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【バリュー株の歩き方】#001リユース市場は伸びている。でも利益は残るのか~ゲオHDとハードオフで見る、売上成長と利益率の違い~

この記事は、2026年6月26日時点で確認できる公開情報をもとに書いています。決算数値は、ゲオホールディングスとハードオフコーポレーションの2026年3月期決算短信、決算説明資料、有価証券報告書を参照しています。株価・時価総額などの市場データは、原則として2026年6月26日終値ベースです。

0. この記事の読み方

「リユース市場は伸びているらしい」

そう聞くと、ゲオやハードオフのような会社は、なんとなく良さそうに見えます。新品は高くなり、メルカリで中古品に慣れた人も増え、古着、中古スマホ、トレカ、ブランド品も身近になりました。

でも、企業分析ではここで一度立ち止まる必要があります。

市場が伸びていても、その成長が会社の利益に落ちるとは限りません。売上は伸びているのに、出店費用、人件費、物流費、在庫負担で利益が残りにくい会社もあります。逆に、売上規模は小さくても、高い粗利率と店舗運営でしっかり利益を残す会社もあります。

私は昔、ブックオフでよく中古漫画を買っていました。お金のない学生時代、安く漫画を買えるのも、立ち読みで長居できるのもありがたかったです。今でも中古品の棚を見ていると、「何か掘り出し物があるかも」と少しワクワクします。ただ、企業分析として見るなら、好きな市場かどうかではなく、売上が利益とキャッシュに変わっているかを見ます。

今回見るのは、ゲオホールディングスとハードオフコーポレーションです。

片方は、売上4,812億円の大型リユース・小売グループ。もう片方は、売上393億円ながら営業利益率8.6%の高収益リユース企業です。

『バリュー株の歩き方』は、売買推奨ではなく、実在企業を題材にした企業分析ケーススタディです。この記事でも、どちらを選ぶべきかではなく、「成長市場の会社を見るとき、売上成長、利益率、EPS、FCF、在庫をどう読むか」を整理します。


【3分でわかる結論】

この記事の要約数字を1つ選ぶなら、これです。

「売上高4,812億円 vs 393億円、営業利益率3.0% vs 8.6%」

売上規模では、ゲオがハードオフの約12倍あります。ところが、営業利益率ではハードオフが大きく上です。2026年3月期の営業利益率は、ゲオが3.0%、ハードオフが8.6%。同じリユース市場にいても、稼ぎ方の効率はかなり違います。

もう1つ、今回の学びに効く数字があります。

「会社予想営業利益成長率 △8.7% vs +19.6%」

2027年3月期の会社予想では、ゲオは売上高+6.0%ながら営業利益は△8.7%。ハードオフは売上高+16.4%、営業利益+19.6%。同じ成長市場にいても、「売上成長が利益に落ちるか」では差が出ています。

ゲオは、セカンドストリート、ゲオ、ブランド品、新品ゲーム・トレカなどを幅広く扱い、国内外で出店を続ける規模の会社です。ただし、営業利益率は3.0%、自己資本比率は33.2%。借入やリースも使いながら店舗網を広げる、アクセル強めの成長企業です。会社自身は2027年3月期を「増収減益」と見込んでいます。

ハードオフは、売上高ではゲオよりかなり小さい会社です。ただし、30期連続増収、営業利益率8.6%、ROE(Return On Equity、自己資本利益率)13.1%、自己資本比率64.0%。フランチャイズを活用しながら、家電・楽器・家具・ホビーなどの中古品を高い粗利で回す会社です。2027年3月期も営業利益で19.6%増を見込んでいます。

実績PER(Price Earnings Ratio、株価収益率)だけを見ると、ゲオは約9.3倍、ハードオフは約14.4倍。ゲオのほうが安く見えます。ところが、来期会社予想EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益)で見ると、ゲオは約13.5倍、ハードオフは約11.0倍に逆転します。

ただし、ハードオフの来期純利益には、ワットマン株式売却による特別利益1,160百万円が入る予定です。これを簡易的に税引後で控除すると、ハードオフの正常化予想PERは約14.6倍まで上がります。つまり「来期予想だけ見れば安く見えるが、一過性益を抜くと激安ではない」というのが正確な見方です。

この記事で持ち帰ってほしいのは、次の一点です。

「成長市場だから良い会社」とは限りません。見るべきなのは、その成長が営業利益、EPS、FCFにどう落ちるかです。

5軸スコア(各5点満点・2026年6月26日終値ベース)

一言でいえば、「規模と出店のゲオ」対「質と還元のハードオフ」です。今回のケーススタディでは、成長市場を見るときに、売上の大きさだけでなく、利益率、会社予想、FCF、在庫、還元方針をセットで見る必要があることを確認します。


1. なぜ今、この二社なのか

リユース市場は、いま数少ない「構造的に伸びている内需」です。

リユース経済新聞の『リユース市場 データブック2024』を出典として、ゲオの決算説明資料は2023年の国内リユース市場を3兆1,227億円、前年比7.8%増と説明しています。また、同紙の市場予想として、国内リユース市場は長期的な成長が期待できるとされています。リユース経済新聞は別途、2030年に市場規模4兆円という見通しも示しています。もちろん、これは業界紙の推計であり、保証された未来ではありません。ただ、少なくとも「縮む紳士服市場」と違い、リユースは追い風のある市場として見てよいでしょう。

