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内装工事業者の本音「職人単価が高くて見積もり上振れ…仕事の選択権が変わった」

今日の乗客は、内装工事業者の上司と部下の2人組。取引先への商談に向かう道中、車内で自然と会話が弾んだ。

上司:「今回の見積で気になる点は?」
部下:「材料費が高くなっていますが、それ以上に職人の単価が高くなってます。やはり、職人が少なく確保が大変です。」
上司:「先方の価格目線には合ってる?」
部下:「先方の目線より大きく上振れしてます。」
上司:「やはりそうなるか。競合他社はどう?」
部下:「うちと同じ様な価格目線だと思います。この金額なら仕事を受けてもいいと言うような、高い見積で、この金額に合意して貰えば仕事を受けるし、無理ならやらないと言うスタンスです。」
上司:「以前なら、他社より如何に安く仕上げるかを念頭に置いていたが、今は仕事の選択権が変わったな。」

別の日の乗客は、墨出し業者(建設現場で基準線を引く作業)の人。
三菱地所の大型プロジェクトに参加中の愚痴が印象的だった。

現場監督の経験値が少なく、指示が不明瞭でやり直しが多い。
次から作業に入る内装工事業者の手を止めないために、深夜作業が増える。
追加請求できないので、やり直しのコストを見積に含む必要がある。

これらの会話は、2026年現在の建設業界のリアルを映し出している。以前は価格競争が激しく「安さ」が勝負だったのに、今は職人不足で「選べる側」に変わったという。現場監督の経験不足が下請けの負担を増大させる構図も、まさに業界の課題だ。

内装工事業者・墨出し業者の会話から見える建設業界の問題点

会話のエビデンスとして、内装工事や墨出し作業は建設の下請け業務で、職人不足が深刻。
国土交通省のデータでは、建設就業者はピーク時(2001年)から約3割減少し、2026年現在で約500万人。
2040年までに87万人不足が予測されている。
高齢化が進み(60歳以上が26%)、熟練工の引退が相次ぐ一方、若手入職者が少ないのが原因だ。

以下は、建設業就業者数の推移と65歳以上の割合を示すグラフです(2021-2040年の予測含む)。

建設業就業者数の推移と65歳以上の割合(2021-2040年予測)
青棒が就業者数(万人)、赤線が高齢化率(%)を示す
人数減少と高齢化進行が一目瞭然で、建設業界の職人不足を裏付ける
出典: 国土交通省「建設業就業者数の推移と高齢化率」資料(2024年推計に基づく)

人数は減少傾向、高齢化率は上昇しています。

もう一つ、建設業就業者数(万人)と高齢化率の推移グラフです(平成元年から令和5年)。全産業(三角)と建設業(四角)の比較で、建設業の高齢化が顕著です。

建設業の高齢化率の推移(平成2年から令和3年)
黒線が全産業(29歳以下)の割合、三角線が建設業(55歳以上)の割合を示す
高齢化の進行と若手減少が、業界の人手不足を象徴
出典: 国土交通省「建設業就業者数の推移と高齢化率」資料(2024年推計に基づく)

大手ゼネコン(鹿島、大林組、清水、大成、竹中工務店)の動向を見ると、業績は好調だが人手不足が足かせ。

大林組は2026年3月期純利益1700億円で過去最高を見込み、職人年収1000万円を目指すが、下請け確保が難航。
鹿島は茨城の工業高校で採用活動をし、大手5社の初任給は院卒30万円に引き上げ(2024年度から)。

しかし、中小企業では「人手不足で受注断る会社68%」で、離職対策が不十分。監督の経験不足は、現場ミスを増やし、下請けの深夜作業・コスト負担を強いる弊害を生む。

建設業界の社会・経済的役割:インフラ整備と経済循環のハブ

建設業界は、社会インフラ(道路、ビル、住宅)の整備を通じて生活基盤を支える。
雇用面では約500万人を雇用し、GDPの5-10%を貢献。
関連産業(資材・運輸・金融)への波及効果が大きく、経済循環のハブだ。
公共投資は防災・国土強靱化で堅調だが、民間投資はコスト高で停滞。

建設コスト上昇の社会生活への影響

コスト上昇(労務費22.9%アップ、資材29%アップ)はインフレを加速。
社会生活への影響は次の通り。

  • 住宅・施設高騰:家賃・購入費増で家計負担大。

  • インフラ停滞:道路・橋の維持遅れで交通・物流混乱。

  • 経済全体の冷え込み:雇用減(倒産増加)、消費意欲低下。

  • 都市機能低下:開発延期で商業・雇用機会喪失。

結果、悪循環(コスト高→需要減→景気悪化)が起きやすい。
深掘りすると、今はデベロッパー側がリスクを吸収してプロジェクトを進めているが、この状況が長引くと開発案件が少なくなり、建設工事が大きく減少。
そうなれば、建設関連の雇用減少・賃金低下につながる。

