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保育所に“やさしい仕組み”を

――現場のリアル・失敗から学ぶ“やさしい仕組み”づくり
岸本先生セミナーを受けて考えた、“保育の安心”を守る方法

こんにちは、トウです。

このnoteは「自分のための忘備録」として書き始めましたが、
今は“現場で毎日、子どもたちと向き合っている園長先生、主任さん、そして先生たち”に読んでいただきたいと思っています。



1. はじめに――「子どもの最善の利益」を守るために

保育の現場は、「子どもの最善の利益」――この使命のもと、日々動いています。
でも、その「最善」を本気で支え続けるためには、まず現場で働く大人たち自身が、安心して健康に働ける仕組みが不可欠です。

「産業保健体制」や「外部相談窓口(EAP)」をどう保育所に根付かせるか?
制度を“入れること”がゴールではなく、「現場で本当に役立つ仕組み」をどう作るか。
先日受けた**岸本雄先生(産業医・精神科医)**のセミナーで改めてその本質に気付かされ、現場で何ができるかを深く考えるきっかけになりました。


2. 今、保育現場で起きていること

「朝、涙が止まらないまま出勤した」
「仲間の先生が急に休んでしまった」
「復職したのに、また退職してしまった」……

こうした声を、保育現場で本当にたくさん聞くようになりました。
**東京都の調査(2022年)**では、保育士の心の不調による休職率は全産業平均より高く、5%超の園も珍しくありません。

「うちは小さい園だから大丈夫」――
そう思っている現場にも、いつ起きてもおかしくない現実がすぐそばにあります。


3. 「制度」と「現場運用」のズレに気づく

「産業医って大企業しかいないんでしょ?」
「うちは50人未満だから関係ない」

――現場でよく耳にする声です。

たしかに、労働安全衛生法で産業医の選任義務があるのは「職員50人以上」だけ。
でも安全配慮義務は、規模に関係なく「職員の健康と安全を守る法的責任」が園長や経営者に課せられています。

2021年最高裁判例でも、「小規模園でも必要な健康管理や外部専門家の活用を怠ると、経営者に賠償責任」が認められたケースが出ています。

「何かあったときだけ考える」では遅い。
制度と現場の“ズレ”を埋める、本気の仕組みが求められています。


4. “うまくいかなかった復職”の現場エピソード

現場が本当に知りたいのは「うまくいった美談」より、
「なぜ、うまくいかなかったのか?」という“失敗の本音”です。

● ケース1:「本人まかせ」で再休職
Bさん(30代女性・保育士)は、繁忙期のストレスや人間関係の悩みで抑うつ状態となり約3ヶ月休職。
主治医と本人だけで「もう大丈夫」と自ら復職を申し出、園長も「本人がやれるなら」と深く確認せず復職を承認。
しかし、初日から以前のペースについていけず、周囲も腫れ物扱いに。
「また迷惑をかけたくない」と無理を重ね、2週間で再び休職に。
周囲の先生も「やっぱり“本人まかせ”じゃダメだった」「誰かが止めてあげれば…」と後悔したそうです。

● ケース2:「励まし」が逆効果になった現場
C園では、復職する先生をみんなで拍手で迎えました。
主任が「みんな待ってたよ!がんばろうね!」と声をかけた。
でも、その励ましや期待がプレッシャーになってしまい、本人は「もう頑張らないと」と自分を追い込み、小さなミスを責めて再び体調を崩してしまいました。

● ケース3:「園長・主任だけで悩み続けた」失敗
管理職や主任が「なんとか支えよう」と一生懸命になるあまり、自分自身も悩みやストレスを抱え込んでしまうことも多い。
「園の空気を守らないと」「現場をまとめないと」――そんな思いが、逆に職員全体の“孤立”や“気まずさ”を広げてしまうことも。


