研修は1時間で終わらなかった。──外国人材を迎える現場から出た“本気の質問”
今回は少し長めの投稿になります。
今まさに私たちが取り組んでいる特定技能人材の初回導入に向けた法人様との受け入れ準備について、どうしても書いておきたい場面がありました。
外国人材の受け入れは採用して終わりやない。
在留資格の手続きが進んだらそれで一安心という話でもありません。
入職前から法人様と支援機関が一緒に現場の不安を解消して本人が安心して働ける土台をつくっていく。
今回の研修ではその大切さを改めて感じました。
外国人材の受け入れに関わる方にぜひ読んでいただきたい内容です。
研修が終わって、ありがとうございましたで終わると思っていました。
でも終わりませんでした。
むしろそこからでした。
これから入職する配属予定の直属の上司の方々から次々と個別の質問が出てきたんです。
豚肉を扱う調理があった時はどうしたらいいのか。
ご利用者様の特性上、距離が近くなったりヒジャブに触れてしまった場合はどう考えたらいいのか。
ラマダンはいつからいつまでなのか。
毎年時期が違うのはなぜか。
断食というけれど、正確にはどういうことなのか。
予定していた1時間を過ぎても質問は続きました。
その時間が僕にとっては嬉しかったんです。
そこに「ちゃんと理解して迎えたい・準備しておきたい・不安はあるけれど楽しみにもしている」という生の声があったからです。
外国人材の受け入れってこういう空気がある現場は強いんです。
知識があるから強い、ではありません。
制度に詳しいから強い、でもありません。
分からないことを分からないままにしない。
受け入れ前に現場から質問が出る。
その質問を法人様も支援機関も一緒に受け止める。
この姿勢が受け入れの土台になると思っています。
今回、社会福祉法人北摂杉の子会様で実施した宗教理解研修は単なる勉強会ではありませんでした。これは初めての特定技能受け入れに向けた法人様の本気の下準備の一場面やったんやと思っています。
宗教研修は受け入れ前支援の一部
社会福祉法人北摂杉の子会様で初めての特定技能人材受け入れに向けて、入国前教育や受け入れ体制づくりを進めてきました。
その中でインドネシア人材を迎えるにあたり、宗教や文化、食事、礼拝、服装、現場での接し方について職員の皆さまにも事前に知っていただく機会を設けることになりました。
私たちクリエでは初回導入の際や法人様から宗教・文化面での不安やご要望がある場合、必要に応じて宗教理解研修を実施することがあります。
これは外国人職員を特別扱いするためではありません。
知らないことで生まれる誤解を減らし、本人、現場の職員の皆さま、そしてご利用者様の安全と安心を守るための準備なんです。
イスラム教の専門知識を詰め込む時間ではありません。
「食事で迷った時はどうするか」
「礼拝やラマダンをどう理解するか」
「ヒジャブや距離感について、現場で何を知っておくと安心か」
「困った時に誰へ相談すればよいか」
こうした実務の不安を受け入れ前に一つずつ整理するための時間でした。
外国人材の定着は本人だけが頑張れば実現するものではありません。
本人側の準備と受け入れる現場側の準備。
この両方がそろって入職後のすれ違いや不安を減らすことができます。
今回の宗教研修はそのための受け入れ前支援の一部でした。
定着は入社日から始まるんやない
「外国人材を受け入れる」
この言葉だけ聞くとどうしても採用の話に見えます。
候補者を探す。
面接をする。
内定を出す。
在留資格の手続きを進める。
入国日を待つ。
もちろんどれも大切です。
でも現場で支援をしているといつも思うんです。
大事なのは入社するまでより、
入社してからどう無理なく働けるかやなと。
もっと言えば定着は入社後に始まるものではありません。
受け入れを決めたその時から始まっています。
北摂杉の子会様との取り組みでも最初から話していたのはそこでした。
どうすれば障害福祉の現場で無理なく安全に安心して働いてもらえるのか。単なる人員補充ではなく現場の支援方針を理解しながら働ける形をどうつくるのか。
ここを導入前から一緒に考えてきました。
私たちが何かを一方的に提案するのではなく、北摂杉の子会様の現場実態を伺いながら、入社前支援、入社後支援、トラブル発生時の対応、相談体制、宗教理解、キャリア設計、日本語教育までを一つずつ確認していく。
この同じ地図をつくる作業から今回の受け入れ準備は始まっていました。
障害福祉は人手が増えればOKではない

障害福祉の現場は高齢者介護とまた違った難しさがあります。
ご利用者様ごとの特性理解。
支援上の留意点。
報告・連絡・相談。
記録。申し送り。
ちょっとした言葉の選び方や距離感。
