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猫の駅長と夕日を見に18きっぷで和歌山へ行った話

夏といえば、18きっぷ旅……というのは一部の乗り鉄界隈とか限界バックパッカー勢だけかもしれないが、車窓を流れる夏の景色を眺めながら鈍行列車に揺られる旅というのはなかなかロマンがあるものだ。

東京の実家を脱出して関西に引っ越して以来、チャリでうろうろすることはあっても本格的な旅行に出かけたことはなかったので、せっかくカメラを買ったということもあり鈍行列車を使った旅を計画し始めた

で、今回の目的は紀伊半島一周に決定。以前、夏の房総半島を鉄道でぐるっと1周する日帰り旅をしたことがあったが、その感覚で旅程を組んだところ紀伊半島のデカさに驚かされることに。日帰りで1周というのはほぼ不可能なので、1泊2日で観光しながら周るのが良さそう……。というわけで、普通の土日を利用して旅立つことに。

ところで、当時は夏の18きっぷの販売アナウンスが異様に遅れており、界隈では「今年こそ廃止では?」という不穏な噂が飛び交っていた。どうにかギリギリで例年通りの仕様で発売されたからよかったものの、もし廃止されていたら旅程が粉砕されていたところである……あぶないあぶない。

なお、この次の冬の18きっぷでは大幅な仕様変更が入ったため、現在では今回のような1泊2日の旅程で18きっぷを活用するのは難しくなってしまっている。旅程の参考にはあまりならないと思われる……申し訳ない限りだ。

いざ和歌山へ

京都を出発して新快速で大阪へ。環状線のホームへ移り、環状線を見送ってから紀州路快速へ……

乗るかと思いきや、これも見送って、なんと乗車したのは大和路快速。それにしても、同じホームにぐるぐる環状運転する列車と和歌山やら奈良やらへ向かう長距離列車が滑り込んでくるカオス、関東出身者としてはなかなか面白い光景だ。……まあ副都心線とかも乗り入れすぎてて似たような状況ではあったが。

で、わりと車内は空いている状態でクロスシートに座り、のんびり車窓を眺めているとあっという間に王寺に到着。生駒山地を抜けるところで市街地からいきなり山景色に変わって、またすぐ市街地が現れるという車窓の変化が面白かった。

「和歌山に行くのになぜ奈良方面?」と思ったかもしれないが、これには理由がある。和歌山線に乗るためだ。

和歌山線は奈良から和歌山を結ぶ路線で、ほとんどが単線区間のローカル線である。しかし、使用車両はロングシートで石のように硬いイス。うーん、旅情がないなあ。

窓は大きいので車窓をぼんやり眺めることはできた。観光路線の面影は全くなく地元民の利用がほとんどであろう。各駅でぽつぽつ乗降があり、乗客はけっこう入れ替わっていた。基本的には紀ノ川に沿って山の中を単独で突き抜けていくのだが、吉野口では近鉄に、橋本では南海高野線に接続する。山の中で突然私鉄が登場するのは面白い光景だった

……などと書いているがロングシートで車窓を撮るわけにもいかず、結局写真ゼロのまま和歌山駅に到着

The 地方都市という雰囲気の駅前。ひとまず駅付近に取った宿に荷物を放り込む。

西口は駅ビルも併設されておりそれなりの規模なのだが、東口は裏口感が溢れてて風情が出てくる。こういう落差、いいよね。

そして東口を散策していると、たま電車という耳のついた列車が発車していく様子が見えた。和歌山駅から伸びている和歌山電鐵貴志川線ではネコによる路線の観光資源化が行われているようである。

というわけで、さっそく私も乗車してみることに。

猫の駅長に会いに、貴志川線乗りつぶし

貴志川線は起点の和歌山駅以外で他の路線に接続しない、いわゆる盲腸線である。私は「来た道を戻りたくない原理主義者」なので、こういった路線を乗り潰す際はバスやら徒歩移動を活用してどうにか他の路線へ抜けようとするのだが、今回は諦めて往復乗車を選択。というかバスでワープしても先ほど乗ってきた和歌山線に乗ることになるから、どのみち同じ車窓を見ることになるという……。

