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懐疑論者 杉山大志氏 への懐疑

1.気候変動懐疑論者は無視すべきか

 ごく少数であっても懐疑論者を無視するのは誤りです。

 病名も治療法もわかっているのに何もしなければ、身体中を蝕んで手遅れになるのと同じです。

 彼らは少数であるにもかかわらず大騒ぎするので、あたかも気候変動問題の考えが、世の中でまとまっていないと人々に誤解させます。実際は大多数が気候変動を心配しているのに。*1)

2.懐疑論者の目的

 気候変動懐疑論者は、人々が気候変動の科学的な説明に疑念を抱くように仕向けます。なぜなら彼らの目的は、人々が気候変動の根本的な解決を躊躇させることだからです。

 過去にタバコ戦略フロンガス戦略などで大企業が採用した手法を、現在は気候変動懐疑論者が応用して用いています。つまり彼らは大企業など資本家の利益のために働いています。*2)

 つまり気候変動懐疑論者は、気候変動による人類の物理的な生存可能性を犠牲にして資本家に忠誠を誓っていると言えます。

3.懐疑論者 杉山大志氏

 日本における気候変動懐疑論者の代表的な人物は、キャノングローバル戦略研究所所属の杉山大志氏でしょう。

 世界の気候変動の専門研究者の97%が、気候変動が人為的であることに疑いの余地がない、と結論づけているにもかかわらず、可能性がゼロではないから未確定である、との立場を取るのは懐疑論者がよくやる手法です。*1)

 科学は検証の積み重ねであり、証明ではありません。*3)

 この事実を知らないと、可能性がゼロではないから本当かどうかわからない、という主張を受け取ってしまうことになります。

 ゼロではないから気候変動が人為的であるかどうか確定していない、ではなく、専門の研究者のほとんど全員が肯定しているから気候変動は人為的であることに疑いの余地がない、のです。*1)

 なお科学界では検証手法は厳密です。常に批判的な検証にさらされ、それを乗り越えたものだけが真実と見做されるのです。

 別な視点から主張している、多数派とは違う、ということは全く信頼する材料になりません。

 彼は決して正面から気候変動を否定しませんが、この検証と証明の違いを利用して、人々に疑念を抱かせることに成功しているように思えます。

4.キャノングローバル戦略研究所の評価

 彼が所属するキャノングローバル戦略研究所は、企業側に立つプロパガンダ機関である可能性が高いです。

 その根拠に関しては、以下のウェブサイトが参考になります。

https://speakslouder.org/jp/report/canons-climate-deception-in-the-frame/

 あわせて、この研究所の実質的なオーナーであるキャノンそのものも、社会的な無責任さを糾弾されている事実は、知っておいて良いと思います。

https://sustainablejapan.jp/2022/12/10/canon-climate-change/79948

5.杉山氏が発信する誤った情報の一例

(1) 「「地球温暖化」のウソに騙されるな」(杉山大志、「明日への選択」(令和4年3月号)に掲載)

https://cigs.canon/article/20220404_6683.html (2024年11月に参照)

推定される誤謬:ニセの専門家、間違った解釈、チェリーピッキング、論理の飛躍*4)

 誤謬だけではなく、杉山氏は本記事で「大量に二酸化炭素を排出していない大国が削減に消極的なら、やっても無駄」という主張もしています。他がやっていないから自分もやらないというのは無責任な態度です。

 そもそも気候変動問題の解決に取り組まない理由になっていません

 本来は消極的な国を気候変動対策のテーブルにつくよう説得するのが、曲がりなりにも先進国である日本の、将来世代に対する責任ある態度だと考えます。

(2) 『データが語る気候変動問題のホントとウソ』 (電気書院) 

https://www.amazon.co.jp/dp/4485301257/

 目次を見るだけで、懐疑論者の手法の典型が羅列されています。見方によっては、彼は懐疑論者としてとるべき手法に忠実です。*5)

 すべての目次タイトルは、専門家が著した「現代気候変動入門」(名古屋大学出版会)でその誤りが理解できます。

 加えて「現代気候変動入門」では、その厳密な検証手順を説明することで、なぜIPCCが信用できるのかの説明も載っています。

 なおこの書籍の裏付けとしては、環境省のウェブサイトも参照できます。*6)

 本書を出版した電気書院は、電気工事士の資格試験本など、工学系のさまざまな実務書籍を扱っています。

 そこが本書を出版した経緯は不明です。しかしここの出版物をみると、気候変動に関しては初参入のようです。

 結果としてこの出版社は、科学的態度を知らず、本書全体の虚偽を見極める知見がなかったようです。

 彼のような発信力を持つ人間が、誤った認識を植え付けるようなロジックで、人々に疑念を抱かせるのは、文明社会に生きる者として看過してはいけないと考えます。

7.懐疑論の影響を受ける人々

 ごく一般的な懐疑論者は、このような情報発信力の強い人によって、疑念を持ってしまった被害者だと言えます。*3)
 ですので、そのような人々を上から目線で批判する態度は間違っています。

 懐疑論者が用いる手法を知ることで、多くの人が虚偽情報に気づくようになることが、彼らを抑え込むのに有効だと考えます。*3), *5)

*1)「世界一クールな気候変動入門」ジョン・クック(著)、加納安彦(日本語版監訳)、縣秀彦、海部健三、鴈野重之、小西一也、小林玲子(訳)、河出書房新社、P.160
*2) https://note.com/juan5665/n/nb23ace5629bc
*3)「エビデンスを嫌う人たち」リー・マッキンタイア(著)、西尾義人(訳)、国書刊行会
*4) この分類については「世界一クールな気候変動入門 情報を正しく判断するために」参照
*5) 同上
*6) https://www.env.go.jp/earth/ondanka/knowledge.html。ただし気候変動懐疑論者は「すべてが口裏を合わせて事実を隠蔽している」などと論点をすり替える可能性は否定できません。