追い風は分かりやすいです。

物価高で新品が高くなり、消費者は中古品を選びやすくなる。メルカリの普及で、中古品への抵抗感も薄れている。インバウンド客は「Used in Japan」の品質を評価する。スマホ、トレカ、ブランド品、楽器、ホビーなど、昔ながらの古着・中古家電だけではない新しいカテゴリも育っています。

問題はここからです。

伸びる市場の主役には、普通は高い値段がつきます。成長セクターでバリュー投資をするなら、見るべきは「安いか高いか」だけではありません。「今の株価が、どれくらいの成長をすでに前提にしているか」です。

ゲオとハードオフは、この問いを立てるのにちょうどよい二社です。

片方は、売上4,812億円の大型リユース・小売グループ。もう片方は、売上393億円の高収益ニッチ企業。規模はまったく違います。だからこそ、同じ市場の追い風を「規模で取りにいく会社」と「粗利とFCで取りにいく会社」を比べる構図になります。

この対決は、単なる中古屋比較ではありません。

「売上成長を追う株」と「EPSに落ちる成長を追う株」の比較です。


2. ビジネスモデル ― 「中古屋」の中身が、まるで違う

ゲオホールディングス(2681)

ゲオは「規模で面を取る」会社です。

2026年3月期の売上高は4,812億円。商材別に見ると、セカンドストリート事業1,552億円、ゲオ事業878億円、ラグジュアリー事業576億円、新品1,243億円、その他563億円。そのうちレンタルは251億円です。

【この会社、実は①】
ゲオは元レンタルビデオ屋です。ところが、いまの売上の主役はもうレンタルではありません。レンタル売上は約251億円で、全体の約5%。いまのゲオは、セカンドストリート、ゲーム・スマホ、ブランド品、新品ゲーム・トレカを組み合わせた「リユース小売グループ」と見るほうが実態に近いです。

特徴は2つあります。

1つ目は、扱う商材が広いことです。古着・服飾雑貨だけではなく、中古ゲーム、中古スマホ、ブランド品、新品ゲーム機、トレカまで扱います。ハードオフよりも、売上の取り方がかなり広い。

2つ目は、出店です。ゲオは、2nd STREETの国内店舗数について、2029年3月期までに1,000店舗を通過点として設定しています。海外でも、米国・台湾・マレーシア・タイ・シンガポール・香港に展開しています。これはかなり強いアクセルです。

ただし、このモデルには弱点もあります。新品ゲーム機やトレカは売上を作りやすい一方で、利益率は薄くなりやすい。出店を増やせば、人件費、家賃、物流費、開業費用も先に出ます。売上は伸びても、すぐにEPSへ落ちるとは限りません。

ゲオを一言でいえば、「売上と店舗網を広げて、あとから利益率を上げたい会社」です。

ハードオフコーポレーション(2674)

ハードオフは「粗利で守る」会社です。

新潟県新発田市発祥。1972年にサウンド北越として創業し、1993年にリユース事業へ転換。同年に1号店となる「ハードオフ新潟紫竹山店」をオープンしました。1995年に現在のハードオフコーポレーションへ社名変更しています。

業態は、ハードオフ、オフハウス、ホビーオフ、モードオフ、ガレージオフ、リカーオフなど。家電、楽器、家具、服、ホビー、お酒、自動車用品まで、いわゆる「家の中にある売れそうなもの」を広く受け止める会社です。

2026年3月期の売上高は393億円。ゲオの12分の1程度です。規模だけで見れば、ゲオとはかなり差があります。ただし、稼ぎ方はかなり優秀です。2026年3月期の営業利益率は8.6%、ROEは13.1%、自己資本比率は64.0%。さらに30期連続増収、過去最高益です。

最大の特徴はフランチャイズです。2026年3月末時点で、直営545店、FC(フランチャイズ)533店、合計1,078店。自前で全店舗を抱えるのではなく、FCも使いながら全国へ広げる。これにより、店舗網の広さと資本効率を両立させています。

有価証券報告書の主要設備を見ると、提出会社単体の直営店だけでも、ハードオフ147店、オフハウス105店、ホビーオフ67店、ブックオフ49店など、複数業態に分かれています。家電・楽器だけの会社ではなく、業態を分けて「持ち込まれた一点物」を受け止める設計です。

【この会社、実は②】
ハードオフは、ブックオフと名前もロゴも似ています。これは偶然ではありません。

ハードオフの創業者・山本善政氏と、ブックオフ創業者・坂本孝氏は、もともとオーディオ店の勉強会で知り合った友人関係でした。ハードオフ側は、当初「ハードオン」という名前で商標登録までしていたものの、ブックオフと同じ建物で店を始めるなら、名前の語尾をそろえたほうが覚えてもらいやすいと考え、「ハードオフ」になったとされています。

実際、ハードオフの山本氏は、1993年に1階を「ブックオフ」、2階を「ハードオフ」とする1号店を出したと語っています。つまり、ブックオフとハードオフは同じ会社から分かれた兄弟ではありませんが、創業期からかなり縁の深いリユース仲間です。

