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旅行記⑦ 吐噶喇列島旅行記 〜日本最後の秘境を旅する〜 第一弾 諏訪之瀬島訪問

ご覧いただきありがとうございます。北風小僧です。今回からは数回に渡り、2026年2月の吐噶喇(トカラ)列島旅行について記します。例によって備忘録の要素もありますが、吐噶喇列島についてはまだまだ旅行情報が少ないため、観光を予定されている方に情報源として活用していただけるよう普段より仔細に書いています(吐噶喇の観光情報、注意事項を特集した記事も近日中に公開予定です)。ぜひ最後までお付き合いいただけると幸いです。
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吐噶喇列島ってどんなところ?

概要

 吐噶喇(トカラ)列島は鹿児島県の南部、屋久島と奄美大島の間に点在する島々です。北から口之島、中之島、平島、諏訪之瀬島、悪石島、小宝島そして宝島の7つの有人島と5つの無人島から構成され、沖縄トラフ沿いの火山フロントにあたります(注)。それゆえ火山活動や地震が頻発しており、2025年夏に発生した悪石島近海での群発地震は全国的に報道されたため記憶にある方も多いと思います。

Apple mapに筆者加筆


 行政的には全島が鹿児島郡十島村(としまむら)に属しており、南北の距離は実に162kmと「日本一長い村」としても知られています。南緯30度以南に位置する関係で、第二次大戦後しばらくはアメリカ軍政による統治を余儀なくされました。米軍による深刻な搾取に悲鳴をあげた島民たちは強力な復帰運動を行ったそうですが、悲願の本土復帰は1952年まで待たなければなりませんでした。
 産業にも目を向けてみましょう。どの島も平地が極端に少ないなど水稲栽培には不向きで、畜産が盛んに行われています。悪石島などでは過去に水稲や粟の栽培もされていたようですが、現在農業は果樹や小規模な畑作にとどまっています。
 島にもよりますが耕作地は島の一部で、手付かずの自然もまだまだたくさん残っています。十島村は「刻を忘れさせる島」としてアピールしているほか、訪問が困難であることも相まって「日本最後の秘境」と呼ばれることもあります。余談ですが、漫画「オーイ!!とんぼ」の舞台となったのもここ吐噶喇列島です。

注:火山フロント
プレートの沈み込み境界では海洋プレートが大陸プレートに沈み込むと考えられていますが、この際に海洋プレートに含まれる水分が地下のマントル物質の融点を下げ、深度100km以深でマグマが発生し地上に火山ができます。その結果沈み込み境界と並行に発達する火山の列を火山前線、あるいは火山フロントと呼びます。

作成:北風小僧

島へは週2便の村営船で

 吐噶喇列島へのアクセスを一手に担うのは、鹿児島港南埠頭を毎週月曜・金曜日(多客期は水曜日も)の深夜に出航する村営フェリー「フェリーとしま2」です。翌日午前中に有人7島すべてに寄港し、同日昼すぎに奄美大島の名瀬新港に到着する行程が組まれています(復路は逆の経路をたどります)。かつては鹿児島〜諏訪之瀬島間で週に3便セスナ機が就航していましたが、こちらは2024年以降長期運休となっています。本土からの、そして島間の交通手段がこのように限定されていることは、21世紀にあって今なお吐噶喇列島が秘境であり続ける要因の一つになっています。

諏訪之瀬島沖を航行するフェリーとしま2。一隻のみで運用をこなしており、ドック入りの際は三島村営船「フェリーみしま」が代船となる。

旅行の概要と行程

 私がいつどこで吐噶喇を知ったのかはもはや定かではないのですが、少なくともここ数年来「いつか訪問したいところ」として心の片隅にありました。おりしも風景写真へのモチベーションが高まっていたところに、最大のハードルである時間、金銭面の都合がついたため、今春ついに訪問できる運びとなりました。

