子どもの熱せん妄、どこまで様子を見ていい?
KAORU|薬学博士・現役病院薬剤師・双子ママ
高熱を出した子どもが、突然うわごとを言ったり、こわがったり、暴れたり、いないはずのものを見て怖がったり。初めて目にすると、本当にぎょっとします。
これは「熱せん妄」と呼ばれるもので、子どもの発熱時に比較的よく見られるものです。今日は、熱せん妄とは何か、どんなときに様子を見ていいのか、どんなときに受診すべきか、そして発熱時の解熱剤(アセトアミノフェン)の使い方まで、薬剤師の視点で整理します。
👻 熱せん妄ってなに?
熱せん妄は、高熱のときに脳が一時的に混乱した状態になり、うわごと、おびえ、興奮、幻覚のような言動が現れるものです。
熱の上がりはじめに多く、数分から長くても30分程度でおさまり、その後はけろっとしていることがほとんど。本人は覚えていないことも多いです。
「子どもが夜中に急に泣きながら怖い怖いって言い出して、何もないのに…これって大丈夫かな」と、友人から連絡が来たことがあります。聞くと、熱の上がりはじめで、呼びかけには反応があり、しばらくして落ち着いたとのこと。熱せん妄だと思うけど、しばらく様子を見て、また繰り返すようならすぐ教えてと伝えたことがあります。
(そういえばウチも熱が出たとき、寝かしつけたあとに号泣して「怖いのがこっち来る!」としがみついてきたことがありました。あのときはあまり気にしていなかったけれど、今思えば同じだったのかも😂)
😣 熱性けいれんや脳炎・脳症とは、何が違う?
親がいちばん不安になるのが、「これはけいれんなの?もっと怖い病気なの?」という点だと思います。
3つの違いを整理しておきます。
熱せん妄は、高熱のときに一時的に意識がぼんやりして、いつもと違う言動が出る状態です。日本小児神経学会のガイドラインでも「高熱時の一過性の意識変容」と位置づけられ、脳症や脳炎とは区別されています。呼びかけに反応があり、しばらくすると落ち着いてくるのが特徴で、多くは熱が下がるにつれて治まります。
熱性けいれんは、意識がなくなり、白目をむいて体が硬直したり、手足がガクガクと震えたりします。呼びかけへの反応がなくなるのが、熱せん妄との大きな違いです。通常は数分以内に治まります。
脳炎・脳症は、発熱・けいれん・意識障害が主な症状です。嘔吐や頭痛のほか、意味不明のことをしゃべる、妙に怖がる、突然走り出すといった異常行動がみられることもあります。この異常行動が熱せん妄と似ているところが、見分けの難しいところです。
見分けるときに見てほしいのは、呼びかけに反応があるか、続く時間が長くないか、何度も繰り返していないかです。反応がない、長く続く、繰り返す、意識がはっきりしないといったときは、熱せん妄ではない可能性があります。具体的な受診・救急の目安は、このあとのセクションでまとめます。
ただ、慌てている場面で冷静に見分けるのは難しいもの。区別がつかないときは、無理に判断しようとせず、受診サインを目安にしてください。
※熱性けいれんについてはこちらの記事もあわせてご覧ください
→【リンク】
⏱️ どこまで様子を見ていい?
多くの熱せん妄は、短時間でおさまり、後に残るものではありません。おさまって、その後ふだん通りに戻れば、過度に心配しなくて大丈夫なことが多いです。
一方で、次のようなときは受診を考えてください。
・けいれん(意識がなく、体が硬直・痙攣する)が5分以上続く
・おかしな言動が長く続く(目安として30分以上)、または一度おさまっても繰り返す
・呼吸が浅い
・おさまった後もぐったりしている、意識がはっきりしない
・首が硬い、強い頭痛や繰り返す嘔吐を伴う
💊 発熱時のカロナール、どう使う?
熱せん妄そのものを止める薬ではありませんが、発熱でつらそうなときには解熱剤を使います。子どもによく使われるのがアセトアミノフェン(カロナール、アンヒバなど)です。
アセトアミノフェンは、子どもの解熱・鎮痛で第一選択とされるお薬です。用量は体重をもとに決まり、目安は1回あたり体重1kgあたり10〜15mg、間隔は4〜6時間以上あけるのが基本です。実際の現場では、1kgあたり10mgで処方されることが多いです。
たとえば20kgのお子さんだと、1回200mgが目安です。このザックリした量を覚えておいてもらえるだけでも、いざ使うときの安心材料になると思います。
もちろん、1日に使える回数や量には上限があります。熱が下がらないからと、間隔を詰めたり、量を増やしたりするのは避けてください。アセトアミノフェンは、量を大きく超えると肝臓に負担がかかることがあるお薬です。
ただし、市販薬や坐薬・シロップなど剤形によって濃度が違うため、自己判断で量を決めず、処方された用量や薬剤師の説明に従ってください。
我が家では、熱の高さそのものより「本人がしんどそうかどうか」で使うかを決めています。38.5度くらいから「どうしようかな」と悩み始めますが、決め手にしているのは本人の様子。息が荒くて苦しそう、眠りたいのに眠れない、というときが使うサインです。逆に、熱が高めでも遊べていたり眠れていたりするなら、様子を見ることが多いです。
✍️ 最後に
熱せん妄は、初めて見るととても驚きますが、多くは一時的で、後に残らないものです。まずは落ち着いて、子どもがけがをしないように見守ってあげてください。
そのうえで、「いつもと違う」「おかしな様子が長く続く」と感じたら、受診をためらわないでください。判断に迷う場面でこそ、私たち薬剤師やかかりつけ医を頼っていいのです。
夜中に急にぎょっとさせられるのも、子育ての一場面。「これって大丈夫?」と思ったとき、この記事をそっと思い出してもらえたら嬉しいです。
※本記事の情報は執筆時点のものです。個々の状態については必ず医師・薬剤師にご相談ください。
KAORU|薬学博士・現役病院薬剤師。国立大学研究所研究員、私立大学薬学部助教、調剤薬局を経て現職。一卵性双生児を含む3児の母。
