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【データ分析】「湘南ベルマーレ 期待値から検証する“17戦勝ちなし”」

【データ分析】

「湘南ベルマーレ 期待値から検証する“17戦勝ちなし”」


Ⅰ.「はじめに」

 33節終了現在、降格圏の19位に沈んでいる湘南ベルマーレ(以下ベルマーレ)。

 今シーズンは「開幕3連勝」を含め「開幕5戦負けなし」とスタートダッシュに成功。
 しかし、その後は思う様に勝ち点を伸ばすことが出来ておらず、33節終了現在「17戦勝ちなし」「7連敗中」と長いトンネルから抜け出せずにいます。

 上記の通り、確かに“結果”に関しては、惨憺たるものであると認めざるを得ません。
 ただ、果たして“試合内容”も「17戦勝ちなし」となってしまう程、厳しいものだったのでしょうか。
 もし、そうではないという明確な根拠を示すことが出来れば、これはベルマーレにとって「希望」となる
のではと思い立ち、今回、本記事を執筆するに至りました。

 具体的には「17戦勝ちなし」が始まった17節以降の「ゴール期待値」「被ゴール期待値」と「実際のゴール数」「実際の被ゴール数」を比較し、その数字の振れ具合から「結果通りの内容」であったのか、そうではなかったのか、検証して行きたいと思います。

 更にⅢ章では「J1全クラブ」を対象とした「期待値上の順位表」(得失点期待値ベースの順位)を作成し、独自の見解を示しておりますので、ベルマーレのファン・サポーター以外の方にも、お楽しみ頂ける記事になっているかと思います。

 なお、本記事のデータは「J STATs」(データスタジアム株式会社)から引用、もしくは引用した値をベースに算出させて頂いております。
 また、僕はデータ分析の専門家ではないため『サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法』イアン グラハム(著)/木崎伸也(監修)を参考文献とさせて頂いております
「期待値」は万能なデータではありません。故に本記事の内容も絶対的なものではございません

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Ⅱ.「実際のスコアとゴール期待値」(ベルマーレ対象)

表Ⅰ.実際のスコアとゴール期待値(17節~33節)

ゴール期待値とは

 検証に入る前に、まず「ゴール期待値」の説明を簡単にさせて頂きます。     
 「ゴール期待値」とは「シュートが得点となる確率」(0~1)のことであり、表Ⅰの数値は「1試合分の総数」(データ上、期待できたゴール数)となっております。
 ちなみに「被ゴール期待値」は「対戦相手のゴール期待値」と同じ値となります。

 例えば「BOX内・ゴール正面からのシュート」であれば、得点となる確率が高いことは容易に想像がつくかと思います。そのため「ゴール期待値」は高い値(1に近い値)となります。
 対して「ゴールから35m・角度40度のシュート」の場合、得点となる確率が低いことは容易に想像がつくかと思います。そのため「ゴール期待値」は低い値(0に近い値)となります。
 この様に1試合の中で放たれたシュート全てに値付けをし、その総数を計算したものが、表Ⅰの「ゴール期待値」となっています。
 なお、実際には「ゴールへの距離」「シュートの角度」だけでなく、様々な要素を考慮した上で、各データ会社はゴール期待値を算出しております。

 以上の点を踏まえた上で、ベルマーレの「17戦勝ちなし」の結果が妥当であったのか否か、検証して行きたいと思います。


ケース①:23節vsヴィッセル

 「23節vsヴィッセル」に関しては、結論から言うと、期待値上では「1-1」のドローであっても不思議ではありませんでした。

 まず、ヴィッセルのゴール期待値が「1.011」であるのに対し、実際のスコアは「4」となっており、大きな振れが生じています(表Ⅰ参照)。
 ゴールシーンを確認してみると「1点目:スーパーボレー」(1:08~)「2点目:スルーパスから圧巻の個人技」(3:15~)「3点目:角度が良いとは言えない中でのシュート」(5:00~)「4点目:3点目に同じ」(5:58~)と、確かに「ゴール期待値」が高まりそうにはない、難易度の高いシュートが得点に結びついています。
 対して、ベルマーレのゴール期待値は「0.645」ということで、実際のスコアである「0」でも納得は出来ますが、「1」であっても不思議ではなかったと思います。
 そのため、冒頭の通り、期待値上では「1-1」のドローであっても、おかしくはなかった試合と言えるかと思います。

 但し、データ分析ではなく、映像分析の観点から言うと、この試合は『分析レポート』を書かせて頂いているのですが、正直、ヴィッセルの圧勝という印象でした。
 詳細は『分析レポート』を読んで頂きたいのですが、4失点全て、ベルマーレに明確な原因があるものとなっており、その上で、ゴール期待値の低いシュートを沈めた、ヴィッセルの選手の質を褒めるべき試合であったとも言えるかと思います。


