テスホールディングス(5074)vs ウエストホールディングス(1407)— 事業成長力を徹底比較する
【再エネ×蓄電池の二大プレーヤー ― EPCとストックの両輪をどう回すか】
記録日:2026年6月3日
株価・財務データは2026年5月〜6月時点の情報を参照。
重要:両社は決算期が異なるため直接比較は参考値となる。テスホールディングスは6月決算、ウエストホールディングスは8月決算(いずれも日本基準)。
また市場区分も異なり、テスホールディングスは東証プライム上場、ウエストホールディングスは東証スタンダード上場。
筆者の注目ポイント
注目度:テスホールディングス ★★★☆☆ / ウエストホールディングス ★★★☆☆(5段階)
どちらかといえばウエストホールディングスにやや関心を持っている。ROE約19%という高い資本効率と、系統用蓄電所開発への先行投資が形になりつつある点が光る。ただしテスホールディングスの蓄電池EPC大口受注の積み上がりと、エネルギーサプライ事業のストック化も成長ドライバーとして見逃せない。
① 現在の株価・バリュエーション比較
テスホールディングス(5074)
株価:約1,019円(2026年6月1日時点)
予想PER:約59.9倍(※経常利益が一時的に低水準のため割高に見える点に注意)
PBR(実績):約1.45倍
ROE(実績):低水準(※今期は経常利益が圧縮されているため。通期予想ベースでは改善見込み)
配当利回り(予想):約0.57%(年間配当5.8円予想、前期5.12円から増配)
自己資本比率:約30%(再エネ発電所の自社保有で借入が多く、資産が重い構造)
時価総額:約720億円
決算期:6月決算(日本基準)
市場:東証プライム
ウエストホールディングス(1407)
株価:約1,500〜1,700円台(2026年5月〜6月で変動が大きい。参考値)
予想PER:約18倍前後(株価上昇により2025年央の7倍台から大きく切り上がった)
PBR(実績):約3倍前後(出典・時点により1.9〜3.6倍とブレが大きい)
ROE(予想):約19%(高水準)
配当利回り(予想):年間70円配当予定(前期65円から増配。株価により2〜4%前後で変動)
自己資本比率:やや低め(蓄電所開発の先行投資で借入活用)
時価総額:約1,200〜1,400億円
決算期:8月決算(日本基準)
市場:東証スタンダード
※両社とも株価のボラティリティが高く、テーマ株的な値動きをするため、バリュエーション指標は時点により大きく変動する。
② 直近決算の比較
テスホールディングス(5074)の直近決算
2026年6月期 第3四半期累計(連結)実績:
売上高:約374.4億円(前年同期比39.8%増)
営業利益:約35.9億円(前年同期比34.6%増)
自己資本比率:約30.5%(前期末比2.4ポイント増)
自社発電所の発電容量は2026年6月期に入り合計400メガワット超に到達
2026年6月期 通期(連結)会社予想:
売上高:約470億円(前期比28.1%増)
営業利益:約36億円(前期比41.3%増)
経常利益:約18億円
当期純利益:約12億円(前期比485.8%増)
※経常利益が営業利益より低いのは、自社発電所保有に伴う支払利息など金融費用の影響。
出典:テスホールディングス 2026年6月期 第3四半期決算短信(2026年5月15日発表)
ウエストホールディングス(1407)の直近決算
2025年8月期 通期(連結)実績:
売上高:減収(系統用蓄電所開発への経営資源シフトに伴う一時的な減収)
経常利益:約79.6億円(前期比20.0%減)
1株当たり純利益:約135円
蓄電所事業で10か所の開発販売を完了し、成長基盤を構築
2026年8月期(連結)会社予想:
経常利益:約96.7億円(前期比21.5%増)と増収増益見込み
年間配当:70円(前期65円から5円増配)
出典:ウエストホールディングス 2025年8月期 決算短信・決算説明資料(2025年10月発表)
③ 事業構造・中期計画の比較
テスホールディングスの事業構造
2つの事業セグメントを軸に、「つくる(EPC)」と「ためる・うる(サプライ)」の両輪で展開。
主な事業セグメント:
エンジニアリング事業:太陽光発電システム、コージェネレーションシステム、各種環境・省エネ対策システムの設計・施工・販売。近年は蓄電池EPC(受託型)案件が急拡大しており、大口受注を複数獲得。
エネルギーサプライ事業:再生可能エネルギーの発電・卸売販売、新電力の小売、O&M(運用保守)、バイオマス燃料供給など。佐賀伊万里バイオマス発電所の稼働、オンサイトPPAの増加で売上が拡大。売上総利益の約3分の2を占めるストック型の柱。
