音楽と精神医学(6): モーツァルトを聴くと頭が良くなる?モーツァルト効果の真偽について精神科医が解説
皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
まずはこの美しい曲をお聞きください。
... ...いかがですが皆様。頭がよくなった気がしませんか?
この曲はオーストリアの天才音楽家モーツァルト作「ピアノソナタK 448」なのですが、なぜ小生がこの曲を皆様にお聴かせしたかと言うと、ふかーい訳がございます。
時をさかのぼること約30年前、有名科学雑誌ネイチャー(Nature)に「健常者がピアノソナタK 448を聴くと空間認知能力が高まる」というセンセーショナルな研究結果が報告され話題となりました。
俗にいう「モーツァルト効果」です。
今回のnote記事では、シリーズ「音楽と精神医学」の第6回目としてこの「モーツアルト効果」をご紹介いたします。
まずは「モーツァルト効果」の嚆矢*となったRauscherらの論文を解説いたしましょう。
皆様もモーツァルトを聴きながら本記事をご堪能いただければ幸いです。
*厳密に言えば1991年にフランスの耳鼻科医Alfred A. Tomatisが自著「Pourquoi Mozart? (Why Mozart?)」の中で最初にモーツァルト効果について言及しておりますが、モーツァルト効果が人口に膾炙するようになったのはRaushcerらの論文がきっかけです。
【研究紹介 その1】
Music and spatial task performance.Rauscher FH et al., Nature, 1993
<目的>
音楽の認知機能(空間推論能力)への影響を検討する。
<方法>
大学生36名を対象に以下の実験を行った。
①モーツァルト2台のピアノのためのソナタニ長調K.448(以後K.448)、②リラクゼーションテープ、③無音を10分間聴かせ後にStanford-Binet 知能テスト(SBT)を行った。
テスト結果を空間認知IQに換算して比較を行った。
①②③の三群についてANOVA後にScheffe's t 検定にて多重比較を行った。
<結果>
K.448を聴いた群においてSBTは57.56(IQ:119)、リラクゼーションテープでは54.61(IQ: 111)、無音では54.00(IQ: 110)という結果であり、K.448群は他群に比べて統計学的に有意に高いスコアであった。
尚、①で得られた認知機能増強効果は10-15分以上継続した。
<結論>
本研究はK.448が空間認知機能を強化する可能性を示唆したが、他の音楽等で検証する必要がある。
↓えぇ!?モーツアルトのクッキー!これを喫食するとIQアップする?
【鹿冶の考察 その1】
まずは”モーツアルト効果”が世に知られるきっかけとなったRaushcer論文をご紹介いたしました。
最初にいくつか補足をすると、この研究は36人の大学生(おそらくカリフォルニア大学アーヴァイン校)を対象とした研究であり、すべての学生が3つの条件(モーツアルト、リラクゼーションテープ、無音)を10分間経験したのちに認知機能テストを行って、その結果を比較する...、というシンプルなものです。
うーん、正直言って突っ込みどころがあり過ぎて、30年前とは言え超有名科学雑誌「ネイチャー」にこのように雑な研究結果が掲載されるとは非常に驚きです。
問題点はいくつかありますが、この手の心理実験に疎い小生が抱いた疑問としては… …、
1.聴かせる順番をランダムにしたのか、
2.各実験のインターバルはどのぐらいであったか、
3.リラクゼーションテープの中身は何か、
4.対象となった大学生は一般的な集団とみなしてよいのか(音楽への興味は一般化できるのか?)、
5.実験環境は?、
6.被験者のリクルート方法は?
...などがあります。
要するに実験のセッティングが甘く、また実験条件も不明瞭な点が多すぎるため、なぜモーツァルト効果がこれほど世に広まったのか理由がさっぱり分かりません(本当は分かりますが皮肉です)。
しかし、小生の不満をよそに”モーツァルト効果”に関する研究は世界中で検証され、数多くの論文が発表されてきました。
そしてあろうことかRauscherの発表からたった6年後、同じく有名科学雑誌ネイチャー(Nature)から複数のモーツアルト効果に関する研究をまとめた"メタアナリシス"に関する論文が発表されます。
(要するに世界各国で行った研究成果をまとめた論文です)
果たしてモーツァルト効果の真偽はいかに...?
【研究紹介 その2】
Chabris CF. Prelude or requiem for the ‘Mozart effect’? Chabris CF, Nature, 1999
<目的>
過去のモーツァルト効果に関する研究をまとめ、その真偽を検証する。
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