5. 失敗から学ぶ――“同じつまずきを繰り返さない”ために

こうした失敗には、必ず「パターン」があります。

  • 本人のがんばりすぎ・気遣いすぎが限界を超える

  • 現場が「本人まかせ」や「一度に全部元通り」を期待してしまう

  • 善意がプレッシャーや孤立感を生みやすい

  • 相談の場・安心して本音を言える場所がなくなっていた

だからこそ、「同じ失敗」を繰り返さないために、
“仕組み”と“段取り”を現場で用意しておくことが大切
だと強く感じます。


6. 「復職支援の本質」を考える――岸本先生セミナーより

EAPメンタルヘルスカウンセリング協会 西日本支部主催のセミナーで
岸本先生が強調されていたのは、「復職=元通り」ではないということ。
**「無理のない段階的な復帰設計」**が必要です。

復職者も現場も「がんばりすぎない」空気づくりが大切。
第三者(産業医・EAP・心理士など外部専門家)が関わることで「本音」や「本当の課題」が表に出てきます。

支える側も「一人で抱え込まず」外部の知恵を借りて良い――
仕組みや制度は“入れること”がゴールではなく、「どう運用し、どう伴走するか」という視点が現場で本当に求められていると、先生の話で再認識しました。


7. 【コラム】“健康ミーティング”という小さな工夫

私自身が現場で大事だと感じているのは「月1回、“健康ミーティング”」という小さな取り組みです。
従業員数50人未満の園では、法的な安全衛生委員会の設置義務はありません。
それでも、「月に1回、働き方や体調について、みんなで気軽に話し合う」だけで――
現場の安心感や心理的安全性はずいぶん変わると実感しています。

