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ツツンデ・ヒライテⅡ(【連載小説】悩み のち 晴れ! ライトブルー・バード第3部&FINAL《10》)

🌟前回までのお話です。

🌟全てはマナカとヒロキの小さな恋物語から始まりました。

🌟そして今回の登場人物はコチラ

🌟ちょい過去編3話が終了。ここからマナカとヒロキの再会シーンに戻ります。

    《今泉マナカ》 


 一体、どこから驚けばいいのだろうか!?

 今泉マナカは、ただただポカンとするばかりだった。
 
「……それでヒデミのヤツ、めちゃくちゃ歓喜しちゃってさ。そのまま部屋に上がりんで『会いたかったぁ💕』って言いながら星名くんのこと、思いきりハグしたんだよ……あ、彼はそのままフリーズしちゃったけどね」 

 荒川ヒロキは、その時の光景を思い出したのか、クスクスと思い出し笑いをする。そして「あんなヒデミは初めて見た」と呟いた。
 
「……は、はぁ」

 とりあえずマナカは、ヒロキから聞いた話を自分なりに整理してみる。
 まずリュウヘイがヒロキのアパートを訪れた件。彼にアパートの場所を教えたという『謎の幼馴染み』は井原サトシで間違いないだろう。サトシとは以前、自分がストーカーすれすれの行動をした時に、運悪く遭遇してしまったことがあるのだから……。

(荒川さん、私が関係しているコト、薄々感づいているよね?)

 ヒロキの住所を見つけたのは偶然だが、アパートへ向かったのは自分の意志だ。

「今泉さん、どうしたの?」

「え?……そのぉ…ご、ごめんなさい荒川さん!」 

「んっ?」

「実は私、前に荒川さんのアパートの前まで行ったことがあるんです。スタッフルームで開きっぱなしになっていたサヨコさんのスケジュール帳が偶然目に入って、つい……」

「…………」

「その時に、星名くんの幼馴染みが通りかかって……。本当に本当にごめんなさい。荒川さんが住んでいる所にちょっとだけ近付きたくなって。そ、それだけなんです!!」

 いや、この場合『それだけ』という言葉で片付くワケがないだろうと、マナカは自分の心にツッコミを入れる。そして嫌われてても仕方ないと覚悟し、そのまま俯いてしまった。

「まあ、やったことはあまり感心できないけど、今回は結果オーライということでいいんじゃない?」

「えっ?」

 反射的に顔を上げる。

「それが繋がったことで、星名くんがウチに来てくれたんだから……。それにさ、ヒデミと星名くんが既に知り合っていて、絶妙なタイミングで再会したことも凄いよね? 偶然っていうか、何だか色々と神がかっている感じ」

「……た、確かに」

「そうそう、ヒデミにもあの件は話したよ」

「えっ!? 言っちゃったんですか!?」

「彼女も当事者だからね。星名くんがウチに来た理由も気になるだろうし」

「…………」

「そうしたらヒデミのヤツ、翌日に『噂の大元』を捕まえて、直接抗議をした」

「えーーーーー!?」

 
 ヒロキの話によると、学食で友人たちとお茶を飲んでいた浅野アズサに向かって、ヒデミは『アンタの無責任な噂話が巡り巡って、最終的に1人の女の子を傷つけたんだけど!?』と詰め寄ったらしい。 
 
 最初は否定したが、ようやく認めたアズサ。しかし謝罪はせず『そんなつもりはなかった』で済まそうとしたことにヒデミはカチンときてしまう。

そして

「ほ〜ぉ? つまり浅野さんは今、『私はイイ歳して、想像力が全く備わっていない残念な人間でーす』って公言したってことだね?」

と言い放った……と、いうことだ。
 

「さすがヒデミというか、なんというか……」  

 ヒロキは苦笑いをする。

「カッコイイ女性ひとですね。ヒデミさんって」

「うん、そうだね。…………ねぇ今泉さん」

「はい?」

「ヒデミのようになれとは言わないけど」

「…………?」

「やましいことがなければ堂々としていればいい」

「……………」

「何でも自分のせいにして、終わらせようとするのは、ある意味『逃げ』だと思う。17歳の女の子には高いハードルかもしれないけど、そこからは何も生まれないよ」

「………………」

「何よりもタカラモノを放棄しようとしている今泉さんを、俺は黙って見ていられない」

「『タカラモノ』?」

「そう、2つあるよね? 1つはGESSジェスのポジション、もう1つは……」

「…………」

「星名リュウヘイくんの気持ち」

「!!」

 その瞬間、マナカの目から一筋の涙が流れた。

「今泉さん、ちょっとだけごめんね」

 ヒロキはそっと腕を伸ばし、そんな彼女の頭を自分の胸にフワッと引き寄せる。

「『あの時』もここで泣いちゃったよね? 覚えてる? 俺がこの店を辞めるって分かった日……」

「………………はい」

 マナカは頷く。

 そう、あれはヒロキが退職するというショックを引きずりながら、スタッフルームに戻った時だ。部屋の中には、読書に夢中になって帰宅しそびれた彼が1人。大好きな男性ひとと2人きりになったマナカは、寂しい気持ちを抑えられなくなり、ヒロキの前で泣き出してしまった。