そんなわけで1日乗車券を購入。終点の貴志まで往復するなら若干お得だ。

道中、他の車両も目撃。和歌山電鐵では各車両に別々のラッピングが施されているようだ。

で、ガタガタと揺られながら終点の貴志駅に到着。列車到着直後は観光客が多く賑わっていた。

……が、折り返し列車が発車していくと捌けたので、撮影を開始。駅舎はネコをモチーフにしたものとなっている。

駅自体は無人駅なのだが、なんと猫のニタマ駅長が常駐している。お土産屋さんやカフェも併設されており、もはや地方私鉄の終点というよりは普通に観光地である。

……といっても駅周辺は観光地とはほど遠い市街地だが。

小さな神社が建立されており、そのうち1つには先代駅長のたま駅長たま大明神として祀られている。

今の駅長は二代目とのことだ。というか寝すぎだろ……。

……といった感じで駅舎の散策やらお土産屋さんを物色していると、次の便がやってくる時間に。

ホームに出て待ち構える……って、たま電車じゃん!

狙っていたわけでもないのに偶然乗車できるのは運が良いなあ。

外観も派手だが、内装が想像以上に凝っていて驚いた。

いわずもがな、水戸岡デザインである。

というわけで本気の観光列車に思わず乗車でき、盲腸線の往復乗車もあまり苦にならずに和歌山へと戻る。

先ほどの和歌山線とはうってかわり車内は地元民よりも観光客の方が多く、特に中国人観光客の団体が騒いでいたのが気になった。

個人的にはあまり観光地観光地しすぎるよりも地元民の息遣いを感じるようなローカル線が好みなのだが、厳しい経営状況にある地方私鉄にとって観光客を呼ぶことが重要な一手であることは間違いないだろう。

というわけでちょっと複雑な気持ちになりながら和歌山駅に戻ってきた。

和歌山市駅へ

で、今度は紀勢本線に乗車。……といっても白浜とか新宮の方向ではなく、和歌山市方面だ。和歌山電鐵とJR和歌山線・阪和線が乗り入れる和歌山駅と南海が乗り入れる和歌山市駅はやや離れており、その間は紀勢本線の延長部分が結んでいる。

この延長部分は単線で2両編成が走るのみで、和歌山以南の紀伊本線本体とは系統分離されている。運行本数も少なく利便性はあまり良くないので、基本的に両駅間の移動はバスがメインだと思われる

和歌山市駅へ向かうと南海電鉄の車両群がチラ見え。

で、あっという間に到着。

和歌山市駅は無人駅だが改札で区切られているという18きっぱーには厄介な設計で、改札横の精算機っぽいものでどこかの駅員さんと通話し、カメラで18きっぷを見せると改札を遠隔で開けてくれるという流れだった。

しかもこの時は乗客がそこそこいて改札も多くの人が通過している状態だったので、私が改札を通過するタイミングを見計らって駅員さんがすかさず開けるという謎の連携プレーを強いられた。18きっぷが改札に投入できる仕様に変わったのにはこういう背景もあるのだろう。

駅周辺はこんな感じ。おそらく私鉄の和歌山市駅が旧市街で国鉄の和歌山駅が新市街という鉄道史あるあるな状況だと思われるが、周辺の様子はどちらも地方都市という感じで大差ないような印象を受けた。

しかし少し歩くと、何やら史跡っぽいものが見えてきて……

和歌山城に到着。

和歌山城を見学

まずは西ノ丸庭園に入っていく。

お、良い雰囲気の庭園だ。これが無料開放されているのはありがたい。

そして良い感じの橋。

橋の上から眺めた池。

下の池から見るとこんな感じ。紅葉渓庭園とも書いてあるからには、紅葉がきれいなのだろう。とはいえ夏場も涼しく、人が少ないゆえの静寂さが心地よかった。

散策していて驚いたのが、奥に見える渡り廊下。西ノ丸から二ノ丸を繋ぐ渡り廊下だそうだが、ここまで傾斜のついた、しかも堀を跨ぐ木造建築というのは大変珍しいのではないだろうか。

というわけでさっそく渡ってみる。靴下がツルツル滑ってなかなか面白い体験ができた。

で、ここからは天守閣を目指して坂を登っていく。

和歌山市は平野に広がる街だが、和歌山城はその中でぽつんと膨らんだ山を利用して建てられている、いわゆる平山城だ。

で、登りきった本丸御殿跡から天守閣を望む。

そして天守閣へ。

城自体は戦後に復元された鉄筋コンクリート製らしい。

上からの眺めはこんな感じ。良い景色だ。

眼下に広がる市街地を眺める。

海側を望むとこんな感じ。

和歌山港の近くは工業地帯になっているようだ。

ちなみに内部の写真などは一切撮っていないが、展示はなかなか興味深くじっくりと読ませていただいた。関東出身&日本史全然やらなかった理系ということもあり紀州藩についてはあまり詳しくなかったので、ここで学べたのは良い機会だった。

