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【職人の徒然日記 #2】工場の未来が変わるーSiemens✕NVIDIAの可能性

みなさんこんにちは。元金型職人です。
先日のCES2026はいろいろな新しいことが起こりましたね。

一つは自動車業界の業界構造が変わることがはっきりと見えたこと。
もう一つはフィジカルAIの可能性が一気に広がったこと。
そして、今回のテーマにしたい、個人的に一番気になっていること、“SiemensとNVIDIAの提携”です。この提携で何が起こるのかを簡単に言うなら、“デジタルツインが日常になる”ということだと感じています。

何故か。それは、これまで全自動化など欧米の得意な合理化路線で進んできたSiemensが、”人が見る”、“みんなで見る”、ということを受け入れたからだと感じています。私の周りでもそう捉える向きが多いです。
実際、私が7年弱、欧州のローカル企業に在籍していた時に、Siemensの仕組みの素晴らしさは認識しています。大手企業で設計変更が起きると設備メーカー側のモデルもオンタイムで変わるとか、CADなのにモデルを動かすとCNCデータが出力されるとか。私の在籍していた企業ではそういう仕組みが出来上がっていました・・・

しかしながら、それは例えば設計担当者が使えるものであって、画面に向き合ってあれこれ考えていたり、隣の部署へ行って関連するエンジニアを自席に招いて議論したり、実務としてやっていることは日本で見慣れたものと変わらなかったのも事実です。

そこへ今回の提携です。

何が起きるかと言えば、シーメンスの仕組みにフィジカルAIが加わり、さらにオムニバースによって多数の人間が同時に見て、検証して、意思決定の超速化を行うことができる。
人が見る事で、感性や官能の部分、いわゆるデザインエンジニアリングの領域であったり、形状の実現性であったり、組立し易さによるライフサイクルの部分だったり、独立し個々で動いていた部門や個人のプロセスが一つに集約されるという事が現実に起こせるのだと思うのです。

何度も言いますが、“意思決定の超速化”こそが、これからの企業には最も大切なことだと感じていますが、これまでSiemensがあまり得意だとは言えなった(私はそう感じていた)領域に対してNVIDIAと組み、Omniverseによる可視化を行うことによって、意思決定を超速化し、製品化までのリードタイムを圧倒的に短縮し、利益速度を最大化することが出来るのだと理解しました。

実際に発表では、“SiemensとNVIDIAの提携は、「産業メタバース」と「産業用AI OS」を軸に、設計から製造・運用までのプロセスをデジタルツインとGPU・AIで統合し、製造業の高度な自動化と意思決定の高度化を目指す取り組みである”という事が書かれていました。

具体的には、Siemens XceleratorとNVIDIA Omniverseを接続することで、現実の工場や製品を高精度なデジタルツインとして再現し、リアルタイムにシミュレーション・最適化を行うことが可能になる。
人が主体であるということには世界共通で変わりないが、より高度な開発・生産の合理化が行えるということだと理解しています。

実際どんな内容なのでしょうか。

◆提携のコンセプト

産業メタバース
Siemens Xceleratorの物理ベースシミュレーションと、NVIDIA Omniverseのリアルタイム3D・AI技術を統合し、工場や製品の高精度なデジタルツインをリアルタイムに動かす「産業メタバース」を構築する構想である。
これにより、設計・シミュレーション・運転監視が一体化した仮想空間上で実行でき、意思決定の速度と精度の向上が期待されている。

これが上手く行けば意思決定の超高速化が実現しますし、それこそが製造業に最も必要なことだというのは間違いないです。

産業用AIオペレーティングシステム(Industrial AI OS)
両社は、設計から製造・運用・保全までのライフサイクル全体を貫く産業用AIオペレーティングシステムを構想しており、AIを補助ツールではなく中核エンジンとして位置づけている。

本当に現場のリアルを認識したAIであれば、産業の中核エンジンになり得るでしょう。Siemensの知見を活用すれば、その実現自体は難しいものではありません。ただ重要なのは、AIを作る側が、現場のプロセスや情報の関連性、さまざまな要素が組み合わさって結果が導かれる過程を、どこまで体系的に理解できるかというのが肝になるでしょうし、その理解をもってAIを設計・実装できる企業が今後のメインプレイヤーになっていくのでしょうね。

NVIDIAの加速計算基盤と、SiemensのPLMやシミュレーション、オートメーションソフトウェアを組み合わせることで、設計と製造が閉ループでつながるアーキテクチャの確立を目指している。