その関係は、いまも少し残っています。ブックオフグループホールディングスの2025年5月期有価証券報告書では、ハードオフコーポレーションが8.18%を持つ筆頭株主です。さらにハードオフの店舗検索では、執筆時点でブックオフ店舗も68店表示されます。ハードオフはエコノス子会社化により、同社が運営していた北海道のブックオフ16店舗を直営店舗に追加していますが、その前からブックオフ店舗も運営していた、と見るのが正確です。

中古屋のハードオフが、別の有名中古チェーンの暖簾もかけて商売している。リユース業界の入り組んだ関係が見える小ネタです。

ゲオとハードオフが直接バッティングする商材もあります。家電、楽器、衣料品、ゲーム、ホビー、スマホ周辺などは一部重なります。ただ、ゲオはセカンドストリートの衣料・服飾、GEOのゲーム・スマホ、ラグジュアリーのブランド品、新品ゲーム・トレカの比重が大きい。一方、ハードオフは家電・楽器・オーディオ・ホビー・家具など、より「家の中の一点物」に強い。重なるが、主戦場は少し違う、という見方がフェアです。

【この章の整理:引き分け】
規模と多角化の幅ならゲオ。粗利、資本効率、身軽さならハードオフ。どちらが良い会社かというより、別の競技をしている二社です。


3. 市場環境と競合 ― 同じ追い風、正反対の構え

リユース市場の勝ち筋は、突き詰めると「在庫をどう集めるか」です。

新品小売なら、メーカーや卸から仕入れれば商品が並びます。しかし中古品は、お客さんが持ち込む一点物です。だから、買取の入口をどれだけ持っているかが、そのまま粗利の源泉になります。

ゲオは「店舗網」でこれを取りにいきます。セカンドストリート、GEO mobile、買取専門店、出張買取、宅配買取を組み合わせて、在庫の蛇口を増やす。2027年3月期も国内外で出店を続ける計画です。

ハードオフは「FCと業態の幅」で取りにいきます。家電、楽器、家具、服、ホビー、酒、自動車用品まで受け皿が広い。加えて、FC網によって地域密着の買取入口を作りやすい。いわば「何でも持ち込める街のリユース網」です。

競合は多いです。ブックオフグループ、コメ兵、トレジャー・ファクトリー、メルカリ、リユース専業の中小店舗、質屋系、ブランド買取系。特に個人間売買(C2C)のメルカリは、店舗型リユースにとって常に代替品です。消費者にとっては「店へ持ち込む」か「自分で出品する」かの選択だからです。

ただし、店舗型にも強みがあります。すぐ現金化できる。大型商品を扱える。真贋・査定を任せられる。まとめて手放せる。メルカリで写真を撮り、説明文を書き、発送する手間が面倒な人は多い。ここに店舗型リユースの居場所があります。

リユース業界の5フォース

業界全体の儲けやすさを、5フォースで整理するとこうなります。

リユース業界は、市場が伸びているから楽勝、という業界ではありません。最大のボトルネックは「売れる中古品をどう集めるか」です。需要があっても、在庫がなければ売れません。だから、この業界では販売力だけでなく、買取網、査定力、店舗網、データ、ブランド信頼が競争力になります。

個社別SWOT

5フォースは業界全体の見方です。次に、ゲオとハードオフの立ち位置をSWOTで分けます。


SWOTで見ると、ゲオは「市場の広さを取りにいく力」が強い会社です。一方、ハードオフは「仕入れた一点物を利益に変える力」が強い会社です。伸びる市場をどれだけ取れるかならゲオ。伸びた分を利益率に落としやすいかならハードオフ。この違いが、以降の財務・バリュエーションにもつながります。

【この章の整理:ハードオフ(僅差)】
同じ追い風の下で、「粗利を取りやすい一点物を、FCも使いながら集める」ハードオフのほうが、利益への落ち方は見えやすい。ゲオの面で押す戦法は強力ですが、新品比率と出店費用が利益率を薄めやすい点は割り引いて見る必要があります。


4. 成長戦略とエクイティストーリー ― 「攻めの王者」と「コツコツの職人」

エクイティストーリーとは、ざっくり言えば「この会社の株主価値が評価されると、どういう筋書きで報われるか」という物語です。

ゲオの物語は分かりやすいです。

国内外でセカンドストリートを増やす。買取専門店や宅配・出張買取で在庫を集める。GEO mobileで中古スマホを伸ばす。新品ゲーム・トレカで集客と売上を作り、周辺の中古商材にもつなげる。規模で市場シェアを取りにいく戦いです。

中期的な目標も、かなり攻めています。ゲオは2nd STREET国内1,000店舗を2029年3月期までの通過点と置き、さらに有価証券報告書では2035年度にグループ連結売上高1兆円、5,000店舗という長期ビジョンを掲げています。企業価値向上の面では、中長期的な目標として売上高営業利益率5.0%、ROE(Return On Equity、自己資本利益率)8.0%を示しています。2026年3月期の営業利益率は3.0%なので、ここから利益率をどこまで上げられるかが、ゲオの株主価値を左右します。

新品を伸ばす意味は、単なる売上至上主義だけではないと思います。ゲーム機やトレカは、来店頻度を作り、GEOの店舗網を維持し、中古ソフト・周辺機器・買取へつなげる入口になります。新品ゲーム機を買った顧客は、将来ゲームソフトや本体を売る可能性もあります。つまり、新品は「薄利だが、顧客接点と回転を作る商材」と見られます。

