アストラルディア物語 第2章 繋がり始める光 第3話 揺れる光の先で

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ざわめきが、まだ耳に残っている。
試合は中断されたまま。
理由なんて、誰もはっきりとは言わない。
でもーー
分かってる。
あれは、ただの魔法じゃない。
自分でも、説明できない“何か”。
胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。
「……どうなるの、これ」
小さくこぼれた声は、風に消えた。
見られた。
それは、もう分かってる。
問題はーー
これが、どう扱われるのか。
何も知らない顔でいれば。
今までみたいに振る舞えば。
「……まだ、大丈夫だよね」
言い聞かせるみたいに、呟いた。
「ルベリット」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げる。
そこにいたのは、アレキスだった。
いつもと同じように見えるのに、
どこかだけ、少し違う。
「……大丈夫か」
短い言葉。
優しいのにーー踏み込んでこない。
「うん……平気」
反射みたいに答える。
本当は、全然平気じゃないのに。
沈黙が落ちる。
アレキスが、わずかに視線を伏せた。
「……ごめんな、ルベリット」
ぽつりと、落ちる声。
「俺にも、まだ……はっきり分からないんだ」
一瞬、言葉が止まる。
「さっきの、あれも……」
迷うように、言葉を選んで。
「だからーー」
小さく、息を吐く。
「中途半端なこと言って、不安にさせたくない」
その声は、静かで。
でも、逃げているわけじゃないのが分かる。
「……そっか」
それ以上、聞けなかった。
聞いたら、何かが壊れてしまいそうで。
「ルベリット」
今度は、もう一つの声。
振り向くと、姉サフィールが立っていた。
静かな表情。
でも、その奥にあるものは、隠しきれていない。
やわらかく、言い聞かせるように。
「安心して、ルベリット」
そう言いながら
一歩、近づく。
「あなたはーー私が守るわ」
優しい声。
でも、その奥には揺るがない強さがあった。
「……うん」
頷きながら、胸の奥がざわつく。
違う。
聞きたいのは、そういうことじゃない。
「……ねえ、お姉ちゃん」
思わず、口をついて出る。
ほんの少しだけ、サフィールの視線が揺れた。
「何か……知ってるんでしょ」
逃げ場のない沈黙。
サフィールは、目を逸らさなかった。
「……ごめんね」
小さく、息を落とす。
「まだ……話せないの」
「今は、私からはーー言えない」
わずかに視線を伏せる。
「こんなことしか言えなくて……ごめんね」
やさしい声だった。
でも、その奥にーーわずかな迷いが滲んでいた。
でも——それは、私が聞きたかった答えじゃなかった。
「……そっか」
また同じ言葉が、こぼれる。
分かってる。
お姉ちゃんは、きっと——
私のために、隠してくれているんだってことくらい。
アレキスも、きっと同じで。
言えないだけなんだってことも。
それでもーー
「……なんで」
ぽつりと、こぼれた。
アレキスも。
お姉ちゃんも。
何か知ってるのにーー何も教えてくれない。
分からない。
自分のことなのに。
「……怖い」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
置いていかれてるみたいで。
自分だけ、何も知らなくて。
それが、何より怖かった。
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その場にいられなくて、ルベリットは歩き出した。
呼び止める声はなかった。
それが、少しだけーー寂しかった。
気がつけば、いつもの場所に来ていた。
学院の外れ。
誰も来ない、小さな水辺。
静かな水面が、空を映している。
風が吹くたび、わずかに揺れて。
その揺らぎが、妙に落ち着いた。
「……はぁ」
小さく息を吐く。
少しだけ、肩の力が抜けた気がした。
でもーー
胸の奥のざわつきは、消えないまま。
「……なんで、私だけ」
ぽつりと、零れる。
答えなんて、返ってこない。
その時だった。
水面がーー揺れた。
風じゃない。
今のは、違う。
「……え?」
もう一度、揺れる。
波紋が、広がる。
でもーー落ちたものは、何もない。
空を見上げる。
雲は、さっきと変わらない。
なのにーー
「……なに、これ」
視界の端で、光が揺れた。
それは、小さな光だった。
でも、ただの光じゃない。
どこか、見覚えがあるようなーー
胸が、どくんと鳴る。
あの時の、光。
図書館で見た、水面の反射。
あの、不思議な空間。
そしてーー
「あの子……」
言葉が、自然とこぼれる。
「……叶音、なのかな」
確信はない。
でもーー
そう思った瞬間。
光が、強くなった。
水面が、大きく揺れる。
反射した空が、歪む。
「……っ」
息を呑む。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけーー
“違う空”が、見えた気がした。
流れる光。
見たことのない軌跡。
その奥にーー
何かが、ある。
「……今の、なに」
声が震える。
怖い。
でもーー
「……なんか」
目を逸らせない。
「……嫌じゃない」
胸の奥が、少しだけ温かい。
さっきまでの、不安とは違う。
誰かが、いる気がした。
「……ねえ」
届くはずもないのに。
それでも、声が出る。
「……叶音」
名前を、呼んだ。
その瞬間ーー
光が、すっと消えた。

水面は、静けさを取り戻す。
空も、元通り。
まるで、何もなかったみたいに。
「……え」
しばらく、その場に立ち尽くす。
心臓の音だけが、大きく響いていた。
「……あれ」
ぽつりと、呟く。
風が、水面を揺らす。
でももうーーさっきの光は、どこにもなかった。
「……何だったの、今の」
分からないままーー
でもーー
確かに、誰かと繋がった気がした。
風が、水面を揺らす。
その揺らぎだけが、まだ消えない。
「……また、会えるよね」
小さな呟きは、水面に溶けていった。
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ここまで読んで頂きありがとうございます( ᵕᴗᵕ ✿ )
第2章第4話はこちらからどうぞ。:°ஐ..♡*
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