ケース②:21節vsレッズ

 続いて「21節vsレッズ」(クラブW杯の関係で後日開催)に関しても、結論から言うと、期待値上は「1-1」のドローであっても不思議ではありませんでした。

 まず、レッズのゴール期待値が「1.419」であるのに対し、実際のスコアは「4」となっており、こちらも大きな振れが生じています(表Ⅰ参照)。
 この試合はハイライト映像しか観ていないので、深くは言及しませんが、1・2得点目は「CKからのヘディング」(2:02~/2:43~)となっており、中でも2得点目は角度的にも、確かにゴール期待値の低そうなシュートが得点に結びついています。
 それでも、3・4得点目のゴール期待値が高かったのか、総数は「1.419」であるため、実際のスコアは「1」でも「2」でも不思議ではありませんでした。
 ただ、数値としては「2」よりも「1」に近いわけであり、冒頭の通り、期待値上では「1-1」のドローであっても、おかしくはなかった試合と言えるかと思います。


ケース③:29節・30節・32節・33節

 ここからは基本的にケース①②の繰り返しとなるため、詳細は省略させて頂きます。
 「29節vsアントラーズ」は、ベルマーレのゴール期待値「0.836」・アントラーズのゴール期待値「1.261」ということで、期待値上は「1-1」のドロー。
 「30節vsグランパス」は、ベルマーレのゴール期待値「2.659」・グランパスのゴール期待値「1.387」ということで、期待値上は「3-1」でベルマーレの勝利。
 「32節vs横浜FC」は、ベルマーレのゴール期待値「1.244」・横浜FCのゴール期待値「1.308」ということで、期待値上は「1-1」のドロー。
 「33節vsヴェルディ」は、ベルマーレのゴール期待値「0.637」・ヴェルディのゴール期待値「0.645」ということで、期待値上は「1-1」(もしくは0-0)のドロー。

 という結果であっても不思議ではありませんでした(全て表Ⅰ参照)。
 なお、ケース①~③の試合以外に関しては、表Ⅰの通り、概ね期待値通りの結果となっております。


17節~33節 期待値上の勝ち点

 ここまで検証して来た期待値上のスコアから、「17節~33節」における「期待値上での勝ち点」を計算すると「8ポイント」(MAX)獲得していても不思議ではなかったという結論に至りました。
 そうなると、33節終了現在「33ポイント」(25+8)獲得していたこととなり、これは残留圏、最後尾の17位マリノス(31ポイント)を上回る数字となっております。
(注)他クラブの「期待値上の勝ち点」は計算しておりません
 また、表Ⅰの通り「29節以降」、期待値が改善し始めており、期待値上では急激に勝ち点を伸ばし始めています。

 もちろん、残留争いに巻き込まれている以上「結果が全てだ」という意見も分かりますし、過去の『分析レポート』や『湘南ベルマーレ2025 残留計画レポート』でも記してきた通り、個人・チーム戦術の観点から見ると、ベルマーレ自身に問題がないとは言えません。
 ただ「データ上」では「17戦勝ちなし」となるまで悪い試合内容ではなかった。
 そして、そのデータが「29節以降」向上している。
 この点に関しては、中断明けの5連勝、ひいては逆転残留に向け、希望の光
と捉えることが出来るのではないでしょうか。

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Ⅲ.「期待値上の順位」(J1全クラブ対象)

表Ⅱ.“通常”順位表と“得失点期待値”順位表(2025 J1リーグ)
※ 33節終了現在
※「得失点期待値」=「ゴール期待値」-「被ゴール期待値」


期待値上の順位(J1全クラブ対象)

 表Ⅱは左半分が「勝ち点ベースの順位表」(通常の順位表)、右半分が「得失点期待値ベースの順位表」となっております。
 また「得失点期待値」とは表Ⅱ注釈の通り、「ゴール期待値」から「被ゴール期待値」を引いた値であり、「得失点差の期待値」という解釈で問題ないかと思います。

 以上の点を踏まえた上で、まず、表Ⅱの「勝ち点ベースの順位表」を見て頂きたいのですが、多少の前後はあるものの、基本的に「順位」と「得失点差」には相関があることが読み取れます。
 なお、多くの方のイメージ通りかと思いますが、この相関・傾向は、今シーズンに限った話ではありません。
 この点から、J1全クラブの「得失点期待値」を算出し、数値順に並び変えれば、それは「期待値上の順位」(に近似したもの)と言えるのではないかと仮定し、実際に「得失点期待値ベースの順位表」を作成してみました。

 結果としては「勝ち点ベースの順位表」と比較して、かなり順位が入れ替わっているものの、「上位グループ」(1位~10位)「下位グループ」(11位~20位)に分類すれば、7割のクラブは、同じグループのままであることが分かります。
 その一方で、残りの3割となる6クラブに関しては、グループを跨いで、大きく順位が上下しています。

 その中で、順位を伸ばしているクラブは「FC東京」(13位→5位)「アビスパ」(14位→6位)「グランパス」(15位→8位)であり、反対に順位を落としているクラブは「サンガ」(2位→11位)「アントラーズ」(1位→12位)「レッズ」(8位→13位)となっています。
 更にその中でも大幅に順位が変動しているクラブが、33節終了現在、1位・2位に位置している、アントラーズ・サンガということで、この2クラブに関して、もう少し詳しく検証して行きたいと思います。