ただし、株主目線では注意が必要です。薄利商材で売上を伸ばしても、利益に落ちなければ意味は薄い。ゲオの課題は、売上成長を営業利益、さらにEPSへ落とせるかです。

ハードオフの物語は、もっと地味です。

リアル店舗、出店、ネット、海外。2030年に向けた4つの戦略を掲げ、リアル店舗を中心にオムニチャネル化していく。中期経営計画では、2029年3月期に売上高538億円、経常利益54億円、経常利益率10.0%、ROE13%超を目指しています。店舗数は、直営とFCを合わせて年間約50店舗の純増を計画し、2029年3月期末に1,235店舗を見込みます。

ゲオほど派手な海外出店ストーリーではありませんが、店舗網を少しずつ増やし、FCと直営を組み合わせ、利益率と配当を積み上げる形です。ハードオフはすでにROE13%台を維持しており、経常利益率も2026年3月期で8.9%。中計にかなり近いところから、さらに積み上げる計画と見てよいでしょう。

来期予想を見ると、両社の違いはさらにはっきりします。

どちらも売上は伸びる見込みです。しかし、利益の向きが正反対です。

ゲオは増収減益。ハードオフは増収増益。ここが大きい。

【この章の整理:ハードオフ】
伸びしろの大きさならゲオです。ただ、今のところ会社予想ベースでは、その伸びしろが来期利益に落ちません。株主にとって重要なのは売上高そのものではなく、最終的にはEPSです。2027年3月期予想でEPSが下がるゲオと、上がるハードオフ。この差は重いです。


5. 財務分析 ― 「規模のゲオ」と「効率のハードオフ」

まず、2026年3月期の実績を並べます。

まず前提として、両社は規模が全然違います。売上高はゲオがハードオフの約12倍。営業利益も絶対額ではゲオが約4倍です。したがって、「どちらが業界で大きいか」と聞かれれば、答えはゲオです。

ただ、利益率で見ると景色が変わります。

ゲオの営業利益率は3.0%。ハードオフは8.6%。粗利率もゲオ39.4%、ハードオフ68.2%。同じリユース企業といっても、ゲオは新品ゲーム・トレカやゲーム機、ブランド品も大きく扱うため、どうしても売上規模のわりに利益率が薄くなりやすい。

キャッシュフローで見ると、少し別の顔も見えます。2026年3月期の簡易FCFは、ゲオが約41億円のプラス、ハードオフが約2億円のマイナスです。ただし、ハードオフの投資CFにはエコノス取得の支出が含まれます。通常の設備投資だけで見れば、ハードオフも営業CFの範囲で投資をまかなえる力はあります。したがって、この年だけを見て「ハードオフはキャッシュを生まない」と読むのは行きすぎです。

有報で設備投資の中身を見ると、ハードオフは店舗新設・改装に加えて、本社のIT設備にも投資しています。FCを使うためゲオより身軽とはいえ、完全に投資不要のビジネスではありません。成長投資が将来の営業利益率や在庫回転に返るかは、今後も見る必要があります。

ゲオの純利益+92.6%は派手ですが、少し割り引いて見る必要があります。2026年3月期には、セカイズ株式取得に伴う負ののれん発生益1,592百万円が特別利益として入りました。一方で、減損損失4,277百万円も計上しています。単純に税率30.6%で税引後換算すると、負ののれんは約11億円の利益押し上げ、減損は約30億円の利益押し下げです。ネットでは約19億円の利益押し下げ要因になります。つまり、一時的なプラス要因とマイナス要因を相殺すると、見た目上の純利益は減った、ということです。ただ、減損は店舗型小売では繰り返し出ることもあるため、完全に無視してよい費用ではありません。実力を見るなら、営業利益・経常利益・数年平均の純利益を合わせて見るのがよいでしょう。

ハードオフは、エコノス買収に伴う株式公開買付関連費用83百万円がありました。これは一過性費用なので、正常収益力(※会社の本来の収益力)を見るうえでは控除、つまり利益を少し上に見る要因です。また、エコノス買収で発生したのれん968百万円は15年で償却されます。のれん償却は会計上の費用ですが、キャッシュアウトを伴いません。したがって、利益ベースではやや重く見える一方、キャッシュフローでは見た目の利益より実力が少し上に見える可能性があります。

簡易的に正常化してみます。

この表だけ見ると、ゲオの安さはかなり目立ちます。ただし、来期会社予想が減益であることを忘れてはいけません。実績を正常化すると安い。でも会社自身は次の1年を減益と見ている。このねじれが、ゲオの難しさです。

会社予想は、どれくらい信じてよいか

ここで、もう一つだけ見ておきたいのが「会社予想のクセ」です。投資家は来期予想PERを見ますが、その前提になる会社予想が保守的なのか、強気なのかで、同じPERでも意味が変わります。

過去数年の期初予想と実績をざっくり並べると、こうなります。

この表から言えるのは、ゲオは予想が外れるというより、業績の振れ幅そのものが大きい会社だということです。新品ゲーム機、トレカ、為替、出店費用、物流費などで、利益が上下に振れやすい。2026年3月期は上振れましたが、2027年3月期の会社予想はすでに減益です。ここを「また上振れるはず」と見るには、もう一段材料が欲しいところです。

