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【懇願】台風のときは島に来ないで

台風13号が与論島を直撃した日

先日、台風13号が与論島を直撃した。私は東京の自宅にいる。テレビに映る進路予想を眺めながら、島や自宅に被害がないことを願っていた。

実家は与論島で57年続く民宿、名前はビーチランドロッジという。
父親とスタッフ1名が島にいる。

ビーチランドロッジの外観

「貴重な経験でした」という言葉

台風が過ぎたころ、Instagramに一件のメッセージが届く。

17年近く与論に来させてもらってますが、ここまで直撃の台風を経験したのは初めてでした! でも、これが島民の暮らしだと思うと、貴重な経験ができたと思ってます! 停電も断水するかもと不安になるのも、全てが良い経験でした! それでもやっぱり与論は素敵で大好きな帰る場所だと再認識しました!

とあるフォロワーさんからのDM


17年近く与論島へ通ってくれている方からだった。停電と断水の不安の中で過ごした数日を、島民の暮らしを知る貴重な経験だったとつづっている。それでもやっぱり与論島が好きだと、そう締めくくられていた。

与論島が好きというコメントに対しては、素直に嬉しかった。同時に、疑問も残る。その「貴重な経験」の裏側で、必死に災害に踏ん張っていた島民がいることを、私は知っているからだ。

宿を営む人間として、正直に言いたいこと

結論から書く。

台風が来ると分かっている時期には、与論島へ来てほしくない。

理由は単純である。宿の人間は、台風の最中でもお客様を一番に考えてしまう生き物だからだ。エアコンのない部屋で汗だくになっていただきたくないし、カップラーメンではなくきちんとした食事を出したい。お風呂にもゆっくり浸かってもらいたいと思う。それが島の宿の性分というものだろう。

けれどリアルな話、頭の中は、家族の安否と建物の被害額でいっぱいになる。

停電中で何もやることがなく、窓の外でうなり続ける風の音を聞き続けることは永遠にも感じる。そして夏場なのにエアコンがなく、汗臭い自分自身と戦いながらも、お客様への対応も欠かせない。

この2つを同時に抱える重さは、経験した者にしか分からないはずだ。

かといって、お客様がいなければ収益は生まれない。台風と観光は、簡単に割り切れない糸が絡み合った関係にある。だからこそビーチランドロッジでは、台風が近づけば早めのキャンセルをお願いし、滞在中のお客様には欠航前の帰島を勧めている。

実家から届いた一枚の写真

台風が去った翌日、父からLINEが届く。「大きな被害はなさそう?」と送った私への返信は、簡潔なものだった。
ちなみに停電は3日目に突入している状況だ。

父親とのLINE

添えられていた写真には、青いトタンがめくれ上がった小屋の姿が写っていた。屋根だけが辛うじて原形をとどめている、そんな一枚である。

壊れた客室

停電はしばらく続き、船も飛行機も止まり、島は文字通り孤立する。「早く現状復帰できればと思います」という父からの一文がすべてを物語っている。

台風のときは、来ないでほしい、お互いのために

フォロワーさんの言葉を全否定するつもりはない。私には理解できないが、台風を経験したからこそ見える与論島の姿があるのも事実だろう。ただ、それを観光客の「観光体験」にする必要はないというのが、宿側の人間としての本音である。

真夏にエアコンがなく、外にも出られず、店も閉まっていて食事もままならない。そんな環境に身を置くことが本当に良いことなのかと問われれば、違うと答える。それが与論島への愛情につながるのだと言われれば、もう返す言葉はない。それでも、台風が来ると分かっている時は、来島を控えてほしいと思うし、これからも発言していく。

宿の人間は、いつだってお客様を思ってしまう。その優しさに甘えて、無理をさせないでほしい。それが、実家の民宿を持つ私からの、正直な願いである。

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