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【連載 第3回】「オンライン木鶏会」が教えてくれた支える力〜世話人の実体験から学ぶ「徳」の仕事〜

AIというテクノロジーに触れながら働く日々の中で、私にとって大切な学びの場があります。
それが、月に一度開催される月刊誌『致知』読者による読書会「オンライン木鶏会」です。

私はこの木鶏会で「世話人(ファシリテーター)」を務めています。
この世話人という役割には、世間一般で言われるようなリーダーシップや派手な演出はありません。
しかし、参加者の言葉を引き出し、場をあたたかく保つために、日常的な気配りと見えない働きかけが求められます。

この「支える」という行為が、私のキャリア観、そして「人としての仕事」を大きく変えました。

世話人の仕事は「場の安心」をつくること

木鶏会では、毎月届く月刊誌『致知』の中から選ばれた記事を読んだ上で、それぞれが感想を持ち寄ります。
毎回共通しているテーマは「人間学」。つまり、人としてどう生きるかを学ぶ場です。

そこに集う人々は、年齢も職業も価値観も異なります。
だからこそ大切なのは、安心して話せる空気づくりです。

私が司会を務めた時に最初に心がけたのは、話すことが苦手な人でも、何かひと言は言えるような雰囲気をつくること。
アイスブレイクが得意な人に前に出てもらい、初参加で緊張している人にお声がけしてリラックスしてもらったり、リアクションを丁寧に、時に面白おかしく返したり。
ちょっとした配慮の積み重ねがあるからこそ、場の温度が少しずつ高まっていきます。

こうした場を支える力は、AIでは代替できない、人間ならではの感覚ではないでしょうか。

支える仕事は結果ではなく「プロセス」を整える

AIは、目的を最短で達成するための強力なパートナーです。
しかし、私たち人間は「プロセスを大切にする存在」だと思っています。

たとえば木鶏会では、参加者の発表内容を「美点凝視(びてんぎょうし)※」の視点でじっくりと聞き、発表後にその人の発表のどんな所が良かったかを仲間達とともにシェアします。

※「美点凝視」:相手の長所や良いところを意識的に注視し、それを相手に伝えて励ますこと

これは、教育やキャリア支援の現場でもまったく同じです。
「何を言うか」ではなく、「どう受け止めるか」。
そこに、人と人の信頼が生まれる。

この「受け止める力」は、AIはまだまだ不十分だと私自身感じています。
だからこそ、AI時代には「支える力」がわれわれ人間に求められるのだと思っています。

「目に見えない仕事」こそキャリアの本質になる

かつて私は、「キャリアとは『目立つ成果』を出すこと」だと思っていました。

結果、実績、成果、答え…

でも、木鶏会の世話人を続ける中で、見えないところで誰かを支えることが、実は一番信頼される行動なのだと気づきました。

先回りしてシミュレーションしておく。
綿密な事前準備を行ない、開催案内のメールを送る。
あらかじめ資料を読み込んでおく。
誰よりも早く会場に到着する。(←意外と結構大事です)
欠席者に「大丈夫でしたか?」と一言連絡を入れる。

どれも社会人としては当たり前の内容ではありますが、
基本が全てできている人はどれだけいるでしょうか。

こうした小さな行動の積み重ねが「信頼の種」となり、少しずつ自分の立ち位置や働き方の幅を広げてくれたのです。

今では、この「支える力」が仕事のあらゆる場面で活きています。
生成AIを使った資料作成にも、受講生支援にも、コミュニティの調整役にも。

「支える」とは、見返りを求めず、ただその人や場のために尽くすこと。
でも、それこそが「信頼」という最大の報酬になる。
私はそう信じています。

支えるとは「徳」を実践すること

木鶏会ではよく、「徳を積む」という言葉が出てきます。
これは道徳の話ではなく、日々の在り方の話です。

誰かのために少し先回りして動くこと。
誰かの小さな変化に気づいて声をかけること。
「ありがとう」を言える人であり続けること。

それらがすべて、支える力としての「徳」につながっていくのだと思います。

そして、AIが加速度的に進化していく今こそ、
AIに置き換えることができない「徳のある人間」という軸を持って働くことが、もっとも大切なキャリア資産になるのではないでしょうか。

お読みいただきありがとうございました。

次回予告
【第4回】「支援者に必要な『見えない仕事』の価値
〜目立たない裏方の仕事がキャリアを変えた話〜」

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