物流最適化マガジン(第41回)物流は「競争」だけでは維持できなくなった

物流業界では近年、「連携」や「協力」という言葉を耳にする機会が増えた。

共同配送。

中継輸送。

物流シェアリング。

幹線共同化。

以前であれば、どちらかというと理想論として語られていた話題だ。

しかし最近は少し様子が違う。

行政も。

荷主企業も。

物流会社も。

競争だけでは解決できない問題があることを認識し始めている。

なぜだろうか。

物流業界は長い間、競争によって発展してきた。

むしろ競争こそが物流を成長させたと言ってもいい。

それなのに、なぜ今になって協力や連携が語られるのか。

今回はその背景について考えてみたい。


物流は競争によって発展してきた

まず最初に誤解してほしくないことがある。

競争そのものは悪いものではない。

むしろ物流業界は競争によって進化してきた。

より早く。

より安く。

より正確に。

より安全に。

各社が工夫を重ねてきた結果、日本の物流品質は世界的に見ても非常に高い水準になった。

時間通りに届く。

破損が少ない。

誤配送が少ない。

こうした品質は自然に生まれたわけではない。

競争の中で積み上げられてきた成果だ。

もし競争がなければ、

  • 配送品質

  • 配車技術

  • 倉庫管理

  • 情報システム

の発展はもっと遅かっただろう。

だから私は、競争そのものを否定したいわけではない。

むしろ物流をここまで発展させた原動力の一つだったと思っている。


昔は競争で解決できた

なぜ競争が成立していたのか。

それは物流需要の増加と供給力の増加が同時に起きていたからだ。

高度経済成長期。

バブル経済。

その後の経済発展。

荷物は増え続けた。

しかし同時に、

  • 人口も増えた

  • ドライバーも増えた

  • トラックも増えた

  • 倉庫も増えた

つまり需要が増えても供給力も増えていた。

だから競争しても成立した。

荷物が増える。

仕事が増える。

設備投資もできる。

人も採用できる。

物流会社は競争しながら成長できた。

今振り返ると、非常に恵まれた時代だったのかもしれない。


「物流はコスト」という考え方

しかし競争には副作用もあった。

物流は長い間、

「コスト」

として扱われてきた。

もちろん企業経営上、それは間違いではない。

物流費は利益を生まない。

売上を直接増やすわけでもない。

だから企業は物流費削減を目指す。

これは自然な流れだ。

すると何が起きるか。

物流担当者は、

「どれだけ安くできたか」

で評価されるようになる。

運賃交渉。

倉庫費用削減。

在庫圧縮。

配送効率改善。

こうした取り組みが続いていく。

もちろん必要な努力だ。

しかし問題は、その負担を誰が吸収していたかである。


物流会社が吸収し続けた負担

物流業界では長い間、

「無理を飲み込むこと」

が競争力になっていた。

例えば、

急な出荷。

細かい時間指定。

長時間の荷待ち。

少量多頻度配送。

特殊作業。

本来であれば追加コストが発生するような業務でも、

物流会社が調整して対応する。

なぜなら競争があるからだ。

仕事を失いたくない。

顧客を取られたくない。

そうした事情もある。

結果として、

物流現場が負担を吸収する構造が出来上がった。

それが数十年続いた。


荷主もまた競争している

ここで重要なのは、

荷主企業だけを責める話ではないということだ。

荷主企業もまた競争している。

メーカーは価格競争をしている。

小売は価格競争をしている。

EC企業も競争している。

少しでも安く。

少しでも早く。

少しでも便利に。

それを実現しなければ市場で勝てない。

すると当然、

物流への要求も高くなる。

つまり物流問題は、

物流会社だけの問題ではない。

産業全体の競争構造の問題でもある。


消費者も競争を加速させた

さらに近年は消費者も大きな影響を与えている。

インターネット通販の普及だ。

翌日配送。

時間指定。

送料無料。

今では当たり前になっている。

しかし少し考えてみてほしい。

これらは本当に当たり前なのだろうか。

私が物流業界に入った頃でも、

ここまでのサービスは一般的ではなかった。

しかし企業は競争の中でサービスを向上させた。

利用者は便利になった。

その結果、

さらに便利さが求められるようになった。

これは物流会社だけでは止められない流れだった。


最大の変化は人口構造だった

ここまでは何とか回っていた。

競争しながら。

効率化しながら。

現場が努力しながら。

しかし今、決定的に状況が変わった。

人口構造である。

人口減少。

高齢化。

ドライバー不足。

労働力不足。

これまでのように、

人を増やして解決することが難しくなった。

ここが昔との最大の違いだ。

荷物は動き続ける。

しかし運ぶ人が減る。

すると何が起きるか。

競争だけでは解決できなくなる。


2024年問題は原因ではなく結果

物流業界では2024年問題がよく語られる。

しかし私は少し違う見方をしている。

2024年問題が物流危機を作ったのではない。

もともと存在していた問題が、

見えるようになっただけではないかと思う。

長時間労働。

人手不足。

運賃構造。

荷待ち。

こうした問題は昔からあった。

ただ現場が何とか吸収していた。

制度変更によって、

その吸収が難しくなった。

だから表面化した。

そう考えると、

2024年問題は原因というより結果に近い。


物流はインフラに近づいている

ここで一つの疑問が出てくる。

物流は民間企業の事業だ。

それなのに、なぜここまで社会問題になるのか。

それは物流がインフラに近い存在だからだ。

食品。

医薬品。

日用品。

工業製品。

物流が止まれば社会が止まる。

つまり物流には、

競争だけでは説明できない公共性が存在している。

電気。

水道。

道路。

鉄道。

それらと同じように、

物流も社会基盤の一部になっている。


協力は理想論ではない

ここでようやく共同配送の話に戻る。

共同配送。

中継輸送。

物流連携。

これらは決して仲良しごっこではない。

優しさでもない。

ボランティアでもない。

物流を維持するための現実的な選択肢になりつつある。

競争をやめるわけではない。

しかし競争だけでは維持できなくなった。

だから協力が必要になった。

それだけの話なのだと思う。


物流は転換点に立っている

物流業界は長い間、

競争によって成長してきた。

そしてその競争は、多くの価値を生み出した。

しかし人口減少社会では、

競争だけで解決できる問題が少なくなっている。

今後は、

競争する領域と、

協力する領域を分けて考える時代になるのかもしれない。

物流会社同士。

荷主企業同士。

地域同士。

これまで交わらなかったものが、

少しずつつながり始めている。

それは理想論ではない。

物流を残すための現実論なのだと思う。

次回は、

今の物流が抱えるもう一つの問題、

「便利すぎる社会は物流と相性が悪い」

というテーマについて考えてみたい。

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