……といった感じで見学を終えて下山。

和歌山駅へ戻る

城の裏手にはなんと動物園が無料で開放されており、ちょこっと見学した。ここではツキノワグマが園長になっていたようで、なんと訪れる2日前に老衰で息を引き取ったとのこと。献花台に多くの花が供えられていた。

で、日も傾いてきたためそろそろ海に沈む夕日を見に行きたいところ。

というわけで和歌山駅の方に戻り、宿にチェックイン。で、レンタサイクルを借りようとした……のだが、なんと日の出ている時間しか貸し出していないとのこと。なんてこったい。

そんなわけでバックアッププラン発動!……といってもバスで頑張って海まで向かうという公共交通機関ゴリ押しトラベル。で、次の便まで少し時間があったので駅周辺の寂れたアーケード商店街を散策。

あ~これは良い天井。

この寂れ具合がなんともエモい。

しばらくぶらぶらすると……

バスが出る時間となったため、駅に戻って乗車。ぐわっと南西へ向かった。

雑賀崎灯台で夕日を見る

雑賀崎さいかざきというバス停で下車……ってもう日が沈みかけているなあ。急がねば。

バス停からさらに 15 分ほど坂道を登っていく。……それにしてもここ、すごい地形だなあ。たぶんチャリで来てたら足が死んでた。

海と丘が限界まで近づいているような場所に、住宅がぎゅうぎゅう詰めになっているのが大変趣深い景色だ。

このあたりは廃業した宿をちょくちょく見かけたのだが、こちらの崖の下で海に向かってそびえ立っている宿は営業しているようだった。高低差のある場所にコンクリート造のでかい建物があるというだけでエモい光景なのに、さらに海に面しているということでエモさ爆発である。

……などと言っている間に、なんとか目的地の雑賀崎灯台に到着。

夕日が地平線にぶつかる直前。ちょうどよいタイミングで到着できたなあ。

めっちゃキレイ。

灯台とセットで撮りつつ他の観光客が入りこまないようにしたら変な画角になってしまった。

夏ゆえに天候が不安だったが、バッチリ晴れてくれた。

視線を横へ向けるとこんな感じ。

淡いグラデーションが大変美しい。

遠景には和歌山市街の工業地帯が。自然の美しさにのまれる人工物という対比がなんとも良い感じ。

ちなみに沈んでいく先は四国かと思ったが、方角的には淡路島のようだ。

カメラを新調した甲斐があったなあという感じ。

ゆっくりと淡路島の向こうへ沈んでいった。

で、他の観光客は車で続々と帰っていったが、私は最寄りのバス停へ向かいつつ高低差のある狭い路地を散策。私がコミュ力お化けだったらヒッチハイクとかできたかもしれないが……。

下に降りるとここにも港が。空の色がキレイ。

そして沈んだ太陽に代わって月が昇ってきた。

夕焼けが少しずつ紫に染まっていく様子を眺めつつバスを待つ。

夜の和歌山をぶらぶら

で、和歌山駅へ……は戻らず、紀州東照宮・和歌浦天満宮のあたりへ。もちろん日没後に観光はできないので、周辺をぶらぶらしつつ国道へと歩いていった。

アーチ状の石橋を発見。手持ち夜景でここまでキレイに撮れるとは……さすがはミラーレス一眼だ。

これはたしか柵とかにカメラを置いて撮った写真。

……といった感じで夜景も楽しみながら国道へと向かい、再びバスに乗って和歌山駅へと戻った。

この日はこれで終了である。

おわりに

今回の和歌山市の訪問は、1日で紀伊半島を1周できないのでひとまず一番発展してて宿の取りやすい和歌山市で1泊するという消極的な理由だったが、実際に訪れてみると和歌山電鐵和歌山城、そして雑賀崎灯台から眺める美しい夕日など、見どころが充実しており満足度は非常に高かった。

今回スルーした紀州東照宮・和歌浦天満宮や他にも海沿いの景色など魅力はいろいろとありそうなので、また機会があれば訪れてみたいところだ。

……といったところで今回はここまで。次回に続く!


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