同じ対応で落ち着く方もいればそうではない方もいる。
同じ声かけが安心につながる方もいれば、逆に不安定になる方もいる。
だから外国人材を人手として受け入れるだけでは足りません。
この現場でどう働くか。
何を知っておく必要があるか。
最初にどこまで理解してもらうか。
困った時、どこへつなぐか。
こういう設計が必要です。
初めての受け入れに向けて素晴らしいと感じたのは、初回受け入れだからこそ、そこを入職前から整えようとしていることでした。
この対応をしてもらえたのはかなり大きいです。
入ってから現場で何とかするではなく、入る前から現場と一緒に整える。
これって簡単なようで難しいんです。
現場の方々が日々向き合っているのはマニュアルだけでは対応しきれない一人ひとりの生活です。
外国人材を迎える時にも制度上受け入れられるかどうかだけではなく、
「この現場で本当に無理なく働けるか」
「ご利用者様にとっても本人にとっても安全か」
「職員の皆さまが不安を抱え込まないか」を確認しておく必要があります。
ここを飛ばしてしまうと入職後に現場が全部背負うことになります。
それやと本人にとってもしんどい。
職員の皆さんにとってもしんどい。
支援機関としても一番避けたい形です。
4月から入国前教育は始まっている
今回の準備は研修だけではありません。
内定者3名に対して、4月から入国前教育も始めています。
入国前教育というと日本語の勉強をイメージされることも多いと思います。
もちろんそれも大事です。
私たちクリエがやっているのはそれだけではありません。
北摂杉の子会様から共有いただいたマニュアルや現場情報をもとに、
・施設のルール
・1日のスケジュール
・業務理解
・障害理解
・支援者としての心構え
・記録や申し送りに必要な語彙
・入社後3か月・6か月の到達イメージ
こういった内容を入国前の段階から少しずつ積み上げています。
4月分の授業報告書を見ても3名それぞれの現在地が見えてきます。
実習生として介護経験があり現場で使う道具や用品の理解が高い方。
日本語を使う機会が少なく既習内容を思い出しながら定着を進めている方。
緊張しながらも笑顔でコミュニケーションを取ろうとしている方。
理解力が高く、疑問点を自分から質問しながら主体的に学んでいる方。

同じ特定技能人材でも現在地は一人ひとり違います。
全員に同じ教え方をするのではなく、一人ひとりの強みと課題を見ながら、入国前から準備していく。
これが今回の受け入れ準備の大きな柱です。
単語を覚えたかどうかだけではありません。
分からない時に質問できるか。
自分の言葉で説明できるか。
聞き返すことを怖がっていないか。
分かりましたと言った後に、本当に動きとして再現できるか。
ここまで見ておかないと現場で本当に使える日本語にはつながりません。
日本語能力が高いことと、現場で安全に報告・連絡・相談ができることは、必ずしも同じではありません。
これは介護・福祉の現場では特に大切な部分です。
入国前教育は日本語授業であると同時に入職の準備でもあるんです。
日本語の点数だけでは見えない部分。
面接だけでは分からない部分。
入職してから初めて表面化しやすい部分。
そこを少しでも入国前から見ておく。
めっちゃ地味ですが定着支援ではここがかなり大事なポイントです。

宗教研修は単独イベントやない
今回の宗教理解研修もこの全体設計の一部なんです。
入国前教育がある。
職員向け研修がある。
入職後の面談設計がある。
相談体制がある。
振り返りの仕組みがある。
トラブル時の対応確認がある。
その中に宗教理解もある。
こういう位置づけです。
研修でお伝えしたのはイスラム教の専門知識そのものではありません。
大事なのはムスリムだから絶対こうと決めつけないこと。
本人確認を大切にすること。
一人で判断せずに相談ルートにつなぐこと。
この3つです。
法定支援として求められる支援項目を土台にしながらも初回導入では義務支援だけでは拾いきれない部分があります。
職員さんの受け入れに対する不安。
本人が言い出しにくい宗教・文化の違い。
日本語の理解度と実際の報連相のズレ。
ご利用者様の特性と外国人職員の文化的背景が重なる場面。
こうした部分は書類上の支援計画だけでは見えにくい。
入国前教育や職員向け研修、面談設計を現場に合わせて組み込んでいくことが必要になります。
宗教研修はそのための一つの入口でした。
豚肉の調理があった場合どうするのか。
これも“正解を暗記する”話ではありません。
どこまで本人が気にするのか。
施設としてどこまで対応可能か。
代替の考え方はどうするか。
ここを一緒に考えて対話することが大切です。
ラマダンも同じです。
実際に現場からはラマダンっていつですか?
