【支援事例】"超仮説ドリブン"な新規事業にどう向き合う? コクヨ「TEAMUS」開発の裏側
みなさんこんにちは、株式会社K.I.D.S.です。
おかげさまで、K.I.D.S.は2026年3月から4期目に入っています。
3月の最初の記事では、K.I.D.S.が開発を支援させていただいた、コクヨ株式会社様の組織成長ソリューション「TEAMUS(チームアス)」をご紹介させていただきました。
今回は、TEAMUS開発メンバーの酒井希望さんと尾内健知さんを特別ゲストに、TEAMUSという新規事業をどのように進めたのか、お話をうかがっていきます。

●コロナで意識変化…新規事業のきっかけに
――文房具やオフィス用品のイメージが強いコクヨ様が、どうしてHR領域を目指したのでしょうか?

発端は新型コロナウィルス禍でした。
リモートワークでも仕事が回るんじゃないかということで、オフィス不要論が飛び交い、フルリモートに働き方を変えたり、オフィス面積を縮小したりする大手企業も出てきて、強い危機感を持ちました。
元々、コクヨには挑戦カルチャーがあって、新規事業は盛んです。社内では、コロナで変わる働き方に対応しなくては、という機運が高まっていました。
ただ、具体的なアイディアがあったわけではなく、当時はHRという話もまだありませんでした。
そうこうするうちにコロナ禍が落ち着き、逆にオフィス市場が過去最高レベルに盛り上がっていったんです。
――需要が回復したからといって、新規事業を考えるのを辞めなかったんですね

オフィス回帰はしたものの、コロナ前と一緒ではなかったんです。
コロナを経たことで、出社の意義が見直されるようになりました。仲間と集まることで、意思疎通がしやすいとか、セレンディピティ(偶然の出会い)が生まれるとか——。
オフィスの位置づけが「仲間と共通の体験をする場」というふうに大きく変わったんです。
一方、実際の職場では、出社環境を生かして仲間で何かをやるということに、皆さんすごく苦心されていました。
そこで「チーム」に対して、何らかの課題解決をできれば、もっと顧客や社会にお役立ちできるのではないか、と考えるようになりました。
また、コクヨは2021年から、目指したい未来像として「自律協働社会」という言葉を置いています。
自律した個が有機的に繋がりながら創造性を高め、社会課題を解決していくというサステナブルな社会です。
だから、個と個が協働する「チーム」に働きかけるというのは、コクヨのアイデンティティにも一致しているんです。
振り返ってみると、すべての物がパチッと揃っていて、運命的なタイミングだったんだなと思います。
●サーベイツールではないポジション戦略
――TEAMUSの入り口は、「サーベイ(調査)」機能です。サーベイツール自体は他社からも出ていますが、違いはどこにありますか?

サーベイ系のソリューションはすでにあり、使っている企業さんが多いことも認知していました。
しかし、話を聞いてみると、導入しても成果につながっていないという話が多かったんです。
「なぜ成果につながらないのか」というところに未解決の課題があるはずだ、ということで議論を重ねました。
最初は「サーベイの精度を高める」というアプローチを考えたんです。でも、ユーザーインタビューを重ねると、どうもそうではなさそうだと。
そもそもサーベイに注力してしまうと、既存サービスと比較したとき、「なぜコクヨがやるのか」が見えづらくなってしまう。
そうやって考えていった結果、「サーベイの後」にフォーカスして、マネージャーに対するサポートや伴走プログラムを用意することにしました。
TEAMUSはここに特徴があると思っています。
現在のマネージャーは、実務能力が高かった人がなる傾向がありますよね。でも、営業成績が良かった人が、チームの成長や変革を牽引できるかというと必ずしもそうではないと思います。
一方で、「マネージャーは孤独だ」と言われるように、マネージャーに対する支援は十分とは言えません。
――具体的にはどういうサポートをするんでしょうか?

