クリスマスイブに3時間半遅れてくる男を、私はなぜ待てるのか
「今日時間ある?」
「何時ごろ?」
「17時頃。」
「OK。じゃあ17時に。」
これが、クリスマスイブ14時頃のセミルとの会話。
私は基本的にクリぼっちなので、予定が入っただけでちょっと嬉しい。
ただ、14時以降のドイツってお店はほぼ閉まるし、電車ってちゃんと動いてるのかしら?
そう思いつつも、私は17時になっても一切準備をしなかった。なぜか。
「Hi, 今から電車乗るよ。すぐ後で。」
「OK」
これは18時過ぎのやり取り。約束の17時なんてとっくに過ぎてる。
そう、私はセミルが時間を守れない人間だということを、もう知っている。
「もうすぐ着く」と言われて1〜2時間待たされるのは通常運転。
逆に30分遅れくらいで来られると、こっちが全然準備できていなくて焦る。
「今、路面電車乗り過ごしたから、次ので行くよ。すぐ後で。」
「OK」
これが19時半。
そして20時半。
「今ついた。」
――3時間半。
彼にとっては平均的な到着時間である。
私の町は小さい。歩いて端から端まで2時間。
マイナス4度の寒空の下、どう歩けば3時間半もかかるのか。本人は電車に乗ってきたって言うし、基本的に寒がりなので絶対に乗ってきてるはず。方向音痴なのかしら。
渡り鳥にGPSをつけるより先に、
セミルの鞄にAirTagを忍ばせようかと何度思ったことか。
でも説教したところで、彼が早く来るわけでもない。
私はぬくぬく家で待っているだけなので、最近は方針を変えた。
早く来れたら、
「すごいね〜!」と大袈裟に褒める。
デリヘル嬢だって、呼び出されていきなり説教されたらやる気なくなるでしょう?
結果オーライ主義である。
私が待てる理由は単純で、
彼が時間を守れないことを最初から知っているから。
最初は友達の友達で、3人での顔合わせだった。
紹介してくれた子が「彼女できた&宗教的に無理」で一抜けし、
なぜか私とセミルが残った。
お互いタチもウケも可能で、相性も良かった。
一粒で二度美味しいタイプ。
正直、なかなかいない逸材だった。
欲を言えば、遅くとも2時間以内には来てほしい。
3時間半遅れて、そこから風呂1時間。
4時間半。
4時間半あったらヨーロッパどこでも行ける。
この前行ったマルタだって3時間だった。
最初は少し言ったけれど、
説教しても結果が出ないなら、褒めて育てるしかない。
今日も到着後の第一声がこれ。
「今日がクリスマスイブだとは知らなかった。電車の本数少なくて。」
……へなへな。
身内にイタリアの血が入ってるなら、
クリスマスくらい覚えておこうか。極東出身の私だって知ってるわよ?
それでも、行事に縛られず、自分時間で来てくれるセミルは貴重だ。
世間の「クリスマスは家族」「大晦日はパーティー」という常識を、
軽々と無視してくれる。
人間、基本は気の持ちよう。
何でも慣れる。
待っている間にこうやってNoteの記事1本書けたし。
悪気があったら即切っているけれど、どうやらそうでもない。
それにしても、このリズムでよく働けているわよね。
仕事には定時で行けているのかしら。
今度、早く来れた日に、
終わったあとで、褒めるついでに聞いてみようと思う。今日も遅いわ。腹減ってるのに。
