企画論06 行き詰まりで、思考を前に進める「強制装置」の発想法

実務で使うアイデア発想法と、フォルクスワーゲンの歴史的事例

製品企画や広告、クリエイティブの実務において、
「アイデアを出す」という行為は、決して特別な瞬間にだけ求められるものではありません。

むしろ現場で本当に苦しくなるのは、

  • ある程度までは考え尽くした

  • 方向性も見えている

  • しかし、そこから先に進まない

という状態に陥ったときです。

この章では、そうした 実務で思考が行き詰まった場面 において、
発想を無理やりでも前に進めるための
アイデア発想の「強制装置」 について整理します。


■アイデア発想法は「ひらめき」ではなく「装置」

アイデア発想というと、
センスや才能、ひらめきの問題として語られがちです。

しかし実務では、
毎回ひらめきが降りてくるのを待っているわけにはいきません。

だからこそ必要になるのが、
思考を前に進めるための型やチェックリストです。

ここで紹介するのは、
その代表例とも言える次の2つです。

  • オズボーンのチェックリスト

  • スキャンパー法(SCAMPER)

いずれも、
「新しい答えを生み出す」というより、
考え方を強制的にズラすための道具 だと捉えると分かりやすいでしょう。

オズボーンのチェックリスト

■オズボーン/スキャンパーに共通する考え方

これらの発想法に共通しているのは、

  • 何もないところからアイデアを捻り出す
    のではなく、

  • すでにある条件・制約・要素を、別の角度から問い直す

という点です。

実務における企画は、ほとんどの場合、

  • 制約がある

  • 条件が厳しい

  • 自由度が低い

という前提の中で進みます。

だからこそ、
この種の「強制的に視点をずらす発想法」は、
実務との相性が非常に良いのです。


■実践事例として今なお価値のある広告

これらの発想法を説明する際、
私が必ず紹介する歴史的事例があります。

それが、1960年代を中心に展開された
フォルクスワーゲンの新聞広告を中心とした広告クリエイティブです。

かなり古い事例ではありますが、
今見てもなお、発想教材としての価値は極めて高い と考えています。


■極端に不利な条件から始まったフォルクスワーゲン

当時のアメリカ市場において、
フォルクスワーゲンは非常に不利な立場にありました。

  • 車体は小さい

  • 見た目は地味

  • パワーもない

当時のアメリカ人が好んでいたのは、

  • 大きく

  • 派手で

  • パワフルな

いわゆる「アメリカ的な車」でした。

フォルクスワーゲンは、その真逆に位置する存在です。


■条件を変えずに「価値の見方」を変える

ここで重要なのは、
フォルクスワーゲンが行ったのは、

  • スペックを盛ることでも

  • アメリカ車に寄せることでも

なかった、という点です。

彼らがやったのは、

変えられない条件を前提に、
価値の捉え方そのものを変えること

でした。

「小さい」
「地味」
「パワーがない」

これらを弱点として隠すのではなく、
そのまま表に出し、別の価値へと転換する。

この構造は、
オズボーンのチェックリストやスキャンパー法が
目指している思考そのものです。


■広告が「価値発見の装置」になっていた

フォルクスワーゲンの広告は、
単なる商品説明ではありませんでした。

見る側に対して、

  • 「そういう見方があったのか」

  • 「それなら悪くない」

と、価値観の再解釈を促すものでした。

広告そのものが、
価値発見のプロセスを体験させる装置
になっていたと言えます。

掲載事例「Lemon」より ※訳文は川部の解釈です。
※訳文は川部の解釈です。

■なぜ今でもこの事例を扱うのか

この事例が、
今でも企画やアイデア発想の教材として優れている理由は明確です。

  • 制約が多い

  • 条件が不利

  • 環境を変えられない

という状況の中で、

発想の転換だけで、市場における価値を反転させた

好例であるからです。

これは、
現代の製品企画、EC・通販、ダイレクトビジネスにおいても
そのまま当てはまる構造です。


  • オズボーンのチェックリストをどう実務で使うか

  • スキャンパー法を企画・広告にどう当てはめるか

  • フォルクスワーゲン広告を、発想法の視点でどう読み解くか

といった内容はまた別の機会に詳細を話せればと思います。


■参考書籍(発想法・事例理解の補助資料)

本章で取り上げたフォルクスワーゲン広告の実例は、
以下の書籍に体系的にまとめられています。

  • 書籍名: クルマの広告~大人の為の絵本~

  • 著者:西尾 忠久

    広告表現の巧みさだけでなく、
    「制約条件をどう価値に転換するか」という点で、
    今読んでも非常に示唆に富む一冊です。

    ※タイトルや装丁違いで、下記のように何種類か出ていますが
     いずれも内容は同じです。上記紹介の文庫本で一番リーズナブルです


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▼ 本記事は、以下の連載の一部です。

どこまでもロジカルなダイレクトマーケティング
─ 広告・CRM・事業PLを貫く設計思想の全体像

全体構造・読み方はこちら
https://note.com/kawabe_atsushi/n/n879156f50c33
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