【考察】大﨑一貴は「芸術」を捨てて勝て――ラジャダムナン王座戦、本当の勝負は首相撲にある
3週間前、大﨑一貴 vs ジャルンスック・ブーンラナームエタイ
この再戦について、私はすでにnoteやyoutubeで
大﨑一貴は不利であること
それでも勝つためには何が必要か
という2点を軸に書いてきました。
そして今回、ペットパノムルン・キャットムーカオ**の対談内容、さらにゴング格闘技が報じた“芸術的KOに約800万円”というボーナス制度が明らかになり、この試合の構図は、よりはっきりしました。
■ ジャルンスックは「芸術的KO」を狙ってくる
これはもはや予想ではありません。必然です。
ラジャダムナン80周年記念大会
王者としての立場
ムエタイルールでの再戦
芸術的KOで1,600,000バーツ(約800万円)
これだけ条件が揃えば、ジャルンスックが倒しに行かない理由は一つもない。
それも、キックルールで負けはしたものの、飛車角落ちでも善戦した実績は自信になっていると思います。
■ KOを狙う王者の攻撃パターンは「確定」している
ジャルンスックが狙う“芸術的KO”の形は、実はもう見えています。
・長距離:ミドルキック
牽制と削りを兼ねるムエタイ王道の起点。
・近距離:首相撲からの膝
姿勢を奪い、体力を削り、試合を支配する時間。
・離れ際:肘
一撃で流れを切り取る、最も芸術点の高いフィニッシュ。
この「ミドル → 首相撲膝 → 離れ際の肘」
この流れは、ムエタイ王者が美しく倒すための黄金パターンです。
■ ペットパノムルンの助言は「正しい」
だが、それはムエタイの達人に限った話
ペットパノムルンは対談の中で、首相撲への対処としてこう語りました。
「腕を立てて、体勢を高く保ち、ブレイクを待つ」
これは間違いなく、ムエタイとしては正解かとおもいます。
しかし、これは誰にでも出来るものとは思えません。
ここに大きな落とし穴があります。
■ 「正解」が危険になる瞬間
この方法は、首相撲を日常的にやっている選手向けの対処法と思えます。
今回の相手、ジャルンスックは
腕の差し合い
首の取り合い
姿勢を崩してからの膝
これらすべてを武器として完成させている選手です。
その相手に対して、「腕を立てて高い姿勢を保ってブレイクを待つ」という選択は、
腕の差し合いに巻き込まれる
首の取り合いに巻き込まれる
上と取られるリスクがある
という消耗戦を自ら選ぶ行為になります。
■ 私が考える“現実解”
格好は悪くていい、密着して逃げ切れ
私は、3週間前から一貫してこう考えています。
首相撲は泥臭くダッコちゃん作戦。
四つ組して密着
腹と腹を合わせる
顎をしっかり引く
できれば額を相手の顎に付ける
これは攻撃の首相撲ではありません。「相手に何もさせないための防御姿勢」です。
ですので、ポイントは明らかに相手に流れます。
しかし、体力を削られるリスク、膝で削られ嫌がって離れると肘のリスクを考えると、ダッコちゃんが一番です。
膝も、崩しも、肘への布石も与えない。レフリーに
「何も起きていない」
と判断させ、早くブレイクを呼び込む。
美しさも、見栄えも不要。必要なのは、削られないこと、肘で倒されないことだけ。
■ ここにある最大の罠
KOボーナスという誘惑
この試合には、KOと判定で500万円以上の差があるボーナスが設定されています。
当然、会場も、空気も、「倒せ」「魅せろ」と囁いてくる。
しかしKOを狙えば狙うほど、ジャルンスックの土俵に近づく。
前に出れば、首相撲
首相撲を嫌がれば、離れ際の肘
芸術を求めれば、事故が起きる
これは王者が最も得意とする流れです。
■ 大﨑一貴に必要なのは「割り切り」
この試合で必要なのは、
美しい勝利でも
ムエタイ的に正しい勝利でも
会場を沸かせるKOでもない
ラジャダムナンのベルトを奪うこと。
判定でいい。地味でいい。ボーナスが減ってもいい。
日本人11人目のラジャ王者になる価値と、800万円のKOボーナス。
どちらが重いかは、明白です。
■ 結論
ジャルンスックは、芸術的KOを狙ってくる。
だからこそ大﨑一貴は、芸術を捨てなければ勝てない。
ムエタイの達人が語る正解と、キックボクサーがラジャで勝つための現実解は、必ずしも同じではありません。
削られない。
付き合わない。
誘惑に乗らない。
この割り切りができた時、
初めて
大﨑一貴の勝ち筋は現実になると、私は考えています。
