四国バースデイきっぷで予讃線を寄り道しながら巡った話【内子編】
四国の鉄道路線が特急も含め3日間乗り放題になる「四国バースデイきっぷ」で四国を巡る旅行記、その2。
前回、フェリーで上陸した愛媛県の多喜浜駅から旅を始め、予讃線で西へ移動。途中下車で水の都・西条の街歩きを楽しんだのち、高架化された松山駅に到着したところまでを扱った。
今回はその続きで、松山の観光からスタート!

……かと思いきや、駅周辺の写真を足早に撮ってから再びホームへと戻ってきた。ここからは特急宇和海に乗車する。

まさかの松山完全スルーである……が、実は以前「レンタカーで四国を1周する旅行」をした際、松山で2泊して観光スポットから鉄分補給まで一通り済ませてしまっているのだ。したがって、今回は高架化後の松山駅を見られれば十分である。強いて言えば改修工事が終了した後の道後温泉はまだ未履修だが、別に急いで見る必要もないだろう。
前回も触れたが、地上駅時代の松山駅では特急しおかぜ・いしづちと宇和海が同一ホームに縦列停車し、乗り換え客の利便性を高めていた。現在は高架化に伴い対面乗り換えとなり、この光景は過去のものになった……と思いきや、なんと普通列車との縦列停車が実施されていた。

思わぬ形での縦列停車復活であり、これはなかなか面白い光景だ。
宇和海に乗車
今回乗車する便は2両編成での運行。指定席は1号車の一部だけという、自由席主体の JR 四国らしい運用となっている。この日は思いのほか混雑しており、松山駅の時点で自由席はほぼほぼ埋まっていた。自由席の争奪戦に巻き込まれない「グリーン車用バースデイきっぷ」の威力が発揮された瞬間である。

ここまでグリーン車で運ばれてきた身としては普通車の座席はやや質素に感じられるが、それでも特急は特急。車両性能も線形も良く、列車は軽快に駆け抜けていく。

予讃線は伊予市から先で、海沿いを走る旧線と内陸を進む新線に分岐する。ホームからの絶景が有名な下灘駅が属するのは旧線だが、特急は所要時間短縮のため新線経由で山を全速力で突き抜けていく。

いくつもの長いトンネルを抜けていくと、やがて列車は減速していき内子駅に到着した。今回はここで途中下車する。

駅舎はこんな感じ。線路がやや高い位置にあり、コンクリートのホームから少し空間を空けた1階部分に小さな木造駅舎が佇んでいる。どこか余白を感じさせる構造が妙に趣深い。

駅前には C12 形蒸気機関車。しっかり手入れされているようで、保存状態は良好だ。ピカピカの姿で出迎えてくれる。

内子観光
内子で途中下車した目的は、観光地として知られる八日市・護国の町並みを歩くこと。さっそく標識に従って進んでいくと……

現役の芝居小屋、内子座がお出迎え。……って、絶賛工事中だった。

築 100 年を超える伝統的な芝居小屋で、国の重要文化財にも指定されている名建築であるが、この日は残念ながらその姿をしっかりと拝むことはできなかった。

とはいえ、これはこれで再訪の理由ができたとも言えるだろう。

というわけで、工事中の内子座をスルーして小道を進んでいくと……

突き当たりで、いかにも観光地らしい通りに出る。

土産物屋やカフェが立ち並ぶ典型的な観光地……かと思いきや、実際には普通の民家と思しき建物も混ざっており、「作られた町並み」ではなく「残っている町並み」であることが感じられる。

通り沿いにある町家資料館に入ってみる。入館は無料だ。

内部に入るとまず目に入るのが、階段と収納が一体化した構造。階段下というデッドスペースになりがちな空間を、収納スペースとして有効活用しているのだ。

江戸時代の町家を再現した資料館ということで、この時代になかなか合理的な設計がされていたことに驚く。ただし、古い建物あるあるとして階段の傾斜はかなり急である。下りるときには注意が必要だ。

で、2階に上がるとこんな感じ。

そして窓の外に目をやると、そこに広がるのもまた古い町並みである。

しかしこうして建物の内部まで見てみると、当時の内子の商人たちがかなり豊かな暮らしをしていたことがうかがえる。この地はかつて木蝋の生産で栄えた町であり、その経済的な基盤がこうした建築にも表れているのだろう。

資料館の隣には、なにやら教会……と言いながらゴリゴリの和風建築が。現役で使われている施設のようで、観光地化されていながらもこの地で生活が営まれていることがわかる。

さらに進んでいくと道がカクカクと折れ曲がる、いわゆる枡形が出現。宿場町でよく見られる構造で、防御や見通しの制御といった役割を持つものだ。

この枡形を過ぎるとさらに観光客向けの商店は減り、本当にありのままの古い町並みが残っているような雰囲気になる。

この町並み保存地区の面白いところは、いわゆる観光地然とした統一感がないことだ。自然発生的に広がった町をそのまま保存しているため、建物ごとに微妙に雰囲気が異なり、建てられた年代の差も感じられる。