強み:
蓄電池EPCの引き合いが旺盛で、新規大口受注が積み上がっている
エネルギーサプライ事業のストック収益化が進展(売上総利益の約67%)
自社発電容量400メガワット超という発電資産の厚み
課題:
バイオマスEPCの不採算案件・引当金計上による利益圧迫
佐賀伊万里バイオマス発電所の利益率が太陽光に比べ低く、出力制御の影響も
自社発電所保有による借入負担と自己資本比率の低さ(約30%)
中期方針(TX2030 / 中期経営計画 2025-2030):
「ROE/ROIC重視経営」「成長投資と株主還元」「ESG経営の推進」を掲げる。事業構造転換による高収益化を目指し、ストック収益の積み上げを重視。
ウエストホールディングスの事業構造
再生可能エネルギー全般を手掛ける総合エネルギー企業。連結子会社41社からなるグループ構成。
主な事業セグメント:
再生可能エネルギー事業:公共・産業用太陽光発電システムの設計・施工・販売、非FIT太陽光発電所の開発販売
蓄電所事業:系統用蓄電所の開発・販売(近年の最重点領域)
省エネルギー事業:ウエストエスコ事業(初期費用負担なしの省エネトータルサービス、LED・空調・冷凍冷蔵設備の温度制御など)。ストック型収益。
電力事業:売電・電力小売
メンテナンス事業(O&M)
強み:
ROE約19%という高い資本効率
系統用蓄電所開発で先行(2025年8月期に10か所の開発販売完了)
TMEIC(東芝・三菱電機の合弁)との業務提携で蓄電システム・受変電設備を確保
太陽光発電工事の全国展開と金融機関・工務店との提携網
課題:
太陽光FIT制度の縮小に伴う再エネ事業の構造転換負担
ウエストエスコ事業でLED照明契約の満期到来による収益資産・売上の減少傾向
蓄電所事業への経営資源集中による短期的な減収・減益(2025年8月期)
東証スタンダード上場による流動性・カバレッジの制約
中期方針:
系統用蓄電所開発事業を成長の主軸に据え、非FIT発電所開発から経営資源を大きく振り向ける戦略を明確化。蓄電所市場の拡大に合わせた事業展開のスピードアップを掲げる。
④ 2社のビジネス戦略の違い
事業ポートフォリオの広げ方
テスホールディングスは「エンジニアリング」と「エネルギーサプライ」の2軸に集約し、EPCで稼ぎながら自社発電・売電というストック資産を積み上げる垂直統合型。ウエストホールディングスは太陽光・蓄電所・省エネ・電力・メンテナンスと5事業に多角化し、FIT太陽光から系統用蓄電所へと主軸を移すポートフォリオ転換を進めている。
投資方針と成長手法
テスは蓄電池EPCの受注拡大と自社発電所の保有拡大を並行推進。ウエストは系統用蓄電所開発に経営資源を集中投下し、TMEICとの提携で機器調達を固める「選択と集中」型の投資を採る。
市場開拓の方向性
両社とも国内の再エネ・蓄電市場を主戦場とするが、テスは産業向けのオンサイトPPAやバイオマスなど発電手法の多様化を進め、ウエストは系統用蓄電所という新市場でのポジション確保を最優先する。
戦略の違いが生む構造差
テスのモデルは自社発電資産を持つことでストック収益を厚くする一方、借入と資産が重くなり自己資本比率が低下しやすい。ウエストは開発販売型(つくって売る)を軸とすることで資本回転を効かせ、高いROEを実現している。前者は「資産を抱えて長く稼ぐ」、後者は「開発して回転させる」という、再エネビジネスにおける異なる収益アプローチが鮮明だ。
⑤ 今後3年間の事業環境シナリオ
※あくまで事業環境の整理であり、株価予測ではありません。
追い風シナリオ
系統用蓄電所市場の本格拡大:再エネの出力変動を吸収する蓄電需要が急増し、両社の蓄電関連事業が成長。特に先行するウエストと、EPC受注を積むテスの双方が恩恵を受ける。
電力料金高止まり・脱炭素政策の継続:オンサイトPPAや省エネサービスの需要が拡大し、ストック収益が積み上がる。
金利環境の安定:自社発電所を多く保有するテスにとって、借入コストの安定は利益率改善につながる。
基本シナリオ
FIT太陽光は縮小局面が続くが、非FIT・蓄電所・省エネへの転換が進み、両社とも事業構造のシフトを継続。
テスはエネルギーサプライのストック収益化を進め、ウエストは蓄電所開発販売の実績を積み上げる。
一方で、開発案件の計上時期のブレや不採算案件のリスクは継続的な不確実要因として残る。
逆風シナリオ
蓄電所市場の競争激化・採算悪化:参入企業の増加で開発利益率が低下すれば、両社の成長シナリオに影響。
