タマホーム(1419)vs リブワーク(1431)— 事業成長力を徹底比較する
【全国ローコスト最大手 × デジタルマーケの異端児 ― 戸建ビルダー2社の対照的な現在地】
記録日:2026年6月5日(株価・指標は同日近辺の概算値)
戸建住宅を主力とする2社の比較です。読み始める前に、いくつか前提を共有させてください。
決算期が異なります。 タマホームは5月決算、リブワークは6月決算です。決算期がずれているため、業績の直接比較はあくまで「参考値」としてご覧ください。
会計基準は両社とも日本基準です。
上場市場が異なります。 タマホームは東証プライム、リブワークは東証グロースです。
規模差が非常に大きい点に注意してください。売上高はタマホームが約2,090億円(今期予想)、リブワークが約140億円規模で、約14倍の開きがあります。「同じ戸建」でもステージがまったく違う2社です。
タマホームは今期、前期195円から125円への減配を予想しています。リブワークは成長投資を優先する低配当方針です。
筆者の注目ポイント
注目度:タマホーム ★★☆☆☆ / リブワーク ★★★☆☆(5段階)
規模・収益基盤・配当原資では、圧倒的にタマホームに分があります。一方で筆者は、リブワークのほうに「やや強い関心」を持っています。理由は、デジタルマーケティングを核に据え、SaaSや3Dプリンター住宅といった「住宅×テック」へ事業を再定義しようとする構造的な挑戦に、事業モデルとしての面白さがあるからです。
ただし、これは「リブワークのほうが優れている」という意味ではありません。リブワークは予想PERが高く、小型で先行投資負担が重く、足元は減益と、リスクは明確です。あくまで「観察対象としての面白さ」での注目である点を、先にお断りしておきます。
① 現在の株価・バリュエーション比較
タマホーム(1419 / 東証プライム)
株価:約2,800円(2026年6月5日近辺。年初来安値圏で推移)
PER(予):約60倍 ※今期純利益予想が低水準のため高めに出ています
PBR:約3.2倍
ROE(予):約4.9%
配当利回り(予):約4.4%(年間配当125円予想)
自己資本比率:約37%
時価総額:約840億円
決算期:5月決算
リブワーク(1431 / 東証グロース)
株価:約640円(2026年6月5日近辺)
PER(予):約78倍
PBR:約3.4倍
ROE(予):約4.4%
配当利回り(予):約1.0%(成長投資優先の低配当方針)
自己資本比率:約30%
時価総額:約155億円
決算期:6月決算
補足:両社ともPERが高めに見えますが、これは「割高」というより「足元の利益水準が一時的に落ち込んでいる」ことの裏返しです。分母(利益)が小さいとPERは大きく跳ね上がります。PBR・ROEと合わせて立体的に見るのが安全です。
② 直近決算の比較
タマホーム(1419)の直近決算
2026年5月期 第3四半期(累計):売上高 約1,208億円(前年同期比 約2.5%減)、営業損益は約34億円の赤字(前年同期からは赤字幅縮小)。
注文住宅の引渡棟数は減少した一方、戸建分譲は底堅く推移。
通期予想(2026年5月期):売上高 2,090億円(前期比4.1%増)、営業利益 47億円(同14.3%増)、経常利益 43億円、純利益 13.5億円(同8.7%減)。
ポイント:2026年1月に通期を大幅下方修正(営業利益93億円→47億円、純利益60億円→13.5億円)。建設費高騰・住宅価格上昇・金利上昇懸念による顧客マインドの低下が背景。なお同社は引渡しが期末(第4四半期)に集中する季節性が強く、第3四半期時点の累計が赤字でも通期は黒字着地を見込む構造です。
通期本決算は2026年7月13日に発表予定です。
リブワーク(1431)の直近決算
2026年6月期 中間期(上期):売上高 約69.0億円(前年同期比 約14.5%減)、営業利益 約0.9億円(同 約75.6%減)。減収減益だが、売上総利益率は改善。
2025年11月に通期純利益予想を5.6億円→1.9億円へ下方修正。要因は、(1)建築基準法改正対応による確認申請・工期の長期化、(2)競争激化による値引き、(3)3Dプリンター住宅「Lib Earth House」リリースに伴う広告宣伝費・人件費の先行投資増。
会社側は「下期回復傾向」と説明していますが、中計の最終年度目標には大きく届かない見通しです(後述)。
