【連載 第4回】支援者に必要な『見えない仕事』の価値〜目立たない裏方の仕事がキャリアを変えた話〜
私たちが普段、何気なく過ごしている職場やコミュニティには、目に見えない「支えの力」が静かに働いています。
会社で言うなら、会議の資料を丁寧に整える人。
参加者が安心して話せるよう、事前に場を整える人。
誰かの遅れを責めることなく、自然にフォローに回る人。
そうした「目立たない仕事」を担う存在がいることで、組織やチームは健やかに機能しているのだと思います。
この「見えない仕事」こそ、これからのAI時代において支援者に最も求められる力のひとつになるのではないでしょうか。
目立たない仕事の価値に気づいた瞬間
私自身、以前は「成果を出すこと」「数字を残すこと」がキャリアの中心だと考えていました。
新卒で入社した会社は、人事評価制度を構築するベンチャー企業。
数値評価、KPI、行動評価、コンピテンシー評価…
今では少なくなったかもしれませんが、会社の規模拡大期ということもあり、
得意先を回り、空いた時間でテレアポをして飛び込み営業する日々。
(人見知りな自分からすると、当時よくそんなことができたと思います。)
花形の営業という仕事が合わなさ過ぎて、会社での売上成績は毎月ビリ。
身も心も疲弊し、このまま続けることはできないと感じ、
その会社を離れることになりました。
その後、営業以外の職種も見てみたいということもあり、
20代は会社員として、ベンチャー企業や老舗企業、中小企業、業界団体など、
複数の業界で幅広い職種(人事・採用・総務・営業・事務・技術・企画広報)を経験してきました。
(ちなみに、昔からお金の管理は苦手で、
なぜか経理の経験だけはありませんでした…笑)
気がつけば、転職活動で使う職務経歴書は、まっくろくろすけ。
20代で7回の転職活動を重ねているわけですから。
その後30代を迎え、知人の勧めもあってフリーランスになり、
人一倍複数の業界や職種を経験しているからこそ、
会社の裏方でいろいろな職種のスタッフを支えることができるのではないか?
そう感じるようになり、「支援者」としての仕事に興味を持つようになりました。
現在は、月に一度開催されるオンライン読書会「木鶏会」で、私は「世話人」として裏方の進行や雰囲気づくりを担当しています。
この仕事に派手さはありません。
でも、参加者の心がほぐれる空気を作り、安心して声を出せる雰囲気を育てる。
そのために、開催前に記事を読み込んだり、参加者にメールやメッセージを送ってひと言声をかけて安心させたり。
小さな準備を重ねる日々があります。
そして、その積み重ねの先に「また来たい」「この会があるから頑張れる」といった言葉が返ってきた時、私は静かに、でも深く報われたような気持ちになります。
AI時代における「信頼の源泉」とは?
今、私たちはAIと共に働く時代を迎えています。
ChatGPTなどの生成AIに資料作成を依頼すれば、整ったアウトラインがすぐに手に入り、日程調整は自動で済ませることができます。
しかし、だからこそ重要になるのが「人の心を整える力」や「信頼を築く力」ではないかと思います。
それはAIにはできない、人間にしかできない「気づき」と「先回り」の力。
たとえば、会議前に「今日はちょっと元気なさそうですね、大丈夫ですか?」と声をかけること。
誰かがうまく話せなかった後に、「あの視点、とても大事だと思いました」とフォローすること。
そうした「徳の実践」は、数値化できないけれど、信頼という形で必ず返ってくるものです。
支えるとは「誠実さ」の積み重ね
「支える」という行為は、決して特別なスキルを必要とするわけではありません。
ただ、目の前の人や場に対して、少し丁寧に、少し誠実に関わること。
それが積み重なった時、周囲からの信頼は「この人に任せたい」「この人と一緒に働きたい」という形で現れてきます。
まさに、キャリアの本質が「信頼」という土台に移りつつある今、「見えない仕事」を大切にする姿勢こそが、支援者としての生き方なのだと思います。
私たちは、誰かを引っ張る「主役」でなくてもいい。
舞台裏で舞台を支えるスタッフのように、
人の背中をそっと押せる「伴走者」であることにこそ、仕事の誇りがある。
これからも、私は「支える力」で生きていきたいと思います。
