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【noteでBL】雨の日の恋、ルマンドを添えて

なみさんのBL企画、記念すべき10回目おめでとうございます!

今回のお題は「雨の日の恋」「ルマンド」「ダンボール」。本文3027字になります。

そして、月は東にさんの100字でBL企画(めちゃエモいぞ)にて書かせてもらった男子ィズのうち、男前委員長✕ムードメイカーな二人が再登場です。今回が初めましてでも大丈夫ですが、よろしければどうぞ。

※7月6日、最後におまけSSのリンク追加しました。


EAT MEとは言ってない


「クローズドサークルってあるじゃん」

予報外れの強風を伴う通り雨により、ちらほらと居残っている生徒も居る放課後の教室にて。

「こういうのも含まれるのかねぇ」
「クローズドサークルでTMレボリューションごっごする阿呆はいないだろ」

今まさに、校庭で阿呆を決めている同級生を冷めた目で見下ろしながら、しっかり者の委員長、青山寿明は断言した。

「あ、コバ先突撃してった」
「担任って大変だな」

今度お菓子でもあげよ。こちらは同級生の奇行を面白がって観察していた駒沢和成が、手持ちのルマンドを食べながら思った感想。

「お前もまたそんな仏壇菓子みたいなものを」「お、なんだ戦争かイインチョー」

きのこたけのこ戦争しかり、ポテチの味付けしかり、嗜好品を隔てる溝は深くて長い。チョコミントを歯磨き粉と非難する者はあずきバーに負けて前歯折ってしまえ。

「まぁ実際、うちのバァちゃんがダン箱で買ってきちゃったやつだから間違いでもないんだけどさ」

年寄り、すぐ若い子や孫にたらふく食えって物量押ししてくる問題。
どうせなら腹に溜まるものにして欲しいのだが、おばあちゃんっ子の和成くんは素直に貰っておくのみである。隙あらば周囲に押し付けるのも破かさではないが。

「という訳でイインチョーもどうぞ〜。ホワイトロリータとバームロールもあるよ」
「ブルボンのまわし者か?」
「何かよく分からん食える紙に包まれたゼリーみたいな奴よりマシでしょ」
「多分それオブラート」

やいやい言い合いつつ、個包装を開けたルマンドを一つ、青山の口元に差し出す。さく、と当然のように続く咀嚼音。

「結構美味いな」
「でしょ〜」

しっかり者の委員長。彼は妙な所で距離が近い、といかコミュニケーションに遠慮が無い。世話をするのもされるのも慣れている男、と駒沢は分析する。ボス猫にちゅーる与えてる気分。

「もう1本」
「はいはい、たんとお食べ〜」

窓の外では激しい雨音。軽やかな咀嚼音がかき消されそうで、少しばかりつまらない。

「雨止まないねぇ」

剥き出しのルマンドを摘む手を止めて、暗い空を見上げる。大した雨量ではないが、強風注意報が出る程度には風が強い。
いっそずぶ濡れになってでも早めに帰宅してしまおうかーーなどと考えていたところで、手首を掴まれた。軽く引かれた先、指先に触れる唇。
……ルマンド食われた。
いや、問題はそこではなく。

「い、インチョ……!」
「何だ? 食べて良いんだろ?」
「人の指ごと食わんといてくれる!?」

嗚呼、顔が熱い心音がうるさい。
距離が近いとかそういう問題ではない。問題は、うっかりときめいた己の単純な恋心である。

「……帰る」
「は? まだ雨ヤバいぞ」
「かーえーる!」

机に広げた菓子はそのままに、鞄だけ掴んで立ち上がる。
心底理解出来ないものを見る目をした想い人に、意識しているのは俺だけか、と心中悪態ついて教室を飛び出した。

「駒!」

心なし焦ったような声を振り払うのに必死だった駒沢は知らない。
残された、実は最初からずっとその場にいたクラスメイト達の会話。

「委員長があそこまで距離近いの、駒相手の時だけってマジで気付いてないのアイツ?」
「青山は確信犯でやらかしてるにピノ掛けるわ」

ーーー
ーー

「待てって駒! ……和成!」

昇降口まであと数歩、という所で捕まった。青山の方が上背も体格も上なので、一度捕まると簡単には振りほどけそうにない。

「う〜…」
「威嚇すんな。猫かお前は」

壁と自身の両腕で容赦なく閉じ込めておきながら、安堵したように優しく笑うのは止めて欲しい。

「ちゃんと言ってくれないと分からないぞ和成」
「ここぞとばかりに名前で呼ぶなぁ〜…」

中学の時は名前呼びでも平気だった。
そもそも恋愛感情など持ち合わせていなかった時代だ。高校に入学して、一丁前に格好つけて苗字や役職で呼び合うようになって始めて、気まぐれに名前で呼ばれるのが恥ずかしくなった。
きっとあれが、恋心を自覚したきっかけだった。

