闇 431(ゴールデン街での再会編)
闇 431(ゴールデン街での再会編)

2025/12/21 sun
前回の章
二千十七年十月十九日、木曜日先勝。
広大な宇宙ってものがあって、豆粒ほどの地球がある。
その中でも小さな島国である日本。
この中でミクロのような存在が俺だ。
これは誰でも同じか……。
四股を大きく伸ばし、地面に寝そべる。
ボーッと天井を眺めながら、ゆっくりと煙を吐き出す。
白いモヤのように煙は中を舞い、空気に溶けるよう拡散され、やがて消えていく。
その様子を見ながら一つの結論に行き着いた。
俺は必要性のない人間である。
何故今までその事に気づけなかったのだろう。
大いに思い違いをし、これまで生きてきた。
気付けるチャンスなどいくらでもあったはずだ。
おかげでどれだけの失敗を繰り返し、愚行をし、人々を失望…、いや、人々から忌み嫌われてきたのだろうか。
何度もあった選択肢。
もちろん正しい方を取った事もあるが、間違いが多かったから現状はこうなっている。
利用され、騙され、裏切られ……。
それでも俺はこうして生きている。
自らの生き恥を過ちを今覚えた。
しかし、どうすればいいのだろう。
本音を言えば、これ以上生きていたくない。
でも、死ぬ覚悟などできない。
かと言って今さら性格や態度を改めて生活するなんてごめんだ。
ならどうする?
簡単だ。
俺は嫌われ者である。
常にその自覚を忘れずに生きていく事。
こんな自分に理解者などほぼできないだろう。
仕方ない。
せめて自分を信じて、孤高に生きようじゃないか。
ふとこんな事を考え、フェイスブックへ投稿はしたが、また頭のおかしい事を言い出したと思われるのも嫌だったので、この文章を書いたまま未公開にしておく。
もう小説も何も書いていない俺が、このような思想に近い文章をダラダラ書き発表する権利などない。
俺は小説をまた書きたいのか?
「……」
もう誰からも期待していないんだぞ?
人気も何もない、評価もない作品を書いて何になる?
またトイレへ駆け込んで吐きたいのか?
自問自答するが何も答えは返ってこない。
別にこのぐらい書きたかったから書いただけだ。
誰の目にも触れないよう非公開の設定にした。
別に迷惑など掛けていない。
相変わらず半端者だ。
ああ、悪いか?
だから今こうなっている。
これは岩上智一郎本人の思想か?
いや、分身だった神威龍一だ。
馬鹿言えよ、一番チョロい赤崎隼人だろう。
よせよ…、始めから分かっているくせに意味のない擦り付け合いをするなよ。
人格かどうだとかはただの言い訳だ。
岩上智一郎と直に名前を書くのを憚り神威龍一の名を使っただけ。
働く際偽名を決めろと言われたから、たまたま赤崎隼人を名乗っただけ。
そんなものは人格でも何でもない。
ただの逃げと同じ。
分かったよ。
じゃあ書かねえよ。
それで文句ないだろうが。
悪かったな。
才能の欠片もないのに、文字を書いて。
もういい。
明日も明後日も仕事だ。
とっとと寝よう。
二千十七年十月二十二日、日曜日大安。
嫌な警報音が携帯電話から鳴り、緊急警報が画面に表示された。

夕方に土砂災害?
その割にラッキーハウスのテレビには緊急告知も何もない。
ニュースにすらなっていないぞ。
緊急警報
避難準備・高齢者等避難開始
16時23分に文京区に大雨警報(土砂災害)が発表されました。
土砂災害の危険性が高くなることが想定されるため17時40分に土砂災害警戒区域に対し「避難準備・高齢者等避難開始」を発令しました。
土砂災害警戒区域にお住まいの方は、気象情報を注視し、危険だと思う場合は避難所への準備が整っておりますので速やかに避難してください。
高齢の方、障害のある方、小さい子どもをお連れの方は避難行動をとってください。
(文京区)
文京区ってどの辺だっけ?
インターネットで調べてみるが、特に被害が出たというニュースは見当たらなかった。
それでも一応何かあるといけないので、俺はスクリーンショットを撮り、フェイスブックで近くの人は気を付けるよう投稿してみる。
もう川越祭りから一週間経つ。
あれからずっと仕事をしっ放しだ。
ホールで客は田中仁一人。
またかぶきちの焼きそば大盛りとしょうが焼き弁当を食べている。
本当によく食う男だ。
橋本が俺に近付き、川崎に聞こえないぐらいの声で話し掛けてきた。
「赤崎さん、明日早番の食事会しますから」
俺は休みを記入してあるカレンダーを見る。
明日は川崎が休みになっていた。
「え、川崎さんは休みなのに出てくるんですか?」
「いえ、自分と赤崎さんの二人だけです」
「はあ……」
二人が犬猿の仲なのは知っていたが、橋本も大人気ない。
裏稼業とはいえ同じ職場内なのだから、そこは分けちゃ駄目霜降だろうと思う。
しかし俺の立場では、その意見を言う事さえ許されない。
何も知らずに陽気な川崎を見ていると、憐れみを覚えた。
二千十七年十月二十三日、月曜日赤口、霜降。
朝方嫌な音で目を覚ます。
また昨日と同じ緊急警報の音だ。
まだ朝五時台じゃないかよ……。
俺は眠い目を擦り、携帯電話を手に取った。
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