出典:両社の2026年5月期/2026年6月期 決算短信・決算説明資料、各社IR、日本経済新聞・ロイター・フィスコ各報道(2026年1月〜5月)。
③ 事業構造・中期計画の比較
タマホームの事業構造
事業構造:注文住宅事業を中核に、戸建分譲・リフォーム・不動産・金融・エネルギーへ多角化。全国に約240拠点を展開する「ローコスト注文住宅」の最大手。
代表的な商品:主力の注文住宅ブランド「大安心の家」シリーズなど。
強み:全国規模の販売・施工網と一括大量仕入れによるコスト競争力。第一次取得層(初めて家を持つ世代)に強い価格訴求。
課題:建設費・地価の上昇を価格転嫁しきれず、注文住宅の受注・引渡棟数が減少。利益率の回復が当面のテーマ。
中期方針:中期経営計画「タマステップ2026」(2022年5月期〜2026年5月期の5ヵ年、最終年度が今期)。基本方針は「新築住宅着工棟数No.1を目指し、4つの事業(注文住宅・戸建分譲・リフォーム・不動産)の柱で成長する」。ただし当初の営業利益200億円・純利益120億円という目標は、2度の下方修正を経て大幅未達となる見通しです。
リブワークの事業構造
事業構造:熊本県を地盤に九州圏+首都圏へ展開する戸建住宅メーカー。自社を「HOUSE TECH COMPANY」「戸建プラットフォーマー」と位置づけ、住宅事業に加えて新規事業を積み上げる構造。
代表的な事業・商品:自社ブランド「Lib Work」の注文・分譲住宅、住宅会社・工務店向けのAI住宅プラン提案SaaS「My Home Robo(マイホームロボ)」(パートナーの安心計画と共同開発、月額課金型)、IPライセンス事業、そして3Dプリンター住宅「Lib Earth House」。
強み:YouTube・自社Webメディアを使ったデジタルマーケティングによる集客力と、異業種ブランドとのコラボによる顧客層拡大。広告費を抑えつつ見込み客をモデルハウスへ送客する独自モデル。
課題:本業の戸建が外部環境(規制改正・競争激化)に弱く、新規事業はまだ規模が小さい。先行投資が利益を圧迫している。
中期方針:中期経営計画「NEXTSTAGE2026」(2024年6月期〜2026年6月期、最終年度が今期)。当初は最終年度に売上高285億円・営業利益30億円・ROE30%という野心的な目標を掲げていましたが、その後、連結売上高150億円・営業利益5億円・ROE4.0%へ大幅に下方修正しています。
④ 2社のビジネス戦略の違い
事業ポートフォリオの広げ方
タマホームは「同じ住宅まわり」での多角化(注文→分譲→リフォーム→不動産→金融)。本業の延長線でバリューチェーンを取り込む発想。
リブワークは「住宅×テック」への染み出し(住宅→SaaS→IP→3Dプリンター)。本業の収益を、毛色の違う成長領域へ再投資する発想。広がる方向がまったく異なります。
投資方針と成長手法
タマホームは全国網と仕入れスケールを武器にした「量と効率」の自前成長型。
リブワークはデジタルマーケと新規事業への「先行投資」型で、足元の利益を削ってでも将来オプションを買いに行くスタイル。3Dプリンター住宅や、決算説明で言及されるNFT・ビットコイン活用といった構想は、良くも悪くも実験的です。
市場開拓の方向性
タマホームは全国を面で押さえる「国内深耕」。
リブワークは九州を起点に首都圏へ拡大する「エリア拡大」段階で、熊本のTSMC進出に伴う住宅需要なども取り込みを狙う立ち位置。
戦略の違いが生む構造差
タマホームは規模の経済が効く分、景気・コスト・金利の波をモロに受ける「マクロ感応度の高い成熟ビジネス」。
リブワークは規模が小さいぶん振れ幅が大きい一方、SaaSやライセンスが育てば利益率の構造が変わりうる「オプション付きの小型成長株」。どちらが良い悪いではなく、リスクとリターンの形が違うという整理です(株価予測ではなく、ビジネスモデルの構造的な違いの話です)。
⑤ 今後3年間の事業環境シナリオ
※あくまで事業環境の整理であり、株価予測ではありません。
追い風シナリオ
金利・建設コストが落ち着き、住宅取得マインドが回復。第一次取得層の需要が戻れば、両社の本業に追い風。
タマホームは全国網でボリュームを取り戻しやすく、リブワークは集客力を受注に変えやすくなる。リブワークは新規事業(SaaS・3Dプリンター)が一定の規模に乗れば、本業の波を補完する展開もありえます。
基本シナリオ