サーベイ結果をもとに、マネージャーとの対話をおこない、課題感や目的地をすり合わせていきます。
必要に応じて、ビジネスコーチによるコーチングなども取り入れ、マネージャーとチームの変化を後押ししていくイメージです。

だから、もちろんサーベイの質も大切にしているんですが、それ以上にマネージャーの内省・洞察やチームでの対話のきっかけになる内容かどうかを重視して開発しています。
従来の人事向けソリューションとしてのサーベイと異なり、現場に内省や気づきを促すような問いかけになっているかと思います。
●開発を通して、コクヨ内部のチーム力もアップ
――利用企業からはどんな感想が寄せられていますか?

サーベイからスタートするソリューションは多いので、最初は「また新ネタが来たか」みたいな懐疑的な反応も多かったんです。
でも、使ってみると、
「チームの人と話し合うきっかけができた」
「チームの和が生まれた」
という声をいただきますね。やはり、マネージャーは孤独なんだと思います。
人事の方も、ソリューションを展開するときに「現場の方に迷惑がられるんだろうな」とドキドキするらしいんですが、現場が喜んでくれて嬉しいと言ってくれています。
我々にとって、第三者の立場から意見してくれる吉江さんの存在が大切なように、お客さまにとってコクヨも第三者の立場になります。
「現場」と「人事」と「コクヨ」という三角形ができることで、普段とは違う会話ができているという評価のコメントはすごく多いですね。
――TEAMUSの開発を通して、コクヨ様内部のチーム力も上がっていったんでしょうか?

そうですね。自分たちでもTEAMUSを活用していますが、「いまの僕らの課題はここだよね」という点をすごく意識しながら仕事をしてると思います。
これまでは、リーダーがなんとなくの感覚値で課題を捉えようとしていて、適切に捉えられていたかどうかで、チームの力が左右されていたと思うんです。
でも、TEAMUSを開発し、使ってみることで、メンバーと一緒に「よりよいチームになるためには、ここを伸ばしていくとよさそうだ」と対話しながらチームビルディングができるようになっていると感じます。
実際、コクヨでは全社的に利用しているんですが、我々が介入することで、これまでなかった対話が起き始めています。
「いままで感覚的だったものがしっかり示された」
「メンバーと"対話できているつもり"だったことがわかった」
「チームでこういう対話ができたのは新鮮で有意義だった」
といった声が届いています。
やっぱり、「これは良いものだ」と世の中に提供していくのだから、自分たちが使って、自信がもてるものでないとおかしな話ですからね。
●K.I.D.S.に依頼したきっかけ
――数ある支援会社の中から、K.I.D.S.を選んだ決め手はなんだったのでしょうか?

コクヨにとってTEAMUSは、未経験のHR領域について未充足ニーズ(潜在ニーズ)でソリューションをつくるということになります。
取引相手も、オフィス用品でつながりのある総務部ではなく、あまり関わりのなかった人事部です。
基本的には超仮説ドリブンで走るしかないなと思っていました。
でも、仮説をつくっているのは自分たちなので、何かしら別の視座を入れていかないと、本当にこっちの方向に突っ走って良いのか自信が持てないよな、という不安がありました。
経験上、こういう仮説ドリブン強めの新規事業は外部視点が必要だと考えていたので、壁打ち相手になってくれる社外の人を探していたんです。
社内だと、さほど価値観に違いが出ませんし、どうしてもお互いに遠慮が出ちゃいますから。
ただ、ふわっとした相談に乗ってくれるプロって全然いないんです。
かなりの人数に会ったのですが、「僕は何をしたらいいですか」「私はこのプロです。これだったらお手伝いできます」みたいな感じ。
キャンバスに何を描くか決まったら相談してください、という人ばかりで、依頼してもうまくいかなかったんです。
そういう紆余曲折があって、吉江さんにお願いすることになりました。一人毛色が違って、真っ白なキャンバスにも一緒に向き合ってくれたんですね。
「ふわっとした、生煮えのやつでオッケーです」
「いったん始めてみるみたいなスタンスは得意です」
と言ってくれたことを覚えています。
正にこういう感じでお付き合いをしたいなと思っていたので、ツールベースというより、組みたい座組の温度感やスタンスが一致したというのが大きかったです。
●フェーズごとの「あるある」に対応した伴走支援
――実際に依頼してみてどうしてたか?