一方のハードオフは、ゲオほど大きく跳ねる会社ではありません。期初予想に対して大きく上にも下にも外れるというより、営業利益で見るとおおむね計画線に沿って着地してきました。だから、2027年3月期の営業利益+19.6%予想も、少なくともゲオの減益予想よりは読みやすい。

【この章の整理:ハードオフ】
規模ではゲオ。しかし、利益率、ROE、自己資本比率、来期利益の向きではハードオフが上です。特に「売上が伸びても利益が減るゲオ」と「売上も利益も伸びるハードオフ」の差は、財務分析では無視できません。


6. 株主構成と需給 ― 対決の裏に、似ている「創業家の城」

事業の性格はかなり違いますが、株主構成には共通点があります。どちらも創業家色が強い会社です。

2026年3月期有価証券報告書で大株主を更新すると、こうなります。

ゲオの筆頭株主「城蔵屋」は、創業家系の資産管理会社とみられます。ハードオフの筆頭株主「ヤマモトアセット」も、山本家の資産管理会社とみるのが自然です。いずれも断定には注意が必要ですが、少なくとも「外部の機関投資家が会社を大きく動かす資本構成」ではありません。

この固さは、評価が変わる条件に効きます。

創業家が3分の1超を握る会社では、アクティビストや東証要請のような外圧は効きにくくなります。もちろん、創業家支配は悪いことばかりではありません。長期目線で経営しやすい。短期利益に振り回されにくい。会社文化が守られやすい。これはプラス面です。

一方で、株主還元や資本効率の改善が遅れやすいこともあります。ここはコインの裏表です。

この点で、ハードオフは配当方針が明確です。DOE(Dividend On Equity、株主資本配当率)6%程度を目安とし、2027年3月期は92円配当を予想しています。ゲオは2027年3月期も34円配当予想で、配当性向は22.5%。成長投資優先です。

自己株式取得の姿勢も違います。2026年3月期有報では、ゲオもハードオフも取締役会決議に基づく自己株式取得はありません。ゲオは2022年に自己株式の公開買付を公表した実績がありますが、直近の資本政策は配当34円を安定的に続けながら、成長投資を優先する色が強い。ハードオフも株主還元の中心は、DOE6%を目安にした配当です。

【この章の整理:ハードオフ(僅差)】
資本構成の固さ自体は両社とも似ています。ただし、固い城であるなら、城主が株主にどう報いるかが大事です。還元方針の分かりやすさで、ハードオフに少し分があります。

7. バリュエーション ― ここが本記事の核心

まず、ことばの定義から

この章では略語が多く出るので、最初にまとめておきます。

  • PER(Price Earnings Ratio、株価収益率):時価総額 ÷ 純利益。株価が「1年分の純利益の何倍か」を表します。

  • PBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率):時価総額 ÷ 純資産(自己資本)の簿価。よく「解散価値の何倍か」と説明されますが、厳密には帳簿上の純資産に対する倍率です。

  • EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):純利益 ÷ 発行済株式数。1株にどれだけ利益が乗っているかを見ます。

  • BPS(Book-value Per Share、1株当たり純資産):純資産 ÷ 発行済株式数。1株にどれだけ純資産が乗っているかを見ます。

  • ROE(Return On Equity、自己資本利益率):純利益 ÷ 自己資本。株主のお金をどれだけ効率よく利益に変えたかを見ます。

  • FCF(Free Cash Flow、フリーキャッシュフロー):営業活動で得た現金から、設備投資などを差し引いた手残りの現金です。

  • DOE(Dividend On Equity、株主資本配当率):年間配当総額 ÷ 自己資本。利益ではなく、純資産に対してどれくらい配当するかを見る指標です。

  • EV(Enterprise Value、企業価値):株式時価総額にネット有利子負債を足した、会社をまるごと買うときの値段です。

  • EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization、利払い・税金・減価償却前利益):営業利益に減価償却費などを足し戻した、事業が生む現金利益に近い指標です。

  • ネットキャッシュ:現金や換金しやすい資産から負債を差し引いた、実質的な余剰資金です。本稿では清原式の考え方に合わせて、流動資産や投資有価証券を重視します。

ここで大事なのは、PBRを見ただけで清原式の割安株とは言えないことです。PBRが低くても、その純資産が店舗、在庫、設備、のれんなどで埋まっていれば、株主に返せる現金とは別物です。清原式でより重いのは、PBRよりも「ネットキャッシュが時価総額に対してどれだけ厚いか」です。

2026年6月26日終値ベースのバリュエーション

※簡易EBITDAは、原則として「営業利益+減価償却費+のれん償却費+レンタル用資産減価償却費」で計算しています。ゲオはレンタル用資産の減価償却費が大きいため、通常の小売企業よりEBITDAが厚く出ます。EVは時価総額に有利子負債とリース債務を加え、現金及び預金を控除した概算です。厳密な同業比較では、リース債務を含めるかどうかを揃える必要があります。

表面的な実績PERでは、ゲオ約9.3倍、ハードオフ約14.4倍。ゲオのほうが安く見えます。

しかし、来期予想EPSで見ると、ゲオ約13.5倍、ハードオフ約11.0倍。評価が逆転します。理由は単純で、ゲオは来期減益、ハードオフは来期増益だからです。

さらに、ハードオフの来期純利益にはワットマン株式売却益1,160百万円が入る予定です。これを税引後でざっくり控除すると、正常化EPSは約179円、正常化予想PERは約14.6倍になります。つまり、ハードオフは「一過性益込みでは見やすいが、実力ベースではそこまで激安ではない」というのが正確です。

