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息子と彼女

季節を問わず山を走り回っていた破天荒な息子も、やがて恋をする年齢になった。

※破天荒ぶりはこちらをご覧ください

最初の「彼女」というか、特別なお友達は、ご近所のAちゃんだった。
保育園も同じで、小さい頃は毎日のように近所で一緒に遊んでいた。

微笑ましかったのは、彼らの距離感の変化だ。
幼い頃は互いに「ちゃん」付けで呼び合っていたのに、中学生になったある日、ふと気づけば呼び捨てで呼び合うようになっていた。
幼馴染から男と女へ、関係性が少しずつグラデーションのように変わっていく様子を傍で見守るのは、親としてもどこか気恥ずかしく、おもしろいものだった。

高校生になると、息子は「部活だ」「勉強だ」と理由をつけてはやたらと出かけるようになった。
しかし、どう見てもそのどちらでもない「お出かけ」が含まれている。親の目を盗んで、こっそりデートを重ねていたのだろう。

そんなある日、ついに決定的な証拠が見つかった。

高校時代:ポケットの証拠品と、男の甘え
それは、妻が洗濯をしようと息子の制服をチェックしていた時のこと。
ポケットの中から、コロンと女子生徒の名札が出てきたのだ。

さらに見ると、息子の学ランのボタンが一つなくなっている。卒業式でもないのに、一体どういうシチュエーションでそうなったのか。気になるポイントだらけだったが、野暮なことはすまいと、私たちはあえて問い詰めなかった。

そしてまたある日の洗濯時、今度は学ランの内ポケットから一通の手紙が出てきた。
第一発見者の妻は「さすがに読むのはやめよう」とそっと元の場所に戻していたが……実は私、妻に内緒でこっそり中身を読んでしまった(妻には今も秘密である)。

そこには、いかにも現役高校生らしい、熱烈な愛の言葉が綴られていた。
こんな愚息を好きになってくれてありがとう、と父親として感謝の念が湧く一方で、どうしても一箇所、気になる一文があった。

『「俺のどんなところが好きなん?」って、〇〇くんよく聞いてくるよね(笑)』

息子よ。そんな恥ずかしい質問を何度も彼女にするんじゃない。父親のこちらが顔から火が出るかと思った。

大学時代:アパートの拒絶と、深夜のLINE
やがて息子は大学生になり、一人暮らしを始めた。
すると、私たちが下宿先のアパートを訪問しても、だんだん部屋に入れてくれなくなってきた。見られてはまずい「何か(あるいは誰か)」がいるのだろう。

電話をしても折り返しがないことが増えた。「友達の家に泊まる」と言ってはいるが、一体どこで誰と過ごしているのやら。親としては、とにかく相手に迷惑だけはかけるなよ、と祈るような気持ちだった。

そんなある日の夜、私のスマホが鳴った。
家族LINEではなく、私個人のLINE宛てに、息子からぽつりと一文だけメッセージが届いた。

「彼女にふられた」

あの強靭なメンタルを持つ息子が、わざわざ父親個人にこんな連絡をしてくるなんて。瞬時に、相当落ち込んでいるのだと察した。

「お前には唯一無二の良さがある。その魅力が伝わらなかった相手とは、今回はご縁がなかったと思うしかない」

普段は言わないような熱い言葉で、珍しく一所懸命に励ましのメッセージを送った。
しばらくして、「おう」と短く返信があり、最後に「切り替えるわ」と送られてきた。

少し落ち着いたのを見計らい、念のために確認してみた。
「ママには言わんほうがいいのか?」

すると、即座に返ってきた。
「それで頼む」

普段は母親とやり取りすることの方が多い息子だが、この人生最大のピンチ(失恋)の時だけは、男同士、父親に話を聞いてほしかったのだろうか。

――生意気なくせに、可愛い奴め。

これも一つの試練、男を磨くステップだ。そう思いながら、私は静かにLINEを閉じた。大自然の中で野ぐ〇をしていたあの少年も、こうして一歩ずつ、大人の男になっていく。

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