建設費高止まり・金利の緩やかな上昇が続き、住宅市場全体は大きく伸びない。両社とも「価格転嫁と棟数のバランス」に苦心する展開。
タマホームはコスト管理と分譲の底堅さで一定の利益を確保、リブワークは先行投資の重さが続き、本業の回復ペースが利益のカギになる。
逆風シナリオ
金利上昇・実質賃金の伸び悩みで住宅需要がさらに冷える。建築基準法改正対応の工期長期化が常態化すると、引渡しの遅れが収益を圧迫。
規模が小さく自己資本比率も相対的に低いリブワークのほうが、逆風局面での財務的な耐性は相対的に弱くなりやすい点には留意が必要です。
⑥ 筆者がリブワークに注目する理由
1. 「集客の仕組み」を持っていること
住宅は本来、営業力と立地で売る商売です。リブワークはそこをデジタルマーケで置き換えようとしており、広告費の使い方が他のビルダーと根本的に違います。この「仕組みで集める」という発想は、住宅以外にも展開余地があります。
2. SaaS(マイホームロボ)という非住宅の収益源
工務店向けのAIプラン提案SaaSは、住宅の景気変動とは別のリズムで積み上がるストック収益です。規模はまだ小さいものの、本業のシクリカル(景気循環的)な弱点を補う方向性として理にかなっています。
3. 3Dプリンター住宅という長期オプション
「Lib Earth House」は短期の数字には効きませんが、住宅の作り方そのものを変えうるテーマです。当たれば大きい、外しても致命傷になりにくい、という非対称なオプションとして観察する価値があります。
逆の見方・反論ポイント(タマホームの魅力も公平に):
規模・収益基盤・ブランド認知・配当原資はタマホームが圧倒的。減配後でも利回りは約4.4%あり、インカム面の厚みは段違い。
リブワークの新規事業は「構想先行」の面があり、3Dプリンターやブロックチェーン活用は実需化のハードルが高い。
足元の利益で見れば、リブワークの予想PER約78倍は明確に楽観を織り込んだ水準。本業が回復しなければ正当化は難しい。
⑦ 両社の競合マップ(6社)
※事業環境の理解を補助する目的であり、他銘柄の推奨ではありません。
直接競合(2社)
アイダ設計(3914 / 東証プライム):ローコストの注文・分譲戸建で、第一次取得層という顧客層がタマホーム・リブワークと正面から重なる。
ケイアイスター不動産(3465 / 東証プライム):関東地盤の分譲戸建で急成長してきたパワービルダー系。価格と棟数で競合する。
広義の競合(2社)
飯田グループホールディングス(3291 / 東証プライム):分譲戸建で国内最大規模のパワービルダー。直接の主力商品はやや異なるが、住宅取得予算とシェアを奪い合う関係。
積水ハウス(1928 / 東証プライム):上位価格帯の大手ハウスメーカー。価格帯は違うが「家を建てる予算」を取り合う点で広義の競合。
海外・代替競合(2社)
D.R. Horton(DHI / NYSE):米国戸建ビルダー最大手。スケールとローコスト分譲モデルのグローバルなベンチマーク。
Lennar(LEN / NYSE):同じく米国の戸建大手。両社は、規模で利益を生む「住宅の工業化・効率化」の到達点を示す存在として参考になります。
⑧ それぞれのリスク要因
タマホーム(1419)のリスク
建設費・地価の上昇を価格に転嫁しきれず、注文住宅の受注・棟数が伸び悩むリスク。
金利上昇による住宅ローン負担増で、主力の第一次取得層の購買意欲が下がるリスク。
利益の期末集中という季節性ゆえ、第4四半期の引渡しが想定を下回ると通期業績が大きくブレるリスク。
減配(195円→125円)に表れているとおり、利益水準次第で株主還元方針が変動するリスク。
リブワーク(1431)のリスク
規模が小さく、自己資本比率も相対的に低いため、逆風局面での財務的耐性が弱め。
新規事業(SaaS・IP・3Dプリンター)の先行投資が利益を圧迫し続けるリスク。実需化が遅れれば負担だけが残る。
予想PERが高く、本業回復や新規事業の成長が期待どおりに進まない場合、バリュエーションの前提が崩れやすい。
集客が強くても、競合の値引き介入で受注単価・受注率が下がるリスク(足元で顕在化)。
共通のリスク
建築基準法改正(2025年4月施行)の影響:木造戸建の確認申請手続きや省エネ基準対応で工程・工期が長期化し、引渡しが翌期にずれ込む事例が発生。両社とも収益タイミングに影響を受けています。
住宅市場全体の縮小(少子化・人口減少・世帯数の頭打ち)という構造的な逆風。