同業compsで見るとどうか

では、ほかのリユース企業と比べると、ゲオとハードオフはどこにいるのか。データが揃いやすい株価指標で横比較します。

※株価・時価総額・PER・PBR・配当利回りは、原則として2026年6月26日終値ベースです。会社によって決算期、会計上の一過性要因、業態、流動性が異なるため、単純な高低だけで優劣を決める表ではありません。

この表で見ると、ハードオフは「リユース株の中で圧倒的に安い」という位置ではありません。正常化PERで見れば、ブックオフGに近い水準です。一方で、配当利回りはこの比較群では高めで、ROEも十分に高い。つまりハードオフの魅力は、単純なPERの安さではなく、「そこそこの倍率で、質と還元がついてくる」ことにあります。

ゲオはPBR0.83倍で、資産面では確かに安く見えます。ただし同業compsで見ると、予想PER13倍台・配当利回り1%台という姿は、必ずしも飛び抜けた割安ではありません。ゲオを評価するには、「低PBRだから」ではなく、「出店投資がどこかで利益率改善に変わる」と見られるかが必要です。

「資産の安さ」ではゲオ、「利益の質」ではハードオフ

PBRでは、ゲオ0.85倍、ハードオフ1.70倍。資産に対する安さではゲオです。

ただし、ゲオはネットデットです。有報では、2026年3月期末の流動資産は1,964億円まで増えましたが、固定負債も1,421億円まで増え、その主因は長期借入金とリース債務です。社債、長期借入、一年内返済予定長期借入、リース債務を含めると、現金及び預金を差し引いても正味の借金が残ります。したがって、「現金が厚いから低PBRで安い」というタイプではありません。

ハードオフはPBR1.70倍で、純資産に対しては安くありません。ただ、ROE13.1%、営業利益率8.6%、DOE6%目安の配当方針を考えると、PBRが1倍を超えること自体はおかしくありません。資産バリュー株というより、質の高い小型の割安成長株です。英語圏では、こうした「成長もあるが、値段も高すぎない株」をGARP(Growth At a Reasonable Price)と呼ぶことがあります。「お手頃な値段で買える成長株」という意味です。

清原式で見る「本当に割安なのか」

清原達郎氏は、タワー投資顧問で「タワーK1ファンド」を運用したことで知られる投資家です。本稿では、その考え方を参考にしながら、単なる低PER・低PBRではなく、「なぜ市場が放置しているのか」を分解して見ます。

ここで大事なのは、清原式を「低PERや低PBRの株を探す方法」とだけ理解しないことです。清原式でより重いのは、ネットキャッシュ比率です。

本稿で使う簡易式は、次の通りです。

「清原式ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券×70% − 負債」

「清原式ネットキャッシュ比率 = 清原式ネットキャッシュ ÷ 時価総額」

この比率が1倍を超えると、時価総額よりも換金性資産のほうが多い可能性がある、という見方になります。ただし、機械的に割安とは判断しません。流動資産の中には在庫も入ります。在庫は売れれば現金になりますが、すべてが帳簿価額どおりにすぐ換金できるわけではありません。

その目線で見ると、今回の二社はこう整理できます。

この表から分かるのは、ゲオもハードオフも、清原式ど真ん中の「ネットキャッシュ比率1倍超の割安株」ではない、ということです。

ゲオはPBR0.85倍で、見た目には資産面の安さがあります。しかし、清原式ネットキャッシュで見ると、ほぼゼロからマイナス圏です。流動資産は大きいものの、商品在庫も大きく、負債も重い。つまり、「低PBRだから清原式で割安」とは言えません。低PBRの理由は、ネットキャッシュの厚さではなく、借入を使いながら出店し、利益率がまだ薄く、会社自身が来期減益を見込んでいることにあります。実態は「資産の安さ」より「投資回収待ち」の会社です。

ハードオフは、簡易ネットキャッシュ比率ではゲオより良く見えます。ただし、これも1倍には遠く届きません。さらに、流動資産の多くは在庫です。楽器、家電、ホビー、家具などの在庫は、売れれば利益になりますが、現金そのものではありません。したがって、ハードオフも清原式の純粋なネットキャッシュ割安株ではありません。

それでも、時間を味方にしやすいのはハードオフです。理由は、ネットキャッシュそのものではなく、営業利益率、ROE、財務の健全性、DOE6%目安の配当方針、会社予想の営業増益がそろっているからです。PBRは高いものの、利益と還元が積み上がる限り、待つ理由を説明しやすい。

今回のバリュエーションの核心は、こうです。

「ゲオの安さは、低PBRよりも来期減益・投資負担・薄い還元でかなり説明できる。ハードオフは清原式の激安株ではないが、利益の質、営業CF、財務、還元を合わせると、時間を味方にしやすい。」

【この章の整理:ハードオフ】
清原式の「ネットキャッシュ比率1倍超で、放置されるほど現金が積み上がる会社」という型には、両社とも完全にはまりません。ゲオは低PBRですが、時間が味方になるには投資が利益に変わる証拠が必要です。ハードオフは低PBRではありませんが、利益と還元の積み上がりが見えやすい。したがって、清原式の発想で「放置される理由」を分解しても、より素直に読みやすいのはハードオフです。


