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無期懲役と懲役30年、どちらが重いのか――刑務所の現実を知る元刑務官の答え

北海道で発生した二つの凄惨な殺人事件。

さまざまな経緯や事情があったとはいえ、裁判で言い渡されたのは無期懲役や死刑ではなく、有期刑でした。

事件の詳細を知れば知るほど、「なぜこの判決なのか」と疑問を抱く人も少なくないでしょう。

被害者は集団で執拗に暴行を受け、肉体的にも精神的にも追い詰められた末に命を奪われました。

いつも考えてしまいます。
自分の家族や大切な人がもし同じことをされたらと、、、
本当に許せない。

被害者本人が受けた苦痛はもちろんのこと、残された遺族の気持ちを考えると、胸が締め付けられる思いになります。

亡くなられた被害者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

刑務官として長年、さまざまな受刑者と向き合ってきた私が考えることがあります。

それは、無期懲役と長期の有期刑、どちらが重く、どちらが適切な刑なのかという問題です。

残虐な事件にもかかわらず、死刑判決が言い渡されなかった今回、人それぞれに意見があるでしょう。

被害者や遺族の立場から見た意見。加害者の更生を重視する意見。さらに厳罰化を求める意見。

あるSNSを見ていると、さまざまな意見が投稿されていました。

「懲役30年程度で釈放されるのは甘すぎる」

「人権が保障された快適な刑務所で生活させることに納得できない」

「無期懲役であろうが懲役30年であろうが、私たちの税金で生活させること自体に憤りを感じる」

そうした当然の意見がある一方で、まったく逆の考え方もあります。

「人生で最も楽しく、充実しているはずの20代を刑務所で過ごさなければならない時点で、十分に重い罰を受けている」

「女性であれば、妊娠や出産の機会を失う可能性が高い。
仮に30年服役した場合、出所する頃には50代になっている。社会復帰は容易ではなく、就職先を見つけることも難しいはず
無期懲役で刑務所の中で生涯を終えるよりも、長期の有期刑を受けて社会へ戻されるほうが、むしろ過酷ではないか」

という意見です。

また、

「刑務所の中ではひどいいじめがあるらしいから、そこで苦しめばいい」

「刑務官から厳しく扱われればいい」

といった意見も見受けられました。

犯行の内容があまりにも残虐で、被害者や遺族の受けた苦しみを考えれば、そのような感情を抱き、「期待」してしまうのも無理はないのかもしれません。

許し難い犯罪だったからこそ、加害者にも相応の苦しみを味わってほしい。何らかの報いを受けてほしい。というのが本音でしょう。

さまざまな意見があり、そう願う人がいることは、十分理解できます。


かつての無期懲役は、「一生刑務所から出られない刑」というイメージとは少し異なっていました。

もちろん個人差はありますが、20年から30年前後で仮釈放されるケースも珍しくなく、「真面目に服役すれば、いつか社会へ戻れる」という考え方が一定程度存在していた時代です。

しかし、その後、仮釈放された元無期受刑者が重大事件を起こした事例や、犯罪被害者への配慮を重視する社会の流れなどを背景に、無期懲役の仮釈放は年々厳しく運用されるようになりました。

現在では、「30年服役すれば出られる」という考え方は、もはや現実とは言えません。

法律上は10年を経過すれば仮釈放の審査対象となる可能性がありますが、実際には30年を超えて服役しても仮釈放されない受刑者が大半です。

近年、無期受刑者の仮釈放が認められる割合は極めて低く、事実上、「終身刑に近い刑」と言われることもあります。

なぜそのようになったのか。

宇都宮実弟殺人事件(2004年)

