闇 413(仲町のおばあちゃんの本屋編)
闇 413(仲町のおばあちゃんの本屋編)

2025/12/07 sun
前回の章
二千十七年六月十三日、火曜日大安。
エプソムカップに敗れ、茄子とマグロに救ってもらった翌日から、俺は新宿歌舞伎町のゲーム屋ラッキーハウスでの一週間が始まる。
クソ忙しい最中、気付けば日付けが変わっていた。
「赤崎さん、一服どうぞ」
店長の香川の指示で一旦奥の休憩場所へ下がる。
この時ばかりはとても有り難い。
何故なら今日は、三沢光晴さんの命日。
ん、何かLINEが届いているな?
ルナからかな……。

「……」
山下の馬鹿からか……。
以前斉藤弘一とすしまみれへ朝食事へ行ったあと、彼は山下へ俺と会って色々会話をしたと話したのだろう。
六月六日に久しぶりに山下から連絡があり、仕事かどうか聞かれた。
仕事だと答えると、山下自身が今日休みだからと言って会話は途切れたままだった。
『ストレス溜まってるから風呂入る前、オナニーしてからでも大丈夫ですか? 山下哲也』
『すみません。間違えて送りました。 山下哲也』
本当にあの男は馬鹿だ。
普通こんな間違えメールを送るか?
頼むから三沢さんの命日を汚すな、あのボケ野郎め……。
三沢光晴さんが亡くなったのは二千九年六月十三日。
あれからこれで八年目。
ジャンボ鶴田師匠の命日からちょうど一ヶ月後。
そしてあとちょうど三ヶ月経てば、俺の誕生日になる。
時間経つのって、ほんと早いもんですよね、三沢さん……。
セブンスターへ火をつける。
あなたの亡くなった大切な日なのに、俺はこうして裏稼業で働き何とか生計を立てて必死に生きています。
どうかこんな無様な俺を笑って許して下さい。
目じりが熱くなり、慌てて天井を向いてゆっくり煙を吐く。
この八年間、俺は一体何の進歩があったのだろうか?
利用され、裏切られ、騙され…、何とかそれでもこうして生きてきただけ。
正に生きる屍だ。
初期横浜時代だったか?
鶴田師匠の命日と三沢さんの命日の間を神聖なる期間と思った。
自身の胸の内に秘めているだけならいい。
しかし俺はそれをフェイスブックへ出した。
しかし現実はどうか?
何に対して俺は格好つけている?
現にこの一ヶ月を振り返ってみろ。
ビンゴ5の当たりに浮かれ、宿命付けて競馬をやっていただけ。
どこが神聖なる期間なのだ?
目先の金に左右され、翻弄され、馬鹿を晒し生き恥を晒しているだけ。
いつからこんな平和ボケした?
あの二俣川の時を思い出せ。
食いたいものも食えず、ただ飼い殺しされ日々衰弱していくだけの虚しく空虚な時を……。
あれがいいとかではない。
人生を投げ出そうとしたのだ。
岡部さんの心意気で俺は救われた。
先日会って二十万円は返せた。
それでチャラか?
そうじゃないだろう。
こんな生活をする為に俺は蘇ったのかよ?
「赤崎さん!」
「はい」
「一服ですよ、一服。ちょっと長過ぎませんか?」
「すみません」
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