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女系天皇と「宸襟(しんきん)」

今日から参院選だけど、地味に「女系天皇」が論点になりつつある。

というか、なってほしいと思う。

たぶん、メディアは、論点にしたくないだろうが・・。


一つは、躍進いちじるしい参政党の代表、神谷宗幣参院議員の

「男系を維持するために側室が必要」

という2年前の発言が、ここにきて再び話題になっていること。

参政党YouTubeチャンネルで、2023年6月19日にアップされた動画での発言だ。


神谷氏は当該動画で、「私は今の皇室を維持するため、男系を維持するためには一番やるべきことは、もう“宮家の復活”だと思っております」と主張した上で、その中で次のような“提案”をしている。

「ちょっと賛否両論あると思うんですけど、天皇陛下に側室を、やっぱり持っていただいて。たくさん子供を作っていただくと。昔はそうしていたわけですよね。そういったことも、やるべきなんじゃないかなと。それぐらい思い切ったことを、やるべきなんじゃないかな、というぐらいの考えの持ち主です。

皇位継承者、沢山いるじゃないかっていう方、いらっしゃるんですけど、確かに血の繋がった男性の方いらっしゃると思うんですが、天皇のお仕事っていうのは“祭祀”ですから、霊統をちゃんと継いでいかないといけないんですよね。天皇霊っていうのが私はあると思っているので」

(女性自身 2025/7/2)


参政党は、参院選を前に、動画からこの発言を削除し、問い合わせに対してはノーコメントらしい。


もう一つは、1日に出馬会見した山尾志桜里が、「女系天皇論」を前面に選挙をすること。

それについては、私は昨日書いた。


もっとも、山尾自身は、「女系」よりも、「女性天皇容認」と言ってほしいらしい。

朝日新聞さん、ありがとうございます。 なお私の提案は、女性天皇容認+憲法9条改正です。 皇室を存続させ、憲法を機能させる。 この2つがセットで「国家の自律」です。


山尾の発言を正確に書くなら、「女性天皇容認、女系天皇の検討」の提起、ということになるだろう。

「男系天皇の議論も排除しない」としているから、「双系」ということか。

しかし、シャラくさいことを抜きにすれば、「女系天皇を提起」でいいと思う。



言うまでもなく、現在の天皇の後継者は、現実的には秋篠宮殿下の息子、悠仁親王しかいない。(秋篠宮と89歳の常陸宮も後継資格者だが、現実的でない)

現天皇の娘、愛子さんは、現皇室典範では結婚したら皇籍を離れるしかなく、天皇になれない。

法律を改正し、愛子さんを天皇に、というのが「女性天皇論」だ。


女性天皇は過去に何人も存在した。世論も愛子天皇には抵抗が少ない。

でも、男系論者は、ワンポイントリリーフであれ、愛子さんが天皇になるのに反対だ。

それは、「女系天皇」に道を開くからだ。

愛子さん自身は「男系」だ。でも愛子さんが男の子を生んでも、その男の子は天皇になれない。「女系」になるからだ。現在の皇室典範でも禁じられている。

しかし現実に、愛子さんに男の子が生まれた場合、「女系」だから、と排除できるのか、結局「女系」容認になるのでは、というのが、竹田恒泰のような男系論者が「愛子天皇」に反対する理由だろう。

愛子さんの息子でも(あるいは娘でも)天皇になれるようにしよう、というのが「女系天皇論」だ。


まあ、こうして書いていても、よそ様の家の娘さんが、将来子供を産んだら、とか、不敬という以前に、失礼なことを書いているようで、心が痛む。申し訳ない。


それはともかく、私は、神谷宗幣氏の「男系の維持には側室が必要」論は、右翼としては、それほど突飛な意見とは思わない。

あ、参政党というのは、保守というより「右翼」ですね。いい意味でも悪い意味でも。

現に、大正天皇も側室(華族の柳原愛子)の子だった。

だから、「天皇霊がある」というほどの世界観の人が、これを主張するのはおかしくない。

「天皇霊」なんて言うと、笑う人がいるかもしれないけど、結局天皇制というのは、そういうスピリチュアルなものが存在するという世界観を前提としている。そういう意味でも、神谷氏の言ってることは、右翼としてはおかしくない。

なんで削除しちゃったんでしょうね。


<7・4追記>
あとで知ったが、池田信夫も同じ感想のようだ。

参政党がさっそく女性週刊誌の餌食になっているが、側室の復活という話は、男系男子を守る上では自然な発想。 重婚を禁じる民法には違反するが、天皇に民法は適用されない。