金利上昇:自社発電所保有のテスにとって金融費用の増加が利益を圧迫しうる。
出力制御の拡大:再エネ発電所の稼働率低下が売電収入を直撃する可能性。バイオマスの燃料価格変動もリスク。
制度・補助金の変更:再エネ・蓄電関連の政策支援が縮小すれば、需要が鈍化するおそれ。
⑥ 筆者がウエストホールディングスに注目する理由
1. 高いROEと資本効率
ROE約19%は再エネ関連企業として高水準。開発販売型のビジネスモデルにより資本を効率よく回転させており、自社資産を重く抱えるモデルとは一線を画す資本効率の高さが魅力だ。
2. 系統用蓄電所での先行ポジション
2025年8月期に蓄電所10か所の開発販売を完了し、TMEICとの提携で機器調達体制も固めた。再エネ拡大に伴って需要が高まる系統用蓄電所市場で、先行して実績とパイプラインを積み上げている点は評価できる。
3. 増収増益への回帰と増配
2025年8月期は蓄電所への資源集中で一時的に減収減益となったが、2026年8月期は経常利益21.5%増の増収増益見込み。配当も年間70円へ増配方針を示しており、株主還元姿勢も明確だ。
逆の見方・反論ポイント(テスホールディングスの魅力):
テスは東証プライム上場で、ウエスト(スタンダード)より情報開示・市場での認知度の面で優位。
蓄電池EPCの大口受注が累計で大きく積み上がっており、エンジニアリング事業の成長ドライバーが明確。
エネルギーサプライ事業のストック収益(売上総利益の約67%)が安定収益基盤を形成。
自社発電容量400メガワット超という発電資産は、長期的な売電収入の源泉となる。
バリュエーション面では、ウエストのPBR約3倍に対しテスは約1.45倍と相対的に控えめ。
⑦ 両社の競合マップ(6社)
直接競合(2社)
ウエストホールディングス(1407)/ テスホールディングス(5074)(両社相互)
再生可能エネルギーEPCと蓄電所開発という主力領域で正面から競合する。太陽光・蓄電池・省エネサービスの各分野で受注を競い合う関係にある。
エクシオグループ(1951 / 東証プライム)
通信インフラ建設を母体としつつ、再エネEPC・系統連系工事に進出。蓄電所・太陽光の施工分野で競合する。
広義の競合(2社)
レノバ(9519 / 東証プライム)
再生可能エネルギー発電事業の専業デベロッパー。発電所の開発・運営という点でテスの発電事業、ウエストの開発販売事業と顧客・用地・資金を奪い合う関係。
イーレックス(9517 / 東証プライム)
バイオマス発電と電力小売を手掛ける新電力大手。テスのバイオマス発電・電力小売事業と事業領域が重なる。
海外 or 代替競合(2社)
Tesla(TSLA / NASDAQ)
蓄電池システム「Powerwall」「Megapack」で系統用・産業用蓄電市場に世界規模で展開。両社の蓄電所事業にとって、機器供給・システム面での代替・競合プレーヤー。
Sungrow(陽光電源 / 300274.SZ)
中国の太陽光パワーコンディショナー・蓄電システム世界大手。蓄電システム・PCS(パワコン)の供給で、両社の調達・施工に影響を与えうるグローバルプレーヤー。
※あくまで事業環境の理解を補助する目的であり、他銘柄の推奨ではない。
⑧ それぞれのリスク要因
テスホールディングス(5074)のリスク
自己資本比率の低さ(約30%)と自社発電所保有に伴う借入負担。金利上昇局面での金融費用増加リスク。
バイオマスEPCの不採算案件・引当金計上による利益変動
佐賀伊万里バイオマス発電所の利益率の低さと出力制御の影響
京都府開発案件など大型案件の計上時期のブレ(業績予想に含めていない不確実性)
現状の高PER水準(経常利益圧縮による)が示す業績変動の大きさ
ウエストホールディングス(1407)のリスク
系統用蓄電所への経営資源集中による短期的な業績変動(実際に2025年8月期は減収減益)
ウエストエスコ事業でLED照明契約の満期到来に伴う収益資産・売上の減少傾向
FIT太陽光縮小に伴う再エネ事業の構造転換負担
PBR約3倍と相対的に高いバリュエーション。テーマ株的な株価変動の大きさ。
東証スタンダード上場による流動性・アナリストカバレッジの制約
共通のリスク
再エネ・蓄電関連の制度・補助金変更リスク(政策依存度が高い)
出力制御の拡大による売電収入・発電所採算の悪化
蓄電所市場の競争激化による開発利益率の低下
金利上昇による開発・保有コストの増加
太陽光パネル・蓄電システムの調達価格変動(為替・地政学リスクを含む)
⑨ 読者の関心軸別まとめ
※特定の投資行動を推奨するものではありません。
成長性重視の方へ:
