闇 388(SNK龍虎の拳編)
闇 388(SNK龍虎の拳編)

2025/11/07 fry
前回の章
二千十七年一月十日、火曜日赤口。
首の痛みで二連休取ってしまったので、川越のくらづくり本舗のお菓子を店に持って行く。
「そんな気を使わないでもいいですよ、赤崎さん」
店長の香川はそう言うが、どちらかと言えば俺の代わりに出てくれた川崎や橋本たち早番へという気持ちだ。
二日ぶりに呼ばれる偽名『赤崎』には未だ違和感を覚える。
いつか『新宿クレッシェンド』の本を持ってきて、店にさり気なく置いておこうかな……。
いやいや、裏稼業の人間には文学なんて分からないって。
揉める原因になるだけ。
やめとけ。
オカマの木下は、黙ったままピンクのバックへ餅入り最中を三つも入れて帰る。
あの馬鹿、その最中一個二百円以上するんだからな。
図々しいというか、礼節のないカマ野郎が……。
「あ、今日は給料日ですよ。赤崎さん初でしょ」
「わーい!」
十日は待望の給料日。
一万五千円の内、五千円がプール金なので十万ちょっとしかないが、それでも嬉しいものだ。
着々と金持ちになっていく俺。
あ、でもこの十万を一気に岡部さんへ返せば、残り五万になるのか。
また次の日曜日でも飲みに誘おうかな。
自分ルールで返し切るまでは、新宿のけいこや川越の愛の店には行かないと決めている俺。
早いところ済ませないと、いつまで経っても顔すら見れやしない。
あ、でも…、坊主さんたちが千葉に家を買ったと聞いているのに、未だ俺は祝い金一つあげられていないんだよな……。
不義理もいいところだ。
岡部さんへの返済が終わったら、次は坊主さんたちへ。
でも、けいこの強飲と、愛のノイには行くのはOK。
このぐらいの緩さが無いと人間駄目になってしまうからね。
小金持ちから貧乏まっしぐら。
それでもいい。
このまま頑張って働けば、人生は薔薇色になっていくのだから。
返し終えたら、まずは新宿のけいこから行っちゃうか、おい……。
「ウヒョヒョ…、あ、赤崎さん、な、何をニヤニヤしてんですか?」
川崎がキン肉マンに出てくる超人のような笑い方をして声を掛けてきた。
相変わらず活舌が悪過ぎる。
「あ、川崎さん、本当に昨日は休み潰して出てくれてありがとうございました」
「い、いいのいいの! こ、困った時はさー、お、お互い様だから」
「川越の有名な和菓子買ってきたんで食べて下さいね」
「いや、それがさー…、わ、和菓子っていうか、あ、餡子苦手なんだよね」
「それなら今度美味しい弁当か何か買ってきますよ」
「え、ほ、ほんと?」
どうでもいい事で話が盛り上がっていると、責任者の橋本が不機嫌そうな表情で近付いてきた。
「川崎さんも赤崎さんもさー…、仕事中なんだから、客いなくても、掃除したりしたら?」
「すみません!」
慌てて台の掃除を始める。
少し俺が浮かれたせいで、川崎まで嫌な思いをさせてしまった。
でもそれぐらい昨日のブロック注射で身体は全快になっている。
健康だという当たり前の事が、こんなに嬉しい事だとは……。
今日も夕方以降から混み始め、INとOUTを繰り返している内に交代の時間が来る。
日払いの内の一万円札をもらい、店を出た。
川越に着き、家に帰る前にマゲ一家の様子を見に行く。
夜十一時を過ぎているのに、管理室には弟の徹也がいた。
「おう、兄貴。今帰り?」
「ああ、徹也悪いな」
「何が?」
「いや、鳥の世話をちゃんとやってくれているみたいだからさ」
「もう兄貴も働き出して一ヶ月経つでしょ?」
「ああ、今日ようやく給料日だよ」
「あのさ…、兄貴が家に戻って来る前に、家のガスの機械が故障して修理したんだよ」
「そうだったんだ。冬場で風呂入れないじゃ、洒落にならないもんな」
「それでさ、悪いんだけど、修理代十六万掛かっているのね? 兄貴も出してくれないかな」
「え……」
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