最も有名な事例です。

  • 被告は1980年に殺人などで無期懲役判決。

  • 約20年以上服役し、仮釈放。

  • しかし、仮釈放から約2年後、金銭目的で実の弟を殺害する事件を起こしました。

  • 裁判では検察が「20年以上矯正教育を受けながら再び殺人を犯した」と指摘し、死刑を求刑。

  • 最終的に死刑判決が確定しました。

この事件は、
「無期懲役受刑者を安易に仮釈放すべきではない」
という世論を強めた事件として知られています。

しかし、実際は無期懲役受刑者は仮釈放という希望を捨て、生活しているわけではありません。

私が多く接してきた無期懲役受刑者は、真面目で模範囚であることを徹底し、長年の受刑生活で培った絶対に規律違反をしないスタイルを崩すことなく生活しています。

特に木工工場など職人技術が必要な工場で就業している受刑者には、刑務官から絶大なる信頼を得ている者も少なくありません。

大昔の昭和刑務官も彼ら(無期懲役受刑者)からたくさんのこと教えてもらったと述べている先輩方も少なくありませんでした。

刑務作業に従事して、品質の高い製品を作りながら仮釈放という希望を持ち続け、一日でも早く社会へ戻るために真面目な生活を続けている者もいれば

「人を殺したのだから、無期懲役になるのは仕方がない」
と仮釈放への希望を特に持たず、ただ生活している者

「どうせ出られないのだから、真面目にやる意味がない」
との考えを持つ者など

実際には、人それぞれです。

懲役30年前後という刑期の受刑者も、刑務所では決して珍しい存在ではありません。LA・LB指標の区分があり、長期受刑者だけを収容した施設もあります。

刑務所の中は年々変化し、人権への配慮が重視されるようになっていることは、これまで私が書いてきた記事を読んでいただければ、ある程度伝わるのではないかと思います。

では、長期間服役した受刑者は、出所後に必ず地獄のような人生が待っているのでしょうか。

確かに、社会復帰は容易ではないでしょう。
しかし、すべては本人次第でもあります。

刑務所の中には余暇時間を活かして勉強する時間があります。自由が制限されているからこそ、勉強や読書に集中できる環境です。

自ら動き、資格を取得する者もいますし、各施設で実施されている職業訓練に参加し、社会復帰に役立つ技術や資格を身につける者もいます。

また、出所に向けて刑務所が就職先の紹介や支援を行うこともあります。

更生、社会復帰以前に国民が納めた税金によって、毎日三食の食事が提供され、住む場所も確保される。さらに、人権が保障された刑務所で生活を送る受刑者に対して、憤りを感じる人がいるのは当然のことだと思います。

被害者は残酷に命を奪われた。

被害者遺族もまた、大切な家族を失い、その後の人生を大きく狂わされることになります。

失った命は戻りません。

私は、このような犯人には極刑を望みます。人を残虐に殺したのです。死をもって償うのは当然だと思っています。更生や社会復帰など望んでいません。

死刑判決でないなら、無期懲役が妥当です。

私が刑務官時代に見たある無期懲役受刑者は、出所することなく高齢となり、そのまま認知症を発症し、最終的には病死しました。

哀れな姿でした。

認知症になり、暴言を吐き続け、暴れる姿。

この事件の犯人(彼女達)が出所する頃には、事件も風化し、忘れ去られている可能性が高いと思います。

あるいは、仮釈放を許され、もっと早く出所するかもしれません。

この残虐な事件で有期刑を言い渡された二人+共犯者は、人を殺すこと、脅すこと、暴力を振るうことに抵抗のない人間です。

刑務所内でも同類の悪い考えをもつ仲間を作るかもしれません。
同じ考えや境遇の人間が集まる場所です。
日本の再犯率が高い原因は、ここにもあります。
悪知恵の共有。

そして再び社会に解き放たれたとき、まともに働いて生活して行くと思いますか?

「この人間は出所させてはいけない」「社会に戻せば再び誰かが被害を受けるかもしれない」と感じた受刑者を何人も見てきました。

私は、更生制度などをすべて否定するつもりはありません。

実際に立ち直った受刑者もいるでしょう。

テレビの報道だけをみて鵜呑みにすることは危険だと思いますが、この事件に関しては被害者が受けた苦痛や遺族の苦しみを考えると、どうしても極刑を望んでしまうのです。



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