【米国住宅で激突!】住友林業(1911)vs 積水ハウス(1928)— 事業成長力を徹底比較する
【「木」の住友林業 vs「鉄骨+木造」の積水ハウス ― 米国住宅で激突する二大メーカー】
記録日:2026年5月7日時点の株価・指標。住友林業は12月期決算(日本基準・連結)、積水ハウスは従来1月期決算(日本基準・連結)で、決算期変更により2026年3月期(14ヵ月決算)への移行期にあります。決算期が異なるため直接比較は参考値としてご覧ください。住友林業は2025年12月期通期実績(2026年2月13日発表)+2026年12月期Q1(2026年5月7日発表)。積水ハウスは2025年1月期通期実績(2026年3月5日発表)+2026年3月期予想を基にしています。
筆者の注目ポイント
注目度:住友林業 ★★★★☆ / 積水ハウス ★★★★☆
筆者は住友林業にやや強い関心を持っている。米国住宅事業の急拡大で売上の半分以上が海外となり、「木造住宅メーカー」から「グローバル木材・住宅企業」への変貌が進んでいる。PER約9倍・PBR0.84倍は割安に見える。一方、積水ハウスは国内住宅の圧倒的なブランド力に加え、M.D.C.ホールディングス買収で米国市場に本格参入。配当利回り4%超は魅力的。
① 現在の株価・バリュエーション比較
住友林業(1911・東証プライム)
株価:1,375円(2026年5月7日終値)
時価総額:約8,505億円
PER(予想・26年12月期):約8.9倍
PBR(実績):約0.84倍
ROE(実績):11.1%
配当利回り(予想):約3.6%(年間配当50円)
自己資本比率:39.0%
決算期:12月期(日本基準・連結)
積水ハウス(1928・東証プライム)
株価:3,400円(2026年5月7日参考)
時価総額:約2兆2,140億円
PER(予想):約10.1倍
PBR(実績):約1.02倍
ROE(実績):11.3%
配当利回り(予想):約4.2%(年間配当143円)
自己資本比率:42.7%
決算期:1月期→3月期へ変更中(日本基準・連結)
出典:Yahoo!ファイナンス、日経会社情報DIGITAL、株予報Pro、IRBANK、バフェット・コード(2026年5月時点)
② 直近決算の比較
住友林業(2025年12月期通期実績/2026年2月13日発表 + 2026年12月期Q1速報)
2025年12月期通期:売上高2兆1,544億円(前期比 +17.2%)、経常利益1,749億円(同 -4.1%)
営業利益率:約7.0%
米国住宅事業が売上を牽引したが、利益面は木材・建材価格変動や米国金利の影響で微減
2026年12月期Q1(2026年5月7日発表):売上高5,321億円(前年同期比+4.0%)、営業利益239億円(同-38.5%)、経常利益218億円(同-42.2%)
2026年12月期通期予想:経常利益1,600億円(前期比-8.5%)※為替前提1ドル=140円
年間配当50円(前期と同額)
出典:住友林業 2025年12月期決算短信、2026年12月期Q1決算短信(2026年5月7日)
積水ハウス(2025年1月期通期実績/2026年3月5日発表)
2025年1月期通期:売上高4兆585億円(前期比 +30.6%)、営業利益3,313億円(同 +12.5%)、経常利益3,016億円(同 +15.1%)、純利益2,177億円
営業利益率:約8.2%
M.D.C.ホールディングス買収効果で売上が大幅に拡大
EPS 335.95円、ROE 11.7%、配当135円(配当性向40.2%)
2026年3月期(14ヵ月決算)予想:経常利益3,140億円(前期比-4.2%※14ヵ月ベース)
年間配当143円予想
出典:積水ハウス 2025年1月期決算短信(2026年3月5日)、バフェット・コード
③ 事業構造・中期計画の比較
住友林業