 旅程は以下の通りです(太字は今回ご紹介する範囲です)。

1日目
 鹿児島へ(新幹線)
 鹿児島観光
 鹿児島泊
2日目
 桜島観光
フェリーとしま2乗船
 船内泊
3日目
 諏訪之瀬島訪問
 諏訪瀬島泊

4日目
 中之島訪問
 中之島泊
5日目
 中之島観光
 中之島泊
6日目
 悪石島訪問
 悪石島泊
7日目
 鹿児島港へ(フェリーとしま2)
 鹿児島泊
8日目
 鹿児島→宮崎(特急きりしま号)
 宮崎観光
 宮崎泊
9日目
 宮崎→京都(特急にちりん、ソニック号、新幹線)

 先述の通り、フェリーとしま2の運航は週2往復のみで、各島の寄港時間も10分と短いため、短期間で複数の島をめぐるにはちょっとした戦略が必要になります。

フェリーとしま2 時刻・日程表
十島村役場HPより

北から、あるいは南から順番に巡るのではなく、ジグザグに「行って戻る」を繰り返すのがおすすめです。ただし行程が長くなればなるほど欠航時のリカバリーが困難になるので、事前に策をたてておく必要があります。

今回の訪問経路。金曜夜の便で鹿児島港を出発して同様のコースをたどれば、3島を最短期間(4日間)でめぐることができる。

旅行に先立ってすべきこと

民宿の予約

 船のダイヤの都合上、全島いずれも日帰りで訪れることはできず、宿泊が必要になります。吐噶喇の宿泊施設は民宿のみで、旅館やホテルは一切ありません。観光客はさほど多くはありませんが、役場の職員(十島村役場は鹿児島市にある)や工事の業者も民宿を利用するため、事前の予約が推奨されています。今回は約1か月前に無事予約することができましたが、時期によっては宿泊を断れられるケースもあるようです。なお、私が知る限りでは現時点で予約方法は電話のみとなっています。

フェリーの予約・乗船券購入

 民宿の次はフェリーの予約です。下り便の鹿児島港発の区間のみ、電話もしくはインターネットで予約することができます(そのほかの区間は予約できません)。多客期には満席も発生するようなので、可能な限り予約をしておくとよいでしょう。なおオンライン予約であっても事前決済はできず、予約済みであっても一度窓口に赴いて乗船券を購入する必要があります。この際、出航当日の21時を過ぎても窓口に現れない場合はキャンセル扱いとなるようなのでご注意ください。
 北風小僧は前日から鹿児島に泊まっていたため、出航当日の朝9時に窓口にて購入を済ませることができました。出航時刻は23:00と遅いため、その間鹿児島で用事を済ませたり観光をすることができます。フェリー待合所にはコインロッカーがあり、出航までの間荷物を預けておくこともできます(小:100円、大:200円と格安でした)。

いざ諏訪瀬島へ!!

お風呂と夕食は乗船前に済ませよう

 フェリー待合所に荷物を預けた後は、しばらく桜島観光を楽しみました(こちらも後日記事にまとめる予定です)。余裕をもって17時ごろには鹿児島にもどり、鹿児島駅近くの銭湯「かごっま温泉」でひと風呂浴びました。ちなみにフェリーとしま2に浴場はなく、シャワー室があるのみです。シャワー券は5分で100円、シャンプー等はもちろんないので、よほどの事情がないかぎりお風呂は鹿児島ですませておくのがよいでしょう。

一番近くにある銭湯というだけの理由で訪れた「かごっま温泉」ですが、結果的に大当たりでした。入浴料460円、タオル貸し出しは無料(貸しバスタオルは100円)とリーズナブルですが、これで天然温泉かけ流しというのだから驚きです。浴場の壁には富士山が描かれており(桜島じゃないんだな)桶はケロリン、BGMは演歌と雰囲気は「THE 昭和」です。時間が早かったこともあってか非常にすいており、最初は怖かった番台のおっさんも実は優しい方でとても満足でした。
 フェリーとしま2船内のレストランは出港翌朝からの営業となるので(スペース自体は解放されており持ち込み利用は可能)、夕食も鹿児島で取っておくのがおすすめです。この日はいづろ通近辺のビル「よかど」内の「みなと食堂 2号店」さんにてかんぱち漬け丼の定食をいただきました。

