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「どのAI使うべき?」より大事な3つのQ

ネットサーフィンをしていたら世界に約30万社が利用するHubSpot共同創業者のDharmesh Shahさんが、ある日のニュースレターで「AIエージェントの力を左右する変数」というテーマの記事を出していました。

まずは、結論から。
AI(AIエージェント)の力は、CQ×IQ×EQで決まるという話です。
僕にとってここ最近で最も学びになる記事でした。

僕は、Dharmesh Shahさんのファンで言わずと知れたSaaS業界の雄です。    

読みながら、僕がここ数ヶ月ずっと引っかかっていたモヤモヤに、ようやく名前がついた気がしました。今日はこの記事を、僕自身の相談現場に引きつけて解釈します。

「うちに合うAIモデルはどれですか?」に答えるのをやめた話

最近、経営者の方からこんな相談を受けることが増えました。

  • 「ChatGPTとClaude、うちはどっちを使ったほうがいいですか?」

  • 「Gemini 3が出ましたが、乗り換えたほうがいいですか?」

  • 「社内でAIを本格導入したいんですが、どのモデルがいいですか?」

以前は答えていました。用途や機密性、コストを聞いて、「そういう用途ならClaudeですね」「日本語重視ならこれです」と。

でも、しばらく前に、答えるのをやめました。

理由はシンプルで、モデルの話に答えても、たぶんその会社のAI導入はうまくいかないからです。

中小企業ほど「モデル選び」に時間を溶かしがち

「AIを使いこなす=最新モデルを使いこなす」だと思っているビジネスマンは、けっこう多い気がします。

XやFacebookなどのSNSでも

「最新モデルでこんなことが一瞬でできた」
「Fable5がすごすぎる」

など常に最新モデルの利用の感想や報告がよく飛び交っています。

しかし、普段のビジネス利用や成果を上げるために最新モデルが本当に必要でしょうか?

この問いに関しては、正直言って最新モデルの力はややオーバースペックに感じている自分がいます。
勿論、最新モデルによるプロ顔負けのクリエイティブ制作や計算処理力、業務遂行力は計り知れません。

ただ、自分の中で何かモヤモヤとした気持ちがありました。

Dharmeshさんは、記事内でこのように語っています。

 世界一優秀なコンサルタントを雇ったとしよう。IQ200の正真正銘の天才だ。しかし、その人があなたのビジネス、顧客、進行中の取り組み、チームの人間関係を知らなければ、その知性は役立つ行動には変換されない。
 > 一方、IQ150だが、あなたのビジネスを知り尽くしている人を雇ったらどうか。誰もが迷わず後者を選ぶ。

これはAIも同じです。つまり、IQ(モデルの推論力)が高くてもGPT-5もClaude OpusもGemini 3も、あなたの会社のことは何も知りません。

「今期の見込み顧客が不足している」「上司が育休中」「最大の顧客に新しい意思決定者が入ったばかり」、そういうことをモデル単体では絶対に知りません。

だから、モデルを変えても返ってくる答えは一般論のままです。理由は、あなたの会社のコンテキストがAI側にないからです。

AIの成果を決める3つの Q

Dharmeshさんはこの話を、IQとCQという言葉で整理していました。

 エージェントの成功 = IQ × EQ × CQ で決まる。足し算ではなく掛け算だ。どれか1つでもゼロになれば、結果もゼロになる。

CQというのはコンテキスト指数(Context Quotient)のことです。
掛け算だからこそ、コンテキストがゼロなら、IQが200でも結果はゼロになる、ということです。

コンテキストはどこに散らばっているか

Dharmeshさんは記事の中で、ほとんどの企業でコンテキストが散らばっている場所を挙げていました。

  • CRMのデータベース

  • Slackのスレッドや会議メモ

  • Google Docsや共有ドライブ

  • メールのやり取り

  • 社員の頭の中

僕の経験だと、中小企業では最後の「社員の頭の中」に、コンテキストの7〜8割が入っている印象があります。「あの案件はA部長が経緯を知ってるから」「あのお客さんはBさんが担当してた頃の関係性で動いてる」。そういう暗黙知の山です。