「木」を軸とした総合住宅・不動産企業。山林経営(日本国土の約800分の1を管理)、木材・建材流通、国内注文住宅、米国住宅、不動産開発、バイオマス発電と幅広い事業ポートフォリオ
主力セグメント:住宅(国内注文住宅)、海外住宅・不動産(米国・豪州)、木材・建材、資源環境
強み
米国住宅事業が急成長。売上の半分以上が海外で「グローバル木材・住宅企業」に変貌
川上(山林・木材調達)から川下(住宅販売・リフォーム)までの垂直統合
木造住宅のBIG FRAME構法など独自技術で耐震性・デザイン性を両立
PBR0.84倍と資産価値対比で割安
課題
2026年12月期Q1は営業利益-38.5%と大幅減益スタート
米国住宅事業は金利動向に左右される。住宅ローン金利が高止まりすれば需要減退リスク
木材価格の変動が利益を不安定にする
中期方針:2030年に売上高3兆円、経常利益3,000億円を目標。米国戸建住宅の規模拡大と不動産開発事業の強化
積水ハウス
国内最大級の住宅メーカー。鉄骨住宅「イズ」シリーズと木造住宅「シャーウッド」の二本柱に加え、賃貸住宅「シャーメゾン」、不動産開発、リフォームを展開
主力セグメント:戸建住宅、賃貸・事業用建物、不動産フィー(管理・仲介)、国際(米国・豪州・英国)
強み
売上4兆円超・時価総額2.2兆円の圧倒的スケール
M.D.C.ホールディングス買収(約7,000億円)で米国住宅市場に本格参入。年間約1万戸の供給力を獲得
賃貸住宅管理事業(約67万戸)によるストック型収入の安定感
配当利回り4%超・配当性向40%の株主還元
国内AA格・海外A格の格付け
課題
2026年3月期は14ヵ月の変則決算で比較が複雑
M.D.C.買収後の統合コストやのれん負担
国内新設住宅着工の減少トレンド
中期方針:グローバル売上比率の向上、賃貸住宅管理のストック拡大、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の推進
出典:住友林業・積水ハウス各社決算短信・中期計画
④ 2社のビジネス戦略の違い
住友林業と積水ハウスは国内住宅メーカーの双璧だが、成長戦略の「軸足」が異なる。
住友林業は「木」を起点としたバリューチェーン統合型の戦略を採る。山林経営→木材・建材の調達・流通→住宅建築→リフォーム→不動産開発→バイオマス発電と、木材のライフサイクル全体をカバーする垂直統合モデルが最大の特徴。米国では2003年から戸建住宅事業を展開しており、現地のビルダーを複数買収して年間1万戸超の供給力を構築。「木の家」という日本のブランドを海外で展開するのではなく、現地市場に完全にローカライズした住宅を販売している。
積水ハウスは「技術力+ブランド力+ストック収入」の三本柱で成長する総合デベロッパー型。国内では鉄骨住宅「イズ」と木造住宅「シャーウッド」の二本立てで幅広い価格帯をカバーし、賃貸住宅「シャーメゾン」の管理戸数67万戸から得るストック型収入が利益の安定化に寄与。2024年のM.D.C.ホールディングス買収(約7,000億円)は積水ハウス史上最大のM&Aであり、米国住宅市場への本格参入を決定づけた。住友林業より後発だが、一気にスケールを確保した点が対照的。
投資方針も、住友林業は複数の中小ビルダー買収を積み重ねる「オーガニック+ボルトオン型」、積水ハウスはM.D.C.のような大型M&Aで一気にシェアを獲得する「メガディール型」と異なる。
中長期の事業構造としては、住友林業は「木材バリューチェーンの深化+米国住宅の着実な拡大で2030年売上3兆円」、積水ハウスは「国内ストック収入の安定化+米国M.D.C.統合の成果刈り取りで配当と利益の両立」というプロファイルになる。
⑤ 今後3年間の事業環境シナリオ
※あくまで事業環境の整理であり、株価予測ではありません。
追い風シナリオ:米国住宅ローン金利の低下、米国新築住宅需要の回復、円安の継続、国内ZEH・省エネ住宅への補助金拡充
