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タクシーで聞いた経済の裏話 第1回鉄鋼マンの本音「需要減ってるのに売上伸びてる…でも給料は?」

今日の乗客は、サラリーマン風の男性。
名古屋の繁華街である錦から自宅までの送迎の道中、信号待ちで自然と会話が始まった。

お客様:「運転手さん、景気はどう?」
:「あまりいいとは言えないですね。」

お客様:「そうでしょう。私は鉄鋼の素材メーカーだけど、ここ数年、需要は減ってるんだよね。」
:「鉄鋼の素材というと、建築の鉄鋼とかも扱うのですか?」

お客様:「そう。建築が動けば、出荷も伸びるんだけど。」
:「確かに、名古屋市内でも新規の大型ビルなどの着工は見られないですね。」

お客様:「でも売上は前年比で伸びてるんだよね。でも、給料は上がらない。」

この一言で、車内が少し静かになった。鉄鋼業界の現場から漏れた本音は、ニュースの見出しではなかなか伝わらないリアルさがある。

今の日本経済:数字で見る「綱渡り」の実態

お客様の言葉通り、鉄鋼業界は数量(需要・出荷)は低迷しているのに、金額(売上)は何とか伸びている。これは2026年現在の日本経済の縮図でもある。

  • 2025年の粗鋼生産は約8067万トン(前年比4%減)と、半世紀ぶりの低水準。建築・自動車の内需が弱く、中国の安値輸出圧力で市況も厳しい。

  • それでも大手メーカーの売上収益は前年比10%超の増加(日本製鉄の2025年4-12月期で7兆円超)。
理由は円安(1ドル150円前後)による輸出の円建て売上増と、原材料高(鉄鉱石・スクラップ)の価格転嫁が効いているからだ。

  • ただし利益は厳しく、日本製鉄は2026年3月期に純損益700億円赤字へ下方修正。**「売れても儲からない」**状態が続いる。

マクロでは「景気は緩やかに持ち直し」と言われるが、ミクロ(現場)ではコスト高の壁にぶつかっている。

インフレの二つの顔:コストプッシュ vs デマンドプル

お客様の話は、まさに「悪いインフレ」の典型だ。インフレには原因によって「良いもの」と「悪いもの」がある。

今の日本は、コストプッシュ型の影が色濃く残っている。鉄の値段がさらに上がれば、建築費高→着工減→需要さらに低迷…という悪循環が加速しかねない。

タクシー運転手目線で見た「コストプッシュ」の現場

実は、この鉄鋼の話と同じ「コストプッシュ」の波が、私の職場であるタクシー業界にも直撃しています。
2025年10月14日から、名古屋交通圏のタクシー運賃が実質約10%上昇しました。

  • 初乗り距離が100m短くなり(1.011km → 0.91km)、加算運賃が10円アップ(232mごと90円 → 100円)。

  • 全体の増収率は約10.54%。燃料高騰、人件費上昇、配車アプリ手数料、キャッシュレス決済手数料などの供給コストの上昇が主な理由です。

値上げ後、すぐに目立った変化が短距離利用者の減少

  • 飲み帰りや買い物後の「ちょっとだけ乗る」人が減り、徒歩で帰宅したり、メーターが上がる手前で降りる人が増えました。

  • 中長距離(空港・駅間など)はそこまで減っていないですが、地下鉄で最寄駅まで行き、そこからタクシーを使う「節約ルート」が確実に増えています。

これこそコストプッシュインフレの典型。モノやサービスの値段が上がる → 家計が防衛的に消費を抑える → 需要が減る → 景気が冷え込むという悪循環です。
鉄鋼の高値が建築を止めるように、タクシー値上げが街の「ちょっとした移動」を変えているんです。

最後に

タクシー運転手として毎日いろんな人の話を聞くけど、鉄鋼マンのこの一言は、2026年の日本を象徴している気がする。
「売上は伸びてるのに…給料は上がらない」。
春闘の結果、為替、中国の動向次第で少し変わるかもしれない。でも現場の体温は、まだまだ「綱渡り」のままだ。
次回は、どんな裏話が聞けるのか。
乗客の皆さん、もしタクシーで乗せてくれたら、あなたの「裏話」も聞かせてください。

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