カンパチ漬け丼定食1300円。味噌汁もあら汁で、カンパチを堪能できる。2号店では現金が使えないので注意。

鹿屋市漁協直営のお店ということで、価格もリーズナブルです。なお「よかど」内ではキャッシュレス決済のみとなるので注意が必要です。

いざ、待合所へ

 十島村営フェリー「フェリーとしま2」の待合所は、鹿児島港の南ふ頭にあります。北ふ頭が桜島フェリー専用であるのとは対照的に、南ふ頭は十島村営フェリーに加えて三島村営フェリー、種子島・屋久島行きフェリー、種子・屋久高速船そして奄美大島・沖縄行きの船が発着しており、一大ターミナルの様相を呈しています。
 ターミナルに到着したのは出航4時間前の19:00頃でしたが、すでに荷物の積み込みが始まっており係員の方が慌ただしく動き回っていました。待合室で待つこと約2時間、21時になると徒歩乗船の案内が始まり、船内に入ることができました。

鹿児島港で出航を待つフェリーとしま2。旅客だけでなく食品を含む物資や郵便物などの輸送も一手に担う。船体には誇らしげに「TOKARA」の文字が輝く。

二等でもなかなか快適

 夜間はレストランや売店の営業は無いので、乗船後はそのまま客室に向かいました。北風小僧が利用したのは1番下の等級、二等室です(下から順に二等、指定寝台、一等があります)。カーペット敷きの床にマットレスと毛布、枕が並ぶ、大手民間フェリーでもまだまだ主流の雑魚寝スタイルですが、頭周りはパーテーションにより隣席と明確に分けられています。今回は多客期であったらしく座席は8割がた埋まっていたため、プライベートスペースがしっかり確保されていたのは非常に助かりました。

隣席とは仕切りで区切られるため、目が覚めたら知らんおっさんと添い寝していた、といった悲劇は起こりにくいはず。全席に荷棚とコンセントが備わる。最上部の引き出しに収まるのは救命胴衣。

 フェリーとしま2は定刻23:00に鹿児島港を出港、その後30分ほどで消灯となりました。

活火山と共生する島、諏訪之瀬

諏訪之瀬島の概要

 諏訪之瀬島は中之島と悪石島、平島の中間に位置する島で、吐噶喇列島のほぼ中央部に位置します。面積は27.66㎢に達し、吐噶喇では中之島(34.47㎢)に次いで大きい島です。火山列島たる吐噶喇のなかでも火山活動が特に盛んな島で、江戸時代後期の御岳大噴火では全島民が島外に避難して一時無人島にまでなりました。その後明治以降再開拓され今に至りますが、火山活動の影響により人が生活するのは南部の一部分のみで、その他の大部分には人の手の加わらない自然が残ります。そのため人口は73人(2015年)と吐噶喇では3番目に少なく、ロシア(8.82人/㎢)やオーストラリア(3.25人/㎢)よりも低い2.64人/㎢という人口密度を誇ります。

道路が通い、人々が生活するのは黄色枠で囲まれたわずかな部分のみで、残りは手つかずの大自然が広がる。ドクロ瀬など北部の地域の訪問はもっぱら船によってのみ可能となる。
Google Mapsに筆者加筆。

諏訪之瀬島入港

 翌朝5:00、フェリーとしま2は最初の寄港地、口之島に入港しました。季節は冬、あたりはまだ暗闇に包まれています。目指す諏訪之瀬島の入港予定時刻は7:10と早く、寝過ごさないか少なからず心配でしたが、入港時の汽笛吹鳴で嫌でも目が覚めました。続いては6:10ごろ吐噶喇列島最大の島、中之島に到着。中之島を出港するころには夜が明けて、次はいよいよ諏訪之瀬島です。
 諏訪之瀬島には吐噶喇列島で唯一、フェリーの接岸可能な港が二つあります。主に使用されるのは南東部の切石港ですが、南西部の元浦港に切り替えられることもかなり頻繁にあるようです。後日悪石島でお話しした保健師さんによると、御岳の降灰により港の水深が浅くなってしまうことが背景にあるそうです。

フェリーから朝日に照らされる諏訪之瀬島を望む
時刻の午前と午後が反転しておかしなことになっています。


 中之島出航から20分もたつと、前方に大きく諏訪之瀬島が見えてきました。海岸の断崖絶壁が朝日を受けて赤く輝き、御岳は休むことなく噴煙を上げています。火山地形特有の荒々しく美しい景観は見る者の目を飽きさせません。切石港を使用する場合、フェリーは島の東側を航行するため、下り便は入港前、上り便の場合は出航直後に「白水の滝」を望むことができます。推定落差は283mと国内第二を誇り、吐噶喇列島らしく大規模でダイナミックな絶景です。