形式や義務ではなく、“現場でできる小さな工夫”が、メンタルヘルスやチームワークの一番の土台。
こうした実践も、私の「そとさぽ」という事業案の軸になっています。


8. 保育所でできる「復職支援5ステップ」

失敗を防ぐために、現場で“明日から”使える「復職5ステップ」をまとめます。

Step1.事前準備――“みんなで支える”共通認識を

  • 復職意向が出たら、本人・主治医・産業医・臨床心理士・EAP・園長・主任で情報共有

  • どんな働き方ができそう?どこが不安?を面談でしっかりヒアリング

  • 困った時は必ず相談していい、と合意をつくる

Step2.復職プラン合意――“段階的”な復帰設計

  • いきなりフルタイム/全業務復帰はNG

  • 「短時間勤務」や「軽めの業務」から始めるプランを関係者全員で作成

  • 配慮事項やサポート担当も明確に

Step3.初期対応――“最初の数日”はていねいに

  • 復職初日は「短時間・少業務」が基本

  • 支援担当者を決め、困ったときはすぐ話せる体制

  • 必要ならEAPや心理士も同席で、無理なくスタート

Step4.経過フォロー――“定期的な面談”で振り返り

  • 復職後1週間・1ヶ月・3ヶ月…と定期面談

  • 「遠慮せず本音を話して良い」空気づくり

  • 困った時は「またお休みもOK」と合意を再確認

Step5.通常業務復帰――“無理のない”段階的な自立

  • 本人が「大丈夫」と自信を持てるまで段階的に

  • 完全復帰後も「月1回のEAP/心理士面談」などサポートを継続

  • 「一人で抱え込まない」ことを園全体で支え合う


9. “現場の声”と“本音コメント”で厚みを出す

現場からは、こういう声がよく届きます。

  • 「みんな頑張りすぎて、自分のSOSすら気付かなくなるんです」

  • 「臨床心理士さんが味方になってくれるだけで、安心感が全然違いました」

  • 「管理職も“しんどい時は相談していい”と知って、孤立しなくなりました」

逆に、うまくいかなかったときには――

  • 「本人の“頑張ります”をそのまま信じて、結局また倒れさせてしまった」

  • 「現場の“励まし”がプレッシャーになることもあるって、あとで気づきました」

  • 「自分が無理して全部背負おうとしていた…反省しています」


10. EAP(外部相談窓口)や臨床心理士がもたらす安心

園内では言いづらい本音も、外部の専門家(EAP・臨床心理士)なら安心して話せる。
園長・主任・保育士・パート、誰でも相談OK

休職や復職だけでなく、日々の小さな違和感も早めにキャッチできる。
「うちはEAPがある」と明言するだけで、現場の安心感がぐっと増す。

失敗例も成功例も、“本音を言える場所”があったかどうかで結果が変わる――
これは現場を見てきて実感していることです。


11. 実際に現場であった「回避できたエピソード」

たとえばある園では、臨床心理士さんが復職支援を担っていました。

  • 復職希望者が出たとき、まず臨床心理士さんがじっくり面談。「何がいちばん不安?」「どんな働き方ができそう?」など丁寧に聴き取る

  • 園長や主任も交え、現実的なサポート体制を設計

  • 復帰後も心理士さんが定期的なフォロー面談を行い、無理のないペースで寄り添う

  • 対人関係やコミュニケーションの悩みも、心理士さんに個別に相談できる

結果――
「復帰してから半年、無理なく安定して働けている。職員全員が“まずは相談”の空気を作るきっかけになった」と園長先生。
管理職や主任も「自分一人で抱え込まなくていい」と感じるようになり、チーム全体で支え合う雰囲気が生まれていました。


12. “今すぐ現場で使える”チェックリスト&声かけ例

あなたの園は大丈夫?見逃しがちな10のサイン

  • 「がんばります」と言う本人に“無理”が見えていないか

  • 復職直後からフルタイム勤務になっていないか

  • しんどい人へのサポート担当が決まっていない

  • EAPや心理士の存在を全員が知っているか

  • 管理職・主任が「自分も相談して良い」と言えているか

  • 本人が「もうダメだ」と言い出すまで気付かない空気になっていないか

  • 成果やスピードをすぐ求めていないか

  • チームで仕事や情報をシェアする習慣があるか

  • 失敗やミスを“報告しやすい”雰囲気があるか

  • 「ありがとう」「おつかれさま」を言い合う風土があるか

すぐ使える声かけ例

  • 「戻ってきてくれてありがとう。無理せず、自分のペースで大丈夫だよ」

  • 「またつらくなったら、遠慮なく言ってね」

  • 「困った時はみんなでフォローしよう」

  • 「自分が無理しすぎてないか、時々一緒に振り返ろう」


13. 制度・根拠もやさしく整理

  • 労働安全衛生法13条:職員50人以上の園は産業医必須

  • 労働契約法5条:規模に関係なく健康・安全配慮の法的責任あり

  • 2021年最高裁判例:小規模園でも必要な健康管理・外部専門家の活用が求められる

  • 厚生労働省:「外部産業医やEAP等、外部リソース活用を推奨」


14. トウの現場体験

私自身も現場で「また再休職させてしまった…」と自分を責めた経験があります。

「自分は大丈夫だと思った」「みんな頑張っているから迷惑かけられない」――
そんな声を、もっと早く聴いてあげていれば、と今でも思います。

失敗も“みんなで学び合う”ことこそ、やさしい現場文化の第一歩だと本気で感じています。


15. これからの保育所に必要な“やさしい仕組み”とは

保育士不足、現場の疲弊、人材の流出――
どこでも深刻な問題です。

でも、

  • 外部相談(EAP)や産業保健を“特別”なものにしない

  • 管理職・園長も「誰かに頼る」「自分も大事にする」

  • 失敗も“みんなで学び合う”

そんな現場文化が、一歩ずつ園を変えていくはずです。

「困った時は、まず誰かに話してみる」
「一人で抱え込まない」
それが“やさしい仕組み”の土台だと感じています。


おわりに――“そっと、となりにいる”仕組みを

現場で頑張る先生方、本当にお疲れ様です。

どうか、「みんなのために」と頑張りすぎる自分にもやさしくしてください。
「誰かが倒れてから慌てる」のではなく、「みんなが元気で働ける園」を

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