この重厚な建物は豪商・本芳我家の住宅。重要文化財に指定されている。

内部の見学はできないが、庭園をわずかに覗き見ることができる。しっかりと手入れされたその空間からは、かつての繁栄ぶりが静かに伝わってくる。

この日は観光客もそれほど多くなかったため、タイミングを見計らえば人を写り込ませずに写真を撮ることもできた。緩やかな曲線と傾斜、そして一軒一軒異なる表情を持つ建物群。この組み合わせがなんとも美しい景観を作り出している。

いかにもレトロな郵便ポストと自販機だが、この画角に写っているものの中では新しい時代のものなのだろう。

相対的な時間感覚がバグる瞬間である。

こちらは木蝋資料館・上芳我邸。先ほど庭先だけ見た本芳我家の分家にあたるらしく、こちらも重要文化財に指定されているとのこと。

本来であれば資料館もじっくり見学したいところだが、時間の都合もあり今回は無料で見られる範囲だけを軽く見て回るにとどめた。

こんな具合に要所要所で解説パネルや資料館がありつつも、基本的にはありのままの町並みが残されている感じだ。この整えすぎていない観光地というバランスがちょうど良い印象を受けた。

そしてY字路が出現。しかも傾斜付きなので、これはポイント高い。

この分岐を進んでいくとやがて標高的な最高地点にたどり着き、まもなく町並み保存区も終わりを迎える。

振り返ってみるとこんな感じ。

ここまでずっと坂を上ってきたわけで、気づけば相当な位置エネルギーを稼いでしまっていたようだ。

で、そのままUターンするのは来た道を戻りたくない原理主義者としては耐えられないため、保存区を外れて別の道へ行くと橋を発見。こんな標高が高そうな場所に川?

……と思いきや、橋の下には普通に道路が。このあたりはだいぶ高低差の激しい地形になっているようで、その結果このような立体交差的な構造が生まれている。

というわけで細い階段を降りていって……

今度は下から橋を見上げる。

で、そのまま保存地区ではない一般道へと出て駅方面へと歩き始める。

いやしかし、この道もなかなか趣があってよいではないか。

道中、より細い道を見つけたのでそちらへと入っていく。

するとなにやら大きな建物を発見。

森文旭館という元映画館らしく、なんと築 100 年。営業していた期間よりも営業を終えてからの時間の方が長いようだが、それでもなお建物が残り続けているという事実にある種の力強さを感じる。

で、先ほどの道に戻って再び駅に向かって歩き出す。

……が、またしても気になる小道を発見してしまったので突撃。

こちらの建物は文化交流ヴィラ高橋邸。

内部の見学は無料で、さらには宿泊も可能とのこと。今回は時間の都合で外観のみの確認にとどまったが、機会があれば中も見てみたいところである。

というわけで、またまた元の道に戻ってくる。

こちらの建物は内子町ビジターセンター。元々は警察署として建てられ、いかにも洋風の石造りな見た目だが木造建築とのこと。

またしてもレトロ郵便ポストを発見。

そして内子座付近まで戻ってきた。実はこの時点で、列車の発車時刻まで残された時間はそれほど多くない状態だった。

そんな状態で少し遠くに桜を発見。

さすがに近くまで見に行く時間はないよなあ……いや、頑張ればいけるか?

というわけでかなり無茶をして接近。

しかし近づいてみると川との位置関係がうまく噛み合わず、思い描いていた映える構図は得られなかった。結果的に、どこででも撮れそうな接写を一枚撮って終了。

そのまま裏道を抜けて駅へと向かう途中、畑の向こうにやたらとピンクなガソリンスタンドとスーパーが現れる。町並み保存地区の中ではこうした現代的な生活感のある建物がほとんど視界に入らないようになっていたため、そのコントラストが際立つ。うまく景観設計されているなあと感心した。

やや早足で駅へと戻ると、1分ほどで特急宇和海が滑り込んできた。結果的にはほぼ完璧なタイミングだったわけだ。最後は少々慌ただしくなったが、時間を最大限活用した観光ができて大満足。

ちなみにこのように途中駅から乗車する場合、自由席だと良い席が空いていない可能性もある。そういう意味でも、指定席を確保できる「グリーン車用バースデイきっぷ」の価値はやはり大きい。
再び宇和海に乗車
内子を出ると、まもなく旧線と合流して伊予大洲に到着。川を渡るタイミングで大洲城が目に入ってきた。

で、ここからも山間部を通り抜けていくのだが、フェリーでの寝不足と内子での早足観光の疲れが出てきてしまい、意識がフェードアウト。

終点の宇和島が近づいてきて、アナウンスで目が覚める。宇和海は車庫で眠っている車両たちを横目に速度を落としていく。

おや、こんなところに0系新幹線……の見た目をした1両編成の気動車が。

……といった感じで宇和島駅に到着。

さて、ここからは宇和島観光に繰り出す!……のだが、一旦ここで区切ろうと思う。
……というわけで次回に続く!