建設業の人手不足・労務費上昇。
⑨ 読者の関心軸別まとめ
※特定の投資行動を推奨するものではありません。
成長性重視:リブワーク。本業は足踏みでも、SaaS・3Dプリンターなど「住宅×テック」の伸びしろに賭ける見方。ただし不確実性は高い。
安定性重視:タマホーム。全国網・収益規模・ブランドで、事業基盤の厚みは段違い。
配当重視:タマホーム。減配後でも予想利回り約4.4%。リブワークは低配当(約1%)で、配当目的では選びにくい。
バリュー重視:どちらも予想PERは高めで、典型的な割安株とは言いにくい局面。PBR・ROE・利益の正常化シナリオを自分なりに見立てる必要があります。
⑩ この比較の面白さ
「同じ戸建ビルダー」でありながら、規模も哲学もここまで違う2社を並べられるのが、この比較の面白さです。片や全国を面で押さえる成熟最大手、片やデジタルとテックで住宅を再定義しようとする小型の異端児。住宅という枯れた産業の中で、戦い方の選択肢がいかに分かれるかが浮き彫りになります。
タマホームの核心:規模の経済とコスト競争力を武器に、第一次取得層へ「安く・全国で」家を届ける成熟モデル。強い一方で、コスト・金利・景気の波をそのまま受ける。
リブワークの核心:集客の仕組み化と非住宅収益(SaaS・IP・3Dプリンター)で、シクリカルな住宅事業の弱点を構造的に補おうとする挑戦モデル。可能性は大きいが、まだ「証明前」のフェーズ。
記録データ(2026年6月5日近辺・概算)
タマホーム(1419):株価 約2,800円/PER(予)約60倍/PBR 約3.2倍/ROE(予)約4.9%/配当利回り(予)約4.4%(125円)/自己資本比率 約37%/時価総額 約840億円/5月決算
リブワーク(1431):株価 約640円/PER(予)約78倍/PBR 約3.4倍/ROE(予)約4.4%/配当利回り(予)約1.0%/自己資本比率 約30%/時価総額 約155億円/6月決算
数値の出典
タマホーム:2026年5月期 第3四半期決算短信(2026年4月10日)、通期業績・配当予想の修正(2026年1月13日)、社長メッセージ・中期経営計画「タマステップ2026」関連の各IR資料。
リブワーク:2026年6月期 中間期・第3四半期決算関連資料、通期予想の下方修正(2025年11月12日)、中期経営計画「NEXTSTAGE2026」関連資料、決算説明会資料。
株価・指標:各証券会社・株式情報サイトの2026年6月5日近辺の概算値(PER・PBR・利回りは株価変動で日々動くため、参考値としてご覧ください)。
報道:日本経済新聞、ロイター、フィスコ(2026年1月〜5月)。
あわせて読みたい
あわせて読みたい
飯田グループホールディングス(3291)vs ケイアイスター不動産(3465)— 事業成長力を徹底比較する
住友林業(1911)vs 積水ハウス(1928)— 米国住宅で激突!事業成長力を徹底比較する
お願い
最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも参考になりましたら、ぜひ「スキ」とフォローをお願いします。今後も上場企業の比較記事を継続的にお届けしていきます。
重要事項(免責事項)
本記事は、公開情報をもとに筆者が事業内容や財務状況を比較・整理したものであり、特定の銘柄の売買や投資行動を推奨するものではありません。記載した数値・指標は記録日近辺の概算値であり、最新の正確な情報は各社の開示資料・適時開示等で必ずご確認ください。株式投資には元本割れを含むさまざまなリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。本記事の内容は将来の業績や株価を保証するものではありません。
おまけ:今日のひとこと用語解説
「第一次取得層」って何?
これは「人生で初めてマイホームを買う世代」のことです。だいたい20〜30代の子育て世帯がイメージです。たとえるなら、初めて自分の自転車を買う子どものようなもの。予算は限られているけれど「ちゃんとしたものが欲しい」というニーズが強い層で、タマホームもリブワークも、この「初めての一台ならぬ初めての一軒」を主なお客さんにしています。だから建設費や金利が上がって予算がきつくなると、まっさきに影響を受けやすいのです。
いいなと思ったら応援しよう!
応援ありがとうございます!情報収集に活用させていただきます!

