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息子と山と名言

季節を問わず、私は息子とよく山へ出かけた。
とりわけ冬場は、決まってスキー場へ足を運んだ。

息子のスキー場デビューは、わずか2歳のとき。
当然、2歳児に滑れるわけもない。キッズパークでそり遊びをするのが精一杯だった。当時の私はスキーを楽しめなかったが、息子が楽しそうにはしゃぐ姿を見ているだけで、十分に幸せだった。

しかし、翌年。3歳になったシーズン、私の中に強い気持ちが芽生えた。
「どうしても、自分がスキーを滑りたい!」

そのためには、息子にも滑れるようになってもらわなければ困る。ここから、息子のスキー特訓が始まった。

特訓といっても、知人から譲り受けた超小型の子供用スキー板を履かせ、「さあ!」と雪の上に立たせるだけの荒っぽいものだ。息子はすぐに嫌がり、そりがしたいと泣きべそをかく。一時的にそりでガス抜きをさせたり、お菓子でごまかしたりしながら、なんとか練習を続けた。

親の執念が勝ったのか、息子はいつの間にか一人で滑れるようになっていく。
そんな猛特訓の最中、記念すべき「最初の一言」が飛び出した。

いや、正確には「言葉」ではなく、「モノ」だったのだが――。

3歳:言葉なき「名言」
早々とリフトに乗れるようになったまでは良かったが、山頂に着いた途端、息子が限界を迎えた。

「おなか痛い……出ちゃう……」

下まで降りる時間は到底ない。私は意を決し、コースを外れて人気のない木立の陰へと息子を連れ込んだ。ウエアを脱がせ、お尻を出させ、大自然の中で思い切り解放させてやった。

スキー場での「野外排泄」は、間違いなくレアケースだろう。しかし驚くべきは、大学生になった今でも、息子がこのエピソードを「伝説の武勇伝」として自慢気に人に語ることだ。彼の強靭なメンタルは、このとき雪山で培われたのかもしれない。

4歳:世渡り上手のゴンドラ事件
自由自在に滑れるようになってきた4歳の冬、私たちは少し大きめのスキー場へ遠出した。

そこで乗り込んだゴンドラでの出来事。相乗りになった見ず知らずの大人たちが、小さな息子に気を遣って優しく話しかけてくれた。

「僕、いくつ?」「もう滑れるなんてすごいね!」

温かい空気に包まれる中、ある人が尋ねた。
「今日はお母さんは一緒じゃないの?」

息子は、同乗者の目をまっすぐ見つめて言い放った。

「美容院」

あまりにも直球すぎる回答に、ゴンドラ内は大爆笑。どこへ行っても笑いを取れる男に成長していた。

5歳:人生何周目?の哲学者
5歳になると、私の友人たちも交えてスキーを楽しむようになった。
またしても、舞台はゴンドラの中である。

窓の外を眺めていると、コース外の危険なエリアを無謀に滑り降りていくスノーボーダーたちの姿が見えた。友人たちは眉をひそめ、「危ないなぁ」「マナーがなってないよね」とぼやいていた。

すると、隣にいた息子が静かに口を開いた。

「やってはだめなことをするのが、人間だからね」

友人一同、絶句。お前は一体、人生何周目なんだ。

夏:だまされた男の絶叫
最後に、グリーンシーズンの登山の思い出も紹介したい。
自転車やスキーのようなスピード感がなく、地味な一歩を積み重ねる登山は、子供にとって魅力が伝わりにくいものだ。

案の定、息子は登り始めから「おもしろくない」「暑い」「しんどい」とネガティブワードのオンパレード。私はなんとかモチベーションを保たせようと、「頂上に行ったら、ものすごい、いいものあるぞ!」とワクワク感を煽り続けた。

ようやく辿り着いた山頂。
晴天の中、大人たちは眼下に広がる雄大な景色と素晴らしい眺望に大満足だった。これぞ登山の醍醐味である。

しかし、当の息子にはその感動がミリ単位も伝わっていなかったらしい。
山頂の静寂を切り裂くように、彼は全力で叫んだ。

「お父さんにだまされたーーーーー!!」

息子の怒りの声は、美しい山々にいつまでも木霊(こだま)していた。

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