人間の社員は、必要になったら他の社員に聞きに行けます。「あの件どうだったっけ?」で、コンテキストがつながる。

でもAIは、聞きに行けません。共有された構造化されたコンテキストがない限り、AIは初日出社の天才インターンのままです。
文章は上手いし、分析もできる、質問にも見事に答える。

でも、あなたの会社で何が起きているかは知らない。

Dharmeshさんの言葉を借りると、「多くのAI導入が期待外れに終わるのはこのため」です。足りないのは、もっと賢いモデルじゃなくて、コンテキストのほうです。

僕がAI社員を回す前にやったこと

抽象論だけだと嘘くさいので、僕自身の話をします。

うちの会社では、今では40個ほどのAIタスクが常に独立で自動で回っています。とはいえ、最初から40個作ったわけじゃありません。最初は3個から始めました。「毎朝のニュース要約」「商談メモの整理」「Slack投稿の自動化」の3つです。

その3個を作るときも、僕が最初にやったのは「モデル選び」ではありませんでした。

コンテキストを格納する場所を先に作ったんです。

具体的には、こんなものを整えました。

  • 案件・顧客ごとのフォルダ構造(誰が何をやっているか)

  • 会社ごとのルールブック(このクライアントは何をNGにしているか、過去に何で事故ったか)

  • 音声メモの自動仕分け先(社名ごとに整理される)

  • 過去の判断ログ(なぜこの意思決定をしたか)

このコンテキスト格納所を先に作ってから、AIタスクを乗せていきました。順番が逆だと、たぶんうまくいきません。

Dharmeshさんが記事の後半で書いていた、これがまさに正解だと感じました。

 エージェントを作る側でも、自社導入を検討する側でも、「基盤モデルはどれだけ優秀か?」だけを問うのはやめよう。常にこう問うべきだ。どれだけのコンテキストにアクセスできるのか?

モデル選びよりも先にやるべきコンテキストの棚卸し

「じゃあ何をすればいいの?」に対する僕の答えは、モデル選びよりずっと地味です。

  1. 社員の頭の中にしかない情報は何か?(顧客の関係性、案件の経緯、判断の理由、暗黙のルール)

  2. それが今どこに散らばっているか?(Slack、メール、Google Docs、頭の中、ホワイトボード)

  3. 来週の商談や意思決定でAIに使わせるとしたら、「これを知らないと役に立たない」情報はどれか?(3つに絞る)

3つに絞れたら、その3つを構造化して格納する場所を作るのが、あなたの会社のAI導入の本当のスタート地点だと僕は思います。モデル選びより、たぶん10倍くらい効きます。

そしてこの棚卸しは、Dharmeshさんが言うように「意思決定の瞬間に適切なコンテキストを捕捉する」ための第一歩でもあります。捕捉できていないものは、AIには渡せません。

モデルは変わり続ける、コンテキストは複利で効く

最後にもう1つだけ。

GPT-5もClaude 4.7もGemini 3も、来年には別のモデルに置き換わっています。モデル選びの努力は、そのたびにやり直しです。

でも、コンテキストの整備は違います。一度整えたら、次のモデルにも、次の次のモデルにも、そのまま使えます。複利で効いていきます。

僕が経営者仲間に「今からAI関連でどこに投資すべき?」と聞かれたら、迷わず「モデルじゃなくコンテキスト側」と答えるようになりました。理由はここです。

書き出してみて、詰まった項目があればコメントで教えてほしいです。「うちの場合ここが一番散らばってた」「この情報は構造化のしようがない」など、何でも歓迎です。

僕もまだ、自社のコンテキスト整備の途中です。

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