これはまさに工作機械で言うところのクローズドループで、これによって精度やスピードが格段に向上します。

◆具体的に進んでいる取り組み

XceleratorとOmniverseの連携強化
SiemensのオープンなデジタルビジネスプラットフォームであるXceleratorと、NVIDIA Omniverseを接続し、機械・電気・ソフトウェア・IoTなどから得られる多様なデータをリアルタイムに統合する仕組みが構築されている。

これによって、企業は完全な忠実度のデジタルツインを構築し、エッジからクラウドまでAI対応のソフトウェアデファインドシステムを展開できるようになります。さらに、内容を深読みするとマルチフィジックスシミュレータ(複数の異種材料に対して、様々な検証が行える)を絡めているようですね。本当に凄い世界になってきたと感じています。

AI駆動のスマート製造拠点
両社は、Siemensの産業自動化・デジタルツイン技術と、NVIDIAのAIおよびOmniverseプラットフォームを組み合わせ、AI駆動型スマート製造拠点を構築する構想を打ち出している。

シミュレートされた工場をそのまま現実世界に落とし込み、工場全体の垂直立ち上げを行うことができます。もちろん、工場建設や工場内のあらゆる装置などもオンタイムで並行して進めて行ける世界、SF映画のような世界が現実になり得るわけです。

◆今後の展開

2026年以降、完全なAI駆動型の製造拠点をモデルケースとして展開し、産業メタバースと「物理AI」を組み合わせた次世代スマート製造の標準アーキテクチャを提示する計画とされています。

技術スタック・インフラ面のポイント
NVIDIAはGPU、Omniverse、AIモデル群といったフルスタックのAIプラットフォームを提供し、Siemensは産業領域のノウハウとオートメーションソリューションを提供するという役割分担になっていますが、この組み合わせにより、設計・シミュレーションから工場の制御、エッジ〜クラウドまでを含む一貫したデジタル基盤を構築しやすくなります。

製造業ユーザーへの影響
設計段階で作成したデジタルモデルを、そのままデジタルツイン工場内で検証できるようになることで、試作回数の削減や立ち上げ期間の短縮などが期待されます。また、AIによる条件探索や予兆保全、品質検査の自動化が進み、現場の暗黙知をデータとして蓄積・活用することで、スキルの平準化と生産性向上が見込まれています。

最近、多くのお客様との対話の中で、デジタルツインの検討は個別業務のシミュレーションやプロセスの自動化といった具体テーマから始まるケースが多いと感じています。今後は、それらを部門横断で接続し、事業全体の意思決定を高度化していく全体最適の設計が、重要な論点になってくると考えています。
現場で見たいこと、設計で見たいこと、生産技術で見たいこと、それぞれに対するシミュレーションや自動化の話を纏め上げ、デジタルツインで一気に繋ぐ。地道ですが、これを一つの流れやパッケージとして展開していけば、日本も変わっていく、あるいはリードできる立ち位置になれるのではないかと思います。

当初はSiemensの仕組みを使っているユーザーが優先されるのでしょうが、FANUCもNVIDIAとの協業を発表していますし、世の中全体がデジタルツインの有効性を真剣に考えていかなくてはならない時期になったのだと感じています。
製造業だけではなく、様々な産業や市場に対してもデジタルツインは広がって行くことでしょう。

その中で、日本として、日本の特殊な企業文化として、ガラパゴス化は大いに結構ですし、むしろ日本流のデジタルツインを構築すれば良いと思いますが、目の前の事だけではなく、関連部門や知見やプロセスをいかにして巻き込み、どのように世の中に広めていくのか、エージェントAIや繋がる仕組みを絡めながら、よりハイレベルなデジタルツインを構築していけるのではないかという観点で、“JDSCの存在感が高まる裾野が広がった”、と個人的には思っています。
JDSCには様々なベースを持ったメンバーが集まっているので、それぞれの考えをぶつけ合いながら、新たな製造業の姿を描いていきたいと思います。
(JDSC 田中龍)

参考資料
・NVIDIA Newsroom
https://nvidianews.nvidia.com/news/siemens-and-nvidia-to-enable-industrial-metaverse

・Siemens公式LinkedIn記事
https://www.linkedin.com/pulse/creating-industrial-metaverse-siemens-xcelerator-dirk-didascalou

・NVIDIA Japan Blog
https://blogs.nvidia.co.jp/blog/siemens-and-nvidia-expand-partnership-industrial-ai-operating-system/


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