8. 評価が変わる条件 ― 市場の見方が変わる確認ポイントはどこか

ゲオHD

ゲオの評価が変わる条件は、分かりやすく「来期減益見通しを覆すこと」です。

会社予想では、2027年3月期は売上高+6.0%に対し、営業利益△8.7%、純利益△31.3%。これが市場の前提になります。もし、セカンドストリートの出店効果が想定以上に早く出る、海外店舗の赤字が縮む、新品・トレカが想定以上に好調、物流費や人件費の増加を吸収できる、といった形で会社予想を上回れば、株価は反応しやすいでしょう。

ただ、蓋然性は慎重に見たほうがよいです。出店費用、人件費、物流費、物価高は、会社が完全にコントロールできるものではありません。建設費、人件費、物流費が高い局面で、直営出店を加速するモデルは、外部コストの影響を受けやすい。

新品販売についても、評価が変わる条件とリスクの両面があります。新型ゲーム機やトレカは売上を押し上げますが、利益率は薄くなりやすい。新品で来店頻度を作り、中古買取・中古販売へつなげる絵はあります。ただし、短期的には利益率を押し下げる要因にもなります。

自己株式取得は、現時点では主役の評価が変わる条件とは見ません。ゲオは過去に自己株式公開買付を実施していますが、直近の資本政策は配当34円を安定的に続けながら、成長投資を優先する色が強い。PBR1倍超を掲げてはいるものの、当面は「自己株式取得で評価を上げる」より、「出店投資が利益に落ちることを見せる」ほうが重要です。

ハードオフ

ハードオフの評価が変わる条件は、派手ではありません。

1つ目は、増配です。DOE6%程度を目安にする方針があるため、純資産が積み上がれば配当も積み上がりやすい。2027年3月期は92円配当予想です。

2つ目は、エコノスの通年寄与です。2026年3月期は第3四半期から連結開始でした。2027年3月期は通年寄与になります。統合がうまくいけば、売上・利益の底上げになります。

3つ目は、一過性益を除いた本業成長です。ワットマン売却益で純利益が大きく見えるため、むしろ市場が見るべきは営業利益の伸びです。営業利益+19.6%を達成できれば、本業ベースの評価は上がります。

自己株式取得については、ハードオフも主役ではありません。直近の開示では、譲渡制限付株式報酬に関連する自己株式の処分はありますが、株主還元の中心はあくまでDOE6%を目安にした配当です。PBRはすでに1倍を超えており、ハードオフの場合は「低PBR是正のための自己株式取得」より、「利益成長と増配の継続」が評価が変わる条件になります。

【この章の整理:引き分け】
上振れ時の値幅ならゲオ。実現しやすい評価が変わる条件ならハードオフ。ただしゲオは「会社予想を覆す」必要があり、ハードオフは「会社予想を普通に達成する」ことが評価が変わる条件になります。


9. リスク要因

ゲオに固有のリスク

1つ目は、来期減益が一過性で終わらないリスクです。

ゲオの減益要因は、出店費用、人件費、物流費、物価高などです。これはどれも外部環境の影響を受けます。出店費用は建設費や内装費の高騰、人件費は人手不足、物価高はインフレ。ゲオのように店舗を広げるモデルでは、これらがそのまま利益を圧迫します。

2つ目は、買取在庫の量と質です。有報でも、リユース品の仕入れは店舗での一般顧客からの買取が中心で、他社との競合激化により商品仕入れの量と質の確保が業績に影響する可能性があるとされています。リユース市場が伸びるほど、よい在庫を奪い合う競争も強くなります。

3つ目は、薄利商材の比率です。新品ゲーム機やトレカは売上を作れますが、利益率は高くありません。売上高の成長だけを見てしまうと、株主に残る利益を見誤ります。

4つ目は、借入を使った成長です。有報でも、有利子負債比率が高い水準にあること、金利上昇時には資金調達コストが増える可能性が示されています。借入自体が悪いわけではありませんが、金利が上がる局面では、借入を使った出店戦略のハードルは上がります。

5つ目は、海外展開と情報管理です。ゲオは海外出店を広げていますが、各国の法規制、政治・経済情勢、為替、想定外の制度変更の影響を受けます。また、個人情報とシステムへの依存度も高く、情報セキュリティ事故は信用と売上に直撃します。

ハードオフに固有のリスク

1つ目は、株価上昇で割安感が薄れていることです。

2,466円では、ハードオフのPBRは約1.70倍です。一過性益控除後の正常化予想PERも約13.8倍。もはや「見落とされた激安株」ではありません。成長が鈍れば、普通に評価が下がる余地があります。

2つ目は、買取商品の確保です。ハードオフは店舗商圏内の一般個人からの買取が中心です。有報でも、景気動向、競合先、顧客の信頼やマインドの変化、ネット買取サービスの普及により、仕入商品の確保に影響が出る可能性が示されています。ここはリユース業界の本丸リスクです。

3つ目は、出店とFC運営です。ハードオフは1店舗あたり10万人の商圏人口を指標として出店する方針ですが、店舗網が広がるほど運営コストも上がります。FC加盟店の新規出店が集中すると、直営店の商品や人員の負担が増える可能性もあります。

