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#008 これはもう『医療崩壊だ』と思った話

午後4時、病院の廊下の電気が消えていた

午後4時。診療はまだ続いているのに、廊下の電気が消えていた。

理由は「節電のため」だという。
けれど、薄暗い廊下を患者さんが歩いていく光景を見て、これはもう単なる節約の話ではない、と思った。

病院が、目に見えるかたちで疲弊しはじめている。
そう感じた。


静かに進んでいた雇い止め

こうした変化は、突然始まったわけではない。

2年ほど前から、看護師の雇い止めが少しずつ起きていた。
「規模縮小」「効率化」——そんな言葉で説明されていたけれど、現場にいると、何かがおかしいという感覚だけがじわじわと積み重なっていった。

そして今年、ついに旗艦病院でも雇い止めが出てきた。
今度は医師である。

コストがかかるという理由で、非常勤医師の契約を更新しない。
そうした決定が、各病院で相次いでいる。

これはもう「調整」というより、実質的な人員削減だと感じている。
前回、医師のキャリアについて書いたとき、
「常勤は社会保障の面で守られている」と書いた。

#004 社会保障から,医師の働き方について考えてみる
https://note.com/joyful_okapi9340/n/n086a60aca79e

それは今も変わらないと思う。
実際、今回の雇い止めの対象になっているのは、非常勤医師だ。

常勤医はまだ守られている。
なので、これから研修後の進路や転職を探す医師にとってはかなり難しい状況なのではないかと思う。

働き方改革と赤字経営のはざまで

そこに追い打ちをかけるように、働き方改革も重なった。

本来は医師の過重労働を是正するための制度のはずだが、現場では「時間外をどう減らすか」ばかりが先行している。
中には、医局にいる時間を勤務時間とみなさない病院まで出てきた。

外勤やアルバイトにも規制が入り、これまで現場をなんとか支えていた余力が削られていく。

そして、その背景にあるのは結局、病院の赤字だ。
人件費は上がる。
医療材料費も上がる。
光熱費も上がる。

一方で、求められる安全性や説明責任は年々高くなり、それに類する業務も増え続けている。時間外に説明を求める家族もなんと多いことか。

医師を減らして、収入は増えるのか

ここには、大きな矛盾がある。

日本の医療の収益構造は、ある意味とてもシンプルだ。
医師が診療して、はじめて診療報酬が発生する。

つまり、医師を減らせば実務量が減る。
実務量が減れば、結果として収入も減る。

患者が増えても、診る医師がいなければ意味がない。
入院患者がいても、看護師が足りなければ十分な医療につながらない。

人を減らしてコストを削る。
しかしその結果、診療能力が落ち、さらに減収につながる。

そんな悪循環に、今の病院は入り込みつつあるように見える。

頭ではおかしいと分かっていても、誰も止められない。
そんな構造になってしまっている。

皆保険は素晴らしい。けれど、限界も見えている

私は皆保険制度そのものは、本当に素晴らしいと思っている。
誰もが一定の医療にアクセスできる仕組みは、日本社会の大きな財産だ。

ただ、現場にいると、その制度が限界に近づいていることも感じる。

高齢者医療のあり方。
必要性の低い医療。
一方で、絶対に削ってはいけない医療。

それらが十分に整理されないまま、現場だけが疲弊していく。

その結果として起きているのが、いま目の前で進んでいる変化なのだ。
この変化のスピードの加速も早い。
日本の医療そのものに危機感を覚える。


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