毎年同じ時期じゃないんですか?
断食って、完全に何も食べないんですか?という質問が出ました。
大切なのは“聞いてくれた”ってことなんです。
ラマダンはイスラム暦に基づくため毎年時期が変わります。
断食は日の出から日没までであって、決して“絶食”という単純な理解ではありません。
日が沈めば食事を取ります。
体調や事情によって実践の仕方にも違いがあります。
そもそもどこまで厳格に行うかは本人によっても違います。
だから決めつけずに確認する。これが一番大切です。
こういうことも研修をやったから終わりではなく、現場がその場で確認し、理解しようとしてくれていた。これがとても大きいです。

迎える準備をしたいから
研修後に配属先の直属上司の方々から本当にたくさんの質問が出ました。
ご利用者様の特性上、距離感が近くなってしまうことがある。
その時、本人がどう感じるかな。
ヒジャブを触ってしまった場合、どうフォローすればいいのかな。
豚肉調理や食事場面で現場としてどこまで気をつければいいのか。
ラマダン中の働き方や体調面をどう見たらいいのか。
どれも机上の空論ではありません。
全部、現場から出てきた実務の質問です。
その質問の奥にはそれなら受け入れられませんではなく、受け入れるならちゃんと整えておきたいという気持ちがありました。
これ、めっちゃ大事やと思うんです。
受け入れ前に不安が出ること自体は悪いことではありません。
むしろ自然です。
初回導入ならなおさらです。
問題なのは不安を口にできないこと。
分からないことを聞けないこと。
そのまま始めてしまうことです。
北摂杉の子会様の現場ではそこが違いました。
質問が出る。
確認する。
必要なら支援機関に聞く。
現場としてどう運用するかを考える。
これがちゃんとできている。
だから僕は研修が1時間で終わらなかったことをものすごく前向きに受け止めています。予定時間を超えたことが嬉しかったのではありません。
現場の皆さまが受け入れを自分ごととして考えてくださっていたことが嬉しかったんです。
メンター制度がさらにいい
もう一つ印象的だったことがあります。
北摂杉の子会様では外国人・日本人に関係なく、新しく入職する職員にメンターを導入されているんです。
これ、めちゃくちゃ良い取り組みやと思います。
外国人だから特別に何かするではなく、
新しく入る人に対してもともと支える仕組みがある。
この土台があると外国人材受け入れも特別対応になりすぎません。
実際にメンター担当の方からも積極的に質問がありました。
現場でどう声をかけたらいいのか。
困っていそうな時はどう拾えばいいのか。
文化や宗教の違いをどう受け止めればいいのか。
こういう質問が出ること自体、すでに“受け入れる側の姿勢”ができていると思います。
外国人材支援って制度や在留資格だけで回る話やないんです。
結局は人です。
誰が最初に声をかけるのか。
誰が困りごとを拾うのか。
誰が大丈夫?をちゃんと“伝わる形”で聞けるのか。
こういう現場の小さな関わりが定着を左右します。そういう意味でも北摂杉の子会様のメンター制度はすごく本質的やと思いました。
「地域に生きる」という理念の延長線上
今回、北摂杉の子会様の取り組み事例を投稿にするうえで、どうしても触れておきたいことがあります。
それは法人様の理念です。
理念として「地域に生きる」を掲げられています。
知的障害や発達障害があっても、一人の人間、市民として、生まれ育った地域の中で家族や友人、隣人、地域の人たちとともに普通の生活が送れるような優しさのある社会を目指す。
地域の中でそれぞれの個性が大切にされ、心豊かに、安心して生活できる環境と支援体制づくりを目指す。
この理念を拝見した時、僕は今回の特定技能人材の受け入れ準備ともすごく自然につながっていると感じました。
なぜなら外国人材の受け入れも結局は地域でともに生きる話だからです。
ただ人材を採用する。
ただ職員数を増やす。
ただ制度上、受け入れる。
それだけではありません。
インドネシアから来る方が日本の地域の中で働き、暮らし、職場の仲間となり、ご利用者様と関わり、少しずつ地域の一員になっていく。
そのために受け入れる側も準備する。
文化を知る。
宗教を知る。
不安を言葉にする。
相談できる関係をつくる。
新しく入る人を外国人・日本人に関係なくメンターで支える。
