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[映画]『憐れみの3章 (ヨルゴス・ランティモス監督/2024)』


MOVIX川口

データ

 原題: Kinds of Kindness
 監督: Yorgos Lanthimos
 製作年度: 2024
 製作国: アメリカ=イギリス=アイルランド=ギリシャ合作
 アスペクト比: 1:2.35f
 時間: 2h44
 公開日: 2024年9月27日
 鑑賞日: 2024年9月28日
 配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

はじめに

 24/9/29にmixi掲載したものを転載加筆修正しています。

感想

 Searchlight Picturesのマークの背景で懐かしのユーリズミックスの「Sweet Dreams」が流れ始めると、それだけでこの映画は好きになるのでは…と思った。

 そして結果はその通り、気軽に楽しめる、好きなタイプの作品となった。

 この作品は3つの独立した中編で構成されたオムニバス作品で、ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、そして"R.M.F."を演じるヨルゴス・ステファナコスといった役者がそれぞれのエピソードで様々な役柄を演じている。

 それぞれのエピソードは前述のとおりに独立した内容なのでエピソード間の関連性はなく、それぞれの役柄もバラバラだが、"R.M.F."だけは各エピソードで同一の役柄を演じている(エンドクレジットでも小ネタを披露)。

 原題の"Kinds of Kindness(ある種の親切)"が意味するところ、各エピソードをどう読み解くかはわからないし、深読みはいくらでもできそうだが、あまり意味はない気もする。監督の仕掛けたホラ話として受け入れて笑い飛ばすのが妥当だろう。なんといっても『ロブスター (The Lobster/2014)』の監督なのだから。

 1エピソードが平均55分として、短編でもなく長編でもなく中編として丁度良い塩梅(2話目は若干描写不足の感)の内容で、それぞれ一本の長編映画としては持たないと思った。

 パンフレットに執筆しているギリシャ悲劇研究家の山形治江によると、この映画はギリシャ悲劇のスタイルを踏襲しているとのこと。古代ギリシャ悲劇は3本の悲劇を休憩を挟まず連続で上演し、役者も3人固定で各エピソードで異なる役割を演じるという。また3人固定の芝居としつつも補足的に4人目の"喋らない役者"を配役するのも当時のスタイルだとか。この作品の"R.M.F."がまさにその4人目にあたる。

 前作『哀れなるものたち (Poor Things/2023)』の成功を受けて母国ギリシャの伝統に立ち返ったということか。ギリシャ人の監督(もしくはギリシャ人)にとっては当たり前の演劇知識なのだろう。

 あとポイントは冒頭に流れたユーリズミックスの曲かも。

 Some of them want to use you
 Some of them want to get used by you
 Some of them want to abuse you
 Some of them want to be abused

 あるひとはあなたを利用したがり
 あるひとはあなたに利用されたがり
 あるひとはあなたを酷使したがり
 あるひとはあなたに酷使されたがり…

 第1章では主人公は生活のすべてを上司に支配され、どんな無茶な指示であっても絶対服従を求められる。一度は逃れようとするが一度身に付いた服従癖は消えることが無い。

 第2章では帰ってきた妻を主人公は信用できない。妻の正体を暴く以上に妻に絶対的な忠誠を求め自傷を妻に強制する。そんな妻が夢見るのは犬と人間の立場が逆転した世界だった。

 第3章はカルト教団に洗脳されたヒロインが一度は破門された教団に戻るために"死者を蘇らせる能力を持つ"女性を必死になって探し続ける。

 洗脳や陰謀論、カルト教団などを題材にした現代の家族の肖像を飄々と撮りあげたヨルゴス・ランティモス監督、次作に期待。

追記 (25/9/27)

 各章には「R.M.F.の死」「R.M.F.は飛ぶ」「R.M.F.サンドイッチを食べる」というタイトルがついている。が、R.M.F.自体は話を進めるための"道具"に過ぎない。第1章では主人公はR.M.F.を殺害することを命じられ、第2章では行方不明だったヒロインはR.M.F.の操縦するヘリコプターに発見され、第3章ではヒロインは超能力を持つ女を使って遺体安置所のR.M.F.を生き返らせる。

 時系列的に1章→3章→2章なのか、2章→1章→3章なのか、よくわからないし、そもそもR.M.F.とは?が一切説明が無い。全く関連性の無い3つの話を繋げるための接着剤のような役割に過ぎないのだろう。

 話を追うことができるが、その意味するところは理解できない。もともと説明の少ない監督なので、結果としては事の成り行き(とんでもない展開)を愉しめば良いのだろう。

 エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォーの3人が中心となって話を進めていくが、脇役のマーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、そしてマモドゥ・アティエもそれぞれ各エピソードで役を演じていた。クアリーだけは第3話で双子を演じていたから4役となるけど。


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