「バシバシ言ってほしい」とはお願いしていたんですが、本当に最初からギア全開で遠慮のない意見を浴びせられました。
狭い会議室に3~4人ぐらいで集まって、「これ何も決まっていないですよね」「結局、ここで言いたい価値って何ですか」などと指摘を受けながら、半分キレ気味に議論していましたね(笑)。
でも、最初の頃にしっかりギュッと議論したので、後々根っこが腐らなくて済みました。ヌルっと始まらなくて良かった。そういう意味で、すごく良い時間だったなと思います。
それから、新規事業なので日夜想定していない問題がいろいろと起こるわけですよ。
それらの解決方法であるとか、社内外のどういう人に相談したら良いかとか、あるいは現時点では放置しておいても大丈夫とか。そういうものを相談できたのは大きかったですね。
相談内容は本当に一言では言えなくて、1on1の時間をとってもらい、「こういうことが起きているんですが、どうしましょうかね」って、付き合ってもらいました。
やはり意思決定しようにも、自分一人では根拠がないので不安じゃないですか。
心理的に後押しをしてもらったことで、「だったら意思を持ってもう少し様子を見よう」とか、「ここはピボットしよう」とか、そういうことを繰り返してきました。
たとえば、新規事業のメンバーもフェーズによって合う合わないがあります。一人ひとりはすごく優秀なんだけど、組み合わせによってはハレーションが起きうる。
いまの事業フェーズと担ってもらいたい役割的に、どういうフォーメーションがいいですかとか、組織設計やマネジメントみたいなところで相談に乗ってもらうこともありましたね。
本当に壁打ち相手として何でも話せるみたいな感じです。

フェーズ、フェーズで最適の動き方を教えてくれるだけでなく、そのフェーズに合った動き方をするためのネットワークを持っているのも強みかなと思います。
象徴的だと思ったのは、プロトタイプをつくろうとしたとき、付き合いのある会社さんだと一声何千万円という話になってしまって…。そんな大きな話じゃないんだけどな、と困っていたんです。
そこで吉江さんに相談したところ、プロトタイプに相応しいスピード感とコストで作っていただける会社さんを紹介してもらいました。
●PMF、グロースへと加速
――今後プロダクトをどうしていきますか?

事業としてスタートして、お客様とお会いする機会が増えている中、仮説として当たっていた部分と、そうでなかった部分が見えてきています。
PMFやグロースに向けて、そうした課題のどこを拾って、ビジネスのどこに繋げていくかを考えていきたいと思います。

そうですね。いろんな可能性と兆し、色々なお客様の存在が見えてきたところです。
組織成長の促し方が分かるという状態をつくることで、リーダーやメンバーが自走できる状態を目指したいです。
チームで働くことの価値がより鮮明になり、多くのワーカーにとって、チームが所属するだけのものから、自分たちで選び、創っていくような社会にしていきます。

●K.I.D.S.代表の吉江より
コクヨ様には、当社の創業間もない頃からお付き合いいただいており、TEAMUSは思い入れのあるサービスです。
サーベイなどのHR領域については、ベンチャーキャピタル(VC)にかかわっていた頃、HRテックに多数出資し、ハンズオン支援もしていたことから、土地勘もありました。
トップダウンではなく、個人やチームを重視する理念にも共感するところが大きく、ご支援をさせていただいています。
酒井さん、尾内さんからは、フェーズごとのアドバイスが役立ったという嬉しいお言葉をいただきました。
私はNTTデータやアクセンチュア時代から、クライアント企業に出向して新規事業の立ち上げ支援を繰り返してきたので、大企業や飛び地的な別領域での新規事業もたくさん経験しています。
新規事業で起きる問題は大体似通っていて、フェーズごとに特徴があります。今後も事業フェーズにあわせて、伴走支援をさせてもらえればと思います。

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