450万完済の記録|第1話:「あと少しで天井」の罠。新卒2年目の私が、450万の借金地獄へ足を踏み入れた日
※これは、すべて実話です。
「カード、作っておけば? 借りなきゃいいんだし」
会社の先輩にそう言われた時、私の頭には田舎の両親の顔が浮かびました。
「お金だけは絶対に人から借りるなよ」
幼い頃からそう教えられてきた真面目な田舎育ちの私にとって、消費者金融は別世界の、恐ろしい場所でした。
でも、先輩との関係を悪くしたくない。
それに、借りなければいいだけだし……。
そんな軽い気持ちで手にした1枚の「アットローン」のカード。
それが、その後の5年間をスロットと返済に捧げることになる**「地獄への片道切符」**だとは、当時の私は夢にも思っていませんでした。
すべては、仕事終わりのスロット。
「あと少しで天井なのに、手持ちが足りない」
その、たった数千円の焦りから、私の人生の歯車は狂い始めたのです。
地獄への招待状は「親切な先輩」が持ってきた
2002年の春。
入社2年目の私は、仕事にも慣れ、部活の仲の良い先輩もできて、充実した日々を送っていました。
唯一の楽しみは、仕事終わりに先輩と通うスロット店。
もともと私は、無茶な使い方はしないタイプでした。
ですが、スロットには「天井」という魔のシステムがあります。「ここまで回せば必ず当たる」というゴールです。
「あと少しで天井なのに、手持ちがない……」
泣く泣く台を捨て、他の人に座られる後ろめたさ。
そんな私を見かねて、先輩が差し出したのが、消費者金融**「アットローン」**の存在でした。
「とりあえず作っておけば? 使わなきゃいいんだし。今日みたいな『あと少し』の時に便利だぜ」
葛藤はありました。
でも、尊敬する先輩も持っているし、持っているだけなら……。
この軽い気持ちが、人生最初の地獄への入り口でした。
はじめての借入
カードを作ってからしばらくの間、それを使う機会は訪れませんでした。
どこかで「使ってはいけない」という理性が働いていたのだと思います。
しかし、仕事帰りのある日、ついにその時がやってきました。
スロットを打っていると、あと少しで当たりが確定する「天井」が目前に迫ったところで、手持ちの資金が底を突いたのです。
いつもなら、ここで悔しさを噛み締めながら席を立ち、先輩が打ち終わるのを待つのが私のルーティンでした。
ところが、その日は違いました。
「……あ、カード、持ってたな」
財布の中に眠る「アットローン」のカードが、急に熱を帯びたように感じられました。
「こんな時のために作ったんだ。天井まであと少しだし、1万円もあれば足りる。当たって出玉が出れば、それを換金してすぐに返せばいいだけじゃないか」
一度そう考えてしまうと、もう止まりません。私は吸い込まれるように、店外の銀行ATMへと向かいました。
初めての借り入れ。 ATMから出てきたピン札の1万円を受け取る手は、かすかに震えていたのを覚えています。
結果として、その1万円で天井に到達し、まとまった出玉を確保することができました。
借りた1万円は、その日のうちにすぐ返済。当時のアットローンは、短期間の返済なら無利子だった記憶があります。
「なんだ、すぐ返せば利息もつかないのか。意外と大丈夫じゃん」
怖かったはずの消費者金融が、「いざという時に助けてくれる便利な財布」に変わってしまった瞬間でした。
この安易な成功体験こそが、私の金銭感覚を狂わせる「猛毒」だったとも知らずに。
狂い始める感覚
「魔法のカード」を手にした私は、まるですべての台を攻略できる武器を手に入れたかのような錯覚に陥っていました。
特に、一人の時間がたっぷりある休日は危険でした。
「資金がなくなっても、アットローンがある」
その安心感がブレーキを壊し、借りては返す、というサイクルが日常になっていきました。