白水の滝。元浦港を使用する場合、フェリーからは見えない。


 そうこうするうちに、フェリーとしま2は諏訪之瀬島・切石港に入港。乗船券を係員に渡してタラップを降りました。本土からの帰島者を出迎える家族たちを片目に、一抹の寂しさを感じつつ物珍しさにあたりを見物します。しばらくするとタラップが上がり、フェリーは一声汽笛を鳴らして岸壁を離れました。ついに吐噶喇に降り立ったという感慨と、この後少なくとも1日は本土と隔絶されるという事実が同時に押し寄せてきます。
 一人旅の感傷に浸るのもつかの間、予約していた「すわのせゲストハウス」のステッカーを貼った軽バンが現れました。同宿のもう一組の旅行者とともに荷物を積み込み、乗り込みます。例外なく海岸が断崖絶壁となる吐噶喇列島では、港と集落の間に100~200mの高低差があることも珍しくなく、港までの送迎はどこの民宿でもしてくれるようです。ところで筆者の観察によると、宿泊者が民宿のご主人(もしくは女将さん)に港で出会う方法は大きく分けて2つあるようです。一つは民宿の方が旅行者と思しき人にしらみつぶしに声をかける方法、もう一つは車のステッカーなどを頼りに旅行者側から近づく方法です。

まずはドライブ

 途中役場の出張所や商店の位置を教えていただきつつ、急坂を登って民宿に到着しました。宿泊者名簿を書きつつもう一組の宿泊者に話を聞いてみると、なんと彼らも京都からとのことで、話すうちに同じ大学に通っていることも判明しました。今回の諏訪之瀬島訪問は釣りが目的で、一週間ほど滞在されるようでした。
 吐噶喇列島には飲食店は一切ないので、基本的に食事は民宿でいただくことになります。ご主人に昼食の時間を確認した後、まずは少しドライブに出かけることにしました。もちろん島にはレンタカー業者などありませんが、予約時に伝えておけば民宿で車を貸してもらうことができます。諏訪之瀬島では道路が通っている地域は島のほんの一部分であるため、観光に車は必須ではないものの、急坂が多いため恩恵はそれなりに感じました。

今回貸していただいたのはちょっと昔のアクティバン。車があると観光の幅が広がります。


 さて、撮影スポットを探しながら軽く周囲を一周してみます。道路はコンクリート舗装されていますが道幅は全体的に狭く、軽自動車一台が通るのがやっとな箇所もしばしばあります。車を止めて撮影する場合、当然駐車場の類はほぼないので路上に駐車することになりますが、幅員がせまいので往来の妨げにならないよう十分な注意が必要です。

道幅は狭く、軽自動車1台分の幅しかない場所もある。島内にアスファルトプラントがないためコンクリート舗装となっており、長時間歩く場合足の疲労の原因になる(コンクリートはアスファルトよりかなり硬い)。

牧場、また牧場

 からりと晴れた気持ちの良い天気だったので、次は周囲を散策することにしました。「すわのせゲストハウス」は集落の中でも最も北側の奥まったところにあり、少し歩くと牧場が広がっています。船上からの荒々しい風景とは裏腹に、いざ降り立ってみれば青空の下に見渡すかぎり牧草地が広がり、時折牛の声が聞こえる様子はさながら異国のようで、大変のどかです。

集落の北端は牧場になっており、時折牛の声が聞こえてくる。


 牧場の景色をしばし堪能した後は、御岳方面へ向かう林道を歩いてみました。狭くて急な山道ですが、作業の車も通るためきれいに舗装されています。砂防ダムの脇を通り過ぎてしばらく歩くと、バリケードで封鎖された御岳登山口が現れました。諏訪之瀬島最高峰である御岳ではここのところ毎年のように噴火が発生しており、噴火警戒レベルが3に引き上げられた2021年以降は入山自体ができなくなっています(それまでは火口周辺のみ立ち入り禁止)。登山道入り口を過ぎるとまもなく林道の終点のナベダオに到着。ここには県の天然記念物であるツクシヤマザクラの木がありますが、さすがに時季外れで花は咲いていませんでした。
 もと来た道をそのまま戻るのは面白くないので、林道の起点からは一度西に向かってみます。しばらく下るとこちらにも牧場があり、牛たちに好奇の視線を向けられました。

