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闇 404(ミートソース哲学編)

闇 404(ミートソース哲学編

2025/11/29 sta
前回の章


二千十七年四月九日、日曜日先負。

ようやく朝方の四時を過ぎて客も引き出し、やっとゆっくりタバコが吸える。
昨日の競馬の当たりは、どう考えてももの凄い運気が来ている証拠。
二千円とかでなく、一気に金を突っ込んでいたら、運命が変わっていたかもしれないのになあ……。

今日は日曜なので、朝から全レース買ってみよう。
三会場で競馬が開催されるから全部で三十六レース。
とりあえず一レースから三レースまでの九つの馬券を買う。

セブンスターへ火をつけ一口吸うと、夜の出来事を思い出して思い切り咽た。

まだ満席で忙しい日が明ける前の事。
ほぼ満席状態の中、ガジリ屋のヤスが来店した。

前回のように川崎へ任せる訳にもいかず、ドアを開ける俺。
ヤスは俺の顔を見ると驚いて色々話し掛けてくる。
しかし店内はほぼ満席でごった返し。

金も使わない乞食客に構っている暇など当然ない。
ドアを閉めると話し掛けるヤスを無視してホールへINをしに行く。
バタバタの中、ヤスがフィーバーパックの一卓へ座り、川崎に向かって「早く入れてよ」と小生意気な事を抜かすのを見た。

どうせまたヤス茶だろう。
俺はホールの客の動きを見ながら冷茶をグラスへ注ぐ。

「あ、あ、あ、あ、赤崎さん、つ、つ、冷茶!」
「ほい、ヤス茶」
「す、す、す、す、凄いねー! な、な、な、何で分かったの?」

「前回もそれ聞いたじゃないですか」

俺がニヤけながら答える。

「ほら、そこ話してないで! はい、九卓さん!」

うっせーな、丸メガネが。
返事もせずホールへ出る。

一卓へ川崎がヤス茶を持って行くと「おい、上握り!」とゲームしながら偉そうに言っていた。
川崎が香川へ「じょ、上握り」と声を掛けていたので近付く。

「香川さん、一卓のヤスってまだ初回ですよね?」
「そうですけど、それが何か?」

「結局あいつ、あのあと五千円しかやらないですよね?」
「え、何で知っているんですか?」

「まあ別の店からだと、そこそこ長い付き合いだからですよ」

「……。赤崎さんは何が言いたいんですか?」
「ヤスに飯を出す必要性なくないですか?」

「…というと?」
「乞食客にまで寿司を店持ちで食べさせても意味無いじゃないですか。せめてINが三万以上使ってからとか決めたほうが良くないですか?」

「……。それでもいいですが、じゃあ赤崎さんがヤスさんへ言ってこれるんですか?」
「俺が言っていいんですね? じゃあ今言ってきますよ。あ、今頼んだ寿司もついでに断ってきますか?」

「いや、それはさすがにあからさま過ぎるので、今回はという形にして次回からはでいいです」
「分かりました」

あんな屑に対しても、自分から言えないのかよ?
臆病者のクソ丸メガネめ。
自分の立場に胡坐を掻き、セーフティーな部分からしか何もできない屑野郎が。

俺は右側の通路へ向かい先頭の一卓へ向かう。

「ヤスさん」

「あ? え! い、岩上さん! どうかしましたか?」

川崎だと思って偉そうに振り向いたんだろう。
ヤスの変わり身の早さを見て、吹き出しそうになった。
何でコイツはこうまで裏表が凄いのだ?

ふと横に人の気配を感じる。

ルル(中国人)

右側に設置されているビンゴボードをジーッと眺める中国人のルル。
現時点では『4』でリーチなので、この数字のフォーカードが揃えばプレミアで別途に三万円の現金がもらえる状況。

「あれ、ルルさんどうしたんですか?」
「今、『4』のスリーカードね、あと一つ」

ルルのおかげで吹き出すところを救われた形になる。

「じゃあルルさん、早く引かないと。ビンゴ早いもの勝ちになるし、ラッキーフルならもう一度引き直しもできるでしょ」
「ん-、赤崎さん言う通り、私席戻るね」

「あのー、岩上さん、どうしました?」

俺とルルの会話を待ってヤスが声を掛けてきた。

「いや、ヤスさんね…。次から食事頼む場合、最低INを三万使ってからじゃなきゃいけなくなってね」
「え! じゃあ今日は、あと二万入れなきゃ駄目って事ですか?」

想定外の事を言われたじろぐヤスを見て、再びツボに入る。
右の拳を強く握って口元へ押し付け、ワザとらしく咳をして誤魔化す。

「いや、上からのお達しで客全員に対してね? 別にヤスさんだけに言った訳じゃないからね?」
「じゃあ岩上さん、もしフォーカード出るじゃないですか? それでOUTをした場合、どうすればいいんですか?」

またこのガジリ野郎…、いちいち細けえな……。

「つまり…、勝ち負けはどうでもよくて、三万円ぐらいの勝負はして下さいねって事なんですよ」
「これ見て下さいよ。今自分、『4』のスリーカードじゃないですか? もしこれでフォーカード出たら、二万円になりますよね?」

「だから…、それでOUTしても問題は無し。ただINで三万ぐらいはって事です」
「分かりました。じゃあこれでフォーカード出たら、あ!」
「フォーカード!」

ほぼ同時期に一卓と六卓でフィーカードが揃う。
俺の判断では一卓のヤスのほうが、六卓のルルより微妙に早かった。

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