実際の数値と期待値の大幅な振れ(アントラーズ・サンガ)

アントラーズ

 まず、アントラーズに関しては「得点総数:52(3位)」「失点総数:28(2位)」「得失点差:24(1位)」に対し、「ゴール期待値:41.3(12位)」「被ゴール期待値:42.4(12位)」「得失点期待値:-1.1(12位)」ということで、明らかに数値が振れています。

 「得点総数」が「ゴール期待値」を大幅に上回っているということは「本来であれば確率の低いシュートが得点に結びついている」ということであり、それは大きく分けて「アントラーズの選手の質が高い」もしくは「相手GKがミスをした」と捉えることが出来ます。
 しかし、開幕直後であればまだしも、33節まで継続して、相手GKがミスをしたとは考え難いため、レオセアラ選手(18得点)・鈴木優磨選手(9得点)の強力2トップや、チームの強みであるセットプレーからの得点(一般的に、PKを除くセットプレーからの得点は、期待値が低く見積もられる)、つまりは「選手の質」が期待値を大きく上回っている要因のひとつであると考えられます。

 また「失点総数」が「被ゴール期待値」を下回っているということは「本来であれば確率の高いシュートが得点に結びついていない」ということであり、それは大きく分けて「アントラーズのGK・DFがブロックをした」もしくは「相手選手が決定機を外した」と捉えることが出来ます。
 しかし「ゴール期待値」と同様に、33節まで継続して、相手選手が決定機を外したとは考え難いため、日本代表GK早川選手やCB植田選手を始めとした強力な守備陣のお陰と推測することが出来ます。

サンガ

 続いて、サンガに関しては「得点総数:57(2位)」「失点総数:35(6位)」「得失点差:22(2位)」に対し、「ゴール期待値:44.2(7位)」「被ゴール期待値:45.2(16位)」「得失点期待値:-1(11位)」ということで、こちらも明らかに数値が振れています。

 得点総数に関しては、アントラーズ程の振れではありませんが、こちらもやはり、エースであるラファエルエリアス選手の存在が大きいと考えられます。
 また「ヘディング」は一般的に、足での得点と比較して、ゴール期待値が低く見積もられているのですが、サンガは「クロス」からの攻撃を武器のひとつしているため、この点も影響したと推測することが出来ます。

 失点総数に関しては「被シュート総数」がリーグワースト4位と多い中、チームの哲学として「シュートブロック」を強く意識しているため、被ゴール期待値との差が出ていると考えられます。


期待値上の順位(ベルマーレ)

 最後に本記事を執筆するきっかけである、ベルマーレの話をして締め括りたいと思います。
 表Ⅱの通り、残念ながら「期待値上の順位表」では最下位となっております。
 ただ、これは個人的に特に気にする必要はないと考えています。

 その理由として、このデータには抜け穴の様なものが隠されています(要は万能ではない)。
 極端な例を出すと、リーグ戦38試合中、初めの19試合を全て“0-3”で落としたとします。そうなると、その時点での得失点差は“-57”となります。そしてそこから、残りの19試合を全て“1-0”で制したとします。すると、最終的な成績は勝ち点”57“・得失点差は”-38“となります。勝ち点57を得ていれば、ほぼ間違いなく残留を手にすることが出来ます。しかし、その一方で得失点差-38という数字は、期待値上の順位に変換すると、ほぼ間違いなく「降格圏」となると考えられます。

 僕は「期待値上の順位表」を作成する上で「順位と得失点差には基本的に相関がある→順位と得失点期待値にも相関があると仮定」という考えを用いたと、本章冒頭で説明させて頂きました。
 ただ、上記した極端な例では明らかに「順位と得失点差は相関していません」。

 これはあくまでも非常に極端な話ではありますが、要は複数の試合で「大差での敗戦」(もしくは被ゴール期待値の大幅な悪化)があり、複数の試合で「最少得点での勝利」(もしくは限りなく低いゴール期待値での勝利)があった場合、「順位と得失点差は相関しない」(順位と得失点期待値は相関しない)と考えられるため、今シーズンのベルマーレの様に、明らかに残留争いに巻き込まれているクラブにとっては、「期待値上の順位」は気にする必要がないデータ(気にするべきは“勝ち点”と“試合内容”)と結論づけることが出来るかと思います。
(注)そもそも、この「期待値上の順位表」は”データ分析の専門家ではない”僕が独自に作成

 その一方で、Ⅱ章にて解説した「ゴール期待値を用いた試合内容の評価」に関しては、相関ではなく、1試合毎の内容に焦点を当てているため、一定の意味・価値はある指標だと考えています。
 そして、繰り返しになりますが、その指標において、「17節~33節」における「期待値上での勝ち点」を計算すると「8ポイント」(MAX)獲得していても不思議ではなかった点、直近5試合では、期待値上の勝ち点を伸ばせている点は、逆転での残留に向け、希望の光と捉えることが出来るかと思います。

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 【データ分析】「湘南ベルマーレ 期待値から検証する“17戦勝ちなし”」は以上なります。
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