4つ目は、エコノス買収の消化です。のれん968百万円を15年で償却します。のれん償却はキャッシュアウトを伴わない費用なので、キャッシュフローでは実力が過小評価される面があります。ただし、統合がうまくいかなければ、期待した超過収益力が出ないリスクは残ります。

5つ目は、来期純利益に含まれる一過性益です。ワットマン株式売却益1,160百万円を、本業の実力と混同してはいけません。営業利益と正常化EPSで見る必要があります。

6つ目は、流動性です。時価総額は約344億円、売買代金もゲオより小さい。大口の機関投資家が入りにくく、株価が薄商いで動きやすい可能性があります。

両社共通のリスク

メルカリなどC2Cの浸透は、店舗型リユースにとって常に代替品です。また、リユース市場の成長鈍化、インバウンド需要の変調、物価高による消費者心理の悪化、古物営業法などの法令対応も共通リスクです。

10. 総合評価 ― 成長市場を見るときは、売上ではなく利益とキャッシュへの落ち方を見る

5軸スコアは、ゲオ13点、ハードオフ17点です。

今回のケーススタディで見えたのは、リユース市場の成長そのものではありません。成長市場の中でも、売上が利益に落ちやすい会社と、落ちにくい会社がある、ということです。

ゲオは、規模も、出店余地も、海外展開もあります。2035年度に売上高1兆円・5,000店舗という長期ビジョンもあります。ただ、2027年3月期は会社自身が増収減益を見込んでいます。売上が伸び、固定費負担をこなした先に利益率が上がる絵が見えれば、分析上の見方は変わります。現時点では、その転換点を確認する段階です。

ハードオフは、派手ではありません。株価もすでに上がっており、激安ではありません。それでも、営業利益率、ROE、自己資本比率、配当方針、来期営業増益の見通しを並べると、事業と財務の読みやすさは素直に高い。売上規模は小さくても、利益と還元の積み上がりを説明しやすい会社です。

したがって、今回の整理はこうです。

「ゲオは、売上規模と出店による成長余地が大きい会社。ただし、その成長が営業利益、EPS、FCFへ落ちるかを見る必要があります。ハードオフは、売上規模では小さいが、粗利率、営業利益率、ROE、還元方針が見えやすい会社。ただし、一過性利益や株価上昇後の評価には注意が必要です。」

この比較から学べることは、「成長市場だから良い」ではありません。

「成長が、利益とキャッシュにどう落ちるかを見る」。

これが、リユース市場のような追い風のある業界で企業を読むときの出発点です。

11. 次回決算で確認したいKPI

最後に、同じような企業を見るときに使える確認ポイントを置いておきます。

ゲオHDで確認したいこと

ハードオフで確認したいこと

同じリユース企業でも、見るべきKPIは少し違います。ゲオは「投資が利益に変わるか」。ハードオフは「高い利益率と還元を維持できるか」。この違いを持って決算を見ると、数字の意味がかなり読みやすくなります。


本シリーズの位置づけ

このシリーズでは、実在する日本企業を題材に、個別株の「判断材料」を整理していきます。

銘柄推奨ではありません。

見るのは、次のようなポイントです。

  • 売上成長は、利益に落ちているか

  • 利益は、営業CFやFCFに変わっているか

  • 在庫や投資が、どれくらい資本を拘束しているか

  • 同業と比べて、どこが高く評価され、どこが安く見られているか

  • 次回決算で、どのKPIを確認すべきか

今後の記事は、マガジン『バリュー株の歩き方|企業分析ケーススタディ』にまとめていきます。

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ディスクレーマー

本記事は、筆者が執筆時点(2026年6月26日)において合理的に入手可能な公開情報に基づき作成した、筆者独自の分析・見解であり、その後の状況変化は反映されていません。本記事は特定の有価証券の売買を推奨または勧誘するものではなく、金融商品取引法に基づく投資助言でもありません。筆者は対象会社の役職員その他の関係者ではなく、対象会社を含むいかなる第三者からも、本記事の作成・公開に関して報酬その他の利益を受けていません。記載内容の正確性・完全性は保証されず、将来の株価や業績を保証するものでもありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任において行ってください。本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。筆者は記事公開時点で対象会社を保有している場合があります。


注:清原式ネットキャッシュ比率について

清原達郎氏の考え方を参考に、本稿ではPBRだけではなく、ネットキャッシュ比率を重視しています。清原式ネットキャッシュは、概ね「流動資産+投資有価証券×70%−負債」で計算され、これを時価総額で割ったものが清原式ネットキャッシュ比率です。比率が1倍を超えると、会社を買ったときに、支払った時価総額以上の換金性資産が戻ってくる可能性がある、という見方になります。

ただし、本稿の計算は決算短信ベースの簡易試算です。流動資産の中には在庫など、換金性・事業拘束の度合いが異なる資産が混ざります。したがって、ネットキャッシュ比率は機械的に見るのではなく、「その資産は本当に株主に返せるのか」「事業継続に必要な資産ではないか」とセットで見る必要があります。

なお、本稿では清原式を「低PER・低PBRを探すだけの道具」ではなく、「なぜ市場が放置しているのか」を分解するための道具として使っています。具体的には、ネットキャッシュの厚さ、営業キャッシュフロー、設備投資・在庫投資の重さ、株主還元姿勢、放置されるほど1株価値が積み上がるかを合わせて見ています。


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