「和成」
「だからさ〜!」

こちらの気持ちも知らないで。キッと睨みつけた途端、笑顔が真顔に変わる。え、何怖。

「…………他の奴にはするなよ」
「は?」
「そんな顔しても可愛いだけだから」
「は!?」

え、何怖。
どうしよう、寿明くん壊れた。

先程までのモヤモヤもどこへやら、沸いて出たのはちょっとした恐怖と純粋な心配であった。
ここで胸キュンに至らない辺りが、駒沢の恋愛偏差値の限界でもある。身長170センチの男子高校生を可愛いとか言っちゃう委員長、解釈違いです。
内心で割と酷い事を言われていたが、とりあえず怒りが収まったようなので良し、と青山も一安心だ。

「………………あのイインチョー」
「どうした」
「俺も軽率でした。反省してます」
「そうか」
「だからそろそろ退いていただけませんでしょうか……」

落ち着いた今、よく考えたらこの体勢は壁ドンという奴なのでは? 考えなくとも壁ドンである。

「うーん……」
「えっ、そこ悩むの? ちょっ、何で顔近付け、」

キャパオーバー気味の脳味噌が警告を発するが、退路を断たれた駒沢は動けない。
耳元をかすめる声の湿っぽさに鳥肌が立つ。

「本当に俺が何も気付いてないと思ってんの?」
「……………………………………イッソコロセ」

最後の抵抗で、唯一自由が利く両手で顔を覆い隠す。
羞恥で人が死ねるなら、間違いなく憤死した。昔話のお姫様なら気絶くらいしたかもしれない。
しかし駒沢はお姫様ではないので、現実は無情にも強制続行なのだが。
壁に押し付けていたはずの片手が駒沢のそれに重なる。爪の生え際を撫でた指が指筋をなぞり、手の甲に円を描く。

「イッソコロセ!」
「それしか言えなくなってるじゃん」

楽しそうな含み笑いがまた近くて、いい加減にしてくれないと耳が孕む。真剣にそう思った。

「和成、この手退かして」
「無理」
「和成ー?」

無理やり外そうとしないのは恩情か、はたまた罠か。はたして指の隙間から薄目を開ければ、それはいい笑顔の愉快犯。

「あのな和成、俺……」

愉快犯が一転。立て籠もり犯を説得する刑事のような真剣な顔をするものだがら、駒沢もちょっと笑ってしまった、ちょうどその時。

「ーーへっくしっ」

突如響いたくしゃみに、数秒の沈黙が落ちた。

「……何かすまん」
「かかか、上総っちに佐原っち!?」

お忘れかもしれないが、ここは昇降口。学校の出入り口であり、本来人通りの多い場所だ。未だ雨が続いている為人気はないのだが、靴箱の裏で様子を伺う濡れ鼠が二人。

「そういえばいたね! 大雨にはしゃいでたアホの子コンビが!」
「い、言い返せねぇ〜」
「何でだよ、こんなチャンス今しかないだろ」
「佐原っちはその頭脳を日常生活にも使って!」

照れ隠しもあってか騒ぎ出した駒沢達に対して、自然な動きで壁ドンを解除した青山はというとーー壁ドンの時点で自然も何もないのだがーー昇降口の扉の外側に佇む、担任の小林先生に声をかけていた。

「お疲れ様です先生」
「おお、すまん」

差し出されたハンカチを受け取り、四十路手前の愛妻家と名高い教師は破顔する。

「今時はこういうのアオハルって言うんだっけか?」
「いつから見て……そもそも出歯亀は感心しませんよ」
「言っておくが、お前らの方が後から来たんだからな。気付かない方が迂闊だぞ」
「つまり最初から見てたと……」

流石に頭を抱えたくなった青山である。この恋愛至上主義ロマン派教師の事だ、絶対今後も揶揄られる。
何より目下最大の問題に、自然と盛大なため息が漏れた。

……お前が好きだと言いそびれた。



最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。
梅雨らしくしっとりしっぽりしたお話にしようと思って壁ドンやらお菓子アーンやら甘めの要素ぶち込んだのに、駒沢くんが思いの外照れちゃったせいでギャグ落ちになりました。

青山「遺憾」
駒沢「そもそも初手TMレボリューションごっごの時点でしっぽりは無理がある」

↓おまけ、告白成功ルート書きました。


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