物流最適化マガジン(第44回)それでも物流は止められない
このシリーズでは、
共同配送。
競争と協力。
便利すぎる社会。
そして物流の二極化について考えてきた。
物流業界に身を置いていると、これらは日々の仕事の中で感じる現実だ。
一方で、物流に携わっていない人にとっては、物流はあまり意識することのない存在かもしれない。
荷物は届く。
店には商品が並ぶ。
欲しい物は手に入る。
それが当たり前だからだ。
しかし、その当たり前を少し掘り下げていくと、一つの問いにたどり着く。
物流とは、いったい何なのだろうか。
今回は、このシリーズの締めくくりとして、その問いについて考えてみたい。
物流が止まるとはどういうことか
「物流が止まる。」
この言葉を聞くと、多くの人はトラックが走らなくなる姿を思い浮かべるかもしれない。
しかし実際には、それだけでは済まない。
スーパーの商品が減る。
コンビニの棚が空になる。
病院へ医薬品が届かない。
工場は部品不足で生産を止める。
ガソリンスタンドへの燃料供給も滞る。
建設現場には資材が届かない。
普段は別々に見えている産業が、一斉に影響を受け始める。
つまり物流とは、一つの業界ではない。
社会全体をつないでいる仕組みなのである。
社会は物流の上に成り立っている
農業が作る。
漁業が獲る。
工場が造る。
それだけでは私たちの生活は成り立たない。
作られたものが運ばれ、必要な場所へ届いて初めて価値になる。
物流は、生産と消費を結ぶ役割を担っている。
製造業も。
医療も。
建設業も。
小売業も。
飲食業も。
物流なしでは成り立たない。
普段は表に出ることが少ないが、物流は社会全体の土台を支えている。
「物流はコスト」という考え方
企業経営では、物流はコストとして扱われる。
これは経営上、間違いではない。
運ぶには人が必要だ。
車両が必要だ。
倉庫も必要だ。
当然、費用が発生する。
だから物流費を適切に管理することは重要である。
しかし社会全体で考えると、物流は単なるコストではない。
物流は商品だけを運んでいるわけではない。
生活を運び、安心を運び、時間を運び、地域をつないでいる。
その価値は決して帳簿だけでは測れない。
だからこそ変わらなければならない
このシリーズでは、物流が抱える様々な課題を取り上げてきた。
共同配送が進まない理由。
小さな共同配送が成立する理由。
競争だけでは維持できなくなった現実。
便利さが物流へ与えた負担。
物流の二極化。
これらは別々の問題ではない。
すべて、
「物流をこれからも維持するにはどうすればいいのか」
という一つの問いにつながっている。
そして、その答えは一人の努力だけでは見つからない。
物流会社だけが頑張れば解決するわけではない。
荷主企業だけでもない。
消費者だけでもない。
社会全体が少しずつ考え方を変えていく必要がある。
競争と協力の時代へ
競争はこれからも必要だ。
競争があったからこそ、日本の物流は世界でも高い品質を実現してきた。
しかし一方で、人口減少や人手不足が進む中では、競争だけでは維持できない場面も増えている。
だから共同配送が議論される。
物流会社同士の連携が始まる。
荷主同士が協力を考える。
競争する領域と、協力する領域。
これからは、その両方を使い分ける時代になるのだと思う。
最後に物流を支えるのは人
AIは進化する。
ロボットも進化する。
自動運転も現実味を帯びてきた。
物流はこれからも大きく変わっていくだろう。
それでも最後に物流を動かすのは、人だと思っている。
道路状況を判断する人。
荷主と相談する人。
荷物を積み付ける人。
現場で判断する人。
技術は支えてくれる。
しかし信頼や約束、人と人とのつながりまでは代替できない。
物流は最新技術を取り入れながらも、とても人間らしい仕事なのである。
このシリーズを振り返って
第一回では、共同配送がなぜ巨大構想ほど進まないのかを考えた。
第二回では、小さな共同配送が地域で成立している理由を見た。
第三回では、競争だけでは物流を維持できなくなった背景を整理した。
第四回では、便利すぎる社会と物流の関係を考えた。
第五回では、物流が二極化し始めている現実について触れた。
そして今回たどり着いた結論は、とてもシンプルである。
物流は社会を支える仕事だということだ。
おわりに
物流は目立たない。
物流は裏方である。
しかし、その裏方が止まった瞬間、社会も止まる。
だから物流を守るということは、物流会社だけを守ることではない。
私たちの暮らしを守ることでもある。
物流は、商品を運ぶ仕事ではない。
人の暮らしをつなぐ仕事である。
そして、その暮らしを未来へつないでいくために、物流もまた時代に合わせて変わっていかなければならない。
このシリーズでは、物流の「今」を中心に考えてきた。
次回からは視点を変え、物流の「過去」をたどってみたいと思う。
なぜ物流という仕組みが生まれたのか。
人はいつから物を運び始めたのか。
物流の歴史を振り返ることで、これからの物流を考えるヒントが見えてくるかもしれない。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

