音楽と精神医学(7):音楽で不眠症を治そう!~精神科医が海外文献をご紹介~
皆様、こんにちは!
鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
皆様、ちゃんと眠れていますか!?
小生は不眠症の傾向がある為、眠れないときはお薬を内服して夜はぐっすりと寝ております(40代から使っておりますね)。
”眠れない”というのは本当に辛く、翌日の仕事にも影響を与えるので、小生の外来にくる患者さん達が訴える「不眠」に対しては、かなり共感しながら治療しておりますよ。
... ...とは言え、「薬ではなく自然な形で眠りたい」と思うこともしばしばあります。
その理由は、ベンゾジアゼピン系を含むお薬が転倒や認知症のリスクを上げることが知られているからです。
「ぐっすり眠りたいが、いつかは卒業したい」
こう思うのが、不眠症治療を受けている方々の共通の想いではないでしょうか?
そんな中、一昨年に発表されたかなり興味深いメタアナリシスを見つけました!
この論文は、「音楽で不眠を改善する」ということをたくさんの文献をもとに照明した非常に重要な研究報告なのです!
さぁ、皆さもこの論文を一緒に読んで、眠れない夜にサヨナラしましょう!
今回は短い記事です(約2400字)!
【研究紹介】
A systematic review and meta-analysis of music interventions to improve sleep in adults with mental health problems. Zhao N et al., Eur Psychiatry, 2024
<目的>
音楽介入が精神的な問題を抱える成人の睡眠改善に役立つかどうかを評価する。
<方法>
文献検索:複数のデータベースで、精神健康に問題を持つ成人を対象にした音楽介入研究を検索し、1,492件の候補から15件の研究をレビューに含めた。
評価項目:
主なアウトカム:主観的睡眠の質
副次的アウトカム:客観的睡眠指標、生活の質、うつ・不安といった精神症状
分析方法:ランダム効果モデルを用いたメタ分析、リスクオブバイアス評価を実施。
<結果>
睡眠の質(主観的評価)
全7件の研究を対象にメタ分析を実施したところ、統計的に中等度の改善効果が認められた(Hedges’ g = −0.66、95% CI [−1.19, −0.13])。
精神症状(うつ・不安):
副次アウトカムとして分析されたうつ症状や不安については、統計的に有意な効果は確認されなかった(データのばらつきが大きく、効果の確実性は低い)
客観的睡眠指標:
客観的な睡眠測定の報告は少なく、結果は一致せず。
<結論>
音楽介入は精神的な問題を抱える成人の睡眠の質の改善に「潜在的な効果」を持つ可能性がある。
【鹿冶の考察】
今回のnote記事、いかがだったでしょうか?
「音楽が睡眠に良い」というのは、皆さんもなんとなくイメージとしてご存知であったでしょうが、こうやって積み重なったエビデンスをみると非常に分かりやすいですよね。
しかし、意外だったのは副次的アウトカムとして評価した、抑うつ・不安については、治療効果としてははっきりしない... ...と言うことが明らかになった点ですね。
音楽とうつ症状・不安症状については、また改めまして深堀したいと思いますが、ここでは睡眠と音楽についてもう少し考察をしてみましょう。
<どんな音楽が睡眠に良い?>
さて、ここまできたらとある疑問を皆さんも抱くと思います。
それは、「具体的にどんな音楽が睡眠によいのか?」という疑問です。
残念ながら、今回ご紹介した論文には「これが睡眠によい音楽だ!」と具体例を挙げておりません。
そこでこの論文が引用した元論文を読んでみたところ、以下のような音楽が研究に用いられたそうです。
・クラシック
・中国の古典音楽
・ニューエイジ・ミュージック
・ジャズ
・meditative music(瞑想・リラックス)
・five elements music
・シャシュマカーム
クラシック、ニューエイジ、ジャズ、mediative musicは分かりますが、five elements musicやシャシュマカームってなんぞ?
説明よりもYouTubeのリンクを貼っておきますので、ご参照くださいな。
↓Five elements musictとは五行理論(木、火、土、金、水)に基づき、心身のバランスを整える音楽だそうです!
↓シャシュ・マカームは中央アジアでみられる音楽の形式だそうです。ちょっと癖になるリズムですね。
<この研究の限界>
さて今回ご紹介した論文では「音楽で不眠症は治療可能」ということ示しているようですが、この解釈には注意が必要です。
まず本研究はあくまで「主観的評価」における不眠改善効果を見ております。
したがって本当に脳と体を休ませる睡眠が取れたかはわかりません。
睡眠脳波での評価は大掛かりなので、スマートウォッチやウェアラブル端末等による客観的睡眠評価。。。などを活用する必要があると感じます。
また今回紹介した研究方法もバラツキがあり、介入条件、環境、疾病の有無など研究設定に関しても調整が必要と感じます。
【まとめ】
・音楽による不眠症治療効果を検証したメタ解析論文を紹介致しました。
・音楽によって主観的不眠は改善しうることが示されました。
・しかし、他の精神症状の改善についてはハッキリとした結論は得られませんでした。
・皆様にとって、安眠効果のある音楽って何かありますか?
↓音楽も良いですが、マッサージも快眠に有効ですね。
【参考文献など】
A systematic review and meta-analysis of music interventions to improve sleep in adults with mental health problems. Zhao N et al., Eur Psychiatry, 2024
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