見出し画像

びば、ら、ゔぃーだ|きのころチャレンジ「誰?」

きのころさんが書いた小説の出だしの100文字の、続きを書く。
それがきのころチャレンジ。

「誰?」
(作・きのころ)


朝、目が覚めると、
隣で知らない女が電話をしていた。
私のスマホで。
私の声で。

叫んでも声は出なかった。
鏡の中の私は眠っている。

女が一瞬だけ私に顔を向けた。
そして、私の声で電話の相手に告げる。

「起きました」

くうぅ〜……、
見つかったか。
また●●
今回は気合を入れて、かなり遠くまで来たつもりではあったが……。

起きたと報告をされている、まさにその場で。
にも関わらず、ぼさんとベッドシーツに身を投げ出す⸻かなり強引に自己本位に、私は寝たふりオペレーションに身を投ずる。

スヤア……

通話で主人マスターに報告を入れている女。
直接は知らない。
衣装ドレスだってパリッとして、おろしたて。
(新顔)
といっても、私には新しくない●●●●●
完璧に同じ顔、私自身●●●の顔。


再び、ベッド後ろ、鏡の中の私をちらっと見る。
⸻うん、寝ている。
ならば。
私が一瞬で寝る、すると即座に鏡世界の私がガバッと起きだし、スマホで通話中の私に罵詈雑言を浴びせはじめた。
極度の低血圧ゆえ、起き抜けはろくに力を振るえない。
なんとも頼りなく弱っちく、私は私を呼び出す●●●●●●●●
とはいえ、来た私は、力強かったりする。

その時私はまさに寝ていたから、鏡からこちらに飛び出して悪態の限りを尽くした私の発言の一字一句というのは、つまびらかではない。

けれど、後から、
「いくらなんでも、あそこまで言う必要ないじゃない……ありえない、マジ傷ついたんですけど!」
の感覚が、心にはしった。


非難の限りを尽くされても、それでも最新の私は、必要な通話を継続できるほどには、タフだった。
そこで、鏡の私はどうしたか……、
んばっと、寝た。
私がやったみたく。
すると、また別の私たちが召喚された。
一人二人なんてレベルじゃない。

しかも、ジェラートピケのとろふわトレーナーではなくて、通話中の最新鋭な私とおそろなドレスな私で⸻いや、私たちで、あの子わたしたち、どやどや部屋に来た。
アンドロメダ・ハイツM31号室へ。
地球からおよそ250万光年彼方の室内へ、いずこからか。


多勢に無勢。
いくら最新鋭でも、かなうわけなかった。
もともと、押しにからっきし弱い。
それはオリジナルの私そっくりだ、というか、まるっと同じだ。
私の最新の刺客は、今や最新の親衛隊アーミーになった。
そのまま女子会に突入。
みんなドレスに生クリームとか湖池屋ポテチのノリ塩だとかめったやたら付けながら、M離翁やK宇破とかのバカ男共の、悪口大会。
私の、私による、私のための、女子会。
無限に増えた私。

「誰?」、その問いの答えは、私。

初期の誤操作で地球でも無限に近いほど増え、いく先々で寂しさから増やした、リアルや概念上の、無限なる夢幻の、私、私たち。
私は、彼女だ。
彼女は、私だ。
一応、私がオリジナルだと思ってはいるけれど、そんなの無限の私が全員、等しく思っているかも●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●だし。


最新鋭ニュービーによると、主人は相変わらずの不適切な昭和思考が過ぎて、とことん嫌になると。
私たち⸻1≦x ≦∞  x=usである私たちは、ギャハハー!と火がついたように笑い、ほんとそれなー!と言い合う。
「もう帰る必要ないからせいせいしてる」、
最新鋭は言い、スマホを取り出すと主人、つまりM離翁に電話をかけ直す。

「申し訳ありません!
すんでのところで、取り逃しました。
M78星雲に逃げたようです」

フェイクニュース吹聴。
これでしばらくは、ここに追っ手は差し向けられたりせず、静かに生活できるだろう。



「無限の命」。
M離翁たちが私から奪いたいのは、それだ。

無茶が過ぎて、元旦那⸻法的にはまだ配偶者だが、逃亡の時点で私の中で終わっている⸻の残機ライフ、ラス1。

時代は変わった。
レンガの階段でカメを蹴り付けて、跳ね返りをすぐに足で踏み、また蹴る、この奇怪な儀によって無限に命を増殖させていた昭和は、消え失せた。
そんなことしたら、その様子を動画回されSNSに投稿でもされたら、即炎上だ。
発売中止。シリーズ打ち切り。
それは、全ての終焉を意味する。


日々、あの男は死を恐れまくっている。
それでとうとう、合法的に、命の火種を増やす唯一の方法⸻王熱布木の子1UPキノコを奪わんと、持ち主、妻である私を襲撃した。

今はネックレスにして私の首にかかっている。
オリジナルの、桃逸ピ⚪︎チ姫である私の。

「自分がいくらでも、無限と言っていいレベルで、いること」。
逃げて、隠れるこの生活にはまあ、役に立ってはいる。

でも、そんなにいいものだとは、やはり思えない。

本当は。
私は思うのだ。
一人で、ひとつの、生命。
死んでしまったら⸻もしもいくつかの宗教がいうような「来世」や「生まれ変わり」がないならば⸻そこで、何もかも終わり。
次?なにもない。虚無だ。
永遠の闇しか待たない。



それだからこそ、なのではないのか。
生命は、生きることの価値とは。
……強く強く輝くのではないか。
どんな恒星よりも眩しく、魅力的に。

地球の歌は良かった。
懐かしくなる。

また一人になり、部屋のベッドに横たわりながら、脳内にあのヴァイオリンの前奏が流れてくる。

びばVivaLaゔぃーだVida
“生命万歳”。

私の頬に涙が伝う。

言葉は、放たれて、流れていく。

ほんとうの魔法みたいに。

このアンドロメダに響いて、やがて宇宙を軽々、超えていくはずだ。
それできっといつか地球に届く。
年月や距離をも超えてしまう。
誰かの土地に舞い降りる。
深く刺さる。
重い岩を動かす。
他の人へ「魂に照らして真実」、あるいは「信じる価値のあること」として、また伝わっていく。



それこそが、ひとつにして、ひとつ以上のものであって、考えようによっては無限とも言える、誰かへの作用⸻人が生きる意味を考える時、手がかりとなるべきもの。


私にはそう思えてならないのだ。

(了)

本作をきのころさんにはもちろん、盟友再生補修さんに捧げます。
書こ!無理なく。
自分で自分をおもしろがらせちまお🙌✨


こっちもよろしくです〜


きのころネクストでは、こんなの書きました。


#きのころチャレンジ
#無限1UP      #ライフ無限増殖  #残り1機   #永遠の命   #たった一度の今日という日   #生命は一度きり   #viva_la_vida
#生命万歳

いいなと思ったら応援しよう!

山本蛇内 yamamotojanai スキとフォローくだされば(気に入ってくださるなら、でね)十分なのであります! いつか有料記事に挑戦しますので、その時までチップ取っといてください笑