両社とも蓄電所市場の拡大という成長テーマを共有。テスは蓄電池EPCの大口受注と発電容量拡大、ウエストは系統用蓄電所開発の先行ポジションがそれぞれ成長ドライバー。テスは通期で純利益485%増予想、ウエストは経常利益21.5%増予想と、いずれも回復・成長局面にある。
安定性重視の方へ:
テスのエネルギーサプライ事業(売上総利益の約67%がストック型)と、ウエストの省エネ事業(ウエストエスコのストック収益)が安定収益の柱。ただし両社とも開発案件の計上時期のブレや政策依存があり、業績の振れ幅は小さくない点に留意。
配当重視の方へ:
ウエストは年間70円への増配方針で、株価次第で利回り2〜4%程度。テスは配当利回り0.6%前後と低めで、成長投資を優先する段階。配当インカムを重視するならウエストに分がある。
バリュー重視の方へ:
テスはPBR約1.45倍とウエスト(約3倍)に比べ相対的に控えめだが、PERは経常利益圧縮により見かけ上高い。ウエストは高ROEを背景にPBRが切り上がっており、両社とも純粋なバリュー株というより成長・テーマ株として評価される局面にある。
⑩ この比較の面白さ
再エネと蓄電という同じ成長市場を舞台に、似て非なる収益モデルを持つ2社を並べられるのがこの比較の妙味だ。EPC(施工)とストック(保有・運営)という再エネビジネスの二面性を、両社がそれぞれ異なる比率で組み合わせている。
テスホールディングスの核心:
「つくって、ためて、うる」を自社で垂直統合し、発電資産400メガワット超を抱えながら蓄電池EPCで攻める。資産を重く持つ分だけ借入と金融費用がのしかかるが、その先にあるのは長期の安定したストック収益という構造だ。
ウエストホールディングスの核心:
太陽光から系統用蓄電所へと主軸を機敏に移し替える「選択と集中」と、開発販売による高い資本回転率が持ち味。ROE約19%が示すとおり、資産を抱え込まずに回転させて稼ぐ身軽なモデルで、変化の速い再エネ市場に適応している。
記録データ
(2026年6月3日時点・参考値)
テスホールディングス(5074)
株価:約1,019円
時価総額:約720億円
予想PER:約59.9倍(経常利益圧縮により高水準)
PBR:約1.45倍
配当利回り(予想):約0.57%(年間5.8円配当予想)
自己資本比率:約30.5%
2026年6月期 第3四半期累計 売上高:約374.4億円(前年同期比+39.8%)
2026年6月期 通期予想 売上高:約470億円(前期比+28.1%)
2026年6月期 通期予想 営業利益:約36億円(前期比+41.3%)
決算期:6月決算
ウエストホールディングス(1407)
株価:約1,500〜1,700円台(変動大・参考)
時価総額:約1,200〜1,400億円
予想PER:約18倍前後(時点により変動)
PBR:約3倍前後(出典・時点により1.9〜3.6倍)
ROE(予想):約19%
配当(予想):年間70円(前期65円から増配)
2025年8月期 経常利益:約79.6億円(前期比▲20.0%)
2026年8月期 経常利益予想:約96.7億円(前期比+21.5%)
決算期:8月決算
数値の出典
テスホールディングス 2026年6月期 第3四半期決算短信・決算説明資料(2026年5月15日発表)
ウエストホールディングス 2025年8月期 決算短信・決算説明資料(2025年10月発表)
各社IR公式サイト・Yahooファイナンス・みんかぶ・株予報Pro・株探・IRBANK(2026年5月〜6月参照)
ログミーファイナンス(テスHD決算説明会書き起こし)
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記載された情報は作成時点のものであり、将来の業績・株価を保証するものではありません。
投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
掲載数値には誤りが含まれる可能性があり、必ず一次情報(各社IR・決算短信等)をご確認ください。
おまけ:今日のひとこと用語解説
「系統用蓄電所」って何?
電力会社の送電網(系統)につなぐ、巨大な"充電池の倉庫"のことです。太陽光や風力は天気で発電量が変わるので、たくさん発電したときに電気をためておき、足りないときに放出して電力の波をならす役割をします。たとえるなら、雨水をためて晴れの日に使う貯水タンクの電気版。再エネが増えるほど必要になるため、いま注目の成長分野です。
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