ここにも牛が。


集落のほうに戻る道中には古い神社があります。境内にはソテツやヤシも生えており、いかにも南国らしい雰囲気が素敵です。そのあとは集落内を通り抜けて民宿に戻り、昼食をいただきました。

年季が入った素敵な鳥居がたつ。古くから吐噶喇に伝わる信仰を今なお守っている。
お昼ご飯はそぼろ丼とコンソメスープ、漬物。家庭的な料理を楽しめるのも民宿の魅力。

もうひとつの港

 前夜やや睡眠不足だったので1時間ほど昼寝をした後、ふたたび散歩に繰り出しました。今度は南西部の元浦漁港に行ってみます。今朝船を降りた切石港よりもやや規模が小さく、港へ降りていく道は軽自動車一台がやっと通れる幅しかありません。港に降りる道の途中には「夕日と鯨」と書かれた看板があり、夕日の撮影スポットかつ鯨がよくあらわれる旨解説がありました。こちらは日没時にもう一度来ることにします。

北側斜面から元浦港を見下ろす。南国らしくエメラルドグリーンの海が美しい。


急坂を降りて元浦漁港につくと、同宿の釣り人たちに再会しました。彼らのほかに人影はなく、聞こえるのは波と風の音だけ。立ち止まって景色を眺めていると、吸い込まれるような感覚に襲われます。元浦港からは引き続き急勾配を登って南に向かいましたが、坂の途中でふと港を見下ろすと眼下には絶景が広がっていました。

南斜面からの景観も良い。凄まじい周辺減光はPLフィルターによるもの。20mmで使用するのは少々無理があるようだ。

展望台と化した飛行場

 元浦港から切石港に向かう道中には、場外離着陸場(空港の条件は満たしていないものの許可を受けた航空機は離着陸できる施設)があります。先述の通り諏訪之瀬島~鹿児島間の航空便は事実上の休航状態であるため、滑走路への立ち入りは制限されていないどころか展望スポットとして村の観光パンフレットで紹介されている始末です(一方でヘリポートは関係者以外の立ち入りが禁止されています)。島の端部に位置する関係で滑走路の両端が海に面しており、どちら側にも雄大な風景が広がります。

飛行場東端から切石港を望む。吐噶喇列島すべてに言えることだが、視界の中に占める人工物の割合が明らかに少ない。足元には火山灰が厚く積もっており、フカフカしている。


またこの付近には野生のトカラヤギが多数生息しており、筆者に驚いて逃げてゆく姿を時折目にしました。

トカラヤギは警戒心が強く、人と出会うと一目散に逃げていく。かなり古くに持ち込まれたものか、本土のものとは微妙に異なるらしい。

切石港再訪・乙姫の洞窟

 その後は一度道をそれて岩石海岸の「ナハ浜」によってから、再び坂を下りて切石漁港を訪れました。フェリー入港時はにぎわっていた岸壁もすでに閑散としていましたが、備蓄用と思しき倉庫やタンクがあったり、漁船の数が多かったりと元浦よりも一回り立派です。この先には名勝「乙姫の洞窟」がありますが、この時点で足が棒になりかけていたため一度宿に戻ることにしました。
 再び車に乗りこみ、切石港に戻ります。切石港に車を置いて海岸をしばらく歩くと、海食によって断崖に穿たれた「乙姫の洞窟」につきました。洞窟までは岩がゴロゴロしているうえ、漂着したごみが散乱しているため注意が必要です。

名勝、乙姫の洞窟から切石港を望む。ここに至るまでの道中はかなり歩きにくく、注意が必要。

元浦の夕日

 元浦方面に車を走らせ、先ほどの「夕日と鯨」スポットにたどり着きました。邪魔にならないよう道端に車を止めて、しばらくの間カメラを構えます。

次第に雲が出てきたが、夕日はきれいに見えた。鯨が見えることもあるそう。


この日は雲こそ出ていたものの夕日はきれいに見えたのですが、近くにいたおじさん曰く冬は雲で夕日が完全に隠れることも多いそうで、自分の運の良さにしばし感謝しました。日没に先立って雲が出てきて、小雨も降り始めたため車に乗りこんで宿に戻りました。