最初は1万円だった借入額が、気づけば2万、3万……と、雪だるま式に増えていきます。
給料日を待たずに限度額に手を出すようになり、「すぐに返せる」という確信が、少しずつ揺らぎ始めていました。
そんなある日の休日、私が熱中していたのは爆裂機として名高い『アラジンA』でした。
「あと少し、あと少し出れば……」
止まらない投資。ATMと店を往復する足。
気づいたときには、借入額はついに10万円の大台を超えていました。
さすがに背筋が凍りました。
「これ、もし返せなかったらどうなるんだ?」
という焦燥感が襲ってきます。
しかし、その日の夕方、奇跡が起きました。
アラジンが牙を剥いたように出始め、一気に出玉が積み上がります。
結果は、驚異の**7000枚(換金額にして14万円)**という大勝利。
「助かった……! これで全部返せる!」
歓喜と安堵で胸がいっぱいになりました。
ただ、閉店ギリギリまで粘ってしまったため、その日のうちにATMへ走ることはできず、返済は翌日に持ち越しとなりました。
「借金を抱えたまま夜を越す」
その事実に、かすかな恐怖と気味悪さを感じたのを覚えています。
翌朝、震える手ですべてを完済し、私は心に固く誓いました。
「もう二度と、あんな危ない橋は渡らない。借金はこれでおしまいだ」
……しかし、一度「10万借りても、勝てばチャラになる」という味を占めてしまった脳は、すでに正常な判断力を失い始めていたのです。
ミリオンゴッドにすがる思いで打ち始めたGOD揃い
この時代、パチスロ界には、とんでもなく恐ろしい台が登場していました。
その名は、『ミリオンゴッド』。
画面に「GOD」の文字が揃えば、一撃で5000枚(10万円)が確定する。
当時のスロッターなら誰もが夢見た、まさに「神」の名を冠する台でした。
しかし、その夢の裏には、一瞬でお札が吸い込まれていく絶望的な吸い込みの早さがありました。「一体いくら使うんだ……」と、当時の私には打つ勇気すら持てない、恐怖の対象だったのです。
ところが、ある休日のこと。 他の台で負けに負け、私はまたもアットローンのATMへ駆け込んでいました。
気づけば、借入額は再び10万円を突破。
「前回のアラジンAのように、なんとかなるはずだ」
そんな甘い期待は、あっけなく打ち砕かれました。打てども打てども、お金は飲み込まれるばかり。
「ヤバい。どうしよう。このままじゃ返せなくなる……」
夕方17時。極限まで追い詰められた私の目に飛び込んできたのは、ポッカリと空いたミリオンゴッドの席でした。
「逆転するには、もうこれ(GOD)しかない……」
なかば投げやりな気持ちで、ほぼ初打ちの台を確保しました。
財布にある、ありったけの現金をかき集めて打ち始めました。
コインの減る早さに心臓がバクバク鳴るなか、「これで出なかったら終わりだ」という恐怖と闘いながらレバーを叩き続けます。
その瞬間は、不意に訪れました。
ふとよそ見をした隙に、画面が激しく光り、そこには**「G・O・D」**の文字が。
「GOD揃いだ……! 10万確定だ……!!」
人生初のGOD降臨。
あんなに夢見た瞬間なのに、私はその劇的な瞬間を「よそ見」で見逃してしまったのです。自分の不甲斐なさに悲しくなりましたが、それ以上に「助かった」という安堵が勝り、震える手で閉店まで必死に回し続けました。
結局、この時も奇跡的に取り切ることができ、全額返済することができました。
「返せているうちは大丈夫。無利子期間もあるし、むしろ賢く立ち回っているくらいだ」
当時の私は、本気でそう思っていました。
しかし、この「借りてはすぐ返す」という優良顧客のような振る舞いが、私の借入限度額をどんどん押し上げ、金銭感覚を根底から麻痺させていくことになります。
次回予告: 1社目の限度額が150万円に到達し、ついに「貸せません」の宣告が。 そして、友人の結婚式が重なるという絶体絶命のピンチが私を襲います。
