企画論04/なぜ“いい商品”が伝わらないのか→価値を4つのレイヤーで分解して考える ~どこまでもロジカルなダイレクトマーケティング(16)
コンセプトを「価値の言葉」に翻訳する
──4つの表現レイヤーで考える、伝わる企画のつくり方
ここまでの章では、
製品・サービスの企画において、
事実を集め、解釈し、課題化し
企画の方向性を広げ
コアコンピタンスを踏まえて「やるべき企画」を選ぶ
という流れを整理してきました。
この章ではその次のステップとして、
定義したコンセプトを、どのような「価値の言葉」として表現するのか
について考えていきます。
どんなに優れた企画であっても、
その価値が適切な言葉に翻訳されなければ、
顧客には伝わりません。
■価値は「ひとつの言い方」しかないわけではない
製品やサービスの価値は、
スペック・機能・体感・生活価値など、
複数の側面を同時に持っています。
しかし、実際のコミュニケーションでは、
そのすべてを一度に伝えることはできません。
だからこそ重要なのが、
どの側面を、どのレイヤーの価値として切り出して語るのか
を、企画段階で意識的に選ぶことです。
■価値表現を4つのレイヤーで整理する
私は、価値表現を次の4つのレイヤーに分けて考えると、
企画と表現の整理がしやすくなると考えています。
スペックのレイヤー
メリットのレイヤー
ベネフィットのレイヤー
バリューのレイヤー
これは優劣の話ではありません。
プロダクトアウトに近い順から、生活者に近い順に並んでいる
と捉えてください。
■扇風機の例で、レイヤーの違いを見てみる
ここでは分かりやすい例として、
「羽が2倍速で回転する扇風機」を取り上げます。
スペックのレイヤー
もっともプロダクト寄りの表現です。
回転数が2倍の新型モーターを搭載した扇風機
これは、設計・技術・仕様の話であり、
メーカーや開発者の視点に近い情報です。
家電カタログや技術資料に載るのは、
基本的にこのレイヤーの情報になります。
メリットのレイヤー
スペックによって得られる、直接的な機能的成果です。
回転数が2倍なので、2倍の風量が得られます
スペックが「何を可能にするのか」を、
一段分かりやすく翻訳した状態と言えます。
機能比較や性能差を伝えたい場面では、
このレイヤーが有効なことも多いです。
ベネフィットのレイヤー
メリットによって、使う人にどんな変化が起きるのか。
2倍の風量が得られるので、2倍涼しくなります
ここでは、
製品そのものではなく、使用後の状態 が主語になります。
※回転数が2倍なら本当に涼しさも2倍なのか、
といった厳密な話はここでは重要ではありません。
レイヤーの違いを理解するための例です。
バリューのレイヤー
さらに視点を上げ、生活全体にとっての価値を語ります。
涼しく過ごせることで、
仕事も、勉強も、睡眠も快適になり、
充実した夏を過ごせます
ここではもう、
扇風機という製品の話をしていません。
その製品があることで、どんな時間や生活が手に入るのか
という価値を語っています。

■レイヤーが変わると「意味」が変わる
同じ製品、同じ事実を扱っていても、
スペックで語るのか
メリットで語るのか
ベネフィットで語るのか
バリューで語るのか
によって、
顧客が受け取る意味はまったく変わります。
重要なのは、
どのレイヤーが正しいかではなく、
どのレイヤーで語ると“価値として伝わるか”
という点です。
■バリュー型が常に正解、ではない
よくある誤解として、
「最終的にはバリューで語るべき」という考え方があります。
確かに、多くのケースで
バリュー型は強い訴求力を持ちます。
ただし、
スペック競争が明確な市場
専門性が高い商材
数値差がそのまま価値になる領域
では、
スペック型やメリット型のほうが
違いが分かりやすく、刺さることもあります。
■大事なのは「どこで語るかを選ぶこと」
企画者として重要なのは、
今回の製品・サービスでは
どのレイヤーを価値の焦点にするのかどのレイヤーで語ると、
「これは自分に必要だ」と感じてもらえるのか
を、意図をもって選ぶことです。
これはコピーの話ではありません。
企画思想そのものの話です。
■価値レイヤーは「組み合わせて使われる」
実際の広告や販促では、
スペック
メリット
ベネフィット
バリュー
が、単独で使われることはほとんどありません。
ただし、
ファーストキャッチでどこを使うのか
説明でどこを補うのか
最後の意思決定をどこで後押しするのか
この設計が曖昧だと、
「何が言いたい商品なのか分からない」状態になります。
■この章のまとめ
コンセプトは、そのままでは伝わらない
価値は4つのレイヤーに分けて整理できる
どのレイヤーで語るかによって、意味は変わる
正解はひとつではなく、選ぶことが重要
ここまでが、
コンセプトを「伝わる価値の言葉」に翻訳するための考え方です。
※次章では、
この価値表現を
誰に向けて設計するのか(Product out / Market in、イノベーター理論)
という話に進んでいきます。
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▼ 本記事は、以下の連載の一部です。
どこまでもロジカルなダイレクトマーケティング
─ 広告・CRM・事業PLを貫く設計思想の全体像
全体構造・読み方はこちら
▶ https://note.com/kawabe_atsushi/n/n879156f50c33
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