【ブックガイド】灰色の脳細胞に、甘美なごほうびを♡ 名探偵と甘いもの!
月村了衛さんの最新作『おぼろ迷宮』。正体不明の老人と大学生のご近所謎解き道中を描いた無類に楽しいミステリですが、実は謎解きに加えてもうひとつのお楽しみがあります。それは甘いもの! 作中最大の事件を解明するべき主人公たちが敢行した「プリン探求」のデスロードは、ミステリと甘味の歴史に残る名場面と言えましょう。読み返してたらたまらなくなってきたので、ちょっと失礼してプリン買ってきますね(中断)。
(40分後、満ち足りたツヤツヤの顔で)思えば、ミステリにおける探偵は究極の頭脳労働者。名推理のためには、灰色の脳細胞に甘くておいしい燃料を惜しみなく投下するべきでしょう、とかのポワロも言っている(言ってないけど心の声を勝手に受信)。そして読者として探偵に伴走する我々の、やや白っぽいかもしれない脳細胞にも!
甘いものと名探偵、時に不穏な味も混じりつつ、それすらもおいしさを引き立てる貴重な成分……そんな究極のマリアージュをお楽しみいただける6冊をご紹介します。
月村了衛『おぼろ迷宮』(KADOKAWA)

女子大生夏芽と謎多き老人鳴滝が街の難事件を鮮やかに解決する!
おんぼろアパート『朧荘』に住む女子大生夏芽は、まるで異次元に迷い込んだかのような不可解な出来事に遭遇する。〈謎〉を解決するのは、隣に住む正体不明の老人、鳴滝。尋常ならざる人脈と驚異の推理力を駆使する彼は一体何者なのか。街にはびこる不可思議な事件の謎を、凸凹コンビがスイーツを食べつつ華麗に解決!
深木章子『欺瞞の殺意』(角川文庫)

このミス、本ミスWランクイン作。往復書簡で明かされる真相とは?
昭和41年。地方の資産家楡家の当主がゴルフ中に心筋梗塞64才で逝去。親族しかいない法要が屋敷で執り行われるがそこで殺人事件が起こる。長女と孫(早死にした長男の子)がヒ素で死んだのだ。調査を進めると、殺された長女の婿養子の弁護士のポケットから、ヒ素をいれたチョコレートの紙片が発見された。
「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです――。」
無実にもかかわらず「自白」して無期懲役となったその弁護士は、事件関係者と「往復書簡」を交わすことに。「毒入りチョコレート」の真犯人をめぐる推理合戦は往復書簡の中で繰り広げられ――、やがて思わぬ方向へ「真相」が導いていく――。「このミステリーがすごい!」2021年版 国内編(宝島社)と「2021年本格ミステリベスト10」国内ランキング(原書房)で堂々7位のW受賞作品。A.バークリーの『毒入りチョコレート事件』をオマージュとした本格ミステリ長編。!
坂木 司、友井 羊、畠中 恵、柚木麻子、若竹七海『ミステリなスイーツ 甘い謎解きアンソロジー』(双葉文庫)

思わず顔がほころぶ口福なミステリアンソロジー!
濃厚なチョコレート、あたたかなスコーン、とろけるようなプリン……おいしいスイーツには謎解きがついてくる! デパ地下の和菓子店に訪れるお客さんの謎めいた行動の理由、家庭科準備室で消えたチョコレートの行方、オフィスで饗されるアフタヌーンティーに隠された秘密など、5人の人気作家による、スイーツにまつわる物語を詰め合わせました。甘いスイーツと謎解きを、どうぞたっぷり召し上がれ。
米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』(創元推理文庫)

「古典部」シリーズの著者が描くビタースイートなミステリシリーズ。
小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか?
近藤史恵『マカロンはマカロン』(創元推理文庫)

謎と美味。絶品揃いのメニューに必ずご満足いただけます。
下町のフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルはカウンター七席、テーブル五つ。三舟シェフの気取らない料理が大人気。実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解いてくれる名探偵でもあるのです。突然姿を消したパティシエが残した謎めいた言葉の意味は? おしゃれな大学教師が経験した悲しい別れの秘密とは?
アガサ・クリスティー『アクロイド殺し』(クリスティー文庫)

ミステリ界に大きな波紋を投じた名作、新訳で登場。
名士アクロイドが刺殺されているのが発見された。シェパード医師は警察の調査を克明に記録しようとしたが、事件は迷宮入りの様相を呈しはじめた。しかし、村に住む風変わりな男が名探偵ポアロであることが判明し、局面は新たな展開を見せる。
