さよなら、最後のSEO案件、こんにちは、あしたの案件
昨日、数年担当してもらったライターさんと飲みました。刺身と天ぷらをつまみながら、日本酒。担当していたレギュラー案件が、先月で終わったからです。
なんつって湿っぽく書きましたが、席はぜんぜん陰気じゃありませんでした。編集制作の話、ZINEフェスの話、いろいろ盛り上がって、気づけば次の話ばかりしていた。下請け仕事というのは、いつかやってきて、いつかなくなる。わかっています。わかっているんですが、まあ、それでも一区切りは一区切りなので、旨いもので見送りました。
消えたのは、SEOの案件でした。
取材もない。現地もない。ビデオも音声もない。インターネットを彷徨って情報をかき集めて、並べる。そういう仕事です。2024年あたりから、じわじわ減っていました。そして先月、ついに数年もののレギュラーが消えました。
正直に言うと、わたしはこの手の仕事が、どうにも苦手でした。SEO関連の指定はコンサルタントにお任せして、わたしは記事づくりに専念する。記事自体をつくることは、読者との対話であり、楽しくてやりがいがあるので……まあそういう分担にしていたんです。
検索結果をハックする技術は、自分より若い世代——Googleの成長とともにネットを仕事に使ってきた人たちには、すごく人気のあるように思えました。結果が売上につながるから、わかりやすいんでしょうね。不透明なオールドメディアとはちがいます。
わたしは、インターネット以前から記事をつくってきたジジイです。つくるほうばっかり学んできたので、結果から改善していくといったSEOのサイクルについていけなかった……という話ですね。Googleだって、もとはといえば人のための仕組みです。それを横目に「自分には向かないな」と逃げていたわたしのほうが、まずかったのでしょう。
ただ、皮肉なもので。
その「Googleのために最適化する技術」こそ、生成AIが得意な領域のひとつでした。だからクライアントは外注をやめて、内製化していった。いちばん最適化されていた仕事が、いちばん先に溶けたわけです。
編集プロダクションというのは、記事や出版物の制作を手伝う商売です。だからカテゴリが一つまるごと消えるのは、ふつうにイタい。
でも、思い出すんですよ。1990年代から2000年代、雑誌やMOOK本が、ちょうど同じような役割をしていました。あれもネットとスマホで、跡形もなくなった。手伝う相手は、いつも先にいなくなる。雑誌が消え、MOOKが消え、いまSEOが消えた。
消えるのは毎回「カテゴリ」です。「記事や出版物をつくる」という根っこではない。だから編集プロダクションは、常に次のタネを察知して、提案してまわらないといかんのですよね。
で、イタがってばかりもいられません。
とはいえ、わたしもただ眺めていたわけではありません。この6年、AIにはずいぶん助けられてきました。最初は文字起こしと翻訳。次に、自分の記事の癖を覚えさせること。そしていまは、役割ごとに分けたAI編集部OSみたいなものまで使っている。偉そうに言っていますが、要するに、消えそうな仕事を横目に見つつ、こっちも必死に道具をさがしていたわけです。自分の食い扶持が、薄くなっていくことをひしひしと感じながら。
じゃあどうするか……人さまのSEO案件が消えた代わりに、今度はこれまでぜんぜんしていなかった自分の発信を強化しはじめています。noteの創作大賞にも、いくつかの部門で出してみている。ビジネス、お仕事小説、ホラー、エッセイ。節操がないと言われればその通りですが、わたしにとっては全部、次のタネを探す実験です。野球の打撃練習の素振りみたいなもんですね。仕事が減ってヒマになった、ではなく、AIによって時間に余裕がうまれ、自分自身を実験台にする時間が増えた。そんな感じです。
わたしも、見てきました。MOOK本が消えていった頃、出版系の編集プロダクションがばたばた畳んでいって、入れ替わるようにWeb系が立ち上がってきた。あのときと、同じです。じゃあAIの時代には、どんな編集プロダクションが残るのか。たぶん、役割は大きく変わるんでしょうね。
ネットを彷徨って情報を整理する——その工程は、機械が全部やるようになる。残るのは、機械が行けないところです。人に会って話す。見本市に行く。珍しい体験をする。そうやって現場の一次情報をかき集めて、整理して、発信する。
そんなのは、まあ、昔から言われていることです。
しかし、いまは事情が違う。AIツールの発展で、発信するプロセスの摩擦が、恐ろしく少なくなっている。低カロリーで出せる。だったら、じゃんじゃん出すしかないんですよ。そして出したものを、またAIが食って、さらに賢くなる。人は人で、どんどん新しいネタを探して、外に出ていける。そういう循環です。
ただ、それもそのうち、ロボットやドローンが、人の行けないところまで行ってレポートしてくれるようになるでしょう。せっかくの砦も、いずれ溶ける。
だからわたしはいま、フィジカルAIに注目しているんですよね。
ネットの仕事が溶けて、現場が砦になる。でもその砦にも、いずれ機械が入ってくる。だったら、機械を敵にまわすより、自分の体の延長にしてしまったほうがいい。
そしてそのうち、サイボーグジジイになって、ネットと現場を自由に行き来する存在になりたいと思っているんです。すでに化石かもしれませんが、自分のみてきたものを燃料として燃やしながら、その排熱も利用してさらに加速したい。
——なんて壮大なことを考えながら、昨日はシメにとり雑炊をかっこんでかえりました。いっしょに飲んだライターさんとも、また別の燃やし方で組めたらいい。
下請け仕事は、いつのまにかやってきて、いつのまにかなくなる。でも次のタネは、たぶんもう、どこかに転がっています。
がんばります。
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