<追記終わり>


私は天皇制廃止論者なんで、何を言っても「どうせ天皇制廃止が目的だろう」と言われて仕方ない。

私は暴力的な廃止論者ではないので、それこそ国民の総意で決めればいいと思っている。それに従いたい。


でも、小林よしのりが「女系天皇」「愛子天皇」を言うのは、それが現在の皇室の意思だと思っているから、だと思う。

小林自身、現在の上皇とお会いして、そんな思いが伝わった、ようなことを書いていたと思う。


そう、女性・女系論をふくめ、つねに欠けているのは、皇室自身の思いだ。彼らがどう考えているのか、というその視点がない。


皇室が一つの家業とすれば、彼らにとっては家業の後継ぎを決める話だ。それなのに、彼らに何の発言権も決定権もない。それは気の毒だと思う。

古代には、現天皇が、次の天皇を決める権限を持っていた。複数候補者がいる場合は、誰を天皇にするか、決めなければならなかった。

天智天皇が、その意思を曖昧にしたから、天智の弟(天武)と天智の息子(弘文)のあいだで、古代最大の内乱である壬申の乱が起こった。

後継者を決める、という「人事権」が、天皇の権威の源泉でもあったはずで、それを奪われている現在の天皇は、そういう意味でも気の毒だ。権威の半分はなくしているようなものである。


だから、上皇陛下であれ、現天皇陛下であれ、「自分たちに選択肢がないのはおかしい」という思いを持たれていても不思議ではない。

上皇陛下は、譲位の流れで、そういう思いを、小林よしのりに漏らしたのかもしれない。

現在、選択肢は、現実的に「悠仁親王」一つなので、愛子さんを選択肢にくわえてほしい、と思ったのかもしれない。

必ずしも、男系から女系へ、という転換を意識されたのではなく、選択肢が複数ある中から選ばれるべきだ、という考えなのかもしれない。

候補者たちをいちばん知っているのは彼らでもある。


天皇自身は、本来なら最大の関心事であるべき後継者選びに、自分のお考えをはっきり述べられないので、いろいろ忖度するしかない。

小林よしのりは、積極的に忖度して、「愛子天皇論」を言っているのだと思う。


そういえば、日本保守党の百田尚樹代表は、「なぜ天皇に忖度しないといけないのか」と発言して、2017年の朝ナマで小林とやり合ったことがあった。


2017/5/27 朝まで生テレビ! 天皇の譲位をめぐるくだり

田原総一朗「あなたね、8月8日の天皇のおことば見た?聞いた?」

百田尚樹「聞いてない」

小林よしのり「あ?」

百田「聞いてないだけやん」

小林「おことばを聞いてなくって、これ語ったってしょうがないじゃんか!そんなものは」

(中略)

百田「なんで忖度せなあかんわけそれ?」

小林「天皇陛下に言論の自由はないんだから」


保守や右翼の人の発言は、天皇家に、自分たちに都合のいいように振る舞ってほしいだけに聞こえる。

自分たちのための「記号」、置き物のようなものであればいいのだろう。

天皇が何を思っているか、何を言ってるかにも興味がない。

そりゃないだろう、と思うね。彼らも人間なんだから。


小林よしのりには、「天皇制は現代の最後の奴隷制」という井上達夫の思想の影響もあると思う。

天皇の意思を「宸襟(しんきん)」というけど、それを忖度して、「宸襟を悩まさない」「宸襟を安んじる」のが臣下の務めだった。


以前書いたように、80年前の8月15日に書かれた二つの「遺書」に、共に「宸襟」という言葉がある。


国体の護持亦容易ならざるものありて、痛く宸襟を悩まし奉り、恐惶恐懼為す所を知らず。其の罪万死するも及ばず。
(陸軍大将・杉山元の遺書)

ああ、力足らず、誠足らずして、真に宸襟を安んじ奉るを得ざる罪、死に値す。(十五日)
(芥川賞作家・火野葦平のメモ 北九州市立文学館の2020年「火野葦平展―レッテルはかなしからずや」で初公開された)


小林も、その意を汲んだと思われる山尾志桜里も、天皇の「宸襟」を安んじようとしているんだろう、と私は好意的に見ている。(ただし、それは皇室に操られている可能性もある)

一方、百田尚樹は不敬だと思うが、神谷のような右翼の人が、天皇制を守ろうと、あえてダークなところに踏み込んで発言するのも理解はできる。


選挙中だけど、やっぱり、この問題は、党派性を除いた国民的議論にすべきで、神谷氏の動画削除にせよ、山尾氏の出馬にせよ、そのきっかけになればよいと思う。



<参考>


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