 あれから数カ月、自分は今、リュウヘイのことを思って泣いている。
 
 ヒロキが去った後に、自分の前に現れたリュウヘイ。最初はお互いぎこちなかったが、次第に打ち解け、いつの間にか大切な存在になっていた。

(私は……私はあんなに優しい星名くんを傷つけたんだ。それなのに私の為に荒川さんの所へ行ってくれて……)

 どんどん涙が溢れてくる。

 ヒロキはそんな自分を優しく包んでくれた。

        
       ☆★☆★☆

 
 マナカの涙が止まったことを確認するヒロキはそっと身体を離す。「俺ができるのはここまで」と言いながら……。

「……………」

「あとは自分次第だよ」

「…………はい」

「今泉さんの頑張りを近くで見ることはできないけど、GESSになった時は、客としてここに来るから」

「本当ですか!?」

「ヒデミも連れてくるよ。彼女も君のこと気になっていたからね」

「は、はい。嬉しいです!」

「まあ、ヒデミアイツは星名くんに会いたいっていう目的もあるけどさ。……と、いうことで今泉さんは、店に戻るってことでいいかな?」

 マナカは小さく頷いた。

「はい、よくできました」 

 満面の笑みを浮かべるヒロキ。

 この笑顔が本当に大好きだった。

「荒川さん、ありがとうございました」

「どういたしまして」

 ヒロキはマナカの頭にポンと手を置くと、そのままスタッフルームをあとにした。

「じゃあ星名くんによろしくね」

(荒川さん……)

 彼が去った扉を見つめていたが、ふとあることに気がつく……。

(えっ? あれっ!? そういえば私、荒川さんにハグされてた!!)

 恋心は既に卒業したが、それとこれとは話が別だ。マナカは瞬間湯沸かし器のような速さで顔が赤くなってしまった。


        ★☆★☆★

 
 スタッフルームに入ってきたサヨコに、マナカは継続の意志を伝えた。

「良かったぁ!また一緒にGESSの勉強頑張ろうな!!」

彼女は歓喜に満ちた顔でマナカを抱きしめる。 

「ご心配おかけしました」

 自分のことを心配してくれる人たち……。色々あったが、自分はやはり周りに恵まれていると思う。

「リュウヘイの反応が楽しみだな。これからLINEでもするのか?」

(星名くん……)

 リュウヘイの顔をそっと思い浮かべる。

「いいえ、明日、学校で直接話します」


      ☆★☆★☆★

 
 次の日の昼休み、2年7組の教室に向かったマナカは、近くにいた男子に声を掛け、リュウヘイを廊下に呼び出してもらった。

 教室にいる何人かの生徒が自分のことをジロジロ見ていることに気がつく。

(なんか……まずかったかな?)

 少しだけ後悔してしまったが、慌てて駆けつけたリュウヘイの姿を見ると、そんな気持ちは吹っ飛んでしまった。

「星名くん、突然ごめんね。どうしても直接話したくて……」

「いや、俺は大丈夫だよ。用件は大体分かっているし……だけどさ」

 そう言いながら、リュウヘイは教室内にチラッと視線を送る。彼のクラスメイトたちは『校内3大美少女』であるマナカとリュウヘイの組み合わせに興味津々らしく、さっきよりも視線の数が増えていた。

「……………えっ?」

「今泉さん、自分が有名人だって自覚持った方いいよ。それこそサトシレベルの……。まあ、ここじゃ気が散るから場所を変えようか?」 


       ☆★☆★☆★

 
 2人の足は、自然に中庭へと向かう。色々と言いたいことがあるのに何から話していいのか分からず、歩いている間、マナカはずっと無口だった。

「荒川さんと会ったんだよね?」

 リュウヘイが先に口を開く。

「……うん」

「ごめんね。出過ぎたマネをして。でも俺は今泉さんにバイトを辞めて欲しくなくて……」

「『出過ぎたマネ』なんて……そんなことないよ。星名くんには感謝してる。でなきゃ私は間違った選択をするところだった」

「えっ? じゃ、じゃあ? 店に戻ってくるの?」

 大きく頷くマナカ。それを見たリュウヘイは「ヤッター!」とガッツポーズをした。

「星名くん、あの……それとね……」

「ん?」

「あ、あのぉ……前に……告白してくれた件だけど」

 マナカの声が震える。

「あぁ、それはもう忘れていい……」

「良くないっ!!」  

 急に大声を出したマナカに驚き、リュウヘイは思わず仰け反ってしまった。

「い、今泉さん?」

「あの時の返事は忘れて欲しい」

「えっ?」

「告白の返事は……」

「……………」

「私がGESSになった時に必ず言うからっ!」

 さっさとYESと言えばいいのに……ホント、自分は面倒くさい人間だと思う。

 でも……リュウヘイの気持ちは、自分が納得した自分である瞬間に応えたい。

 彼のことが大好きだから。

「……う、うん、分かった」

 リュウヘイの顔が直視できない。きっと今の自分は、ヒロキに抱きしめられた前日よりも真っ赤になっているだろう。

 早春の冷たい風が、気を利かせたかのようにマナカの頬を通り過ぎる。しかしクールダウンするには、もう少しだけ時間が必要だった。

    
     🌟《10.5》に続きます