでは、少し心もとないのではないでしょうか。経営でいえば、主要取引先一社に売上の大半を依存している会社と同じようにも見えます。その取引先が方針を変えたらどうするのか。条件を変えられたらどうするのか。いざという時、本当に助けてくれるのか。
 税理士であれば、売上の一社依存はリスクだと考えます。ならば、安全保障の一国依存についても、リスク管理の視点で考える必要があるのではないでしょうか。これは感情論ではなく、リスク管理の話だと思います。保険も同じです。会社が火災保険や生命保険に入るのは、「きっと大丈夫」と信じていないからではなく、万一に備えるためです。国家も同じではないでしょうか。平和を願うことと、備えを持つことは矛盾しないように思います。むしろ、備えのない平和論は、経営でいえば資金繰り表のない楽観経営に近いのかもしれません。「なんとかなるでしょう」**という言葉だけでは、会社も国も守りにくいのではないでしょうか。

国を守るとは、軍事だけではないはずです

ただし、国防を軍事だけに狭めるのも違うように思います。本当に国を守る力とは、もっと広いものではないでしょうか。エネルギーを確保する力。食料を確保する力。働く人を育てる力。高齢者が無理なく働ける仕組み。女性が正当に評価される職場。若者が将来に希望を持てる賃金。外国人材を受け入れるなら、対等に共生できる制度。そして、中小企業が倒れずに地域経済を支える力。これら全部が、国を守る力につながっているように思います。ミサイルだけで国は守りきれません。しかし、きれいごとの福祉だけでも国は守りきれないのではないでしょうか。防衛力、経済力、人口構造、教育、財政、企業経営。それらを全部合わせたものが、本当の意味での国力ではないかと思います。

人手不足対策と資金繰り管理の両輪が必要

では、中小企業は何を考えるべきでしょうか。まず、人手不足を**「採用難」**だけで考えないことではないかと思います。
 採用できないなら、今いる人が辞めない会社にする。シニアが働きやすい仕事の切り分けをする。女性が働き続けられる勤務体系にする。業務を標準化し、属人化を減らす。クラウド会計、給与システム、販売管理、AIを活用し、事務作業を減らす。そして、待遇改善の原資を作るために、粗利益を管理する。こうした地道な取り組みが必要になってくるのではないでしょうか。
 次に、海外リスクへの備えです。原油価格、為替、金利、物流費、原材料費。これらは会社の外で決まります。しかし、影響を受けるのは会社の中です。だから、月次決算、試算表、資金繰り表、変動損益計算書が大切になるのではないでしょうか。どの商品が利益を出しているのか。どの取引が赤字なのか。固定費はいくらまで耐えられるのか。借入返済後に現金が残るのか。
 これを見ずに経営するのは、地図を持たずに荒れた海へ出るようなものかもしれません。ホルムズが揺れる時代には、会社の資金繰りも揺れます。だからこそ、毎月の数字を見る経営が、ますます必要になっているのではないでしょうか。

「安い人手」で国は強くならない

ここで、いちばん大事なことがあります。日本はこれまで、どこかで**「安い人手」**に頼ってきた面があるのではないでしょうか。パートだから安くてよい。高齢者だから安くてよい。女性だから補助的でよい。外国人だから安くてよい。しかし、この考え方では、国も会社も本当には強くなりにくいように思います。安く使う発想は、短期的には利益を出すかもしれません。しかし、長期的には人を疲弊させ、技術を失わせ、会社への信頼を失わせることになりかねません。
 税務でも同じです。目先の節税ばかり考えて、会社の財務体質を悪くする経営があります。一時的には税金が減ったように見えます。しかし、現金が残らない。自己資本が厚くならない。金融機関からの信用も高まらない。それでは本末転倒ではないでしょうか。
 人件費も同じです。人件費を削って利益を出したように見えても、人が辞め、技術が途切れ、顧客対応が落ちれば、会社は弱くなってしまいます。人を安く使う会社ではなく、人が力を発揮して利益を生む会社に変える。これが、これからの経営に求められる考え方ではないかと思います。

新聞一面が映した、日本の本当の不安

この新聞一面が映しているのは、単なる高齢者雇用の話でも、中東危機の話でもないように思います。本当の不安は、もっと深いところにあるのではないでしょうか。日本は、若い労働力が減っていきます。シニアと女性の力なしには社会が回りにくくなっています。しかし、その待遇はまだ十分とはいえない面があります。外国人材に頼ろうとしても、制度設計を誤れば欧州型の移民問題に近い課題を抱える可能性があります。エネルギーは海外情勢に左右されます。国防はアメリカへの依存が大きいままです。中小企業は、人手不足、原価上昇、資金繰りに同時に向き合わなければなりません。つまり、日本の不安は一つではないのではないでしょうか。人口の不安、経済の不安、エネルギーの不安、安全保障の不安が、同時に押し寄せているように感じます。だからこそ、必要なのは現実を見る力ではないかと思います。気合いだけでは人手不足は解決しにくい。美談だけでは高齢者雇用は続きにくい。標語だけでは女性活躍は進みにくい。安易な外国人導入だけでは社会は安定しにくい。アメリカ任せだけでは国は守りにくい。そして、どんぶり勘定では会社も守りにくいのではないでしょうか。

結論――日本を守る力は、現場と数字の中にある

これからの日本に必要なのは、若者だけに頼る社会ではないように思います。シニアも、女性も、若者も、外国人材も、それぞれが正当に評価され、無理なく働ける社会が必要ではないでしょうか。そして、海外の危機がすぐに日本経済へ波及する時代だからこそ、企業は人手不足対策と資金繰り管理を同時に進める必要があるように思います。新聞一面は、その二つの現実を静かに映しているように感じます。82歳が働く社会は、希望にもなります。しかし、待遇を誤れば、単なる老後不安の裏返しにもなりかねません。外国人材は力になります。しかし、安い労働力として扱えば、将来の社会不安につながる可能性もあります。日米同盟は重要です。しかし、アメリカ依存だけで安心するのは、経営でいえば一社依存の危うさに似ているのではないでしょうか。
 税理士として思うのは、国も会社も、最後は同じだということです。人を大切にしているか。数字を見ているか。リスクに備えているか。目先の利益ではなく、長く続く仕組みを作っているか。日本を守る力は、遠いところにだけあるのではないように思います。それは、現場で働く人の待遇の中にあります。毎月の試算表の中にあります。資金繰り表の中にあります。
 会社が人を育て、利益を出し、税金を納め、地域を支える力の中にあります。国防とは、ミサイルだけの話ではないのではないでしょうか。国を守るとは、人を守り、会社を守り、地域を守り、数字で未来を設計することでもあるように思います。その意味で、この新聞一面はこう語っているように見えます。**日本を守れるか。**その答えは、国会だけでなく、会社の現場と帳簿の中にもあるのではないでしょうか。


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