さらに、開発延期/断念により小売業界、サービス業界へ波及し、雇用減少。
小売/サービス業停滞で、サプライチェーンの物流事業も仕事減少。

建設経済研究所の予測では、2026年の建設投資額は80.8兆円(前年比5.5%増)だが、物価高影響を除くと横ばい。地域格差も拡大し、投資減少が経済全体の停滞を招く可能性が高い。

米雇用統計(2026年3月6日発表)の雇用9.2万人減少・失業率4.4%上昇は、リセッション懸念を強め、市場リスクオフを招いた。

https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-03-06/TBHCD1T96OSG00

雇用は経済のバロメーターで、弱い数字は消費・投資減を連鎖させる。
日本も同様で、建設雇用動向は経済へ大きな影響を与える。
日本への波及として、ドル安円高が進み輸入資材(鉄鋼など)のコストがさらに上昇、海外投資減少で国内建設需要が縮小するリスクがある。
現在の経済状況は、上向きを見据えつつリセッションリスクを想定した判断が重要

日本のGDP(赤線)と完全失業率(緑線)の推移(1970-2012年)
失業率上昇がGDP成長を抑制する負の相関を示す好例で、オークンの法則を視覚化したもの
雇用悪化が経済全体の停滞を招くメカニズムがわかる

雇用と経済の相関関係を簡単に解説すると、オークンの法則(失業率とGDP成長の負の相関)のように、雇用増加は消費・生産を押し上げ、景気拡大を促す。
一方、雇用減少は失業率上昇→消費減→企業投資縮小の悪循環を生む。
日本でも製造業は景気連動しやすいが、非製造業(建設含む)は人手不足で調整が遅れやすい。

建設コスト上昇の象徴:名鉄百貨店再開発延期

名鉄百貨店本店周辺再開発(総工費5400億円)は、2025年12月にスケジュール未定に変更。
理由は建設費高騰と人手不足で施工業者が入札辞退
閉店は2026年2月28日予定だが、解体先送り。
こうした延期は全国で相次ぎ、2025年上半期の建設業倒産は986件と過去最多ペース。

対比で、三菱地所の「ザ・ランドマーク名古屋栄」(栄駅直結、地上41階・高さ211m)は2026年3月竣工予定。
コンラッドホテル、TOHOシネマズが入るが、現場では監督不足によるやり直しが発生しやすい。

インフレのメカニズム:コストプッシュ型の「外圧」が推進力

この会話の核心は、賃金上昇 → 物価高(インフレ) の連鎖が、需要の伸びではなく外圧による点だ。
インフレには2つの顔がある(前回おさらい)。
詳しくは第1回記事で解説していますので、こちらを参照してください

建設業界の場合、コストプッシュ型 が顕著。
特に今回は人件費にフォーカスすると、公共工事設計労務単価は2021年度比で22.9%アップし、技能職年収1000万円超も珍しくないが、これが外圧(人手不足・高齢化)によるものだ。

タクシー運転手目線で見た「建設業界の変化」

タクシー運転手として、建設業界の変化を日々肌で感じる。名古屋市内各所で大型開発案件が進んでおり、深夜に作業している職人を多く見かける。
その一方で専門職の下請けをしている社長などをよく乗せるが、乗車中常に、職人の確保の電話をかけている。
週末はこれら専門職人が夜遅くに飲んだ帰りを乗せることが多い。

今後の見通しと注意点

  • 見通し
    賃上げ継続(春闘4-5%)で大手ゼネコン業績好調(大林組純利益1700億円予測)。
    建設DX(AI・ドローン・BIM)で生産性向上を目指すが、2026年は人手不足加速で倒産増加(2025年上半期986件)・M&A加速。
    残業規制(2024年問題)の影響が続き、インフレ再燃リスク。

  • 注意点
    DXの弊害(初期費用高・スキル不足・格差拡大)が中小企業を苦しめる。
    監督経験不足は現場混乱を招き、下請け負担増。
    対策として補助金活用・若手育成が必要だが、人口減少下で「人材獲得戦国時代」が続く。

締めの一言

タクシー運転手として毎日いろんな人の話を聞くけど、内装工事業者と墨出し業者の会話は、2026年の建設業界を象徴している気がする。
今は仕事の選択権が変わったな」。
外圧によるインフレが、業界のルールを書き換えている。名鉄百貨店のような延期がさらに増えるかも…。
次回は、どんな裏話が聞こえてくるか。
乗客の皆さん、もしタクシーで乗せてくれたら、あなたの「裏話」も聞かせてください。

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