AIの地頭は変わらない。でも、思い出させ方を変えたら化けた話
そのAI、実は賢いのに、あなたが毎回"リセット"させているだけかもしれません。
「このAI、意外と使えないな」と思ったこと、ありませんか。
僕は1年ほど前、まさにそう感じながら、実は自分でAIをリセットし続けていました。
前々回のnote(以下の記事)でHubSpot共同創業者Dharmesh Shahさんの記事を勝手に解釈するシリーズを書いてきましたが、今回はその一歩手前にあった、地味だけど効いた気づきの話です。
このAI、賢くないな
Claude Codeというツールを使い始めた頃、僕はよく「このAI、意外と賢くないな」と感じていました。
昨日あれだけ的確に答えてくれたのに、今日はまるで話が噛み合わない。プロジェクトの前提を説明しても、次にパソコンを開いた瞬間にはまた振り出しに戻っている。
当時の僕は、それをAIの実力不足だと思っていました。「このモデルはこんなものか」と。でも今振り返ると、原因はモデルの賢さではなく、僕自身の使い方にありました。
毎回、同じ説明を最初から書き直す。これを1週間積み重ねると、体感でだいたい7〜8時間くらいは、この「前提の説明」だけに溶けていたと思います。
丸1日分です。AIに仕事を効率化してもらうために使い始めたはずなのに、AIのために説明する時間で1日を失っていたわけです。
話は2025年の2月ごろ、Claude Codeが登場したばかりの時期に遡ります。
当時の僕はCLI(コマンドラインでソフトウェアを操作する、黒い画面に文字だけが並ぶあの環境です)でClaude Codeを使っていました。
しかも設定は、パソコン全体という一番大きな範囲に置いていました。プロジェクトごとに区切っていなかった、ということです。
AIはステートレス(文脈を覚えていない)であるという前提
今なら分かるのですが、AIというのは基本的に「ステートレス」という性質を持っています。難しい言葉ですが、覚えなくて大丈夫です。
ひとことで言うと、会話が終わった瞬間に、それまでの文脈をきれいさっぱり忘れる、という性質のことです。
人間なら「昨日話したあの件だけど」で通じます。でもAIには、その感覚がありません。
このステートレスという性質を、当時の僕は知りませんでした。だから毎回、プロジェクトの背景や自分の要望を一から入力していました。
感覚としては、記憶障害のあるおじいさんに、毎回「はじめまして、このプロジェクトはこう言う内容で、こういう依頼を受けていて」と紹介してから、やっと本題の頼み事に入るようなものです。
内容紹介と本題、常に二度手間。しかもおじいさんは前回の会話をまったく覚えていないので、こちらが手を抜くと的外れな答えが返ってきます。だから手を抜けない。この繰り返しでした。
週に7〜8時間、丸1日分をこの「概要説明」だけに溶かしていた僕に、転機が訪れます。
「どうして毎回、前提が消えてしまうんだろう」という単純な疑問でした。
文脈をどう覚えさせるのか?

調べていくうちに、CLAUDE.mdという仕組みにたどり着きます。これはAnthropic社が公式に用意している機能で、プロジェクトのフォルダの中にCLAUDE.mdというファイルを1つ置いておくと、Claude Codeが起動するたびに、そのファイルの内容を自動で読み込んでくれるというものです。
つまり、「こんな背景があります」のプロジェクト紹介パートを、あらかじめファイルに書いて渡しておけるということです。
僕はこの仕組みを知ってから、必ずプロジェクトごとにCLAUDE.mdを作るようにしました。
ちなみに/initというスラッシュコマンドを打てば自動で作ってくれます。
すると、Claude Codeは僕がそのファイルを書いた瞬間から、まるでずっとこのプロジェクトに関わってきたかのように会話をしてくれるようになりました。
前提を説明する手間が消え、いきなり本題から話せる。ゼロからではなく、続きから会話ができるようになったんです。
このとき、HubSpot共同創業者のDharmesh Shahさん(現在もAI活用について精力的に発信を続けている人物です)がニュースレターで書いていた一文を思い出しました。
モデルのIQは上がらない、でも
「モデルのIQは上がらない。でもEQは上がる。ユーザーのことをより深く理解できるようになるからだ」という趣旨の話です。※以下記事より引用
Dharmeshさんはこの記事の中で、AIとの向き合い方を6段階の「はしご」として説明しています。
AIを賢く使うための6段階
プロンプト:そのつど何を尋ねるか
カスタム指示:再利用できる自己紹介や前提情報
スキル:特定の作業のための"型"(指示・テンプレ・実例のセット)
プラグイン:機能そのものの拡張
ツール:実際に何かを実行させる力
MCP・API・CLI:外部のシステムとつなげる仕組み
僕が体験したのはまさにこれでした。Claude Code自体(モデルの地頭)は、1年前も今も、実はそこまで別物になったわけではないのかもしれません。
変わったのは、僕がAIに「前提」という文脈をきちんと渡せるようになったことです。プロンプト(AIへの指示文のことです)の上に、もう1段「カスタム指示」や「プロジェクトの記憶」という層を積んだだけで、同じモデルが別人のように賢く見えるようになりました。
もし今、「AIがなんだかピンとこない」「毎回同じ説明をしている気がする」と感じているなら、まずは大掛かりな仕組みを作る必要はありません。
最初の一歩は、メモ帳アプリでもいいので、自分のプロジェクトについて3行だけ書いてみることです。例えば、こんな感じです。
①〇〇業の集客支援プロジェクト
②30代の個人事業主向け
③専門用語は使わずに説明してほしい
この3行を、次にAIに話しかけるときに一緒に渡すだけで、体感はかなり変わるはずです。慣れてきたら、Claude Codeを使っている方はCLAUDE.mdというファイル名でプロジェクト直下に保存すれば、次回からは渡す手間さえなくなります。
あなたにも、「このAI、話が通じないな」と思っていたら、実は自分が毎回説明を忘れさせていただけだった、という経験はありますか。
よかったらコメントで教えてください。
またのタイミングでこの6段のはしごの3段目「スキル」から上を、どう登ってみたか(そしてどこでつまずいたか)を書こうと思います。