住友林業:米国住宅の受注回復で業績がV字回復。木材価格の安定も追い風。2030年経常利益3,000億円目標に前進
積水ハウス:M.D.C.統合の効果が本格発現し、米国事業が新たな利益柱に。国内賃貸管理のストック収入も堅調
基本シナリオ:米国金利は高止まり、国内新設住宅着工は年80万戸前後で横ばい
住友林業:減益基調が続くが、米国事業の底打ちと木材・不動産の安定収益で大幅悪化は回避
積水ハウス:M.D.C.の統合コストが一巡し、2027年以降に利益率が改善。配当は増配基調を維持
逆風シナリオ:米国住宅市場の急激な冷え込み、急激な円高、国内住宅着工の急減、木材価格の暴落
住友林業:米国住宅在庫の積み上がりで減損リスク。為替差損の影響も大きい
積水ハウス:M.D.C.ののれん減損リスク。国内戸建住宅の受注減少
⑥ 筆者が住友林業にやや注目する理由
1. PBR0.84倍・PER約9倍の割安感
住宅メーカーの中でもPBR1倍割れは割安な水準。2030年に経常利益3,000億円という中計目標が達成に近づけば、バリュエーションの見直しが期待できる。
2. 「木」のバリューチェーン統合という独自性
山林から住宅まで一気通貫でカバーできる住宅メーカーは世界的にも珍しい。ESG・脱炭素の文脈でも「木造建築」は注目されており、中長期的な追い風がある。
3. 米国住宅事業の先行者利益
2003年から米国に参入し、20年以上の実績を持つ。積水ハウスがM.D.C.買収で追いかけてきたが、住友林業は複数州にまたがる分散された事業基盤を持ち、市場環境の変動に対する耐性が高い。
逆の見方・反論ポイント
積水ハウスの配当利回り4%超はインカム投資として非常に魅力的。配当性向40%の方針も明確
積水ハウスの賃貸住宅管理67万戸のストック収入は景気変動に強い安定収益源
住友林業の2026年12月期Q1は営業利益-38.5%と大幅減益であり、足元の業績モメンタムは弱い
積水ハウスの時価総額は住友林業の約2.6倍で、機関投資家の流動性ニーズにも対応しやすい
積水ハウスのブランド力と顧客基盤は国内住宅市場で圧倒的
⑦ 両社の競合マップ(6社)
直接競合(2社)
大和ハウス工業(1925・東証プライム)
住宅・建設業界の最大手。戸建住宅だけでなく商業施設・物流施設・事業施設まで幅広く手掛ける。売上は約5兆円と住友林業・積水ハウスの双方を上回る。旭化成ホームズ(旭化成 3407の住宅部門)
「ヘーベルハウス」ブランドの鉄骨住宅メーカー。積水ハウスとは鉄骨住宅の高価格帯で直接競合。旭化成の住宅・建材セグメントとして上場。
広義の競合(2社)
一条工務店(非上場)
高断熱・高気密住宅で急成長し、注文住宅の販売棟数では国内トップクラス。住友林業・積水ハウスより低価格帯で、コストパフォーマンスを武器に顧客を獲得している。オープンハウスグループ(3288・東証プライム)
首都圏の戸建分譲で急成長した不動産会社。注文住宅ではなく分譲住宅が主力だが、住宅購入者の選択肢として競合する。米国不動産事業にも進出。
海外 or 代替競合(2社)
D.R.ホートン(DHI・NYSE)
米国最大の住宅建設会社。年間約9万戸を供給。住友林業・積水ハウスが米国市場で直面する最大の競合。圧倒的なスケールメリットを持つ。レナー・コーポレーション(LEN・NYSE)
米国第2位の住宅建設会社。M.D.C.ホールディングス買収前の積水ハウスの米国事業規模に近い。テクノロジー活用による効率化で知られる。
※あくまで事業環境の理解を補助する目的であり、他銘柄の推奨ではありません。
⑧ 共通のリスク要因
米国住宅市場の変動(住宅ローン金利・新築在庫・許可件数が両社の海外事業に直結)
為替変動(両社とも米国事業の比率が上昇しており、円高は減益要因)
国内新設住宅着工の減少(人口減少・高齢化・空き家増加により中長期的に着工減少が見込まれる)