静寂の中、海面には光の道ができる。この時の感動は写真では伝えきれない。

活火山との共生

 夕食とお風呂ののち外に出てみると再び晴れていたので、星空を撮りに牧場に向かいました。吐噶喇列島の中でも特に人が疎らな諏訪之瀬島では光害などなく、見事な星景を見ることができます。恥ずかしながら星空を撮るのは今回が初めてで、悪戦苦闘しつつシャッターを切りました。

一面の星空。星空撮影にもはまりそう。


いろいろ構図を変えながら、ふと思いつきでレンズを御岳に向けてみます。大した意図はなかったのですが、モニターに映った写真を見て仰天しました。御岳の火口付近が赤く光っていたのです。日本有数の活発な火山のふもとで人々が生活を営んでいることに、改めて驚嘆したのでした。

肉眼では全く赤く見えなかっただけに余計驚いた。デジタルゆえ微妙に赤外光にも感光していると思われる。
今回歩いた経路。道路伝いに行けるところは限られており、距離的には車がなくても観光はできる。


すわのせゲストハウスはご主人一人で切り盛りされており、ご飯もご主人作。もちろんとてもおいしかった。

乗船券購入

 翌朝は5:30に起床。しばし牧場を散歩した後、中之島までの乗船券を購入すべく役場の出張所に向かいます。諏訪之瀬島の出張所は集落のなかにあり、郵便局や診療所とも隣接していて便利です。

出張所の営業時間はフェリー待合所内の掲示とは微妙に異なっており、注意が必要。島内唯一の金融機関でもある簡易郵便局が隣接する。
朝ご飯もおいしかった。1泊3食付き、レンタカー代込みで14200円だった。


 朝ご飯をいただいて再び周囲を散策したら、ついにお別れの時間となりました。ご主人に車で港まで送っていただき、切石港に戻ってきました。船を待つ間、ヘルメットをかぶった港のおじさんがいろいろお話を聞かせてくださいました(時化るかも、ということで気になっていたフェリーの運航情報も詳しく教えていただきました。ありがとうございました)。どの島でも人々はフレンドリーで、歩いているとすれ違いざまに車から手を挙げて挨拶してくださる方も少なくありません。観光客とわかると嫌な顔をされることも少なくない今日この頃、地元の方に歓迎していただけるのは本当にうれしいことです。今後もこのように暖かく受け入れてもらうためにも、旅行者は「旅の恥はかき捨て」などと妙な気を起こさず、しっかりマナーをまもることが肝要であると改めて感じました。

もともと分かれていた小中学校が合併し、義務教育学校として再スタートした。十島村には高校はないため、高校進学時は島外に出ることになる。

フェリー乗船

 入港時刻が近づいてきました。フェリーの姿はまだ見えませんが、入港予告の汽笛が斜面にこだまします。まもなく岬の影をまわってフェリーが現れ、あっという間に接岸してタラップがおりました。

朝日を浴びながら入港するフェリーとしま2。汽笛が山腹にこだまする。


島の出張所では座席指定を受けられないので、乗船後はすぐに船内案内所に赴くよう言われます。ここで乗船券に座席番号が書き込まれ、船室を利用できるようになります。まもなく荷物の積み下ろしも終わり、長い汽笛吹鳴とともに、一晩を過ごした諏訪之瀬島を後にしました。

甲板から遠ざかりゆく諏訪之瀬島を撮る。吐噶喇ならではの荒々しい景観が美しい。

中之島訪問・観光は第二弾でご紹介することにして、第一弾はひとまず終わりとします。最後までご覧いただきありがとうございました。次回作にもぜひご期待ください。間違いの指摘、感想などありましたらぜひコメントにてお知らせください。

お願い
拙い作例ではありますが、もし写真を転載される場合はコメントにて一言お知らせの上出典を明記いただきますようお願いします。また、写真はすべて周囲の方に配慮して撮影しています。





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