第3話:一緒にいるのに、孤独を感じる私ーASDと愛着障害の二人
※この物語はフィクションです。ただし、実際の心の葛藤や体験をヒントに描いています。
第3話 「花火と、彼の不器用な愛」
彼との距離が少しずつ縮まり、私たちは二人で過ごす時間が増えていった。
彼は、彼の好きなことについて、私に一生懸命話してくれた。その専門書を読み解くような口調で、熱心に語る姿は、まるで専門家が講演をしているようだった。
私が話すことすべてに、彼は興味深そうに耳を傾けてくれた。私の話がどんなに感情的で、支離滅裂であっても、彼は遮ることなく、ただじっと聞いてくれた。
夏が近づき、私は彼を花火大会に誘った。
「花火、見に行かない?」
彼は少し戸惑ったように、「花火…」とつぶやいた。私は、少し不安になった。もしかして、彼は人混みが苦手なのだろうか。
「うん。行く。」
次の瞬間、彼は小さく頷いた。その言葉が、私の心を温かく満たした。
花火大会当日、彼は人混みに圧倒されているようだった。私たちは手をつなぐこともなく、彼は少しだけ私の前を歩き、人波をかき分けて進んでいった。
そして、大きな花火が夜空を彩るたび、彼は「あれはナトリウムの炎色反応だ」とか「ストロンチウムかな」と、私にはよくわからない言葉を口にした。
「綺麗って思わないの?」
そう聞くと、彼は「うん。何の反応かを考えちゃうから」と答えた。
私は、そんな彼を変わっていると思うよりも、どこか尊敬してしまっていた。
花火が終わる前に、彼は「渋滞するから帰ろう」と提案した。私たちは人混みを避けるように、少し早めに会場を後にした。
帰り道、誰もいなくなった静かな道を二人で歩いていると、私はふと、道端に咲いている小さな白い花に目を奪われ、立ち止まった。
彼はそれに気づかず、そのまま数歩進んでから、私がいないことに気づいたように立ち止まった。そして、何も言わずに、私の後ろに回って、私を抱きしめてきた。
突然のことに、私は驚いて固まった。
「ごめん。」
私の戸惑いを察してか、彼はそう言って私から少し離れた。
「ううん。」
私はそう答えるのが精一杯だった。
その日を境に、私たちは恋人になった。
彼の不器用な優しさと、私の愛を求める気持ち。
二人の間には、言葉にならない愛と、どうしようもないすれ違いが、常に存在していた。
第4話はこちらから👇
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