この一つひとつが地域に生きるという理念の延長線上にあるように感じました。
北摂杉の子会様は自閉症・発達障害支援において、実践と研究の両面から専門性を積み重ねてこられた法人様です。
今回の研修で直属の上司の方やメンター担当の方から、あれだけ具体的な質問が出たのもその考え方を皆さんが実践しているのだと思います。
どう受け入れるかをちゃんと現場で考えている。
法人様と支援機関が同じ地図を見る
大切なのは法人様と支援機関が同じ地図を見ることです。
どこに不安があるのか。
どこまで本人に事前教育できるのか。
どこから現場で覚えてもらうのか。
誰が最初にフォローするのか。
困った時にどこへ相談するのか。
この地図がないまま受け入れが始まると本人も現場も迷います。
今回、北摂杉の子会様とは入社前教育、入社後面談、トラブル時の報告フロー、相談体制、宗教理解研修、キャリア設計まで、一つずつ確認しながら準備を進めています。
派手な取り組みではありません。
この地図づくりこそ初回受け入れでは一番大切だと思っています。
派手な成功談より、入職前の小さな確認。
かっこいい制度説明より、本人のここがまだ不安ですを拾うこと。
大きな理念より、日々の授業と面談の積み重ね。
定着支援の本体って実はこういう地味なところにあります。
でもこの地味な準備を飛ばすとあとで現場が困ります。
本人も困ります。
支援機関も慌てます。
定着支援はキラキラした言葉だけでは回りません。
むしろ地味な確認の積み重ねの方があとから効いてきます。
こういう受け入れがもっと広がってほしい
今回の取り組みはまだ始まったばかりです。
これから実際に入職し、現場で働き、面談を重ね、課題を拾い、また調整していくことになります。
なので今の段階で成功事例ですと軽々しく言うつもりはありません。
そこまで簡単に言えるほど外国人材支援は甘くありません。
ただ、それでもはっきり言えることがあります。
こういう受け入れの仕方がもっと広がってほしい。
受け入れ前から現場の不安を整理する。
法人様と支援機関が一緒に準備する。
入国前教育で本人の現在地を見ておく。
宗教や文化の話も必要なレベルまで具体化する。
直属の上司やメンター担当者が事前に質問できる。
困った時の相談ルートを持っておく。
これは特定技能の外国人材だけのためではありません。
職場全体の安心につながる取り組みです。
すべての法人様が最初から同じ形を整えられるわけではありません。
メンター制度がある法人様もあれば、これから相談体制を作っていく法人様もあります。入国前教育の材料が揃っている法人様もあれば、まずは1日の流れから始める法人様もあります。
大切なのは完璧な体制を最初から作ることではありません。
現場の不安を言葉にすること。
本人の現在地を知ろうとすること。
困った時に相談できる流れを先につくっておくこと。
そこから始めればいいと思っています。
外国人材を受け入れるとは単に採用することではありません。
新しい仲間を迎えるため職場の側も少しずつ準備をすることです。
違いを知る。
不安を出す。
役割を決める。
相談先をつくる。
入職前から関係をつくる。
その積み重ねが定着につながります。
今まさにその土台づくりを一緒に進めています。
今回の研修はその途中経過のひとつでした。
その“途中”にこそ、すでに大きな価値があると思っています。
研修が終わってから、質問が次々に出たこと。
予定時間を超えても、現場の皆さまが聞いてくださったこと。
楽しみでもあり、ちゃんと整えておきたいという声があったこと。
僕にとってはそれが何より嬉しかったです。
受け入れ前からここまで考えてくれる現場は確実に強い。
こういう現場が増えていけば、障害福祉分野における外国人材受け入れも、もっと前向きなものになっていくと思っています。
社会福祉法人北摂杉の子会様について
北摂杉の子会様は「地域に生きる」という理念のもと、自閉症・発達障害のある方への支援を中心に高槻市・大阪市エリアで生活支援、通所、療育、相談支援、就労支援など幅広い事業を展開されています。
日々の取り組みは公式サイトや採用Instagramでも発信されています。
社会福祉法人北摂杉の子会 公式サイト
社会福祉法人北摂杉の子会 採用Instagram
──外国人材、現場からは以上です。
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