建築資材・人件費の高騰(木材・鋼材・コンクリート・労務費の上昇が利益率を圧迫)
金利上昇リスク(国内住宅ローン金利の上昇は住宅需要を抑制する)
自然災害リスク(地震・台風等による住宅被害と復旧コスト)
M&A統合リスク(住友林業の米国ビルダー群、積水ハウスのM.D.C.それぞれの統合・PMI)
⑨ 読者の関心軸別まとめ
※特定の投資行動を推奨するものではありません。
成長性重視:住友林業は2030年に売上3兆円・経常利益3,000億円という意欲的な中計目標を掲げる。米国住宅事業の拡大余地は大きいが、足元のQ1大幅減益には注意。積水ハウスはM.D.C.統合後の巡航速度がどの程度かが焦点。
安定性重視:積水ハウスの賃貸住宅管理67万戸のストック収入と国内AA格の信用力は安定感が突出。住友林業も自己資本比率39%と堅実だが、米国事業の変動リスクが相対的に大きい。
配当重視:積水ハウスの配当利回り約4.2%は住宅メーカーの中でもトップクラス。配当性向40%の方針も明確。住友林業も約3.6%と高水準で、両社とも配当目的の長期保有に適している。
バリュー重視:住友林業のPBR0.84倍・PER約9倍は明確な割安水準。積水ハウスもPBR約1倍・PER約10倍と大型株としては妥当〜やや割安。
記録データ
住友林業(1911)
株価:1,375円(2026/5/7)
時価総額:約8,505億円
PER(予):約8.9倍 / PBR(実):0.84倍
ROE(実):11.09% / ROA(実):4.41%
配当利回り(予):約3.6% / 年間配当:50円
自己資本比率:39.0%
2025年12月期通期:売上高2兆1,544億円 / 経常利益1,749億円
2026年12月期予想:経常利益1,600億円(-8.5%)
Q1実績:売上高5,321億円 / 営業利益239億円(前年同期比-38.5%)
積水ハウス(1928)
株価:3,400円(2026/5/7参考)
時価総額:約2兆2,140億円
PER(予):約10.1倍 / PBR(実):約1.02倍
ROE(実):11.32% / ROA(実):4.73%
配当利回り(予):約4.2% / 年間配当:143円
自己資本比率:42.7%
2025年1月期通期:売上高4兆585億円 / 営業利益3,313億円 / 営業利益率8.2%
2026年3月期予想(14ヵ月):経常利益3,140億円
数値の出典
住友林業「2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年2月13日)
住友林業「2026年12月期 第1四半期決算短信」(2026年5月7日)
積水ハウス「2025年1月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年3月5日)
日経電子版「米国浸透、車の次は住宅 住友林など有望」(2026年2月21日)
Yahoo!ファイナンス、日経会社情報DIGITAL、株予報Pro、IRBANK、バフェット・コード(2026年5月時点)
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おまけ:今日のひとこと用語解説
ZEH(ゼッチ)って何?
ZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、家で使うエネルギーと家で作るエネルギーの差し引きがゼロになる家のことだよ。たとえるなら、自分のお小遣いで買い物をするけど、お手伝いで稼いだお金とちょうど同じ金額しか使わないから、結局お金が減らない…みたいな感じ。屋根の太陽光パネルで発電して、断熱性能を高めてエアコンの電気を減らして、差し引きゼロを目指すんだ。住宅メーカーはこのZEHをどんどん増やそうとしているよ。
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